ブリッジレポート
(6890) 株式会社フェローテックホールディングス

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ブリッジレポート:(6890)フェローテック vol.28

(6890:JASDAQ) フェローテック 企業HP
山村 章 社長
山村 章 社長

【ブリッジレポート vol.28】2011年3月期上期業績レポート
取材概要「業績のV字回復をリードした装置関連事業及び電子デバイス事業に下期は一服感が出るが、具体的に示された太陽電池関連の設備投資計画に来期以降の・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年12月7日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フェローテック
社長
山村 章
所在地
東京都中央区京橋 1-4-14
決算期
3月
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年3月 31,541 703 524 156
2009年3月 36,653 2,790 2,097 743
2008年3月 36,625 3,057 2,414 1,903
2007年3月 32,517 2,288 2,081 1,703
2006年3月 23,946 1,210 1,040 708
2005年3月 21,105 1,762 1,456 633
2004年3月 15,000 615 -177 -645
2003年3月 12,845 111 -626 -899
2002年3月 14,775 916 984 -357
2001年3月 16,435 2,665 2,561 1,644
2000年3月 7,988 892 629 288
株式情報(11/25現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
981円 24,803,678株 24,332百万円 0.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12.00円 1.2% 92.73円 10.6倍 896.93円 1.1倍
※株価は11/25終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フェローテックの2011年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
シリコン単結晶引上装置等の太陽電池関連製品、半導体製造装置やフラット・パネル・ディスプレイ(FPD)製造装置の部品、半導体材料、各種温度調節に使われるサーモモジュール等の製造・販売を行っている。いずれも目に触れる機会はないものの、パソコンや携帯電話、液晶やプラズマ等、身近な分野で同社の技術が活かされている。もともとは磁性を持つ液体である磁性流体応用製品のメーカー。その代表例が、半導体やFPDの製造装置の部品となる真空シールであり、我国の半導体・液晶の製造装置産業の発展に大きく寄与した。磁性流体応用製品に次ぐ主力製品となったサーモモジュールもそうだが、Only Oneの製品であり、超精密部品であるため、金属加工や表面処理等で高い技術が要求される。この技術を中国に持ち込み、現地の安価な労働力と融合させたのが、事業セグメントの一つである受託生産(CMS)事業である。更に、近年、急速な伸びを示しているのが、シリコン結晶製造装置や石英坩堝等の消耗品を手掛ける太陽電池関連事業である。太陽電池の材料となるシリコン結晶製造装置には、同社の製品である真空シールが主要部材として使われており、これまで蓄積してきた技術やノウハウが活かされている。

国内外の連結子会社20社及び持分法適用会社5社とグループを形成しており、事業セグメントは次の通り。
 
装置関連事業  : 真空シール、石英製品、半導体用シリコン、セラミックス、蒸着装置、シリコンウエーハ加工等
太陽電池関連事業: シリコン(多・単)結晶製造装置、太陽電池用シリコンインゴット、石英坩堝
電子デバイス事業: サーモモジュール、磁性流体等
その他     : ソーブレード、装置部品洗浄、工作機械等(報告セグメントに含まれない事業セグメント)
 
 
 
2011年3月期上期決算
 
 
前年同期比77.0%の増収、18.9億円の経常利益(前年同期は5.0億円の損失)
売上高は前年同期比77.0%増の237.6億円。半導体・FPD投資の活発化や生産の回復で装置関連事業の売上が同2.1倍に拡大した他、太陽電池関連事業の売上も石英坩堝や太陽電池用シリコン製品を中心に伸長。サーモモジュールをけん引役に電子デバイスの売上も倍増した。利益面では、増収効果に加え、収益性の高い装置関連事業の売上構成比の上昇で売上総利益率が6.8ポイント改善。変動費の増加や抑制していた人件費の正常化等による販管費の増加を吸収して営業損益は前年同期の5.4億円の損失から、22.4億円の利益に転じた。為替差損益の悪化(1.5億円→△2.6億円)で経常利益が18.9億円にとどまったものの、特別損益の改善や税負担が5.6億円にとどまった事等で13.4億円の四半期純利益を確保した。為替レートは、1米ドル=83.8円(前年同期90.2円)、1人民元=12.5円(同13.2円)。
 
 
これまで「装置関連事業」、「太陽電池関連事業」、「電子デバイス事業」、及び「CMS事業」の4事業でセグメント情報を開示していたが、製品用途の類似性と販売先業種により事業区分の見直しを行い、11/3期より、従来「CMS事業」に区分していたシリコンウエーハ加工を「装置関連事業」に区分すると共に、「装置関連事業」、「太陽電池関連事業」及び「電子デバイス事業」の3事業を報告セグメントとした。上記の10/3期上期の実績は新区分にて遡及修正したもの。
 
装置関連事業
当事業では、真空シール、石英製品、Wafer回路検査冶具や機械装置部品に使われるセラミックス製品、EB-ガン、LED向けを中心とした蒸着装置等の製造・販売、及びシリコンウエーハ加工等を手掛けている。売上高は前年同期比117.8%増の130.0億円、営業利益は13.7億円(前年同期は8.2億円の損失)。台湾・韓国・米国メーカーの活発な半導体投資や欧州メーカーからのLED製造装置向けの受注で真空シールの売上が36.3億円と同2.2倍に拡大した他、高水準の装置稼働率が続くデバイスメーカー向けに、石英製品(同2.7倍の30.4億円)やセラミックス(同56.7%増の17.7億円)等の製造過程で使われる消耗品も伸長。この他、シリコンウエーハ加工が23.6億円と同101.8%増加した他、年初に米国子会社が事業譲受したLED製造用蒸着装置も寄与した。
 
太陽電池関連事業
当事業では、太陽電池向けシリコン結晶製造装置、石英坩堝、太陽電池用シリコン製品等の製造・販売を手掛けている。売上高は前年同期比34.7%増の67.8億円、営業利益は同17.9%減の3.5億円。需要回復に加え、太陽電池用ウエーハの販売を開始した事で太陽電池用シリコン製品の売上が21.0億円と同84.7%増加した他、製造過程で使われる消耗品の石英坩堝も14.2億円と同63.9%増加。一方、シリコン結晶製造装置は、出荷が順調に進んだものの、単価の低下等で売上高は29.1億円と同3.9%減少した。利益面では、シリコン結晶製造装置の価格低下と一部顧客に対する売掛債権について貸倒引当金を計上した事が響いた。尚、足下のシリコン結晶製造装置の受注は堅調に推移しており、豊富な受注残の消化に向け工場はフル稼動の状態が続いている。
 
電子デバイス事業
当事業では、サーモモジュール、磁性流体等の製造・販売を手掛けている。売上高は前年同期比101.9%増の30.5億円、営業利益は4.1億円(前年同期は0.7億円の損失)。主力のサーモモジュールの売上高は同103.6%増の27.9億円。政府の販売支援策を追い風にした米国での自動車販売の回復や中国市場等での販売好調を受けて自動車温調シート向けが大きく伸びた他、空気清浄機やエアコン等の家電向けも堅調に推移。加えて、医療用検査装置、バイオ、光通信向け等の高機能製品の販売も増加した。また、同製品の主要製造拠点である中国子会社において自動化ラインを導入する等、コストの抑制と生産性の向上にも努めた(高機能製品の一部は、ロシア子会社が生産している)。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
上期末の総資産は前期末比53.2億円増の532.8億円。受注・売上の増加で運転資金が増加した他、太陽電池関連を中心にした設備投資等で固定資産も増加した。CFの面では、受注・売上の増加に伴う運転資金の増加で営業CFが減少する一方、設備投資の増加(11.5億円→20.9億円)等で投資CFのマイナス幅が拡大したため、フリーCFは5.9億円のマイナスとなった。株式の発行による収入が無かった事等で財務CFも減少したが、現金及び現金同等物の上期末残高は64.4億円と前期末比5.7億円の減少にとどまった。
 
 
 
2011年3月期業績予想
 
 
下期は若干の減速を見込むものの、通期の売上・利益は過去最高を大幅に更新
下期は、太陽電池向けシリコン結晶製造装置が増収に転じる他、石英坩堝や太陽電池用シリコン製品も好調を持続するものの、半導体・FPD関連に一服感が出る他、サーモモジュールも各国政府の支援策終了に伴い主力の自動車温調シート向けが減少する見込み。このため全体的には上期比で減速感が出るものの、太陽電池関連事業はもとより、装置関連事業及び電子デバイス事業においても高水準の売上・利益が続く見込み。
通期では、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益の各段階で期初予想を大幅に上回り、過去最高の更新が見込まれる。為替レートの前提は、1米ドル=82.0円(前期93.7円)、1人民元=12.2円(同13.3円)。また、設備投資計画を期初の30億円から35億円に引き上げた(前期は23.8億円)。減価償却費は27.0億円を見込む(同26.0億円)。配当は1株当たり12円の期末配当を予定している。
 
 
装置関連事業
真空シールの下期は、LED関連の好調が続くものの、半導体・FPD関連が一服する見込み。ただ、FPD関連は、近々に韓国・台湾メーカーから中国工場が認可を受ける予定で、認可取得後の受注の増加が見込まれる。石英製品は上期比では減速感があるものの、台湾メーカーやOEMを中心に高水準の売上が続く。この他、セラミックス、EB-ガン、蒸着装置も上期比減速するものの高水準の売上が続く見込みだが、ウエーハ加工が前年同期の水準を下回る。設備投資については、スペアパーツやサブアセンブリ品の営業を強化している真空シールで中国工場の組立エリアの拡張投資が続いていている他、石英製品についても短納期対応に向けた能力増強投資を計画している。
通期のセグメント売上高は前期比62.9%増の243.5億円を見込む。
 
電子デバイス事業
主力のサーモモジュールは自動車・家電向けが減速するものの、高水準の売上が続く見込み。具体的には、政府支援策の終了を受けて自動車温調シート向けで在庫調整が予想される他、季節要因で民生用も減少する見込みだが、半導体、医療検査、バイオ機器向けが好調を維持する。また、現在客先で評価中の光通信向け新製品も徐々に寄与してくる見込み。中国工場で自動化ラインを拡大し、コスト競争力の更な向上にも務める。通期のセグメント売上高は前期比56.5%増の58.7億円を見込む。
 
太陽電池関連事業
他部門からの人員補充で受注残の消化が進むシリコン結晶製造装置が伸びる他、中国顧客から高い評価を受けている石英坩堝も好調が続く。また、太陽電池用シリコン製品では上期に評価販売を開始したPV用ウエーハの販売が本格化する。尚、PV用ウエーハの販売により、結晶製造→インゴット切断→ウエーハ検査→製品供給 といった一貫体制が整い、今後、大幅なコストダウン可能になる。通期のセグメント売上高は前期比43.2%増の151.5億円を見込む。
 
 
(3)資金調達と設備投資計画
11月5日に、東京海上日動火災保険(株)を割当先とする第三者割当による無担保転換社債型新株予約権付社債(以下、新株予約権付社債)を発行し、太陽電池関連事業における設備投資資金20億円(潜在株式数:1,915千株、希薄化率7.72%)を調達した。
同社は、太陽電池関連事業において、単結晶引上装置、多結晶製造装置、角切ソー、ウエーハ検査装置等の各種装置、単結晶用石英坩堝、多結晶用石英角槽、ホットゾーン等の消耗品、更には太陽電池用シリコンインゴットの製造・販売を手掛けているが、今後、太陽電池用シリコンウエーハの製造・販売にも取り組んでいく考え(この下期より販売が本格化する)。具体的には、単結晶125mm 型、156mm 型、及び多結晶156mm 型に対応した6.5 インチウェーハと8 インチウェーハを生産し、主に中国の太陽電池セルメーカーに販売する。
 
 
太陽電池用シリコンウエーハは、単結晶製造装置と石英坩堝、或いは多結晶製造装置と石英角槽によって製造されたシリコンインゴットを角切ソーで切断し、ウエーハ検査装置を用いて検査するが、同社の場合、自社製品でラインを構築できるため価格競争力に優れたシリコンウエーハの製造が可能だ。
 
 
 
 
取材を終えて
業績のV字回復をリードした装置関連事業及び電子デバイス事業に下期は一服感が出るが、具体的に示された太陽電池関連の設備投資計画に来期以降の業績に対する会社側の自信がうかがえる。実際、ワールドワイドでの太陽電池需要は、11年以降、年率30%以上の成長が見込めるとの調査結果がある他、太陽電池ウエーハの大手企業が10年と11年の生産分を完売したとの報道もある。装置関連事業及び電子デバイス事業については今期の反動を気にする向きもあるだろうが、真空シールにおけるFPD関連での韓国・台湾メーカーからの中国工場の認可取得やスペアパーツ・サブアセンブリ品の販売拡大、石英製品における短納期対応による需要の取り込み、更には非自動車分野でのサーモモジュール需要の開拓等、収益の安定化と高付加価値化に向けた施策が進展している事に注目したい。今期は465億円の売上が見込まれ、数年来の目標としてきた売上高500億円に大手をかけた形だが、目標達成は更なる成長に向けた新たなスタートの号砲でもある。