ブリッジレポート
(4829) 日本エンタープライズ株式会社

スタンダード

ブリッジレポート:(4829)日本エンタープライズ vol.13

(4829:東証2部) 日本エンタープライズ 企業HP
植田 勝典社長
植田 勝典社長

【ブリッジレポート vol.13】2010年5月期業績レポート
取材概要「画面が大きく、タッチ操作できるスマートフォンは従来の携帯電話に比べて格段に使い勝手が良い。このため、業務への適用を検討している企業が多・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年8月3日掲載
企業基本情報
企業名
日本エンタープライズ株式会社
社長
植田 勝典
所在地
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-17-8
決算期
5月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年5月 2,147 150 173 77
2009年5月 2,475 292 317 175
2008年5月 3,123 572 578 272
2007年5月 3,677 774 783 447
2006年5月 3,416 694 688 418
2005年5月 3,018 587 570 348
2004年5月 1,958 205 168 226
2003年5月 1,752 134 131 58
2002年5月 1,704 51 53 23
2001年5月 1,417 301 262 126
株式情報(7/14現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
6,150円 377,000株 2,319百万円 2.8% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
100.00円 1.6% 265.25円 23.2倍 7,374.03円 0.8倍
※株価は7/14終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
日本エンタープライズの2010年5月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
モバイルソリューションカンパニーを標榜。コンテンツの自社開発にこだわり、合言葉は「コンテンツで勝つ!」。音楽やゲーム・デコメ等のコンテンツを制作し携帯等を通じて配信するコンテンツサービスと、企業のコンテンツ制作・運営やシステム構築等を手掛けるソリューションが2本柱。また、日本のコンテンツを世界へ広げるべく海外展開にも力を入れており、第3世代携帯電話(3G)向けサービスが開始された中国で3Gサービスの普及を睨み、各種コンテンツを配信している他、携帯電話の加入者数が急拡大しているインドでは現地法人を設立し、本格的な参入に向けて準備を進めている。
 
コンテンツサービス事業
携帯電話等のキャリア(移動体通信事業者)が運営するi-mode、EZweb、Yahoo!ケータイといったインターネットに接続が可能な携帯電話の公式サイトに自社開発したコンテンツを提供し、月額課金あるいはダウンロード課金制により、その代金をキャリアから受取っている。オリジナルキャラクター等によるライセンスビジネスへの参入や、中国事業として、中国の携帯キャリア向けにコンテンツの提供も行っている。
 
 
ソリューション事業
コンテンツサービスから派生したビジネス。モバイルサイト構築・運用業務、ユーザーサポート業務、デバッグ業務、サーバネットワークの運用・監視・保守、自社コンテンツの2次利用(以上、ソリューション)、他社コンテンツの制作・運営(ソリューションコンテンツ)、更には、広告、及び物販等を行っており、携帯電話はもちろん、パソコン等のあらゆるメディアに対応したソリューションを提供している。
 
 
2010年5月期決算
 
 
前期比13.2%の減収、同45.3%の経常減益
メール・カスタム(デコレーションメール)、音声コンテンツ、海外事業が伸びたものの、音楽やゲームの苦戦でコンテンツサービスの売上が1,148百万円と同10.0%減少。大型案件の受注や店頭アフィリエイトによる広告収入の増加等で第4四半期に回復感が出てきたソリューションも通期では999百万円と同16.7%減少した。コスト削減に努めたものの、戦略的な広告宣伝費の投入と固定費負担等から同48.4%の営業減益(広告宣伝費は同40百万円増の155百万円)。
 
 
第4四半期のコンテンツサービスは、ゲームの苦戦が続いたものの、メール・カスタムが堅調に推移した他、音楽が増収に転じた。ソリューションでは、物販やMSP(サーバ・ネットワークの運用・監視・保守)の低迷が続いたものの、大型案件の受注に成功した他、店頭アフィリエイトの拡大で広告収入が大幅に増加した。原価率は期を通して39~40%で安定的に推移しており、販管費のコントロールも機能している。尚、第3四半期の営業利益の落ち込みは年末年始の積極的な広告宣伝費の投下による。
 
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比31百万円減の3,017百万円。財政状態に大きな変化は無く、無借金かつ高流動性の健全経営が続いている。長期預金の一部が満期を迎えた事や満期までの期間が1年未満となった事、及び投資有価証券の売却等で投資その他が減少し現預金が増加した。CFの面では、利益の減少等で営業CFの黒字が減少したものの、定期預金や長期預金の払い戻し等で投資CFが黒字に転じた事で前期は323のマイナスだったフリーCFが286百万円の黒字に転換。配当の支払い等で財務CFがマイナスになったものの、現金及び現金同等物期末残高は前期末比238百万円増加した。
 
 
 
2011年5月期業績予想
 
 
前期比7.1%の増収、同18.0%の経常増益予想
売上高は2,300百万円と同7.1%増加する見込み。このうち、コンテンツサービスの売上高は同3.6%増の1,190百万円を見込んでおり、キャリアの公式サイトの会員を維持しつつ新プラットフォームへの参入により増収を図る考え。また、ソリューションは、スマートフォン関連の開発需要の取り込みや店頭アフィリエイトの拡大に加え、ポータルを活用した事業の拡大も見込まれ、売上高が1,110百万円と同10.0%増加する見込み。
利益面では、増収効果に加え、引き続きコスト削減に努める事で営業利益が同32.5%増加する見込み。経常利益が同18.0%の増加にとどまるものの、税負担率の軽減等で当期純利益は同28.4%増加する見込み。
配当は、1株当たり20円増配の100円を予定している。
 
(2)11/5期の戦略
①コンテンツサービス
携帯端末の販売現場では、従来型の携帯端末の販売が低迷する一方、スマートフォンの普及が進んでおり、また、サービス分野では公式サイトの成熟が進む一方で、SNSをはじめとする一般サイトの台頭によりソーシャルアプリの市場が急成長している。
 
 
こうした中、同社は、公式サイト、新ビジネス、キャラクター事業を柱とした事業展開を進めていく考え。具体的には、公式サイトにおいて、キャリアとのタイアップによりデコメ、音楽、情報を中心に継続率の高い会員の獲得に取り組むと共に、新ビジネスとして、ソーシャルアプリやスマートフォン向けを新たな収益分野として強化していく。また、キャラクター事業では、ライセンスビジネスとして「うたがめ」のライセンス展開を進めていく他、新たなキャラクターの開発にも取り組む。
 
 
②ソリューション
モバイルWebサイトに対して、宣伝・広報効果やブランド認知、或いは売上に対する直接効果を期待する企業は多く、また、スマートフォンを活用したビジネス展開に興味を示す企業も増えている。同社はモバイルWebサイトに対する需要を汲み上げ、安定した収益が見込めるサイト運用やコンテンツ制作等につなげていくと共に、デバッグ、サウンド、及びサポート等の需要を掘り起こしていく考え。また、ソーシャルアプリやスマートフォン関連での企業向け企画・開発により新しい収益の軸を確立する他、足下好調な店頭アフィリエイトを直営店の他、量販店、二次代理店、更にはオーナー店へ広げていく。
 
 
「携帯販売代理店」の店舗数を拡大させる事で、ユーザーとのタッチポイント(様々な同社コンテンツを販売するプラットフォーム)を拡大させていく考え。
 
③海外事業
・中国(携帯電話市場の動向と概況)
中国での携帯電話加入者総数が7億5,000万人を突破したが、割高な通信料金が足かせとなり3Gの普及は必ずしも順調とは言えない。同社は、電子書籍事業の育成により今後の3G端末の普及に備えると共に、中国電信をはじめ、中国キャリアとの連携を強化していく考え。また、日本企業の中国への進出支援も事業として育成していく。
 
・インド(携帯電話市場の動向と概況)
インド電気通信規制庁(TRAI)によると、2010年5月にインドの携帯電話加入件数が6億人を突破した。現在、インドでは携帯キャリア15社が乱立しており(上位6社が10~20%のシェアを有する)、価格競争が激化している。同社においては、現地法人を設立した子会社を基点に、年内にも始まる3Gサービスに向けて、モバイルコンテンツビジネスの可能性を調査している段階。
 
 
取材を終えて
画面が大きく、タッチ操作できるスマートフォンは従来の携帯電話に比べて格段に使い勝手が良い。このため、業務への適用を検討している企業が多いようで、NTTドコモでは、現在、10%程度の法人ユーザーを、2012年までに20%に引き上げるべく計画を進めているという。ただ、現状は、あくまで利用方法について検討をしている段階であり、こうしたニーズをビジネスとして取り込んでいくためには提案力が必要となる。また、スマートフォンやソーシャルアプリ市場の拡大により、市場拡大を続けてきた携帯電話向けコンテンツ業界もサイトへの集客方法や運営方法等で大きな変革期を迎えており、従来の成功体験に固執すると対応を誤る可能性がある反面、柔軟な発想と展開力があればビジネスチャンスは拡大する。
こうした点を考えると、コンテンツの開発・提供から各種ソリューションや独自のアフィリエイト展開と、他に例の無い多様な展開力を有する同社の存在はユニークだ。今後に展開に注目したい。