ブリッジレポート
(2468) 株式会社フュートレック

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ブリッジレポート:(2468)フュートレック vol.14

(2468:東証マザーズ) フュートレック 企業HP
藤木 英幸 社長
藤木 英幸 社長

【ブリッジレポート vol.14】2011年3月期上期業績レポート
取材概要「8月の携帯電話出荷台数が2ヶ月連続のプラスとなったように、携帯電話の割賦販売が導入されて2年が経過し買い替えの動きが出てきたようだ。業績予・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年12月7日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フュートレック
社長
藤木 英幸
所在地
大阪市淀川区西中島 6-1-1
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年3月 1,996 530 540 315
2009年3月 1,777 404 415 221
2008年3月 1,598 264 277 159
2007年3月 1,253 249 256 162
2006年3月 1,443 173 165 99
2005年3月 1,059 69 79 33
2004年3月 907 9 6 -1
2003年3月 736 12 12 3
2002年3月 435 17 34 29
株式情報(11/22現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
94,700円 46,564株 4,410百万円 13.9% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
2,100.00円 2.2% 6,442.75円 14.7倍 51,062.31円 1.9倍
※株価は11/22終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フュートレックの2011年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
音声認識・UIソリューション事業分野と音源事業分野を柱に事業領域を拡大してきている。音声認識ソフトウェアの開発や音声認識サービスを提供する(株)ATR-Trekと共にグループを形成している。
 
 
社会の変化に柔軟に対応して、その時代に求められる商品を追求し継続的に発展していく会社を目指している。LSIの設計やセンサーの受託開発からスタートした同社だが、その後、携帯電話用音源IPライセンス事業へ展開し株式を上場。更に音声認識事業や(株)カナックからライセンス供与を受けた「使いかたナビ®」(電子ヘルプ機能)を用いたUIソリューション事業へ展開し業容を拡大している。今後、ハード・ソフトの技術をベースにサービス分野を強化する事で「技術開発型会社」から「技術開発型サービス会社」へ変貌を遂げると共に、新規事業の展開により企業価値の増大を図っていく考え。
 
 
<音声認識・UIソリューション事業分野について>
音声認識関連分野を最重要事業と位置づけると共に今後の更なる発展を図るべく、これまで独自の事業展開を進めていた音声認識事業とUIソリューション事業を“音声認識・UIソリューション事業分野”として一体化させた。
 
(1)製品ラインナップと収益
音声認識・UIソリューション事業分野の収益は、製品が搭載された事による「イニシャルフィーとランニングロイヤルティ」、製品搭載に伴う「カスタマイズ収益」、及びエンドユーザーからの月額使用料(「しゃべって翻訳」)からなる。
 
 
(2)近未来の技術を実現した音声対話 -機械と対話しながら操作-
 
画面上のマチキャラ®と会話する感覚で携帯電話の問いかけに声で答えていくと、希望する操作ができる画面にたどり着くため、マニュアルを読まなくても簡単に色々な機能を使う事ができる。10年11月にNTTドコモ2010-2011年冬春モデル13機種に「音声クイック起動」として搭載されており、現在、Android対応を進めている。

音声対話技術には、ユーザーの声を認識する技術(音声認識)、ユーザーの質問内容を特定し、どのような返事を返すかを判断する技術(対話制御)、及び判断された返事をマチキャラ®に話させる技術(音声合成)の3つの技術が盛り込まれている。音声認識技術は、(株)国際電気通信基礎技術研究所(以下ATR)の高度な技術によって支えられ、特にノイズ環境に強く、屋外で利用される事の多い携帯電話での実用に耐えうるものだ。対話制御技術はユーザーの質問からキーワードを理解し、それに対応した対話シナリオを選択し応える(対話シナリオは同社独自の対話制御言語Caribis®という言語で記述されている)。また、音声合成技術はHMM 音声合成を利用する事で小容量ながら(多くのメモリー領域を使用しない)自然な音声合成(発話)を実現している。
尚、音声認識は、分散型音声認識(端末で取り込んだ音声をサーバへ送り認識処理する。わずかにタイムラグが発生するが語彙が豊富)、ローカル型音声認識(端末で認識処理するため、処理は速いが語彙が限られる)、ハイブリッド型音声認識(用途に応じて端末での認識とサーバでの認識を併用する)の3つの方式があり、必要に応じて使い分けがなされる。上の音声クイック起動はローカル型音声認識で行われている。
 
(3)サービス
音声認識を利用したサービスとしては、NTTドコモが提供している音声入力メール(メールの件名や本文を携帯電話に向かって話すだけで入力できる)や(株)ATR-Trekが運営するiアプリ®「しゃべって翻訳」(月額150円、読み上げを行うDX版は同200円)がある。今後は、これまでUIソリューション事業として手掛けていた電子ヘルプソリューション「使いかたナビ®」(多機能な電化製品を使いこなすための電子ヘルプ機能)を音声認識に対応させていく事でサービスラインナップを拡充していく考え。
 
 
2011年3月期上期決算
 
 
前年同期比3.5%の増収、同40.0%の経常減益
売上高は前年同期比3.5%増の1,006百万円。携帯電話の販売台数減少を受けて音源事業分野の売上が減少したものの、カスタマイズ業務やランニングロイヤルティが増加した音声認識・UIソリューション事業分野の伸びで吸収した。利益面では、イニシャルフィーの売上減少で売上総利益率が低下する一方、音声認識・UIソリューション事業分野を中心にした研究開発費の増加等で販管費が増加したため営業利益が153百万円と同39.4%減少。金融収益の減少及び助成金収入が無くなった事等による営業外損益の悪化や少数株主利益の増加で四半期純利益は同45.3%減少した。
 
 
音声認識・UIソリューション事業分野の売上高は前年同期比21.5%増の560百万円。カスタマイズ業務やランニングロイヤルティが増加した他、総務省の採択プロジェクト関連(後述)の売上計上もあり、前年同期にイニシャルフィー(約1億円)を売上計上した反動を吸収した。一方、音源事業分野は国内市場における携帯電話の販売台数の減少による音源搭載台数の減少を受けて売上高が337百万円と同17.6%減少。この他、受託業務を中心に基盤事業分野の売上高が45百万円と前年同期比15.6%増加した他、英語リスニング模擬試験用メモリーカードの書込みを手掛けるカード事業分野の売上高も62百万円と同1.1%増加した。
総務省の採択プロジェクト関連の売上とは、総務省による「地域の観光振興に貢献する自動翻訳技術の実証実験」の関西地区実施団体として採択をうけたことによるもの(09年12月14日~10年2月28日にかけて実証実験を実施)。
 
 
上期末の総資産は前期末比22百万円増の2,809百万円。運転資金や減価償却費等で固定資産が減少したものの、銀行との取引の緊密化を図るべく銀行借入を行ったため現預金が大きく増加した。CFの面では、運転資金の減少やソフトウェア開発の一巡でフリーCFが増加。上記理由により銀行借入を行ったため、財務CFも黒字となり現金及び現金同等物の上期末残高は1,795百万円と前期末比385百万円増加した。
 
 
2011年3月期業績予想
 
 
前期比5.2%の増収、同7.5%の経常減益予想
音源事業分野が苦戦するものの、カスタマイズ業務やランニングロイヤルティが堅調に推移する音声認識・UIソリューション事業分野の売上が伸びる他、基盤事業分野の売上も増加する。ただ、イニシャルフィーの売上減少の他、携帯電話で培った技術を他の分野へ展開するべく音声認識及びUIソリューションの分野を中心に研究開発費を積み増すため営業利益は同5.7%減少する見込み。配当は1株当たり250円の記念配を普通配に切り替え年2,100円を予定している。
 
 
音声認識・UIソリューション事業分野は、下期もカスタマイズ業務やランニングロイヤルティが堅調に推移する見込み。一方、音源事業分野は下期も音源搭載台数の減少が見込まれ、これを業績予想に織り込んだ。基盤事業分野は引き続き自動車業界の厳しい状況が予想されるが、販促強化等により増収を見込んでいる。また、模擬試験の実施数により四半期ベースでは増減があるカード事業分野も年間の需要は安定しており、通期ベースでは堅調な推移が見込まれる。
 
(2)今後の事業展開
(株)アクロディアとの業務資本提携を梃子に次世代音声UIプラットフォームの開発に着手すると共に、他業界への展開を図る事で音声認識・UIソリューション事業分野の拡大を図る。
 
①アクロディアとの業務資本提携
携帯電話の組み込みソフトを手掛ける(株)アクロディアと9月に資本・業務提携を行った。今期中に共同開発チームを立上げ、携帯電話、スマートフォン、カーナビゲーション、家電等あらゆるプラットフォームに対して、操作性を高めることを目的とする次世代音声UIプラットフォームの開発に着手する。また来期以降、相互の顧客基盤や事業ノウハウを活用して、共同で次世代UIソリューションの販売・マーケティングを行っていく予定。

尚、(株)アクロディアは、携帯電話の組込みソフトウェア(ミドルウェア)の開発を手掛け、国内外のキャリアやメーカーへ提供してきた。特に「VIVID UI®」はUIを自由に着せかえる(インターフェイスをカスタマイズできる)ための技術基盤として、新しいコンテンツ市場を創り出す礎となっている。06年以降、国内の主要3キャリアに採用され、08年後半には国内で販売される携帯電話の約8割に搭載される等、市場シェアを拡大してきた。
 
 
②音声ラインナップの確立と新たな業界への展開
11月発売の音声対話技術で一通りの音声認識ラインナップがそろったため、今後は、(株)アクロディアとの技術提携により更に使いやすいユーザーインターフェースを開発し他業界への展開を進めていく考え。この一環として、(株)ATR-Trekが池田泉州銀行の外貨両替窓口で4ヶ国語(日本語の他、英語、中国語、韓国語)対応の自動音声翻訳技術の実証実験を行った。
 
③今後の方向性
社会の変化に柔軟に対応して、その時代に求められる商品を追求し、
継続的に発展していく会社を目指している。
 
 
取材を終えて
8月の携帯電話出荷台数が2ヶ月連続のプラスとなったように、携帯電話の割賦販売が導入されて2年が経過し買い替えの動きが出てきたようだ。業績予想には織り込まれていないようだが、こうした外部環境の改善が下期以降の音源事業分野の収益に反映されて来るものと思われる。また、中期的にはUIソリューションとの融合により音声認識の利用が様々なシーンに広がり、音源事業分野を安定収益源に、音声認識・UIソリューション事業分野で売上・利益を伸ばすと言う収益モデルが確立されてくるものと考える。
※マチキャラ®、iアプリ®は株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモの登録商標です。
※使いかたナビ®は株式会社カナックの登録商標です。
※Caribis®は株式会社フュートレックの登録商標です。
※VIVID UI®は株式会社アクロディアの登録商標です。