ブリッジレポート
(2183) 株式会社リニカル

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ブリッジレポート:(2183)リニカル vol.3

(2183:東証マザーズ) リニカル 企業HP
秦野 和浩 社長
秦野 和浩 社長

【ブリッジレポート vol.3】2011年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「第1四半期は減収・減益となり、上期予想も下方修正されたが、高度な対応力が要求され付加価値も高い中枢神経系領域やがん剤領域等の案件が・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年8月10日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社リニカル
社長
秦野 和浩
所在地
大阪市淀川区宮原1-6-1 新大阪ブリックビル
決算期
3月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年3月 2,404 480 473 273
2009年3月 2,036 549 515 300
2008年3月 1,273 505 494 296
2007年3月 613 186 195 114
2006年3月 118 16 19 11
株式情報(8/2現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
369円 12,345,000株 4,555百万円 27.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
11.00円 3.0% 27.84円 13.3倍 77.78円 4.7倍
※株価は8/2終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
リニカルの2011年3月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
臨床試験(治験)や医薬品の市販後臨床試験等に関わる業務の一部を代行する事で製薬会社の医薬品開発を支援するCRO(Contract Research Organization:医薬品開発業務受託機関)事業を事業領域としている。治験の最も大切な段階である第II相試験(フェーズII)及び第III相試験(フェーズⅢ)における「モニタリング業務」とこれに付随する「品質管理業務」、及び「コンサルティング業務」に特化している事が特徴で、製薬会社の開発部門と同等の能力を有し、同等の立場で医薬品開発を実行・サポートできるCRO、すなわち、「CDO(Contract Development Organization:真の医薬品開発業務受託機関)」を目指している。
 
<事業内容>
事業は、第II相・第III相試験における「モニタリング業務」とこれに付随する「品質管理業務」、及び「コンサルティング業務」の3事業に分かれる。
 
モニタリング業務
新薬開発において最も重要な役割を果たす業務の一つで、治験が手順通り正確に行われているかをモニタリング(監視)する。具体的には、CRA(Clinical Research Associate:治験モニター)が治験を実施する医療機関に対して治験薬や実施計画書・手順書について説明、その後、治験が手順通りに行われているかをモニタリングする。
品質管理業務
CRAが医療機関から収集したデータが手順書や計画書通りに実施されているかについて、定められたチェックリスト等を用いて確認する業務。品質管理業務は治験の質を左右する重要な役割を果たしている。
コンサルティング業務
製薬会社に対して、新薬開発のスケジュール作成から治験企画、承認申請に至るまでのコンサルティングを行う業務。新薬開発をスムーズに進めるための技術的なサポートも行なっている。
 
<中期事業戦略>
がん領域を中心にした治験領域の拡大と日米欧の3極体制の整備により既存事業(CRO)を強化すると共に、新規事業(CSO)展開により業容の拡大を図る。CSOとはContract Sales Organizationの略で、医薬品の販売において重要な位置を占めるMRの派遣やマーケティング支援等により製薬会社の医療機関向け医薬品販売を支援する。CRO事業に加え、CSO事業を手掛ける事で新薬の開発段階から上市後に至る一気通貫のサービスが可能となり、付加価値向上はもとより、製薬会社の利便性も高まる。尚、がん領域は、国内の大手医薬品会社がM&Aを含めて強化している領域で、世界の主要抗がん剤の売上は右肩上がりで推移している。また、3極体制の整備では、先ず米国での拠点整備に取り組む。米国法人LINICAL USA, INC.(米国カリフォルニア州、08年7月設立)が現地でモニタリング・コンサル業務を手掛けており、今後、国内で育成した人材を子会社へ出向させ人員の拡充を図る考え。
 
 
2011年3月期第1四半期決算
 
 
前年同期比6.8%の減収、同63.9%の経常減益
CRO事業において、高度な対応力が要求され付加価値も高い中枢神経系領域やがん領域等の案件を複数受託したものの、いずれも本格的な収益貢献は第3四半期以降のため大型案件の開発中止の影響をカバーできなかった。一方、前期より開始したCSO(製薬会社に対する医療機関向け医薬品販売支援)事業は、未だ水準が低いものの収益への貢献が始まった。利益面では、開発中止に伴いモニターの稼働率が低下した事等で売上総利益率が悪化。受託計画に従い人員を採用した事で人件費等を中心に販管費が増加したため、営業利益は同63.9%減少した。
 
 
7月30日現在の受注残高は前期末比24.7%増の2,838百万円。2010年問題の影響が出始める中、大手新薬開発型メーカーは収益の柱となる新薬の開発を急いでおり、同社はこうしたニーズの取り込みに成功し、既存及び新規クライアントからの受託を順調に拡大させている。尚、CRO業務は症例数や治験の難易度等により受託総額が決まり、1年から3年程度の治験実施期間において毎月売上が計上される(つまり、受注残高は、今後1年から3年程度の期間で計上される売上高の総額)。また、この計画実施を前提に必要な人員の手当てを先行して進めて行く。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
第1四半期末の総資産は前期末比35百万円減の1,371百万円。配当や法人税等の支払で現預金が減少したため、借入金を積み増して第2四半期以降の資金需要に備えた。CFの面では、差入保証金の減少で投資CFのマイナス幅が縮小したものの、利益の減少等で前年同期は黒字だった営業CFがマイナスとなり、フリーCFは61百万円のマイナス。現金及び現金同等物四半期末残高は前期末比60百万円減少した。
 
 
 
 
2011年3月期業績予想
 
 
第1四半期決算発表と同時に上期業績予想を下方修正
中枢神経系領域やがん領域を中心に足下の受注は堅調だが、本格的な収益貢献は第3四半期以降となるため大型案件の開発中止の影響をカバーできない。利益面では、上記の開発中止に伴うモニターの稼働率低下に加え、受託計画に従い人員を採用した事で人件費等が計画通り発生するため利益を圧迫する。
ただ、第2四半期(7-9月)の3ヶ月間に限ると、大型案件の開発中止の影響を吸収して、ほぼ前年同期並みの収益水準に回復する見込み。通期業績については、現在精査中であるとして修正しなかった。
 
 
 
取材を終えて
第1四半期は減収・減益となり、上期予想も下方修正されたが、高度な対応力が要求され付加価値も高い中枢神経系領域やがん剤領域等の案件が増加している事が確認できた。受注活動は中期事業戦略に沿って順調に進捗しているものと思われる。
2010年問題の影響が出始める中、大手製薬会社は収益の柱となる新薬の開発を急いでおり、一昨年、昨年と、開発候補品の確保を目的としたM&Aや品目導入事例が数多く見られた。今後、これらの候補品の開発を含め、大手製薬会社の新薬開発が加速する見通しであり、CROにとっては、その中でいかに多くの品目を受託できるかが勝負の分かれ目となる。特に近年増加しているのが、がん領域や中枢神経系領域の新薬開発だが、これらの領域は生活習慣病等の領域に比べて高度な対応が必要となる場合が多く、メーカー側のニーズに応える事ができるCROは限られる。同社は、既に中枢神経系領域で豊富な実績を有する他、がん領域でも昨年度から経験豊富なマネージャーを中心にがん領域開発受託事業部を立ち上げ、実績も出始めている。
この業界では今回のように新薬の開発中止は珍しい事ではない。このため、目先的な売上・利益の変動要因として注意する必要はあるものの、中期的な視点で捉えた場合、中枢神経系領域に強く、がん領域の受託でも成果をあげている同社の立ち位置は良好であり、更なる競争激化が予想される中でも事業拡大余地は大きいと考える。