ブリッジレポート
(8275) 株式会社フォーバル

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ブリッジレポート:(8275)フォーバル vol.30

(8275:JASDAQ) フォーバル 企業HP
大久保 秀夫 社長
大久保 秀夫 社長

【ブリッジレポート vol.30】2010年3月期業績レポート
取材概要「同社では、中小企業が発展するための方策として、「情報通信を活用した経営の高度化」と「国外の成長機会の取り込み」の2点を挙げている。ヒト・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年6月29日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フォーバル
会長兼社長
大久保 秀夫
所在地
東京都渋谷区神宮前 5-52-2 青山オーバルビル
決算期
3月
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年3月 32,206 520 477 470
2009年3月 34,358 112 17 -1,879
2008年3月 34,323 -933 -1,264 -532
2007年3月 26,216 -1,878 -2,012 -1,390
2006年3月 27,500 3 14 1,063
2005年3月 40,089 1,962 1,962 1,174
2004年3月 32,981 1,446 1,360 660
2003年3月 37,402 1,522 1,334 443
2002年3月 44,411 -860 -1,027 -4,756
2001年3月 52,045 1,026 699 86
2000年3月 54,668 1,278 1,281 1,122
株式情報(6/11現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
226円 13,563,988株 3,065百万円 10.2% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12.50円 5.5% 22.12円 10.2倍 341.60円 0.7倍
※株価は6/11終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フォーバルの2010年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
都心部の中小・中堅企業を対象に、電話機や複写機等のオフィス向け情報通信機器の企画・開発・販売・設置・保守サービスの他、携帯電話端末の販売、光ファイバーを利用したIP電話サービスや小規模事業者向けのFMC(固定通信と移動体通信の融合)サービス、セキュリティサービス等、様々なサービスを「ワンストップ」で提供している。社名のFORVAL(フォーバル)は、「For Social Value」を語源とし、「社会価値創出企業をめざす」という経営理念が込められている。
事業セグメントは、電話機、複写機、パソコン等の販売を主とする機器関連事業と、FTフォン等の通信サービスや携帯電話の販売を中心とした通信ネットワークやセキュリティ関連等のネットワーク関連事業に分かれ、10/3期の売上構成比は、前者が29.0%、後者が71.0%。
 
<「情報通信コンサルタント集団」を目指して>
1980年に設立され電話機販売からスタートした同社だが、その後、ナローバンド、ブロードバンド、そしてモバイルと、時代のニーズに即した分野で様々なサービスを開発してきた。そして、今、フォーバルグループは、「情報通信コンサルタント」として企業経営を支援する集団を目指し、ITコンサルティングサービス「アイコン」を育成中である。
 
ITコンサルティングサービス「アイコン」
 
 
2010年3月期決算
 
 
前期比6.3%の減収、477百万円の経常利益(前期は17百万円の利益)
売上高は前期比6.3%減の32,206百万円。新通信サービス事業の苦戦や首都圏での携帯ショップの閉鎖等でネットワーク関連事業の売上が減少した他、機器関連事業も各商品で第4四半期にかけて回復感が出てきたものの第3四半期までの落ち込みをカバーできなかった。ただ、利益率の高いサービスや商品の販売が相対的に堅調だった事で売上総利益率が改善。一方、事務所・店舗の統廃合等による一般管理費の減少や子会社整理及び業務の効率化(残業の抑制)による人件費の削減等で販管費が減少したため、前期は112百万円にとどまった営業利益が520百万円に拡大。投資有価証券売却益269百万円など特別利益311百万円を計上した事により当期純利益は470百万円となった。
 
 
機器関連事業
機器関連事業の売上高は前期比4.6%減の9,328百万円。このうち、電話機は、第2四半期に本格的に取り扱いを開始した小規模事業者向けのFMC(固定通信と移動体通信を融合したサービス)対応新商品の効果もあり、数量ベースでは前期実績を上回ったものの、小型モデルの取り扱いから開始した影響等で低価格ゾーンの比重が高まり、売上高は同2.9%減少した。ただ、四半期ベースでは、第4四半期の売上高が前年同期比9.7%増加しており回復の兆しが見えてきた。パソコン(情報機器)販売も、前期に好調だったサーバ販売の一巡やパソコン販売の苦戦で前期比8.8%減少したものの、第4四半期は前年同期比11.1%の増収。複写機等も、低価格ゾーンへの需要シフトによる価格競争の激化やカウンター価格の低下で通期の売上高が前期比4.4%減少したものの、第4四半期は前年同期比8.6%の増収となった。
 
ネットワーク関連事業
ネットワーク関連事業の売上高は前期比6.9%減の22,877百万円。このうち、通信ネットワークは、(株)フォーバルテレコムの新通信サービス(光ファイバーを利用したIP電話サービス等)事業が伸び悩んだ事や(株)リンクアップが首都圏の携帯ショップを閉鎖した影響等で売上高が同7.6%減少。景気の低迷による印刷関連、特注文具関連、及び人材関連等の子会社(孫会社)の苦戦で、その他の売上高は同16.1%減少した。一方、Web関連はWebサポートサービス等のストック型サービスが寄与した事や主力のホームページ制作に注力した事が奏功し同4.9%の増収。セキュリティ関連もスパムメール対策を切り口とした中小企業向け統合型セキュリティアプライアンス商品の販売が堅調に推移した事や、12月に投入した新商品の寄与もあり売上高が同26.5%増加した。
 
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比570百万円増の15,816百万円。借方では、CFの改善により現預金が増加した他、投資有価証券の時価上昇で固定資産も増加。貸方では、第4四半期の売上増加で仕入債務や未払金が、利益の計上で純資産が、それぞれ増加する一方、有利子負債が減少した。CFの面では、営業CFはほぼ前期並みにとどまったものの、M&A関連の支出が無くなる一方、投資有価証券の売却が増加したため投資CFが黒字に転換。前期は1,024百万円だったフリーCFが1,440百万円に増加した。有利子負債の削減を進めたものの、現金及び現金同等物期末残高は643百万円増加した。
 
 
 
2011年3月期業績予想
 
 
前期比5.6%の増収、同25.8%の経常増益予想
景気回復による印刷関連・特注文具関連子会社・携帯販売子会社の売上回復等によりネットワーク関連事業の売上が増加する他、前第4四半期以降、回復傾向にある機器関連事業も増収に転じる見込み。大きなコスト削減は前期で一巡しているものの、増収効果により営業利益率の更なる改善が見込まれる。配当は1株当たり12.5円を予定。
 
 
 
フォーバルグループの成長戦略
 
販売力の拡充やサポートの充実はもちろん、経営支援を強化する事で他社との差別化(優位なポジショニングの構築)を図っていく考えで、この一環として、(1)顧客数(ビリングユーザー)の拡大、(2)アイコンユーザーの拡大、及び(3)経営コンサルユーザーの拡大、の3つの課題に取り組んでいく。
 
 
(1)顧客数(ビリングユーザー)の拡大
ビリングサービスの拡販により、顧客基盤の拡大を図る。
①ビリングサービスの強み
・顧客のメリット
大口顧客並みの割引を享受
複数の請求先が一本化され事務負担が軽減
・同社のメリット
定期的に請求を行うため、顧客をグリップできる
OEMが可能で代理店にも展開できる
②2013年3月末計画
38,000社から50,000社へ拡大
 
(2)アイコンユーザーの拡大
保守 → サポート → ビジネスへの応用 → 経営相談へと、アイコンサービスを進化させていく事で、単なるハードの販売業者という位置付けからビジネスパートナーへと顧客とのリレーションを深化させていく。
 
 
①アイコンサービスの強み
・顧客のメリット
ITを安心・安全に利活用できる
経営に関する様々な相談ができる
・同社のメリット
顧客とのリレーションが深まる
ストック型の収益である
②2013年3月末計画
10,623事業所から20,000事業所へ拡大
 
 
(3)経営コンサルユーザーの拡大
①経営コンサルの強み
・顧客のメリット
実業経験から蓄積された「実証済み」のコンサル
海外進出支援も可能、リーズナブルなコンサルフィー
・同社のメリット
顧客とのリレーションが深まる
ストック型の収益である
②2013年3月末計画
コンサル契約先350社純増

コンサル契約数(2009/8~2010/5累計) :24件
コンサル契約先企業の平均像      :売上高1~5億円、従業員数5~50名
 
 
カンボジアでの事業展開(現地法人の設立)
 
去る4月29日、カンボジアのプノンペンに現地法人FORVAL(CAMBODIA)CO.,LTD を設立した。新会社は、日本の中小企業のカンボジア進出を、「検討段階」から「進出後」までトータルでサポートしていく。
 
 
近年、製造業を中心に、成長著しい中国、タイ、ベトナム等の東アジア諸国への進出が進んでいる。しかし、大企業が中心であり、海外展開のノウハウが無い中小企業においてはハードルが高いのが現状。

こうした中、同社が海外進出のブルーオーシャンとして注目しているのが、カンボジアである。2004年から2007年までの4年間、二桁の経済成長を続けたカンボジアは10年前の中国と言われるほどで、今後の高い成長が見込まれている。将来性だけでなく、法人税の最大9年間免除や関税免除措置といった税制優遇に加え、非常に廉価な労働力等、現在でも十分魅力的ではあるが、日系企業のカンボジア進出は未だ緒に就いたばかり。

競合の少ない段階で進出する事により中小企業でもいち早く優位なポジションを獲得する事が可能な事から、同社は現地法人を設立し、カンボジア進出を考えている日本の中小企業に対し、カンボジア進出の「検討段階」から「進出後」まで、トータルでサポートしていく考え。
「検討段階」では、企業化調査、レンタルオフィスの提供、現地視察ツアー等で十分な情報収集を支援し、「進出後」は、現地法人設立、現地スタッフ雇用、総務・経理などのバックオフィス業務からOA・ネットワーク環境等のITサポートまで、複雑な海外進出を「ワンストップ」で支援する。
 
カンボジア王国概要
面積 :181,035km2(日本の約半分)
人口 :約1,340万人。首都プノンペンは
   約170万人
民族 :クメール人が全体の90%以上
公用語:クメール語
時差 :日本との時差は2時間遅れ
GDP  :10,800百万ドル(2009年)
   :IMF予測
通貨 :通貨単位はリエル(RIEL)
産業 :観光・サービス(37.5%)、
   農業(31.7%)、鉱工業(23.8%)
 
 
取材を終えて
同社では、中小企業が発展するための方策として、「情報通信を活用した経営の高度化」と「国外の成長機会の取り込み」の2点を挙げている。ヒト、モノ、カネでは大企業が有利だが、フットワークを活かし情報をタイムリーに経営に役立てる事ができれば、中小企業にも勝機があるとの考えだ。また、成熟した国内では成長余地が限られるが、国外の成長機会を取り込む事ができれば潜在成長力を高める事ができる。そのためには今後の高い成長が見込める新興国への進出が不可欠であるとの考え。ただ、中小企業にとって海外展開はハードルが高い。そこで同社は、10年前の中国と言われ、今後の高い成長が見込まれるカンボジアに現地法人を設立した。カンボジアの魅力は、未だ大手企業の進出が少なく、中小企業にもビジネスチャンスが多い事。また、同社の大久保会長兼社長は公益財団法人CIESF(シーセフ)の理事長を務めており、カンボジアの内情に明るく、人脈も有する。既に大手メーカーを支援した実績もあり、今後の展開が期待される。