ブリッジレポート
(6890) 株式会社フェローテックホールディングス

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ブリッジレポート:(6890)フェローテック vol.26

(6890:JASDAQ) フェローテック 企業HP
山村 章 社長
山村 章 社長

【ブリッジレポート vol.26】2010年3月期業績レポート
取材概要「半導体・液晶関連の回復で11/3期は利益が急増する。このため経常利益は過去最高となった08/3期の水準に迫る見込みだが、注目したいのは、今期の売・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年6月29日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フェローテック
社長
山村 章
所在地
東京都中央区京橋 1-4-14
決算期
3月
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年3月 31,541 703 524 156
2009年3月 36,653 2,790 2,097 743
2008年3月 36,625 3,057 2,414 1,903
2007年3月 32,517 2,288 2,081 1,703
2006年3月 23,946 1,210 1,040 708
2005年3月 21,105 1,762 1,456 633
2004年3月 15,000 615 -177 -645
2003年3月 12,845 111 -626 -899
2002年3月 14,775 916 984 -357
2001年3月 16,435 2,665 2,561 1,644
2000年3月 7,988 892 629 288
株式情報(6/17現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
936円 24,803,678株 23,216百万円 0.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12.00円 1.3% 54.83円 17.1倍 892.19円 1.0倍
※株価は6/17終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フェローテックの2010年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
シリコン単結晶引上装置等の太陽電池関連製品、半導体製造装置やフラット・パネル・ディスプレイ(FPD)製造装置の部品、半導体材料、各種温度調節に使われるサーモモジュール等の製造・販売を行っている。いずれも目に触れる機会はないものの、パソコンや携帯電話、液晶やプラズマ等、身近な分野で同社の技術が活かされている。
もともとは磁性を持つ液体である磁性流体応用製品のメーカー。その代表例が、半導体やFPDの製造装置の部品となる真空シールであり、我国の半導体・液晶の製造装置産業の発展に大きく寄与した。磁性流体応用製品に次ぐ主力製品となったサーモモジュールもそうだが、Only Oneの製品であり、超精密部品であるため、金属加工や表面処理等で高い技術が要求される。この技術を中国に持ち込み、現地の安価な労働力と融合させたのが、事業セグメントの一つである受託生産(CMS)事業である。更に、近年、急速な伸びを示しているのが、シリコン結晶製造装置や石英坩堝等の消耗品を手掛ける太陽電池関連事業である。太陽電池の材料となるシリコン結晶製造装置には、同社の製品である真空シールが主要部材として使われており、これまで蓄積してきた技術やノウハウが活かされている。

国内外の連結子会社19社及び持分法適用会社5社とグループを形成しており、事業セグメント及び売上構成比は次の通り。
 
装置関連事業    (37.5%) 真空シール、石英製品、半導体用シリコンインゴット、セラミックス、EB-ガン等
太陽電池関連事業  (33.5%) シリコン(多・単)結晶製造装置、太陽電池用シリコンインゴット、石英坩堝
電子デバイス事業  (11.9%) サーモモジュール、磁性流体等
受託生産(CMS)事業(17.1%) シリコンウェーハ加工、装置部品洗浄、工作機械製造等
 
 
 
2010年3月期決算
 
 
前期比13.9%の減収、同75.0%の経常減益
半導体や液晶の投資及び生産の落ち込み加え、太陽電池セルメーカーの投資抑制、更には自動車生産の落ち込みによるサーモモジュールの苦戦等で全てのセグメントで売上が減少。人件費を中心に諸経費の削減に努めたものの、工場稼働率の低下等による売上総利益率の悪化もあり、営業利益は同74.8%減少した。ただ、第3四半期以降の受注の回復は顕著であり、下期は前年同期比増収・増益に転じ、売上・利益共に上期決算発表時の予想を上回った。
 
(2)セグメント別動向
 
装置関連事業
半導体の投資や生産の落ち込み等で売上が減少し、固定費負担をカバーできなかった。ただ、稼働率の急回復を背景に台湾・韓国メーカーの半導体・液晶関連の設備投資が再開された事に加え、欧米市場でのLED製造装置向けの需要もあり、真空シールの売上が回復傾向にある他、デバイスメーカーの生産調整の終了により、石英製品、セラミックスなど製造プロセスに使用する消耗品の需要も回復に転じている。
 
太陽電池関連事業
太陽電池セル生産時の消耗品である石英坩堝の販売が堅調に推移した他、太陽電池用シリコン単結晶も下期の回復で通期では増収となったものの、太陽電池セルメーカーの設備投資抑制によるシリコン結晶製造装置の落ち込みをカバーできなかった。ただ、シリコン結晶製造装置は、引き合い及び受注が増加傾向にあり、昨年末には大口顧客からの受注も得た。
 
電子デバイス事業
電子デバイス事業は売上高の大半をサーモモジュールの売上が占めており、また、サーモモジュール売上の約70%が自動車温調シート向けである。10/3期は上期の自動車生産の落ち込みが響き通期でも減収となったが、各国での景気刺激策効果や中国等での自動車販売の好調を受けて、下期以降、自動車温調シート向けが増収に転じている。また、空気清浄機・エアコン等の民生機器向けやバイオ機器向けも回復傾向にあり、足下は堅調。
 
受託生産事業
半導体や液晶表示装置の生産の減少でシリコンウェーハ加工や装置部品洗浄が落ち込んだ他、最終需要家の購入抑制や生産調整の影響を受けて工作機械製造も低迷した。
 
 
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末の総資産は前期末比1,011百万円増の47,963百万円。300万株相当の新株予約権の行使により3,079百万円を調達。下期以降の売上の回復で増加した運転資金を賄った他、有利子負債を削減し財務の健全化を図った。CFの面では、利益の減少や運転資金の増加で営業CFが減少したものの、定期預金の預入の減少、設備投資の減少、及びM&A関連の支出の減少等により投資CFのマイナス幅が大幅に縮小したため、853百万円のフリーCFを確保した。有利子負債の削減を進めたため、財務CFがマイナスとなったものの、現金及び現金同等物期末残高は前期末比457百万円増加した。
 
 
 
2011年3月期業績予想
 
 
前期比20.5%の増収、同344.5%の経常増益予想
半導体・液晶の設備投資や生産の回復で装置関連事業の売上が大きく伸びる他、シリコンウェーハ加工や装置洗浄を中心に受託生産事業の売上も増加する。太陽電池関連では主要顧客の大型工場新設・稼動に伴う受注の増加が見込まれる他、電子デバイスも自動車温調シート向けを中心に堅調に推移する見込み。利益面では、増収効果と売上構成比の良化で売上総利益率が改善、変動費の増加や人件費の正常化による販管費の増加を吸収して営業利益は同3.9倍に拡大する見込み。営業外損益が悪化するのは助成金収入や為替差益等を見込んでいないため。また、特別損益も見込んでいない。為替前提は1ドル=90円(前期は93円)。配当は1株当たり12円を予定している。
 
 
装置関連事業
真空シールは、半導体がアジア市場及び米国市場で好調な上、国内市場も回復傾向にある。市場拡大が続くLED向けの増加も見込まれる。この他、韓国・台湾企業の中国工場新設によりFPD関連で新たな需要が見込める他、ロボットメーカーからの引き合いも活発化している。また、リチュウム電池用設備や太陽電池用薄膜装置向け等の異業種への営業を展開している真空シールのサブ・アセンブリ品も好評で、中国工場の組立エリアを拡張して受注増に対応しており、工場の人員増強を計画中。石英製品はアジア、国内、米国大手OEM先からの受注が増加している事に加え、台湾メモリーメーカーの増産・設備投資計画も相次いでいる。ただ、同社がシェア50%を有するLED装置向けの受注増で納期が厳しい事に加え、急激な需要回復で石英材料メーカーの供給不足及び製造コストアップによる材料値上も進行中である。このため、製販一体により合理化を図るべく子会社FTクオーツを吸収合併した他、短納期対応を最重要視し生産設備増強を計画しており、材料供給不足や材料値上げに対応した価格値戻しも要請中。 この他、コア技術を活かし、真空チャンバー、搬送用ロボット等の新たな分野も強化していく考え。
 
営業を強化している真空シールのサブ・アセンブリ品
 
セラミックス製品は、半導体の検査冶具(垂直型プローブカードのプローブピンのガイド板)として使われるマシナブルセラミックス“ホトベール”の売上が、フラッシュメモリー向けの数量増と用途拡大(ロジック向け)で増加。D-RAM等のメモリーの製造装置向けが中心のファインセラミックスも、台湾、韓国等の半導体投資の回復を受けて堅調な推移が見込まれる。また、現在、米国メーカー2社の認定を受けており、今後、課題だった海外販売が加速する見込み。
 
太陽電池関連事業
太陽電池シリコン製造装置は主要顧客の大型工場新設に伴い受注や引合いが活発化しており、高機能・高効率の新型機種を発売した他、角切りソー、ウェーハ検査装置など関連装置の品揃えも進んだ。太陽電池用シリコン結晶は製品価格の低下を想定しているものの数量増で吸収、製造を開始する多結晶ウェーハの寄与もあり売上が増加する。業績予想には織り込んでいないものの、製造工程で使われる消耗品の坩堝は米国工場(オレゴン州)の年末稼動を計画している他、多結晶用ベッセル(角型坩堝)の準備も進んでいる。客先からの値下げ要求は根強いものの、引き続き二桁成長が見込まれる。
また、下流工程の製造装置分野への展開も進めており、この一環として、ウェーハ検査装置の販売を6月に開始する。
 
電子デバイス事業
主力の自動車温調シート向けは政府支援等による需要の先食いによる下期の調整を想定しているが、医療検査やバイオ機器向けが伸びる他、民生機器向けも採用製品が拡大。また、半導体向けも回復に転じる見込みで、自動化ラインを拡大してコスト競争力を高めると共に需要の季節変動に柔軟に対応できる体制を整える。この他、光通信市場向けの拡大や民生機器の新アプリケーショ開拓に取り組む他、CO2削減や発電用モジュール開発を進める。
 
受託生産事業
半導体需要の回復でウェーハ加工が増加する他、工作機械製造・その他も中国市場向けの製品が増加する見込み。FPD関連が好調な装置部品洗浄は中国ファウンドリーから上海以外での稼動要請を受けており、現在、検討中。また、これまでサービスの提供先がコバレントマテリアル(株)に限定されていたウェーハ加工について、コバレントマテリアル(株)グループと提携して幅広くユーザーを開拓していく。
 
 
太陽電池関連事業の拡大
 
シリコン結晶製造装置、太陽電池用シリコン(インゴッド)、及び坩堝等の消耗品群のラインナップの拡充と販売の強化に取り組むと共に、工場立ち上げや受託加工等、製造ノウハウ、消耗品、材料を組み合わせたトータルソリューション(製造装置事業+消耗品+結晶事業+サポート事業)の提供により高付加価値化を図っていく考え。
 
(1)シリコン結晶製造装置
シリコン単結晶及びシリコン多結晶の製造装置の開発・販売を行っているが、今後、従来の製品に加え、単結晶150kg、多結晶800kgといった大型装置の投入を予定している他、角切りソー(5月発売)、ウェーハ検査装置等、周辺装置の開発にも力を入れていく考え。
 
 
(2)太陽電池用シリコン(インゴッド)
シリコン単結晶及びシリコン多結晶の製造・販売を行っており、今後は、顧客ニーズに沿った製品の開発に加え、受託生産(CMS)事業のウェーハ加工で培った技術を活かしウェーハの販売を開始する。
 
 
(3)消耗品群
石英坩堝(単結晶製造装置の消耗品)については、現在の旺盛な需要に応えるべく中国工場の増強により供給量を引き上げる他、米国工場も稼動する(最終的には中国及び米国で20,000個体制を構築する)。また、多結晶用ベッセル(角型坩堝)やホットゾーン(カーボン坩堝)等の製造・販売を開始し品揃えも強化する。
 
 
(4)トータルソリューション
太陽電池関連事業の最終的なビジネス形態として、製造装置事業+消耗品+結晶事業+サポート事業によるトータルソリューションの提供を目指しており、ストックとフローのバランスの取れた収益構造の構築を念頭に事業を進めていく。
 
 
 
取材を終えて
半導体・液晶関連の回復で11/3期は利益が急増する。このため経常利益は過去最高となった08/3期の水準に迫る見込みだが、注目したいのは、今期の売上高・利益の増加よりも、来期以降の業績拡大に向けた投資とその進捗である。欧州での金融不安等で株式市場全体を取り巻く環境が厳しい事もあるが、業績のV字回復にもかかわらず株価がさえないのは、「中長期的な成長に不安は無いが、確固たる自信も持てないから」であると考える。このため、事業環境の好転を活かし、装置関連事業の安定性を高めると共に太陽電池関連事業の基盤を強化する必要がある。11/3期のセグメント別の見通しや「4.太陽電池関連事業の拡大」の中で示された具体的な施策は、11/3期だけなく中長期的な観点からも的を射たものであり、これら施策の進捗に注目したい。