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ブリッジレポート:(4709)インフォメーション・ディベロプメント vol.34

(4709:JASDAQ) インフォメーション・ディベロプメント 企業HP
舩越 真樹 社長
舩越 真樹 社長

【ブリッジレポート vol.34】2011年3月期上期業績レポート
取材概要「通期の業績予想に変更はなかったものの、足下の厳しい事業環境を考えると、同社の業績が下期偏重型である事を踏まえても、その達成は予断を許さ・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年11月24日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社インフォメーション・ディベロプメント
社長
舩越 真樹
所在地
東京都千代田区二番町 7-5
決算期
3月
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年3月 17,263 850 864 155
2009年3月 18,458 1,057 1,109 563
2008年3月 18,032 1,200 1,191 594
2007年3月 14,692 1,024 1,024 550
2006年3月 13,028 851 845 430
2005年3月 11,378 550 557 119
2004年3月 11,203 625 628 203
2003年3月 11,668 598 591 274
2002年3月 11,081 548 546 272
2001年3月 9,738 756 735 242
2000年3月 8,468 640 586 320
株式情報(11/5現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
564円 7,428,020株 4,189百万円 2.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
19.00円 3.4% 74.04円 7.6倍 781.06円 0.7倍
※株価は11/5終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
インフォメーション・ディベロプメントの2011年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
金融向けITアウトソーシング業務に強みを持つ独立系の情報サービス会社。優良顧客との継続的な取引を特徴としており、好不況の波の大きいIT業界にあって、相対的に安定した収益基盤を有する。事業は、システム運営管理、ソフトウェア開発・保守、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)、その他に分かれ、各事業の概要は次の通り。
 
システム運営管理(ITO)
1,000名規模の技術者を擁する専門部隊が、ミドルウェアのカスタマイズからハードウェアの保守、24時間体制のオペレーションまで、トータルかつ高付加価値のアウトソーシングを実現している。
ソフトウェア開発・保守(SI)
「独立系SE集団」として、特定のマシン、OS、ツール、開発言語にとらわれず、顧客の開発ニーズに合わせたシステム構築をサポート。大型汎用機から携帯端末まで、金融、公共、サービス分野を中心に豊富な実績を誇る。
ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)
金融機関等へ「データ入力」、「バックオフィス」、「ヘルプデスク」、「要員派遣」、「デジタルソリューション」などのサービスを提供している。
その他
セキュリティ&コンサルティングを中心に展開している。「セキュリティ・マネジメント」、「外部からの攻撃対策」、「内部不正への対策」の3つの側面から企業をサポート。世界の大手ベンダーと提携し、各種セキュリティ製品の提供からコンサルティング、セキュリティ環境の構築・導入・運用・サポートまで一貫したサービスを提供している。
 
 
 
2011年3月期上期決算
 
 
前年同期比6.8%の減収、同6.5%の経常減益
売上高は前年同期比6.8%減の80.4億円。主力のシステム運営管理事業は前年同期並みの売上を確保したものの、ソフトウェア開発・保守事業が苦戦した他、ビジネスプロセスアウトソーシング(以下、BPO)事業もデータ入力における大口案件の終了や新規受注の伸び悩みで大きく落ち込んだ。利益面では、工程管理の徹底及び業務の効率化による労務費の削減(1.7億円)や外注費の圧縮(1.9億円)等で売上総利益率が改善する一方、のれん償却額の減少で販管費が減少したものの、減収による影響をカバーできず営業利益が4.1億円と同15.0%減少した。ただ、子会社による雇用調整助成金収入(19百万円)の計上や保険解約返戻金(14百万円)の計上で営業外損益が改善。投資有価証券評価損の減少(△22百万円)等で特別損益も改善し、四半期純利益は同3.6%増加した。
 
(2)セグメント別動向
システム運営管理事業は顧客からの値下げ要請が一部に見られたものの(前期に比べて落ち着きつつある)、潜在ニーズの発掘及び付加価値サービスへの転換により、ほぼ前年同期並みの売上を確保した。一方、ソフトウェア開発・保守事業は農林系金融機関向けが伸びた他、電力・ガスなどエネルギー分野も堅調に推移したものの、主力の銀行・生損保向けの落ち込みをカバーできなかった。この他、電子化に伴うレセプト入力及び株券の入力業務の終了事が響きBPO事業の売上が大きく落ち込む一方、セキュリティ業務を中心にその他の売上が増加した。尚、BPO事業では、上記大口案件の業務終了を受けて12月末に受託入力業務から撤退する考えで、今後はヘルプデスクや事務代行等に経営資源を集中。
契約形態別売上高構成では、エンドユーザーとの直接契約が82.4%となり前年同期比0.5ポイント低下した。
 
 
 
大口案件の受注でシィ・エイ・ティが黒字転換した他、農林系金融機関向けの好調で厳しい事業環境の中、日本カルチャソフトサービスも健闘した。一方、開発案件の減少でソフトウエア・ディベロプメントの赤字幅が拡大した他、開発案件の減少に伴うコンサルの減少でプライドの赤字幅も拡大した。尚、ソフトウエア・ディベロプメントは雇用調整助成金収入(19百万円)の計上で経常損益は黒字を確保した。
 
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
上期末の総資産は前期末比7.5億円減の87.0億円。借り方では、売上の減少で売上債権が減少した他、のれん償却や投資有価証券の売却で固定資産が減少。貸方では、未払法人税等や賞与引当金が減少する一方、当面の資金需要に対応するべく短期有利子負債が増加した。CFの面では、有価証券投資やシステム投資等の減少で投資CFが黒字になったものの、役員退職慰労金の支払い(4.0億円)が負担となり営業CFが悪化した。短期借入金の積み増しで財務CFのマイナス幅が縮小し、現金及び現金同等物の上期末残高は16.5億円と前期末比1.0億円の減少にとどまった。
 
 
 
業界動向と同業他社の状況
 
 
経済産業省発表の「特定サービス産業動態統計調査」(10年10月19日発表)によると、情報サービス産業の売上高は、09年6月から10年7月まで14ヶ月連続で減少し、長期にわたりマイナス成長が続いている。直近の10年8月において+1.2%と、わずかながらプラスに転じたものの、最近の円高による影響を受けた輸出産業を中心とする日本企業の停滞感は根強く、企業のIT投資は依然として先行き不透明な状況が続いている。
 
 
前年同期に極端に悪かった一部の企業が増収・増益となっているが、同業他社も総じて厳しい決算を強いられている。
 
 
2011年3月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更はなく、前期比1.4%の増収、同21.5%の経常増益予想
売上高は前期比1.4%増の175億円。ソフトウェア開発・保守事業の苦戦が続く他、BPO事業もデータ入力における大口案件の終了をカバーできず売上が大きく減少するものの、システム運営管理事業及びセキュリティ業務を中心としたその他でカバーする。利益面では、引き続き工程管理の徹底及び業務の効率化に取り組み売上総利益率の改善を図る一方、諸経費の伸びを抑え営業利益10.5億円(同23.4%増)の確保を目指している。配当は1株当たり年19円を予定。
 
(2)成長戦略  i-Bos 24成長戦略
i-Bos 24成長戦略の下、クラウドコンピューティングへの対応、顧客&グローバル展開、及びBOO戦略を推進する。
 
 
クラウドコンピューティング市場の拡大に対応した人材戦略を進める。オペレーションの観点から言うと、クラウドコンピューティングは新しい技術という訳ではなく、新しい概念である。このため、同社にとっては、これまでシステム運営管理で培った技術とノウハウを活かせる分野であり、ビジネス・チャンスの拡大を意味する。オペレーション、データ管理、運営監視、及び運営管理といった自動化・集約化により縮小する業務の人員約500名を再教育し、自動化・集約化により増加する業務・技術、或いはクラウド対応でキーとなる業務・技術へシフトさせる事で総人員の増加を抑えながら戦力の充実を図る考え。
 
②顧客&グローバル展開
プラットフォーム系及びセキュリティサービスの展開により新規顧客の開拓を進めると共に、BOO戦略の継続推進により既存顧客の深耕を図る。また、中国現地法人と技術者の交流や業務ノウハウの共有によりグローバル展開を加速する。具体的には、現地の有力ベンダーとの協業・提携により、中国全土におけるサービスネットワークを構築し、既存顧客の中国進出をITの面からサポートしていく。
 
 
(株)プライドのコンサルティングやID武漢のオフショア等、グループの経営資源をフルに活用してBOO戦略を推進し既存顧客の深耕を図る。尚、BOO(ビジネス・オペレーションズ・アウトソーシング)とは、川上から川下まで一括サービスを提供する事(一顧客複数取引)。
 
 
取材を終えて
通期の業績予想に変更はなかったものの、足下の厳しい事業環境を考えると、同社の業績が下期偏重型である事を踏まえても、その達成は予断を許さない。もっとも、厳しいのは同社に限ったことではなく、同業他社も苦戦が目立つ。しかし、中期的には、既存サービスのクロスセルによる優れた顧客資産の有効活用、システム運営管理で培った技術とノウハウを活かしたクラウドコンピューティングへの展開、更には体制整備が進む中国拠点の活用による新たな需要の開拓等、成長のための材料は豊富だ。目先的な業績の振れよりも、上記施策の進捗状況に注目したい。