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(4847) 株式会社インテリジェント ウェイブ

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ブリッジレポート:(4847)インテリジェント ウェイブ vol.5

(4847:JASDAQ) インテリジェント ウェイブ 企業HP
山本 祥之 社長
山本 祥之 社長

【ブリッジレポート vol.5】2010年6月期業績レポート
取材概要「売上高が1兆5,000億円を超える大日本印刷(株)の顧客資産は膨大であり、この4月に大日本印刷(株)グループ入りした事で同社のフィールドは・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年8月24日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社インテリジェント ウェイブ
代表取締役
社長執行役員
山本 祥之
所在地
東京都中央区新川1-21-2 茅場町タワー
決算期
6月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年6月 4,956 358 387 211
2009年6月 5,527 228 235 187
2008年6月 6,695 417 403 -5
2007年6月 6,367 389 407 -295
2006年6月 7,137 1,482 1,452 947
2005年6月 5,174 678 688 264
2004年6月 5,257 371 365 156
2003年6月 5,891 1,177 1,161 539
2002年6月 5,505 1,854 1,846 1,003
株式情報(8/16現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
23,800円 263,400株 6,269百万円 4.8% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
500.00円 2.1% 448.56円 53.1倍 17,626.31円 1.4倍
※株価は8/16終値。
 
インテリジェント ウェイブの2010年6月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
クレジットカードの決済システムに強みを持つソフトウェア開発会社。リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術、システムを止めないためのノンストップ技術、更には高度なセキュリティ技術を技術的な基盤としており、証券関連の情報集配信システムでも豊富な実績を有する他、カード不正利用検知システムや内部情報漏洩対策システム等も手がける。大日本印刷(株)が議決権の50.61%を保有する筆頭株主。子会社は、米国の販売子会社と韓国の開発・販売会社子会社の2社(いずれも連結子会社)。
 
<事業内容>
事業は、カードビジネスのフロント業務、システムソリューション業務、及びセキュリティシステム業務に分かれ、10/6期の売上構成比は、それぞれ48.6%、37.8%、13.6%。
 
カードビジネスのフロント業務
クレジットカード会社、銀行、大手小売業等向けに、自社開発パッケージ「NET+1」をベースにしたカード決済ネットワークシステムの構築を行い、大手クレジットカード会社向けではシェア70%の実績を誇る。
 
システムソリューション業務
証券取引所等から提供される市況データ等を素早く社内の各端末に配信する「市況情報配信システム」、クレジットカード不正利用検知システム「ACE Plus」等の自社製品及び他社製品(海外商品)を用いたシステム構築を行っている。
 
セキュリティシステム業務
自社製品である内部情報漏洩対策システム「CWAT」や「EUC Secure」を中心にセキュリティ関連の製品・サービスを提供しており、親会社である大日本印刷(株)と共にセキュリティ関連の新事業(サービス)の開発も進めている。
 
※カードビジネスのフロント業務の特徴
クレジットカードの利用に際しては、その都度、与信限度額や返済状況の確認作業が行われ、また、キャッシシングの際には口座残高の確認も必要となる。こうした確認作業はネットワークを介してリアルタイムで行われ、特にクレジットカードの場合、世界的なネットワークを介しての作業となる。また、システムが止まるとカードが使えなくなるため、24時間365日システムを止めないための技術やノウハウも必要だ。つまり、同社のビジネスには、リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術、システムを止めないためのノンストップ技術、ノウハウ、そして何よりも顧客となる金融機関等からの信頼性が不可欠なため参入障壁は高い。
また、技術やネットワークの進歩に加え、様々な社会犯罪等への対応で更新需要が絶えず発生しており、振れはあるものの趨勢的に市場の拡大が続いている。
 
 
2010年6月期決算
 
 
プロジェクト管理の徹底で収益性が大幅に改善、減収ながら同64.9%の経常増益
売上高は前期比10.3%減の4,956百万円。クレジットカード会社、証券会社、銀行など主要顧客のシステム投資の低迷でカードビジネスのフロント業務やシステムソリューション業務の売上が減少。製造業向けが中心のセキュリティシステム業務の売上も大きく落ち込んだ。
ただ利益面では効率的なプロジェクト管理の徹底に加え、外注費等の抑制も効き、ソフトウェア開発の利益率が大幅に改善し、期初には減益を予想していた営業利益が前期比56.6%増加した。金融収益の増加や為替差損益の改善(△26百万円→+1百万円)で営業外損益も改善したものの、ソフトウェア臨時償却費43百万円や米国子会社の体制見直しに伴う関係会社事業損失引当金繰入額39百万円など特別損失101百万円を計上したため当期純利益は同12.8%の増加にとどまった。
 
 
 
カードビジネスのフロント業務
売上高は前年同期比6.7%減の2,407 百万円。主要顧客であるクレジットカード会社は厳しい経営環境の中で改正貸金業法及び改正割賦販売法への対応に追われ、フロント業務関連の投資を必要最小限に抑えた。このため、開発案件は、業法対応の他、継続的な開発やシステムの各種変更、機能追加等に限られ、開発に付随して発生するハードウェア販売も大きく落ち込んだ。ただ、低採算の大型案件が無く、これまでの知見を利用して効率的に開発できる案件が中心であった事や変動費・固定費の節減が進んだ事、更には減収の最大の要因が利幅の薄いハードウェア販売であった事もあり、営業利益は887百万円と同年度比17.6%増加した(粗利率が44.9%と9.1ポイント改善)。
 
主なサブセグメントの増減
ソフトウェア開発   1,561百万円 → 1,496百万円
自社開発パッケージ    80百万円 →   83百万円
保守          404百万円 →  405百万円
ハードウェア販売    508百万円 →  368百万円
 
システムソリューション業務
売上高は前期比9.1%減の1,873 百万円。内訳は、証券系事業が823百万円(前期は978百万円)、カード系・その他事業が1,050百万円(同1,082百万円)。ただ利益面では、カードビジネスのフロント業務と同様に知見を利用して効率的に開発できる案件が中心であった事や変動費・固定費の節減が進んだ事で営業利益は354 百万円と同5.4%増加した。
 
主なサブセグメントの増減
ソフトウェア開発   1,382百万円 → 1,115百万円
自社開発パッケージ   208百万円 →  178百万円
保守          235百万円 →  298百万円
ハードウェア販売     14百万円 →  100百万円
 
セキュリティシステム業務
主要顧客である製造業を中心にIT投資が抑制され、売上高が675百万円と前期比23.6%減少、267百万円の営業損失となった(前期は214百万円の営業損失)。
 
主なサブセグメントの増減
ソフトウェア開発    102百万円 →  32百万円
自社開発パッケージ   194百万円 → 152百万円
保守          419百万円 → 396百万円
仕入パッケージ     154百万円 →  87百万円
 
 
 
 
2011年6月期業績予想
 
 
前期比7.5%の増収、同35.4%の経常減益予想
緩やかながら受注は回復傾向にあり、3セグメント全てで増収が見込まれる。ただ、前期にソフトウェア開発が極めて順調だった反動を想定し、営業利益予想を同35.8%減の230百万円にとどめた。
半期ベースでは、上期は前期末の受注残減少の影響で売上が減少し営業損失が拡大する。ただ、改正割賦販売法への対応が年内(同社にとっては上期)に一巡するため、年明け(下期)以降、新たなシステム投資を予定しているクレジットカード会社等は多いようで、足下、下期以降の予算執行を予定している案件の商談が進んでいる。親会社である大日本印刷(株)との協同営業の効果もあり、下期は大幅な売上の増加が見込まれる。配当は1株当たり500円の期末配当を予定。
 
 
 
クレジットカード会社を取り巻く環境は依然として厳しく、カードビジネスのフロント業務の売上は前期と同水準にとどまる見込み。利益面では、前期にソフトウェア開発が極めて順調だった反動を想定し大幅な減益を見込んでいる。システムソリューション業務では、銀行口座不正取引検知システムとしても利用できるクレジットカード不正利用検知システム「ACE Plus」の銀行向け販売や、海外のクレジットカード会社への営業活動を強化する。ただ、利益面では、カードビジネスのフロント業務と同様の理由で減益を予想。セキュリティシステム業務においては、親会社である大日本印刷(株)との協同営業活動によって「CWAT v4.0」及び「EUC Secure」の拡販を図る他、セキュリティ分野の新規事業の開発及び事業化に取り組む。
 
 
中期経営計画
 
 
同社は、創業以来培ってきたネットワーク技術を基盤として、金融業界向けを中心にオンラインシステムのソリューションを提供してきた。特にクレジットカードのオンライン取引を支えるネットワークシステムの構築では高いシェアを有するが、ここ数年は主要顧客であるクレジットカード会社を取り巻く環境が厳しく同社も苦戦を強いられた。今後、親会社である大日本印刷(株)とのシナジーを追及すると共に、自社製パッケージ製品をベースにした事業領域の拡大により成長軌道への回帰を目指す考えで、今回、中期経営計画が策定され、その具体的な方向性が示された。
 
(1)事業環境
引き続き厳しい事業環境が予想されるものの、各業務でビジネスチャンスは少なくない。例えば、カードビジネスのフロント業務では、主要顧客であるクレジットカード会社が、業法改正への対応が一巡する今期後半以降、徐々にフロント業務への投資を再開する見込みで、特に業務運用コストの削減につながる投資には前向きであると言う。また、業績堅調なネット銀行関連で引き合いが活発な他、証券関連も売買の執行速度が各段に高速化した東証及び大証の新システムへの対応で新たなニーズが生まれている。この他、セキュリティシステム業務関連も、単なるツールの販売は競争が激しいが、BPO(セキュリティ関連のアウトソーシング)やSaaS(Software as a Service:ネットワーク経由でのソフトウェアの提供)等との関連で需要が見込める。
 
(2)大日本印刷(株)とのシナジーの追及と自社製パッケージ製品をベースにした事業領域の拡大
①大日本印刷(株)との協業(シナジー)
親会社である大日本印刷(株)との協同営業を強化し、大日本印刷(株)の顧客に同社の製品・サービスの拡販(クロスセールス)を図ると共に印刷周辺のシステム開発の受託につなげる。また、新規事業の育成にも取り組み、11/6期300百万円、12/6期700百万円(うち新規事業230百万円)、13/6期900百万円(同400百万円)の売上を計画している。尚、上記計画の当初の中心となるクロスセールスや受託開発では、当面の計画達成に必要な案件の確保に目処をつけている模様。
 
 
②自社製パッケージ製品をベースにした事業領域の拡大
カードビジネスのフロント業務
システム運用コストの削減に対応するべく、オンライン接続システムとして高い実績をもつ「NET+1」のLinux 対応版を投入する。従来の「NET+1」は特殊なOSや高価な専用ハードが必要だったが、Linux 対応版は汎用のハード・ソフトでシステムの構築が可能なためハードルが低い。金融関連の基幹システムの周辺業務等でのニーズが見込め、これまで「NET+1」が利用されてきた業務以外の分野での需要を開拓していく考え。具体的には、VISA・Masterの決済系業務やATM等の端末管理システムに加え、ポイントシステムや電子マネー関連での採用が期待できる。
 
システムソリューション業務
クレジットカードの不正利用検知システム「ACE Plus」は多くのクレジットカード会社に導入され、国内ではトップシェアを誇るが、昨今、銀行口座の不正利用を監視するシステムとしても実績をあげつつある事から、今後、銀行向けの販売を強化する。また、国内だけでなく、海外のカード会社への販売にも取り組む考えで、海外SIerとの提携によりフォローアップ体制を整備する。この他、親会社である大日本印刷(株)の営業協力を得て、自社製パッケージ製品関連にとどまらず、開発案件全般の受注拡大にも取り組む。
また、証券分野では、海外パッケージのローカライズも含めて証券ソリューション製品のラインアップの拡充を図る考えで、市況情報配信システム、アルゴリズム取引システム、受発注システム等、証券統合パッケージ等の取り扱いを計画している。
 
 
 
セキュリティシステム業務
大日本印刷(株)との協業により新規事業を立ち上げる他、「CWAT」や「EUC Secure」といった既存製品においては、販売パートナーとの協力強化による新規開拓と製品サポート等の顧客サービス強化による製品の信頼性向上で既存顧客からのリピートオーダーの獲得に努める。尚、新規事業は12/6期以降、収益への貢献が始まる見込みで、12/6期230百万円、13/6期400百万円を計画している。
 
 
取材を終えて
売上高が1兆5,000億円を超える大日本印刷(株)の顧客資産は膨大であり、この4月に大日本印刷(株)グループ入りした事で同社のフィールドは格段に広がった。加えて、単に顧客が多いというだけでなく、印刷に関連した周辺システムの開発ニーズが日常茶飯事的に発生している他、大日本印刷(株)はクレジットカード会社や金融機関のBPOも手掛けているため、同社が受注を獲得するための下地も既にできている。このため、大日本印刷(株)が単なる資本提携にとどまらず、50%超の株式取得にまで踏み込んだのもうなずけるところだ。また、カードビジネスのフロント業務における「NET+1」のLinux 対応版の投入やシステムソリューション業務における「ACE Plus」の銀行向け展開も、コスト削減やセキュリティといったニーズの高い分野だけに興味深く、既存の販路を活用して事業拡大が可能な証券分野での証券ソリューション製品のラインアップ拡充にも期待が高まる。引き続き厳しい事業環境が予想されるものの、成長軌道への回帰に向けた条件が整ってきたと考える。