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ブリッジレポート:(2462)ジェイコムホールディングス vol.16

(2462:東証1部) ジェイコムホールディングス 企業HP
岡本 泰彦 社長
岡本 泰彦 社長

【ブリッジレポート vol.16】2010年5月期業績レポート
取材概要「10/5期は減収・減益となったものの、抵触日の影響等による市場の縮小が原因であり、同社がシェアを落としているわけではない。また、派遣業法・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年7月27日掲載
企業基本情報
企業名
ジェイコムホールディングス株式会社
社長
岡本 泰彦
所在地
大阪市中央区西心斎橋 2-1-3
決算期
5月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年5月 13,522 789 834 475
2009年5月 14,162 913 953 340
2008年5月 12,404 885 907 489
2007年5月 9,605 812 786 444
2006年5月 6,657 594 552 274
2005年5月 4,684 284 281 152
2004年5月 3,271 142 141 56
2003年5月 2,222 90 88 45
2002年5月 1,616 77 76 40
2001年5月 1,369 73 70 34
株式情報(7/9現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
88,700円 45,630株 4,047百万円 12.6% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
4,000.00円 4.5% 11,264.22円 7.9倍 85,856.18円 1.0倍
※株価は7/9終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
ジェイコムホールディングスの2010年5月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
純粋持株会社である同社、総合人材サービス事業と携帯電話キャリアショップの運営を手掛ける連結子会社ジェイコム(株)、認可保育園等の運営を手掛ける持分法適用関連会社(株)サクセスアカデミー、及び人材育成等を手掛ける関連会社(株)ガーディアンシップの4社でグループを形成。主力の総合人材サービス事業では、携帯電話業界に特化した差別化戦略が奏功し、業界動向や顧客ニーズを的確に捉えたサービスと情報の提供が顧客企業から高い評価を受けている。ただ、中期的には、既存事業を中心にしつつも、グループ全体での幅広いサービスの提供を目指している。
 
<沿革>
1993年9月、パッケージ旅行の企画会社(株)パワーズインターナショナルとして設立されたが、携帯電話市場の成長性に着目して96年4月に携帯電話ショップの運営を開始。同年11月にはジェイコム(株)に商号を変更すると共に定款を変更し携帯電話業界に完全にシフトした。98年10月にはショップ運営のノウハウを活かして携帯電話業界向け人材ビジネスに参入。人材ビジネスの順調な拡大を背景に、2005年12月の東証マザーズ上場、更には07年2月の東証1部への市場変更とステータスも向上した。09年12月には、更なる業容の拡大を目指して持株会社体制へ移行。商号をジェイコムホールディングス(株)に変更。10年6月には主要事業会社であるジェイコム(株)の「東京支社」を「東京本社」へ改称し、東京・大阪両本社制とした。
 
<事業内容>
事業は総合人材サービス事業と携帯電話ショップ運営のマルチメディアサービス事業に分かれ、10/5期は前者の売上高が全体の96.3%を占めた。主力の総合人材サービス事業では、携帯電話ショップや量販店等販売店向けのスタッフ派遣(販売支援サービス)や業務請負(アウトソーシングサービス)の営業支援サービス、職業紹介や紹介予定派遣を行う就職支援サービス、及びオフィスやコールセンターへのスタッフ派遣等を行う人材派遣サービスを手掛け、マルチメディアサービスでは、各通信キャリアと丸紅テレコムとの三者間契約により、関西地区でドコモショップ1店舗、ソフトバンクショップ1店舗を運営している。
 
<若年層のステップアップを支援>
総合人材サービス事業では、派遣社員等やアルバイトを受け入れる企業側のメリットだけを追求するのではなく、働く側のキャリアアップにも配慮している。具体的には、派遣社員もしくはアルバイトとして採用した社会経験の浅い学生やフリーター等の若年層を、教育やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)により勤続年数に応じてステップアップさせ、最終的には希望する職業へ正社員として就職できるよう支援するシステムが構築されている。
 
 
2010年5月期決算
 
 
前期比4.5%の減収、同12.5%の経常減益
携帯電話業界の販促活動の抑制を受けて営業支援サービスを中心に総合人材サービス事業の売上が13,018百万円と同4.4%減少。携帯電話販売の苦戦でマルチメディアサービス事業の売上も503百万円と同8.2%減少した。
利益面では、売上総利益率が高い体育会学生向け就職支援サービスのインダス(株)を売却した影響に加え、営業支援サービスにおける開通センター等の高利益率案件の減少や派遣法改正をにらんだ派遣(販売支援サービス)から請負(アウトソーシングサービス)へのシフトもあり売上総利益率が悪化。インダス(株)の売却や求人効率の改善による採用教育費の減少、更には業務の効率化等で諸経費の削減も進んだものの、減収と売上総利益率悪化の影響をカバーできず営業利益は同13.5%減少した。当期純利益が増加したのは、前期はインダス(株)の「のれん」の一括償却(259百万円)等で特別損失328百万円を計上したため。
尚、3月30日に業績予想を下方修正したが、スマートフォン等の販促活動の活発化により第4四半期の業績が堅調に推移した事で修正値(売上高13,440百万円、営業利益765百万円、経常利益800百万円、当期純利益440百万円)を上回る着地となった。
 
(2)事業別動向
①総合人材サービス
サービス別では、アパレル業界向けの物流倉庫の一括受注等で人材派遣サービスの売上が増加したものの、主力の営業支援サービス及びインダス(株)を売却した就職支援サービスの売上が減少した。営業支援サービスでは、労働者派遣法の改正を見据えて販売支援サービスからのシフト(業務委託契約への切り替え)やキャンペーン受注の取り込みでアウトソーシングの売上が増加したものの、アウトソーシングへのシフトや企業の販促活動の抑制による販売支援サービスの売上の減少を吸収できなかった。
業界別では全ての業界向けで売上が減少。特に携帯キャリア5社向けの落ち込みが大きかったが、これは大手携帯キャリアの1社が昨夏に抵触日を迎えた派遣社員を直接雇用に切り替えた事による(影響額は約3.5億円)。
顧客別では、業務委託契約が増加した大手販売代理店向けや優良な地域代理店の開拓が進んだ事でその他販売代理店向けの売上が増加した。取引社数(ジェイコムのみ)は、前期末比65社増の330社。
地域別では、抵触日の影響で市場がシュリンクした影響もあり西日本地区及び東海地区で売上が減少したものの、東京支社(6/1より東京本社)の売上が同10.1%増加する等、首都圏を中心に東日本地区の売上が増加した。また、業務委託化(アウトソーシング)の先駆けとなっている中四国地区の売上も同13.2%増加した。
 
 
 
 
 
※ 10/5期第2四半期は、8月に同社からの派遣社員がキャリアの直接雇用に変更された影響を受けた他、10月に主要クライアントが同社への支払い単価を一律カットした事も響いた。
 
 
①原価率の上昇  80.7%→82.0%(個別:81.2%→82.0%)
インダス(株)の売却や企業の採用コスト圧縮により収益性の高い就職支援サービスの売上が減少した事、及び開通センターなど高収益案件が減少した事による。
 
②販管費率の改善 12.8%→12.2%(個別:12.0%→12.0%)
雇用環境の悪化に伴う求人効率の改善による採用教育費の減少、インダス(株)の売却(98百万円の減少要因)、及び営業体制の適正化と業務効率化によるその他の経費の減少等による。
 
 
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比311百万円増の5,462百万円。借方では、持株会社体制への移行に伴い未収消費税が発生した他、(株)サクセスアカデミーの株式取得(117百万円)で投資その他が増加。貸方では、未払法人税・消費税等や純資産が増加した。CFの面では、営業利益の減少や未払金の支払いが進んだ事等で営業CFの黒字が減少する一方、投資CFのマイナス幅が拡大したため、前期は518百万円の黒字だったフリーCFが498百万円のマイナスとなった。もっとも、投資CFのマイナス幅拡大は余資運用(有価証券、投資有価証券、及び信託受益権)の増加によるもので、実質的なCFは黒字と言える。財務CFのマイナス幅が縮小したのは自社株買いを実施しなかったため。
 
 
 
 
2011年5月期業績予想
 
 
①前期比7.2%の増収、同7.9%の経常増益予想
総合人材サービス事業が増収に転じ、マルチメディアサービス事業もほぼ前期並みの売上を確保できる見込み。総合人材サービス事業では、派遣からアウトソーシングへ移行した案件が軌道化する事に加え、(株)テー・オー・ダブリュー(以下、TOW)との提携効果もあり下期以降キャンペーンの取り込みが進む他、新規事業として取り組む成果報酬型求人サイト「Jobマーケット」や前期に資本参加した(株)サクセスアカデミーの寄与も見込まれる。増収効果による利益率の改善で営業利益は同7.6%増加する。配当は1株当たり4,000円(上期末2,000円を含む)を予定。
 
 
上期
新たなアウトソーシングサービスのサービス開始で売上が増加するものの、当初は費用計上が先行する他、スムーズな事業立ち上げのための人員体制強化も負担となり営業利益が減少する見込み。
下期
上期に体制整備が一巡するアウトソーシングサービスが軌道化する他、TOWとの提携効果等によるキャンペーンの増加、更には成果報酬型求人サイト「Jobマーケット」及び(株)サクセスアカデミーの寄与も見込まれる。上期で先行投資が一巡する事や新規事業の寄与で営業利益率も改善する。
 
(2)重点施策
人材派遣業界は規制強化や業界に対するマイナスイメージの広がり等による市場の縮小で小規模事業者の撤退や淘汰が進んでおり、今後更なる業界再編が予想される。また、携帯電話業界は個人消費の低迷や端末販売事業者の販促活動の抑制等で人材ニーズが低迷しているものの、その一方で、スマートフォン市場の拡大や音声収入からパケット収入への移行等の新たな動きが見られ、同社のビジネスチャンスが拡大している。実際、消費者に対する説明能力が高く、かつ販売力のあるスタッフへのニーズが引き続き高水準で推移している事を踏まえて、同社では「法令遵守、資本力に安定感のある会社がクライアント、求職者の両者から選ばれ生き残る」と考えており、次に示す4つの施策を進める事で既存事業の安定的な成長と新規事業の拡大を図る考え。

①業務委託(アウトソーシング)の受注強化
②TOWとの資本・業務提携による事業拡大
③事業会社の売上拡大とグループ組織体制の備整
④事業環境に迅速に対応できるコンプライアンス体制の維持
 
①業務委託の受注強化
豊富な営業実績、安定した資本力(無借金経営を継続)、東証一部企業の安定したコンプライアンスを強みにクライアントニーズに応え、業務委託(同社から見た場合、業務受託、アウトソーシングサービス)の受注を強化する。実際、北海道から鹿児島に至る各拠点で案件獲得が進んでいる。
 
②TOWとの資本・業務提携による事業拡大
同社は若年層を活用した販売・営業・販売促進等の営業支援サービスを得意とし、特に携帯電話業界向けで豊富な実績を有する。一方、TOWは国内イベント業界最大手として、イベントの企画・制作・運営などプロモーション領域で事業を展開。特に大手広告代理店向けで豊富な実績を有する。両社は今回の提携により、現在4兆円とも言われるプロモーション市場の中で、“店頭領域におけるプロモーション”(店頭や街頭でのキャンペーン等の各種販売促進活動)にフォーカスして、企画・制作からキャンペーン業務の運営やスタッフの育成までをワンストップで提供していく。
 
 
 
③事業会社の売上拡大とグループ組織体制の備整
成果報酬型求人サイト「Jobマーケット」と認可保育園等の運営を手掛ける持分法適用関連会社(株)サクセスアカデミーの事業拡大により新たな事業分野での収益拡大を図る。
 
・成果報酬型求人サイト「Jobマーケット」
より多くの雇用、求職者と求人企業とのより良いマッチングを念頭に開発されたサイトであり、これまでの人材サービスと違った角度から若年層の就業をサポートすると共に、採用活動を行う求人企業に対してもこれまでの経験を生かし付加価値の高いサービスを提供していく。既にアパレル業界の案件紹介や派遣案件受注等で実績があり、他業界へのドアノックツールとして既存事業とのシナジー効果も期待できる。
 
 
・(株)サクセスアカデミー
前期に資本参加した(株)サクセスアカデミー(09年12月1日付で発行済株式数の20%を取得)は、子供を持つ女性の就業を支援するべく、認可保育園・認証保育所、公設民営保育園、学童クラブ等を41ヶ所運営している他、病院、企業、学校内の保育施設132ヵ所の運営を受託している。
働く母親の増加や核家族化が進む中で、現在、保育施設は供給が需要に追いついていない状態。このため、同社ビジネスの拡大余地は大きく、また、ジェイコムグループで人材サービスを提供するジェイコム(株)のスタッフに対する保育サービスの充実、ひいてはスタッフの安定的な確保にもつながる事からグループ・シナジーも期待できる。
 
 
 
どんな事業環境にも当たり前に対応でき、かつ、クライアントからもスタッフからも選ばれるコンプライアンス体制を維持していく考え。
 
 
取材を終えて
10/5期は減収・減益となったものの、抵触日の影響等による市場の縮小が原因であり、同社がシェアを落としているわけではない。また、派遣業法改正を見据えて派遣から業務委託(同社から見た場合、業務受託)へ需要がシフトしているが、同社ではこうした需要も着実に取り込めているようだ。携帯電話販売店の業務委託の場合、販売台数もコミットする必要があるためコンペになっても入札する企業は限られる。コンペになった場合、市場が小さい中四国等では受注するのは1社だが、関西・東海圏では2社程度、首都圏では3~4社が受注している模様で、同社はこれまで入札したほぼ全ての案件で受注に成功している。ただ、派遣から委託へシフトすると、当初は利益率が悪くなる。なぜかと言うと、派遣から業務委託へ変わる場合、既に説明したようにコンペによって発注先が絞り込まれるが、この場合でも、クライアントは従来からの派遣社員の継続勤務を希望する。このため、同社が20人で行う業務を受託した場合、その業務に他社の派遣社員が従事していたら、その派遣社員が辞めるまでこれまで通りその業務に従事させる必要がある。つまり同社が他社に派遣料を支払って派遣社員を活用している事になる。時間の経過と共にスタッフが入れ替わり、最終的には同社スタッフのシェアが100%となるため利益率が改善するが、サービス開始当初は、この社員は同社の売上高に貢献しても、利益には貢献しないため利益率が悪くなる。11/5期の業績について、同社では上期が増収・減益、下期が増収・増益と予想しているが、この根拠の一つが、業務委託(アウトソーシング)の収益性改善である。