ブリッジレポート
(6498) 株式会社キッツ

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ブリッジレポート:(6498)キッツ vol.2

(6498:東証1部) キッツ 企業HP
堀田 康之 社長
堀田 康之 社長

【ブリッジレポート vol.2】2011年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「受注が09年の年央を底に回復傾向にあり、売上も同年秋に底打ちした。この流れは今も続いており、今期は増収に転じる見込みだが、原材料価格の・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年8月24日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キッツ
社長
堀田 康之
所在地
千葉市美浜区中瀬1-10-1
決算期
3月末日
業種
機械(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年3月 96,592 6,976 6,248 3,079
2009年3月 127,095 7,188 6,475 3,396
2008年3月 149,274 11,615 10,525 6,290
2007年3月 149,512 11,342 10,652 9,973
2006年3月 107,631 9,673 9,132 8,070
2005年3月 95,705 9,627 8,513 5,804
2004年3月 73,802 4,181 2,962 1,598
株式情報(8/10現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
398円 113,062,408株 44,999百万円 6.0% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
7.00円 1.8% 27.41円 14.5倍 463.63円 0.9倍
※株価は8/10終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
キッツの2011年3月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
バルブを中心とした流体制御機器・装置の総合メーカー。バルブは、「水道メータ周り」、「ガスメータ周り」、「給湯器」等でよく目にするが、家庭だけでなく、あらゆる産業設備に使われており、同社は素材からの一貫生産を基本に、青銅、鋳鉄、ダクタイル、ステンレス鋼等を素材に数万種をラインナップしている。また、バルブの部材として使用される伸銅品の外販を行っている他、フィットネス事業やホテル事業等も手掛けている。東洋バルヴ(株)、(株)清水合金製作所など連結子会社31社と共にグループを形成しており、海外売上高比率は20.9%。バルブでは国内トップ。伸銅品では国内2位のポジションにある。
 
<事業セグメントの概要>
事業は、バルブ事業、伸銅品事業、及びサービスその他の事業に分かれ、10/3期の売上構成比は、それぞれ73.1%、16.8%、10.1%。
 
バルブ事業
キッツグループのコア事業であり、上下水道・給湯・ガス・空調等のライフラインや石油・化学・紙パ・半導体等の産業分野において、流体制御機器として重要な役割を担うバルブや継手を中心に、製造・販売している。
伸銅品事業
伸銅品とは、銅に亜鉛を加えた「黄銅」、すず及びりんを加えた「りん青銅」、ニッケル及び亜鉛を加えた「洋白」等の銅合金を、溶解、鋳造、圧延、引抜き、鍛造等の熱間または冷間の塑性加工によって、板、条、管、棒、線等の形状に加工した製品の総称。キッツグループの伸銅品事業は、黄銅製の材料を用いた「黄銅棒」を生産販売している。この黄銅棒は、バルブの部材を初め、水栓金具、ガス機器、家電などの部材として使用されている。
その他
総合スポーツクラブの経営(フィットネス事業)、ホテル・レストラン経営(ホテル事業)、及びガラス工芸品の販売を行っている。
 
 
 
2011年3月期第1四半期決算
 
 
前年同期比14.0%の増収、同4.8%の経常増益
連結売上高は前年同期比14.0%増の248億30百万円。主力のバルブ事業の売上が国内外で増加した他、伸銅品事業の売上も数量の回復に加え銅相場高騰が追い風となり大きく伸びた。ただ、バルブ事業における銅、鉄スクラップ、ニッケル等の原材料高や売価政策による単価の低下に加え、低価法による評価減等もあり売上総利益率が悪化。子会社の増加に伴う販管費の増加をカバーできず営業利益は10億86百万円と同2.5%減少した。有利子負債の削減による支払利息の減少等で経常利益が10億28百万円と同4.8%増加したものの、資産除去債務に関する会計基準の適用に伴う影響額3億93百万円など特別損失4億11百万円を計上したため、四半期純利益は2億99百万円と同4.0%減少した。

為替レートは、1ドル=90.74円(前期通期実績93.71円)、1ユーロ=123.67円(同130.51円)。電気銅建値は693,333円/トン(同620,000円/トン)。

主要子会社では、建築設備向けの回復で東洋バルヴの売上・利益が増加した他、半導体製造設備向けを手掛けるキッツエスシーティーが売上の急増で損益が大幅に改善。一方、水道局向けの減少で清水合金製作所の売上が減少した他、原材料高で青黄銅バルブなどを手掛けるキッツタイが増収ながら減益。稼働率の低下で石油精製・石油化学向け鋳鋼バルブを手掛けるキッツ閥門(中国・昆山)も売上・利益が減少。また、前期に買収したドイツ子会社Perrin GmbH(ペリン社)も利益計上には至らなかった。
 
 
バルブ事業
売上高は前年同期比9.0%増の174億92百万円。このうち国内は同6%増の123億円。石油・ガス関連や水道局向け、及び工業関連(一般化学、食品、製紙等)が減少したものの、建築設備向け、機械装置向け、及び半導体製造設備向けが増加した。海外は同16%増の52億円。北米が落ち込んだものの、タイ・インドネシアを中心にアジアが伸びた。欧州は市場の低迷が続いたものの、Perrin GmbHの寄与で売上が増加した。利益面では、原材料高、売価政策による単価の低下、低価法による評価減、更には前期に受注した低採算案件の一部売上計上等でセグメント利益が15億92百万円と同4.6%減少した。
 
伸銅品事業
キッツメタルワークスが手掛ける伸銅品事業は、需要増による販売量の増加(黄銅棒市場全体で前年同期比42%増)及び販売価格の上昇により売上高が49億57百万円と前年同期比46.2%増加。売上の増加と生産統合による稼働率の大幅な改善により、セグメント利益は1億72百万円と同27.8%増加した。
 
その他(前年同期のセグメント名称は「サービスその他の事業」)
売上高は前年同期比1.0%増の23億80百万円。政策効果(高速道路料金の土日一律1,000円)の剥落などでホテル事業(ホテル紅や)の売上が92百万円減少したものの、前期に開設した新店舗の寄与によるフィットネス事業の売上増(175百万円増)で吸収した。売上の増加とフィットネス事業における新店舗開設費用の一巡でセグメント利益は23百万円と同173.8%増加した。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
第1四半期の総資産は前期末比21億61百万円減の953億72百万円。有利子負債の削減に伴う現預金の減少が主な要因。CFの面では売上の増加に伴う運転資金の増加で営業CFが減少。投資CFは設備投資を中心に前年同期並みにとどまったため、フリーCFも営業CFとほぼ同額減少した。有利子負債の削減を進めたため、財務CFもマイナスとなり、現金及び現金同等物の四半期末残高は79億19百万円と前期末比18億26百万円減少した。
 
 
 
2011年3月期業績予想
 
上期及び通期業績予想に変更は無い。国内は建築設備向けの回復が続く他、半導体製造設備向けも好調を維持する見込み。海外は欧米での苦戦が続くものの、アジア向けや中東向け(ドバイを除く)の伸びが見込まれる。
また、第1四半期に収益が悪化した石油精製・石油化学向け鋳鋼バルブ(子会社 キッツ閥門)の改善も見込まれる。キッツ閥門は、第2四半期以降、採算が改善する他、受注の回復に伴う販売数量の増加で量産効果も顕在化する見込み。

通期では、1ドル=90円、1ユーロ=130円、電気銅建値65万円/トンを前提に、連結売上高1,050億円(前期比8.7%増)、営業利益69億円(同1.1%減)、経常利益62億50百万円(0.0%増)、当期純利益31億円(同0.7%増)を見込んでおり、1株当たり7円(上期末3年、期末4円)の配当を予定している。
 
 
 
中国市場の販売戦略
 
第1四半期決算説明会(スモールミーティング)において、第1四半期実績ベースで売上構成比が2%強にとどまる中国市場での今後の販売戦略について、次のような説明があった。
 
 
 
(注)
中級汎用バルブ市場向けは、中国メーカーのM&Aや生産委託による収益化を考えているため、現時点では、2012年度までの収益計上を考えていない。また、大型プラント市場向けの売上はこの計画に含めていない。
 
現在、高品質汎用バルブを中心に事業を展開しているが、今後、高品質汎用バルブの強化と並行して中級汎用バルブ市場向けを強化(ターゲット市場の拡大)していく考えで、「高品質汎用バルブ市場において中国No.1ブランドを目指すと共に、中級汎用バルブ市場において存在感ある収益を創出する」としている。また、汎用品以外では、工業用自動操作バルブ市場向けを拡大させていく考え。

中級汎用バルブ強化の一環として、中国国内のグループ会社の再編を進め、製品ラインナップの拡充と生産量の引き上げを図る他、M&Aや生産委託にも柔軟に対応していく考え。この他、現地販売会社の人材増強と代理店網の整備を進め、販売力を強化する。今期の主な施策としては、「現地販売会社の人員増強(2010年9月までに10名増員し27名体制とする)」と「代理店網の整備(2010年末までに11社から21社に拡大させる)」を挙げている。
 
・ターゲット市場の拡大
 
現在、ビル設備市場では高層ビルや高級ホテル向けを中心としており、一般工場や食品・化学市場では外資工場向けが中心だが、今後、ビル設備市場において中低層ビル向けにターゲットを広げると共に、一般工場や食品・化学市場では現地資本工場向けにも取り組む。
 
・工業用自動操作バルブの拡販
工業用自動操作バルブは、産業機械、水処理、食品、化学、石炭化学、石油化学等の幅広い分野で使われている。顧客開拓に向け、中国ステンレス工場を活用し競争力を強化すると共に、代理店の自動弁取り付け対応により利便性を高める他、ペリン社(独Perrin GmbH)製品も投入し製品ラインナップの拡充を図る。
 
 
取材を終えて
受注が09年の年央を底に回復傾向にあり、売上も同年秋に底打ちした。この流れは今も続いており、今期は増収に転じる見込みだが、原材料価格の上昇や製品価格の低下が利益を圧迫する他、買収した子会社(固定費の増加要因)のテコ入れもあり売上の増加が利益の増加に反映されない。しかし、固定費の増加が今期でほぼ一巡する事から、来期以降は、原材料価格上昇や製品価格低下が続いたとしても、それが急激なものでない限り、数量効果で吸収できる見込みだ。
業績の底打ちは実感できるものの、今期のように「増収ながら、利益横ばい」では投資家に対する訴求力に欠ける。来期は増収・増益決算でスッキリしたいところだ。