ブリッジレポート
(2317) 株式会社システナ

プライム

ブリッジレポート:(2317)システナ vol.10

(2317:東証1部) システナ 企業HP
逸見 愛親 社長
逸見 愛親 社長

【ブリッジレポート vol.10】2011年3月期上期業績レポート
取材概要「スマートフォン市場が急拡大しており、移動体通信キャリア各社はスマートフォンユーザーの獲得に向けAndroidを搭載したスマートフォンの開発を活発・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年12月7日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社システナ
社長
逸見 愛親
所在地
東京都港区海岸一丁目2番20号 汐留ビルディング14階
決算期
3月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年3月 3,636 490 536 340
2009年10月 8,161 1,261 1,258 1,180
2008年10月 9,603 1,816 2,153 1,275
2007年10月 7,930 1,595 1,555 849
2006年10月 5,917 961 967 602
2005年10月 4,180 717 691 561
2004年10月 3,093 677 643 391
2003年10月 2,461 516 511 280
2002年10月 1,940 398 380 196
2001年10月 1,524 180 175 93
株式情報(11/26現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
74,900円 302,168株 22,632百万円 - 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
2,600.00円 3.5% 6,816.93円 11.0倍 41,996.27円 1.8倍
※株価は11/26終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
システナの2011年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
データ通信系のファームウェア(主に携帯電話端末や基地局向けの組み込みソフト)開発に強みを持ち、情報システム構築等のシステムインテグレーション事業を育成中だった(株)システムプロが、持分法適用会社だったカテナ(株)を吸収合併。10年4月1日にシスプロカテナ(株)として再スタートを切り、10年7月1日に社名を(株)システナに変更した。新会社は、システムプロの情報システムサービス事業とカテナの金融を中心とするシステム開発事業を連携させると共に、システムプロの移動体高速データ通信システム事業との融合を図り、ユビキタス時代のエアー・シンクライアント・サービス(後述)の実現を目指している。
 
<事業内容>
事業は、モバイル高速データ通信事業、情報システム事業、ITサービス事業、ソリューション営業、エアー・クラウド推進事業、及び損害保険代理店やレンタカー等のカービジネス等のコンシューマサービス事業に分かれる。
 
モバイル高速データ通信事業(旧システムプロの移動体高速データ通信システム事業)
移動体通信キャリア、端末メーカー、及び端末メーカーにソフトウェア製品をライセンスしているソフトウェア開発販売会社(サードパーティー)を顧客とし、携帯電話端末の仕様策定、新機能の設計・開発及び評価を行っている。メール機能、ブラウザ機能、マルチメディアプレーヤー機能、デジタルテレビ機能、GPS機能等で実績が豊富。
 
情報システム事業(旧システムプロの情報システムサービス事業+旧カテナのシステム開発事業)
ネットショッピングや人材派遣等のポータルサイト構築といったオープン系システムを得意とする旧システムプロの情報システムサービス事業と金融機関の基幹業務アプリケーションの開発や基盤システムの構築に強みを持つ旧カテナ(株)のシステム開発事業を統合。オープン系技術と金融分野の業務知識及び基盤系技術を融合した事業展開により新たな領域の開拓を進めていく考え。
 
ITサービス事業(旧カテナのITサービス事業)・ソリューション営業(旧カテナのソリューション営業事業)
システム運用、データ入力、及びエンドユーザサポート等のITサービスと、ITプロダクト(サーバ、PC、周辺機器、ソフトウェア)の販売やシステムインテグレーションを手掛けるソリューション営業は共に旧カテナの事業。今後は、両事業が一体となって営業展開を進め、他の事業とも連携しながら、「所有するから利用する(クラウド等)へのニーズの変化」に対応する事で事業の拡大と高付加価値化を図る。
 
エアー・クラウド推進事業(新規事業)
ユビキタス社会の中で生産性を飛躍的に向上させるシステムとして同社が起案したエアー・シンクライアント・サービスを展開していく。同サービスは、スマートフォン等のユビキタス端末と移動体通信網でクラウドシステムを構築しリアルタイムの相互データ通信を実現する。旧システムプロが強みとする移動体通信のノウハウと、旧カテナが営業展開するクラウドコンピューティングのシステムインテグレーションを融合させ事業を進めていく。
 
 
2011年3月期上期決算
 
 
前年同期比2.5%の増収、同10.7%の経常増益
売上高は192.0億円とほぼ期初予想に沿った着地。価格競争の激化でIT関連商品の法人向け販売を手掛けるソリューション営業が苦戦したものの、次世代プラットフォーム関連やAndroid(米グーグルが提供する携帯端末向けOS)関連の案件増でモバイル高速データ通信事業の売上が期初予想を大きく上回った他、ITサービス事業も官公庁等からの受注等で上振れ。大手損保会社向け大型案件の寄与やインターネット向けシステム開発の底打ちで情報システム事業も厳しい事業環境の中で堅調に推移した。
利益面では、収益性の高いモバイル高速データ通信事業の好調に加え、構造改革による生産性の向上や販売管理費の改善が進み営業利益が9.9億円と期初予想を超過。受取賃料等の計上等で経常利益は10.4億円。固定資産除却損や特別退職金など特別損失1.0億円を計上したものの、子会社株式の段階取得に伴う差益2.8億円など特別利益2.9億円を計上した他、税負担が軽微であった事もあり、四半期純利益は10.8億円となった。
 
 
モバイル高速データ通信事業
携帯電話の豊富な開発実績に加え、他社に先行して取り組んできたAndroidの開発ノウハウの蓄積や実績も評価され、スマートフォン市場への積極的展開を進めている主要顧客からの受注が増加。主要顧客が業界再編の主導権をとった事もあり、同社グループのシェアが大きく上昇した。
 
情報システム事業
銀行、生損保等を顧客とする金融機関向けのソフトウェア開発は、大手損保会社の統合等の大型案件が動き出したものの、赤字プロジェクトが響き期初の予想を下回った。一方、インターネット向けシステム開発は大手ポータルサイト運営会社のシステム投資の増加や電子書籍市場の拡大を背景に堅調に推移した。尚、金融機関向けのソフトウェア開発については、その後のリカバリーと原価管理の徹底により収益性は急激に改善しつつある。
 
ITサービス事業
顧客からの単価ダウン要請の強まりで厳しい受注環境が続いたものの、官公庁関連の特需で売上高は期初予想を上回った。顧客の情報システム部門を中心にアウトソーシング需要の掘り起こしや比較的立ち直りの早い外資系ユーザーの需要取り込みに努めると共に、事業の選択と集中、組織のフラット化、最適な人員配置等の構造改革も進めた。
 
ソリューション営業
取り扱い商材を選別し、より付加価値の高い商材への特化を進めた事で売上高が期初予想を下回ったものの、全ての商品とサービスを絡めたソリューション営業が成果をあげ、主要顧客である大手電機メーカーや外資系企業からの受注が回復基調に転じている。
 
上記の他、携帯電話やスマートフォンなどの携帯端末を利用したクラウド型サービスの育成を目指すエアー・クラウド推進事業やグループ社員や家族を対象にした損害保険代理店及び車両運転業務の請負やレンタカー等のコンシューマサービス事業を手掛けている。前者においては「Google Apps」の販売ノウハウの蓄積に取り組んでおり、後者においては外販による外部需要の取り込みを図るべく損害保険代理店契約及び研修、車両の仕入れ等、立ち上げ準備を進めている。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
上期末の総資産は270.3億円。カテナとの合併に伴い前期末比186.1億円増加した。合併に伴い、投資その他において、投資有価証券が41.2億円から3.6億円に減少する一方、繰延税金資産が0.1億円から48億円に増加した。この結果、流動資産計上分も含めた繰延税金資産全体では約60億円増加しており、節税効果があるため今期以降のキャッシュ・フローの改善に大きく寄与する。また、土地・建物の時価評価に伴う評価替えもあり有形固定資産が約40億円増加したが、今後、土地・建物を売却し有利子負債の削減を進めていく考え。この他、無形固定資産の増加は、合併に伴うのれんの増加によるもの。
一方、貸方では、純資産が大幅に増加する一方、有利子負債も約64億円増加した。ただ、有利子負債については合併後の6ヶ月間で10億円減少しており、今後、資産の売却等で更なる圧縮を進める。

CFの面では、事務所移転等に伴う有形・無形固定資産の取得や差入保証金等で投資CFが2.6億円のマイナスとなったものの、15億円の営業CFを確保した結果、フリーCFの黒字を維持。有利子負債の削減により財務CFが19.3億円のマイナスとなったものの、現金及び現金同等物の上期末残高は51.7億円と前期末比34.8億円増加した。
 
 
 
2011年3月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更は無く、売上高426.0億円、経常利益24.2億円
引き続きモバイル高速データ通信事業の好調を見込んでいるものの、海外景気の下振れ懸念や長期化する円高等、景気動向に不透明感が増しているとして通期業績予想を据え置いた。プロジェクト管理の強化により採算の向上を図る一方、スマートフォン向けアバターゲームポータルサイトの立ち上げなど先行投資も継続する考え。11月下旬に同サイトの企画運営を行う子会社(株)GaYaの設立を計画している。配当は1株当たり合併記念配当200円を含む年2,600円(上期末、期末共に合併記念配当100円を含む1300円)を予定。
 
 
 
中期経営計画(11/3期~13/3期)
 
 
利益率を重視したビジネスモデルを強化する事で、13/3期に売上高約530億円、営業利益約39億円の達成を目指している。事業別の取り組みは次の通り。
 
(1)モバイル高速データ通信事業
ユビキタス社会の到来を見据えて(2015年にはLTE等の次世代通信が普及期に入ると見られている)、次世代端末や次世代スマートフォンの開発支援に積極的に取り組むと共に、無線通信の標準装備が想定される家電や自動車等の非携帯分野での開発支援にも力を入れていく。また、Android関連のノウハウを活かした自社企画製品(モジュールを含む)の開発と販売及びOEM供給、更にはエアー・シンクライアントを活用したサービスやアプリケーション等、新しい分野への展開も計画している。
 
 
(2)情報システム事業
グローバル競争の中での勝ち残りを目指し、収益構造改革を推進する。その柱となるのが、外注費比率の引き下げ、原価管理の徹底、契約条件の厳密な精査、及びプロジェクトマネジメント力の向上の4項目で、今上期に4.7%(通期目標7.0%)だった営業利益率を中期経営計画期間内に10%超に引き上げる。
 
(3)ITサービス事業及びソリューション営業
卸売業・人材派遣業から脱皮しIT関連の総合付加価値創造業への転換を図るべく、収益構造改革、組織構造改革、及び営業力の改革に取り組む。
 
 
上記の施策により、上期に2.2%(通期目標4.4%)だったITサービス事業の営業利益率を中期経営計画期間内に10%超に、上期に△0.1%(通期目標1.4%)だったソリューション営業の営業利益率を4%超(IT系卸売業同業他社平均2.5%)に、それぞれ引き上げる。
 
(4)エアー・クラウド推進事業
エアーの時代を見越した先行投資によるノウハウの蓄積に努め、13/3期に売上高5億円、16/3期に売上高20億円の達成を目指している。
 
 
(5)管理部門の強化及び財務の健全化
クラウドの活用、業務統合、及び収益管理の徹底により管理部門の強化に取り組むと共に財務の健全化を進める考えで、中期経営計画期間内に自己資本比率60%、総資本回転率1.8回転、配当性向40%の達成を目指している。
 
 
取材を終えて
スマートフォン市場が急拡大しており、移動体通信キャリア各社はスマートフォンユーザーの獲得に向けAndroidを搭載したスマートフォンの開発を活発化している。このため、未だ立ち上げから1年半が経過したに過ぎないAndroid端末が、現在、端末開発全体の42%を占めていると言う。しかし、割賦販売の浸透やリーマンショック後の個人消費の落ち込み等による端末需要の減少で、同社のライバルの多くが脱落していった。こうした中でのスマートフォン市場の急拡大である。同社は残存者利益を享受し受注が拡大、Android関連の技術とノウハウの蓄積が進んだ。ちなみに、業界再編で同社の主要顧客が主導権をとった事もあり、同社のシェアは多くの顧客内でN0.1となっているようだ。しかし、好材料はそれだけではない。マイクロソフト社のWindows 7 Phoneやドコモ社のLTE初号機等が近々発売される予定であり(iPhoneのヒットがスマートフォン市場拡大の契機となったように)、1~2年後にはLTE特需も期待できるからだ。このため、中期的なモバイル高速データ通信事業の見通しは明るい。
一方課題は、情報システム事業、ITサービス事業、及びソリューション営業といった旧カテナの事業の収益構造改革とエアー・クラウド推進事業の育成だ。モバイル高速データ通信事業が好調を持続している間に、収益構造改革を完了し、エアー・クラウド推進事業で一定の成果をあげておく必要がある。