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ブリッジレポート:(4709)インフォメーション・ディベロプメント vol.32

(4709:JASDAQ) インフォメーション・ディベロプメント 企業HP
舩越 真樹 社長
舩越 真樹 社長

【ブリッジレポート vol.32】2010年3月期業績レポート
取材概要「10/3期は厳しい決算となったものの、原価低減努力が一定の成果を上げた他、苦戦が続く(株)シィ・エイ・ティの「のれん」を一括償却する等、「攻め・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年6月1日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社インフォメーション・ディベロプメント
会長
尾﨑 眞民
社長
舩越 真樹
所在地
東京都千代田区二番町 7-5
決算期
3月
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年3月 17,263 850 864 155
2009年3月 18,458 1,057 1,109 563
2008年3月 18,032 1,200 1,191 594
2007年3月 14,692 1,024 1,024 550
2006年3月 13,028 851 845 430
2005年3月 11,378 550 557 119
2004年3月 11,203 625 628 203
2003年3月 11,668 598 591 274
2002年3月 11,081 548 546 272
2001年3月 9,738 756 735 242
2000年3月 8,468 640 586 320
株式情報(5/11現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
540円 7,428,097株 4,011百万円 2.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
19.00円 3.5% 74.04円 7.3倍 770.53円 0.7倍
※株価は5/11終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
インフォメーション・ディベロプメントの2010年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
金融向けITアウトソーシング業務に強みを持つ独立系の情報サービス会社。優良顧客との継続的な取引を特徴としており、好不況の波の大きいIT業界にあって、相対的に安定した収益基盤を有する。事業は、システム運営管理、ソフトウェア開発・保守、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)、その他に分かれ、各事業の概要は次の通り。
 
システム運営管理(ITO)
1,000名規模の技術者を擁する専門部隊が、導入後のシステム運営管理をサポート。ミドルウェアのカスタマイズからハードウェアの保守、24時間体制のオペレーションまで、トータルかつ高付加価値のアウトソーシングを実現している。
ソフトウェア開発・保守(SI)
「独立系SE集団」として、特定のマシン、OS、ツール、開発言語にとらわれず、顧客の開発ニーズに合わせたシステム構築をサポート。大型汎用機から携帯端末まで、金融、公共、サービス分野を中心に豊富な実績を誇る。
ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)
金融機関等へ「データ入力」、「バックオフィス」、「ヘルプデスク」、「要員派遣」、「デジタルソリューション」などのサービスを提供している。
その他
セキュリティ&コンサルティングを中心に展開している。「セキュリティ・マネジメント」、「外部からの攻撃対策」、「内部不正への対策」の3つの側面から企業をサポート。世界の大手ベンダーと提携し、各種セキュリティ製品の提供からコンサルティング、セキュリティ環境の構築・導入・運用・サポートまで一貫したサービスを提供している。
 
 
<IDグループ>
同社の他、収益が安定しており営業エリアで補完関係が強い(株)日本カルチャソフトサービス(出資比率100%。以下、CS)、日本ユニシス(株)との合弁会社(株)ソフトウエア・ディベロプメント(80%、SD)、情報システム・コンサルティング等の(株)プライド(54.4%)、紙データの電子化技術を有する(株)シィ・エイ・ティ(59.5%、CAT)、及び中国でのオフショア開発を担う艾迪系統開発有限公司(100%、ID武漢)の連結子会社5社で企業グループを形成している。
 
 
2010年3月期決算
 
 
企業のIT投資の縮小や経費節減を受けて、ソフトウェア開発やアウトソーシングが苦戦
連結売上高は前期比6.5%減の17,263百万円。主力のシステム運営管理が微増収となったものの、ソフトウェア開発の受注不振や大型案件の終了によるデータ入力業務の落ち込みが響いた。利益面では、内製化の推進及び生産性向上(外注活用の効率化と時間外勤務の抑制等)により売上総利益率が19.2%と0.6ポイント改善したものの、売上の減少とM&Aに伴う人件費(1,592百万円→1,676百万円)やのれん償却費(99百万円→150百万円)等の増加で同19.5%の営業減益。受取配当金の減少(62百万円→11百万円)等で営業外損益が悪化した他、2期連続で赤字となったCATの「のれん」の減損損失(一括償却)251百万円など特別損失279百万円を計上したため、当期純利益は同72.5%減少した。尚、減収・減益となったものの、内製化の推進及び生産性向上施策等によるソフトウェア開発・保守における収益性改善で営業利益及び経常利益が上期決算発表時の予想を大きく上回った。
 
 
システム運営管理
顧客からの値下げ要請が続いているものの、潜在需要の掘り起こしが進み、ほぼ前期並みの売上を確保した。
ソフトウェア開発・保守
電力・ガスといった公共分野が好調に推移したものの、金融関連の案件減少及び一部連結子会社における受注不振の影響をカバーできなかった。ただ、内製化の推進及び生産性向上により営業利益は過去最高となった模様。
データ入力部門
株券電子化の施行に伴う証券代行案件の終了により売上が大きく減少した。
 
 
金融機関向け(売上構成比52.6%の内訳は、銀行向け46.2%、保険関連が6.4%)は主要取引先であるメガバンク向けが減少した他、大型案件の終了で大手生保向けも減少。情報・通信・サービス向けも戦略パートナーであるSIerの苦戦が響き売上が減少した。一方、電力、ガス向け等の公共を中心にその他向けの売上が増加した。尚、契約形態別売上構成比は、直接契約が82.8%、子会社が中心となる戦略パートナーが17.2%。
 
 
(株)日本カルチャソフトサービスは不採算事業からの撤退により売上が減少したものの、営業利益は増加した。一方、(株)ソフトウエア・ディベロプメントは戦略パートナーの苦戦が響き減収・減益。また、2期連続で赤字となった(株)シィ・エイ・ティは「のれん」を一括償却すると共に、舩越社長をはじめ関係する役員が3ヶ月間の報酬を返上する事でけじめをつける。
 
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比572百万円減の9,483百万円。「のれん」の減損処理により無形固定資産が大きく減少した他、有利子負債の削減を進めたため現預金も減少した。CFの面では、M&A関連の支出が無くなり投資CFのマイナス幅が縮小したものの、利益の減少による営業CFの減少が響きフリーCFが前期の471百万円から232百万円に減少。有利子負債の削減を進めたため財務CFのマイナス幅も拡大した。ただ、期末の有利子負債残高は短期借入金を中心に698百万円にまで減少しており、実質的には無借と言える健全経営である。
 
 
 
業界動向と同業他社の状況
 
(1)業界動向
経済産業省発表の「特定サービス産業動態統計調査」(10年4月12日発表)によると、情報サービス産業の売上高は、09年6月からマイナス成長が続き、10年2月まで9ヶ月連続の減少となった。
 
 
(2)同業他社の状況
厳しい事業環境が続き、09年度は同業他社も軒並み減収・減益決算を強いられた。
 
 
(3)2010年の見通し
最悪期を脱した感はあるものの、同社では10年度(同社における11/3期)も厳しい事業環境が続くと見ており、回復は11年度(同12/3期)以降と考えている。
 
 
(4)同業他社の10年度予想
10年度は同業他社も業績回復を見込んでいるものの、総じて売上の伸びは低く、コスト削減等を中心にしたものと思われる。
 
 
 
2011年3月期業績予想
 
 
前期比1.4%の増収、同21.5%の経常増益予想
データ入力に大口案件終了の影響が残るものの、既存顧客の深耕が進む事でソフトウェア開発・保守の売上が伸びる他、高付加価値サービスの提供による受注拡大でシステム運営管理の売上も増加する見込み。利益面では、内製化の推進及び生産性向上効果が通期で現れ売上総利益率が一段と改善。のれん償却費を中心に販管費も減少するため、営業利益が同23.4%増加する見込み。期末配当は1株当たり19円を予定している。
 
(2)中期的な方向性
「サービスの統合」、「クラウド」、及び「中国での深耕」をキーワードに顧客との関係強化に努める。
 
 
①市場の変化(「作る」から「使う」)への対応
クラウドコンピューティングが実用段階を迎え、情報システムは「作り保有する」時代から「サービスを利用する」時代へ移行しつつある。このため、情報サービス各社も業務の変革を求められている。同社は業務の選択と集中を進めると共に、新規サービスの開発とM&Aによる新たな技術や取引先の取り込みにより更なる飛躍を図る考え。
 
 
②売上拡大タクティクス
・既存顧客の深耕
(株)プライドのコンサルティングやID武漢のオフショア等、グループの経営資源をフルに活用してBOO戦略を推進し既存顧客の深耕を図る。尚、BOO(ビジネス・オペレーションズ・アウトソーシング)とは、川上から川下まで一括サービスを提供する事(一顧客複数取引)。
 
 
・グローバル戦略
オフショアビジネスの拡大を図るべく、2010年1月に無錫支店を開設しBPOオフショアセンターをオープンした(オフショア開発は04年4月に稼動)。中期的には、オフショアビジネスにとどまらず、中国市場の開拓にも力を入れていく考え。
 
 
 
取材を終えて
10/3期は厳しい決算となったものの、原価低減努力が一定の成果を上げた他、苦戦が続く(株)シィ・エイ・ティの「のれん」を一括償却する等、「攻め」の経営に転じるための体制整備が進んだ。今後、景気や企業業績の回復と共にIT投資も回復していくだろうが、ITバブル期のようなバラ色のシナリオは描き難い。このため、総花的な事業展開ではなく、得意分野に経営資源を集中させると共に、強みに磨きをかけていく必要がある。同社においては、ITO、SI、BPOと言った既存サービスのクロスセルによる優れた顧客資産の有効活用、システム運営管理で培った技術とノウハウのクラウドコンピューティングへの応用、更には中国拠点の活用による新たな需要の開拓等がポイントになると思われる。