ブリッジレポート
(2183) 株式会社リニカル

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ブリッジレポート:(2183)リニカル vol.5

(2183:東証マザーズ) リニカル 企業HP
秦野 和浩 社長
秦野 和浩 社長

【ブリッジレポート vol.5】2011年3月期第3四半期業績レポート
取材概要「今期の業績予想を達成するためのハードルは低くないが、受注は順調であり、第3四半期末の豊富な受注残高を考えると今後の見通しは悪くない・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年2月15日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社リニカル
社長
秦野 和浩
所在地
大阪市淀川区宮原1-6-1 新大阪ブリックビル
決算期
3月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年3月 2,404 480 473 273
2009年3月 2,036 549 515 300
2008年3月 1,273 505 494 296
2007年3月 613 186 195 114
2006年3月 118 16 19 11
株式情報(1/31現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
380円 11,394,961株 4,330百万円 27.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
11.00円 2.9% 27.84円 13.6倍 66.78円 5.7倍
※株価は1/31終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
リニカルの2011年3月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
臨床試験(治験)や医薬品の市販後臨床試験等に関わる業務の一部を代行する事で製薬会社の医薬品開発を支援するCRO(Contract Research Organization:医薬品開発業務受託機関)事業を手掛けており、第2の柱とするべくCSO(医薬品営業受託業)を育成中。CRO事業では、治験の最も大切な段階である第II相試験(フェーズII)及び第III相試験(フェーズⅢ)における「モニタリング業務」とこれに付随する「品質管理業務」、及び「コンサルティング業務」に特化している事が特徴。製薬会社の開発部門と同等の能力を有し、同等の立場で医薬品開発を実行・サポートできるCRO、すなわち、「CDO(Contract Development Organization:真の医薬品開発業務受託機関)」を目指している。
 
<業務内容>
モニタリング業務
新薬開発において最も重要な役割を果たす業務の一つで、治験が手順通り正確に行われているかをモニタリング(監視)する。具体的には、CRA(Clinical Research Associate:治験モニター)が治験を実施する医療機関に対して治験薬や実施計画書について説明、その後、治験が手順通りに行われているかをモニタリングし、治験データを回収する。
 
品質管理業務
CRAが医療機関から収集したデータが法令や計画書通りに実施されているかについて、定められたチェックリスト等を用いて確認する業務。品質管理業務は治験の質を左右する重要な役割を果たしている。
 
コンサルティング業務
製薬会社に対して、新薬開発のスケジュール作成から治験企画、承認申請に至るまでのコンサルティングを行う業務。新薬開発をスムーズに進めるための技術的なサポートも行なっている。
 
<中期事業戦略>
がん領域を中心にした治験領域の拡大と日米欧の3極体制の整備により既存事業(CRO)を強化すると共に、新規事業(CSO)展開により業容の拡大を図る。CSOとはContract Sales Organizationの略で、医薬品の販売において重要な位置を占めるMRの派遣やマーケティング支援等により製薬会社の医療機関向け医薬品販売を支援する。CRO事業に加え、CSO事業を手掛ける事で新薬の開発段階から上市後に至る一気通貫のサービスが可能となり、付加価値向上はもとより、製薬会社の利便性も高まる。尚、がん領域は、国内の大手医薬品会社がM&Aを含めて強化している領域で、世界の主要抗がん剤の売上は右肩上がりで推移している。また、3極体制の整備では、先ず米国での拠点整備に取り組む。米国法人LINICAL USA, INC.(米国カリフォルニア州、08年7月設立)が現地でモニタリング・コンサル業務を手掛けており、今後、国内で育成した人材を子会社へ出向させ人員の拡充を図る考え。
 
 
2011年3月期第3四半期決算
 
 
前年同期比7.3%の増収、同29.8%の経常減益
上期に受注した中枢神経系領域やがん領域等の案件が本格的に稼動した事で第3四半期(10-12月)に入りCRO事業の売上が大きく伸びた他、前期より開始したCSO(医薬品営業受託業)も徐々に寄与し始めた。ただ、第1四半期(4-6月)に発生した大型案件の開発中止の影響を吸収するには至らず、受注計画に従い期初に増員した臨床開発モニター(CRA)の稼働率が低下し売上総利益率が5.2ポイント悪化。事業拡大に向けた品質管理担当者の増員やLINICAL USA INC.の事業の本格化に伴う販管費の増加が負担となり、営業利益は同28.4%減少した。
 
 
第3四半期末の受注残高は前期末比53.4%増の34.9億円。案件の端境期となった10/3期末には一時的に受注残が底を突いた武田薬品工業グループから新規案件を受注した他、第一三共向けの受注残も大幅に増加。既存の受注案件が順調に推移した大塚製薬も追加受注で第3四半期末の受注残が増加した。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
第3四半期末の総資産は前期末比1.7億円増の15.8億円。自社株買い(自己株式△9百万円→△2.9億円)で純資産が減少する一方、国内のCRO事業及びCSO事業の受注増やLINICAL USA INC.の事業の本格化に対応するべく、10年10月に無担保変動利付社債発行により3.5億円、長期借入により1.5億円を調達した。CFの面では、利益の減少や第3四半期に入っての売上増に伴う運転資金の増加で営業CFが悪化。差入保証金の減少で投資CFのマイナス幅が縮小したものの、前年同期は2億円の黒字だったフリーCFが0.6億円のマイナスとなった。
 
 
 
2011年3月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更は無く、前期比20.0%の増収、同22.8%の経常増益予想
通期予想に対する進捗率は、売上高が64.9%(前年同期は72.6%)、経常利益が39.7%(同69.6%)と、前年同期を下回るものの、豊富な受注残の消化で通期業績予想の達成を目指す。配当は1株当たり11円の期末配当を予定している。
 
 
取材を終えて
今期の業績予想を達成するためのハードルは低くないが、受注は順調であり、第3四半期末の豊富な受注残高を考えると今後の見通しは悪くない。CRO事業において受注する治験業務は、1年~3年程度の治験実施期間においてクライアントと委受託契約を締結し(個々の案件の受託総額は症例数や対象疾患による治験の難易度等で決まる)、契約に従い毎月売上を計上する。また、CSO事業においても、同程度の期間についてクライアントと委受託契約を締結し、契約に従い毎月売上を計上する。このため、受注残高は今後1年~3年程度の期間で発生する売上高を示しており、同社グループの今後の業績予想の根拠となる指標である。