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ブリッジレポート:(2462)ジェイコムホールディングス vol.15

(2462:東証1部) ジェイコムホールディングス 企業HP
岡本 泰彦 社長
岡本 泰彦 社長

【ブリッジレポート vol.15】2010年5月期 第3四半期業績レポート
取材概要「主力の営業支援サービスは、携帯電話業界向けにサービスの企画・提案を強化している他、アパレル、求人サイト等その他業界へサービスの対象を・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年4月27日掲載
企業基本情報
企業名
ジェイコムホールディングス株式会社
社長
岡本 泰彦
所在地
大阪市中央区西心斎橋 2-1-3
決算期
5月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年5月 14,162 913 953 340
2008年5月 12,404 885 907 489
2007年5月 9,605 812 786 444
2006年5月 6,657 594 552 274
2005年5月 4,684 284 281 152
2004年5月 3,271 142 141 56
2003年5月 2,222 90 88 45
2002年5月 1,616 77 76 40
2001年5月 1,369 73 70 34
株式情報(4/13現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
99,700円 45,630株 4,549百万円 9.4% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
4,000.00円 4.0% 9,642.78円 10.3倍 83,138.99円 1.2倍
※株価は4/13終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
ジェイコムホールディングスの2010年5月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
純粋持株会社である同社、総合人材サービス事業と携帯電話キャリアショップの運営を手掛ける連結子会社ジェイコム(株)、認可保育園等の運営を手掛ける持分法適用関連会社(株)サクセスアカデミー、及び人材育成等を手掛ける関連会社(株)ガーディアンシップの4社でグループを形成。主力の総合人材サービス事業では、携帯電話業界に特化した差別化戦略が奏功し、業界動向や顧客ニーズを的確に捉えたサービスと情報の提供が顧客企業から高い評価を受けている。ただ、中期的には、既存事業を中心にしつつも、グループ全体での幅広いサービスの提供を目指している。
 
<沿革>
1993年9月、パッケージ旅行の企画会社(株)パワーズインターナショナルとして設立されたが、携帯電話市場の成長性に着目して96年4月に携帯電話ショップの運営を開始。同年11月にはジェイコム(株)に商号を変更すると共に定款を変更し携帯電話業界に完全にシフトした。98年10月にはショップ運営のノウハウを活かして携帯電話業界向け人材ビジネスに参入。人材ビジネスの順調な拡大を背景に、2005年12月の東証マザーズ上場、更には07年2月の東証1部への市場変更とステータスも向上した。
09年12月には、更なる業容の拡大を目指して持株会社体制へ移行。商号をジェイコムホールディングス(株)に変更した。
 
<事業内容>
事業は総合人材サービス事業と携帯電話ショップ運営のマルチメディアサービス事業に分かれ、09/5期は前者の売上高が全体の96.1%を占めた。主力の総合人材サービス事業では、携帯電話ショップや量販店等販売店向けのスタッフ派遣(販売支援サービス)や業務請負(アウトソーシングサービス)の営業支援サービス、職業紹介や紹介予定派遣を行う就職支援サービス、及びオフィスやコールセンターへのスタッフ派遣等を行う人材派遣サービスを手掛け、マルチメディアサービスでは、各通信キャリアと丸紅テレコムとの三者間契約により、関西地区でドコモショップ1店舗、ソフトバンクショップ1店舗を運営している。
 
<若年層のステップアップを支援>
総合人材サービス事業では、派遣社員等やアルバイトを受け入れる企業側のメリットだけを追求するのではなく、働く側のキャリアアップにも配慮している。具体的には、派遣社員もしくはアルバイトとして採用した社会経験の浅い学生やフリーター等の若年層を、教育やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)により勤続年数に応じてステップアップさせ、最終的には希望する職業へ正社員として就職できるよう支援するシステムが構築されている。
 
2010年5月期第3四半期決算
 
 
前年同期比4.3%の減収、同5.5%の経常減益
携帯電話の販売台数減少に伴い販促活動が抑制された携帯電話業界向けを中心に総合人材サービス事業の売上が減少した。利益面では、スタッフの採用効率改善や連結子会社インダス(株)の売却により販管費が減少したものの、高収益分野の苦戦やインダス(株)の売却等で売上総利益率が悪化。売上の減少と相まって営業利益は同5.7%減少した。尚、四半期純利益の増加は特別損益の改善によるもので、前年同期はインダス(株)の「のれん」の減損損失259百万円等を特別損失に計上した。
 
(2)事業別動向
総合人材サービスの売上高は前年同期比4.2%減の9,693百万円。携帯電話販売台数の減少による販促費抑制の影響を受けて携帯電話業界向けの売上が減少した他、金融業界向けの売上も落ち込んだ。また、携帯電話の販売台数の減少で、マルチメディアサービスの売上高も372百万円と同8.1%減少した。
 
<総合人材サービスの動向>
 
主力の営業支援サービスでは、業務委託契約への切替やキャンペーン事業強化によりアウトソーシングサービスの売上が増加したものの、企業の販促活動の抑制等による販売支援サービスの落ち込みをカバーできなかった。また、新卒採用を手掛けていたインダス(株)を売却したため、就職支援サービスの売上も減少した。
 
 
世界的な信用収縮により厳しい事業環境にある金融業界向けの売上が落ち込んだ他、携帯電話業界向けも、販売力・説明力のあるスタッフへの需要が堅調に推移したものの、販促費抑制の影響で全般には低調な推移となった。
 
 
受注を強化した大手代理店向けの売上が増加したものの、販促費抑制の影響等で携帯キャリア向けの売上が減少した。
 
 
首都圏を中心とした東日本地区での売上が伸びたものの、関西圏での苦戦が影響し西日本地区で売上が減少した。
 
 
 
原価率が1.3ポイント上昇したものの、販管費の削減により営業利益率は0.1%の低下にとどまった。
 
①売上原価   対売上比 80.7% → 82.0%(個別:81.3%→82.0%)
派遣から業務委託への契約変更により一部案件では利益率が改善(原価率が低下)したものの、就職支援サービスや開通センターなど高収益分野が苦戦した他、利益率の高いインダス売却の影響もあり原価率が上昇した。
 
②販管費   対売上比 13.3% → 12.2%(個別:12.3%→12.0%)
厳しい雇用情勢を背景に登録者が増加したため採用効率が改善した他、教育活動の効率化も進み採用教育費が84百万円減少した。この他、人員体制や業務の見直しが進み全般に経費削減が進んだ事に加え、インダスの売却も81百万円の販管費減少要因となった。
 
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
第3四半期末の総資産は前期末比43百万円増の5,194百万円。借方では、有価証券や信託受益権の償還等により現預金が増加した他、サクセスアカデミーの株式取得により投資その他の資産が増加した。貸方では、売上の減少に伴い未払金(未払給与及び社会保険料等)が減少する一方、利益の計上や新株予約権の行使等で純資産が増加した。CFの面から見ると、未払金の減少等による運転資金の増加で営業CFが減少する中、(株)サクセスアカデミーの株式取得等で投資CFがマイナスとなったため、前年同期は332百万円の黒字だったフリーCFが202百万円のマイナスとなった。また、財務CFのマイナスが減少したのは、自社株買いを行わなかったため。
 
 
2010年5月期業績予想
 
 
前期比5.1%の減収、同16.1%の経常減益予想
第3四半期決算発表と同時に通期業績予想を下方修正した。入学・進学シーズンと重なる第4四半期は、例年、主力の携帯電話業界を中心に営業支援等の人材需要が盛り上がるものの、今期は見通しを引き下げた。ただ、配当については期初の発表通り1株当たり2,000円(上期末配当と合わせて年4,000円)の期末配当を実施する予定。
 
 
(2)重点施策
同社では、10/5期を「景気回復局面における売上の飛躍的拡大のための足場固めの期」と捉えており、“収益性の向上”と“他社との差別化”に向けて次の4つの施策に取り組んでいる。
①携帯電話業界におけるシェア拡大
携帯業界の業務委託化への対応
携帯販売代理店・キャリアショップ向け研修、或いはスマートフォンやデータ通信端末の販売支援等の関連事業での受注拡大
②収益率の向上
(株)テー・オー・ダブリューとの資本・業務提携による「セールスプロモーション」の事業拡大
倉庫物流系等新規業務委託の拡大
コールセンターの受注拡大
コストコントロールによる高収益体質の維持
③新規ビジネス及び新規業界への注力による第2の柱の構築
業種特化・採用課金型の成果報酬求人サイト事業への参入
認可保育園・認証保育所の運営等を手掛ける(株)サクセスアカデミーへの出資
④キャリアアップ支援の充実とコンプライアンスの徹底
教育研修体制の充実
持株会社体制の構築により、グループ経営のガバナンス及びコンプライアンスの強化
改正労働者派遣法への対応を順次実施
 
取材を終えて
主力の営業支援サービスは、携帯電話業界向けにサービスの企画・提案を強化している他、アパレル、求人サイト等その他業界へサービスの対象を広げているものの、企業の販売促進活動の抑制や販売スタッフの雇用調整が想定以上に厳しく苦戦を強いられている。ただ、足下で進行している労働者派遣法の改正に伴う派遣から請負への需要のシフトは、請負業務での豊富な実績に加え、優れた財務内容や東証1部上場企業としての信用力を有する同社にとって事業拡大のチャンスである。また、現在4兆円と言われるプロモーション市場において、“店頭領域におけるプロモーション”の事業拡大につながる(株)テー・オー・ダブリューとの資本・業務提携も中期的には楽しみな材料である。こうした商機をいかにして捉えていくかが、今後のポイントとなる。