ブリッジレポート
(8931) 和田興産株式会社

スタンダード

ブリッジレポート:(8931)和田興産 vol.11

(8931:JASDAQ) 和田興産 企業HP
和田 憲昌 会長
和田 憲昌 会長
小阪 堅三 社長
小阪 堅三 社長
【ブリッジレポート vol.11】2011年2月期上期業績レポート
取材概要「主力の分譲マンションが好調だ。優遇税制(住宅資金の贈与について、非課税枠が10年に限り、通常の500万円から1,500万円に拡大)効果もあるの・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年11月2日掲載
企業基本情報
企業名
和田興産株式会社
会長
和田 憲昌
社長
小阪 堅三
所在地
〒650-0023 神戸市中央区栄町通4-2-13
決算期
2月 末日
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年2月 29,890 573 -370 -226
2009年2月 32,333 2,577 1,548 118
2008年2月 29,564 4,020 3,063 1,613
2007年2月 30,629 3,318 2,736 1,357
2006年2月 25,256 2,769 2,366 1,292
2005年2月 22,965 2,594 2,203 1,162
2004年2月 23,723 2,226 1,689 912
2003年2月 22,080 2,100 1,499 652
2002年2月 22,630 2,296 1,846 917
2001年2月 22,926 3,399 2,941 1,315
株式情報(10/19現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
262円 9,999,901株 2,620百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
10.00円 3.8% 30.00円 8.7倍 1,316.00円 0.2倍
※株価は10/19終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
和田興産の2011年2月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
明治32年創業の老舗不動産会社。全てのステークホルダーとの共存共栄を目指す「共生(ともいき)」を企業理念とする。兵庫県神戸市を主要地盤に、明石市、芦屋市、西宮市、尼崎市で、マンション分譲を中心に、不動産賃貸、土地有効活用等のソリューション、及び木造戸建分譲等を手掛けており、「ワコーレ」ブランドで展開するマンション分譲は30~40戸の中規模マンションが中心。神戸市内では、9年連続で「供給戸数」第1位、12年連続で「供給棟数」第1位の実績を誇り、2010年8月末現在の累積供給実績は11,848戸。事業はマンション分譲を中心とする不動産販売事業と、住居、店舗、事務所、駐車場(月極・時間駐車)等の賃貸を中心とする賃貸その他事業に分かれ、10/2期は、不動産販売事業が売上高の91.4%を、売上総利益の65.1%を占めた。
 
 
ブランド力  兵庫県神戸市を中心にした明石~尼崎間において、「ワコーレ」
       ブランドの高い認知度
価格競争力  常設ギャラリーは内装の変更で繰り返し利用が可能なため、物件
       毎に新設の必要なし
 
 
 
2011年2月期上期決算
 
 
賃貸マンションの売却前倒しで期初予想を大幅に超過
第3四半期以降を想定していた大型賃貸マンション2棟の売却(その他不動産販売に含まれる)が前倒しで進んだ事や業績予想に織り込んでいなかった戸建用地の売却もあり、売上及び営業利益が予想を超過。一方、当初想定していた金融費用(シンジケートローンの組成費用)の計上が第3四半期以降となったため営業外損益が改善し、700百万円を見込んでいた経常損失が44百万円にとどまった。
前年同期との比較では、分譲マンションの引渡(売上計上)減少が響き減収となったが、11/2期は分譲マンションの引渡しが第4四半期に集中するため想定の範囲内。今後の売上につながる販売(契約)は分譲マンション、戸建住宅共に順調に進み、特に分譲マンションの契約は期初計画を約200戸上回った。利益面では、価格の見直しも含めて在庫圧縮を優先した分譲マンションの売上総利益率が悪化したものの、その他不動産販売や賃貸その他事業の売上総利益率改善でカバーした。尚、完成在庫はULタワーを除き、第1四半期までに完売。ULタワーの販売も計画通りに進捗している。
 
 
 
不動産販売事業
売上高は前年同期比19.2%減の10,626百万円、売上総利益は同20.8%減の1,105百万円。このうち分譲マンションは、売上高が同34.5%減の6,022百万円、売上総利益は同61.3%減の371百万円。新規竣工物件が1棟にとどまり、引渡戸数が188戸と同29.6%減少したため売上が減少。価格の見直しも含めて在庫圧縮を優先したため、売上総利益率が6.2%と4.2ポイント悪化した。一方、供給(発売)及び販売(契約)は順調に推移し、発売戸数は同92.6%増の549戸、契約戸数は同60.1%増の498戸。この結果、受注残戸数は同91.3%増の440戸と、順調に受注残が積み上がった。
その他の不動産販売では戸建住宅33戸及び1棟売りマンション等9物件を販売。売上高が4,604百万円と同16.5%増加すると共に売上総利益率が15.9%と4.8ポイント改善。この結果、売上総利益が733百万円と同67.7%増加した。このうち、戸建住宅は売上高1,384百万円、売上総利益204百万円、売上総利益率14.7%。
 
賃貸その他事業
売上高は前年同期比0.6%減の1,292百万円、売上総利益は同3.8%増の624百万円。主力の賃貸事業において、3物件を売却(89戸、売却額1,870百万円、売却益281百万円)した他、需要低迷で店舗・事務所の賃料水準が弱含みで推移したものの、駐車場が伸びた他、入居率の向上と滞納率の改善に取り組んだ住居が堅調に推移した。
 
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
上期末の総資産は前期末比5,258百万円減の47,990百万円。販売用不動産が分譲マンション(6,136百万円→1,656百万円)を中心に半減する一方、地価下落時の積極的な仕入により仕掛販売用不動産が分譲マンション(7,362百万円→11,816百万円)を中心に増加。たな卸資産の入れ替えが進み資産の健全化が進む中、分譲マンションの引渡しに伴い回収された現預金を仕入債務及び有利子負債の返済に充てた。CFの面では、損益の悪化と仕入債務の減少で営業CFの黒字が減少した上、有形固定資産の売却の減少で投資CFもマイナスとなったためフリーCFは大幅に減少したものの、673百万円の黒字を確保。有利子負債の減少幅が前年同期ほどではなかったため財務CFのマイナス幅が縮小したものの、フリーCFの減少をカバーするには至らず、現金及び現金同等物の上期末残高は2,315百万円と前期末比1,208百万円減少した(前年同期ではわずかな減少にとどまった)。
 
 
 
2011年2月期業績予想
 
 
前期比6.3%の減収ながら、営業利益が3倍に拡大、経常損益及び当期純損益が黒字転換
販売(契約)好調な分譲マンションの引渡し戸数を約30戸程度上積みする一方、現在の市況に鑑みて当初見込んでいた一棟卸マンションの売却を見送る事とした。売上高は前期比減収が避けられないが、期初予想をわずかに上回る見込み。利益面では、高コスト物件の販売が一巡する分譲マンションを中心に売上総利益率が大幅に改善する一方、販売好調による販促費用の減少や人件費を含めた経費の圧縮により販管費はほぼ前期並みにとどまり、営業利益が同3倍に拡大。経常損益及び当期純損益については黒字転換が見込まれる。配当は1株当たり5円増配の10円を予定。
 
 
不動産販売事業
売上高は前期比6.4%減の25,550百万円を予定。分譲マンションにおける引渡戸数等の通期計画は下記の通り。650戸を計画している契約戸数については既に596戸の契約を終えており、販売好調を受けて来期発売予定物件の販売を来期発売予定物件の大半を12月末までに前倒し販売する。また、今期の竣工は15棟、480戸だが、このうち411戸(竣工戸数の85.6%)が既に契約済で、今期の竣工物件については期末までに完売の予定。ULタワーについても、直近の在庫は25戸に減少しており、価格の見直し(評価損は計上済)もあり今期中に完売できる見通し。利益面では、下期以降の引渡(売上)物件はリーマン・ショック以降に仕入れた物件の販売が中心となるため、18%~21%の粗利率を確保できる見込みである上、販売好調による販促費負担の軽減や複数物件を1つのマンションギャラリーに集約して販売する等の効率化効果も見込まれる。
 
 
戸建住宅では、契約・引渡50戸(上期実績33戸)、売上高2,131百万円(同1,384百万円)、売上総利益270百万円(同204百万円)を予定。このうち、今期の戸建住宅の中心となるワコーレノイエ須磨名谷は契約・引渡39戸(同21戸)、売上高1,970百万円(同1,035百万円)、売上総利益237百万円(同139百万円)。
 
賃貸その他事業
物件の入れ替えの影響等で売上高が2,450百万円と同5.2%減少が見込まれる。引き続き築年数など考慮して物件の入れ替えを進めつつ、稼働率の維持向上に努める考えで、早期にカバー率〔(人件費等+支払利息)/売上総利益〕100%を目指している。
 
 
 
 
取材を終えて
主力の分譲マンションが好調だ。優遇税制(住宅資金の贈与について、非課税枠が10年に限り、通常の500万円から1,500万円に拡大)効果もあるのだが、それ以上に大きいのが、リーマン・ショック後の急激な需要の落ち込みの反動や販売価格の調整による需要喚起であり、加えて、同社の場合、競合する中堅・中小のマンションデベロッパーの淘汰や資金調達難も販売好調の要因として挙げる事ができる。例えば、同社は地価下落を反映して価格の見直しを行った結果、平均販売価格が前期の3,445万円から3,068万円に低下した。不動産の取得時には租税公課やローンに関連する費用等、様々な費用が発生するが、400万円近く価格が下がると、これらの費用を負担しておつりが来る。上期は地価高騰時に仕入れた物件の引渡しが中心だったため、価格見直しの影響で売上総利益率が悪化したものの、下期以降は本来の収益力を取り戻す。
また、同社が事業エリアとする神戸市等はまとまった用地の供給が少なく大型マンション開発が難しいため、大規模開発を好む大手不動産デベロッパーは敬遠しがちで、土地の取得等での競合は中堅・中小のデベロッパーが多かった。しかし、リーマン・ショック後の不況で淘汰が進み、また、営業を続けている企業も事業資金の調達で苦戦する状態が続いている。このため、同社は仕入も順調に進んでおり、既に来期分の物件手当ては完了し、現在、再来期分の仕入を進めている。来期発売予定物件については、12月末までには大半が前倒し販売し、今期末までには来期引渡分の5割程度の契約を済ませたい考え。
以上、優遇税制が無くなる来期以降の業績についても不安は少なく、加えて、棚卸資産の入れ替えが進んでいるため収益性改善も進む。今期は1株当たり5円の増配を予定しているが、収益の回復を受けて来期以降は更なる増配も期待でき、株価の割安感が一段と強まろう。