ブリッジレポート
(4767) 株式会社テー・オー・ダブリュー

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ブリッジレポート:(4767)テー・オー・ダブリュー vol.20

(4767:東証1部) テー・オー・ダブリュー 企業HP
川村 治 会長
川村 治 会長
秋本 道弘 社長
秋本 道弘 社長
【ブリッジレポート vol.20】2010年6月期上期業績レポート
取材概要「上期決算は厳しい事業環境を反映したものとなった。企業業績の悪化により広告費が抑制され、また、広告予算を全額使い切らない企業も増えていると・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年3月23日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社テー・オー・ダブリュー
会長
川村 治
社長
秋本 道弘
所在地
東京都港区虎ノ門 4-3-13 神谷町セントラルプレイス
決算期
6月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年6月 14,210 1,401 1,392 876
2008年6月 14,397 1,362 1,343 729
2007年6月 13,070 1,051 1,041 551
2006年6月 12,341 781 784 423
2005年6月 10,705 771 782 465
2004年6月 9,638 781 765 466
2003年6月 9,441 1,103 1,073 537
2002年6月 8,600 940 920 462
2001年6月 7,555 756 730 371
2000年6月 5,995 556 537 238
株式情報(2/5現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
495円 11,511,813株 5,698百万円 17.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
32.00円 6.5% 45.64円 10.8倍 452.22円 1.1倍
※株価は2/5終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
テー・オー・ダブリューの2010年6月期上期について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
イベント・プロモーション業界のトップカンパニー。イベント及びセールスプロモーション(SP)の「企画」・「制作」・「運営」・「演出」を手掛けており、SPに関するグッズ・印刷物の企画・制作も行っている。約8,000社がしのぎを削る業界にあって、売上高が140億円を超える同社は頭一つ抜け出た存在。また、競合他社が限られた大手広告代理店とだけ取引しているのに対して、同社は国内外の大手広告代理店10社以上と取引しており、東京ドーム、幕張メッセ、国際フォーラム、東京ビッグサイト等、大型会場でのイベントを1社で受注できる制作力と資本力を有する。2000年7月に株式を店頭登録。07年6月の東証2部上場を経て、08年6月25日に東証1部指定替えとなった。
 
 
 
2010年6月期上期決算
 
 
前年同期比2.7%の減収、同46.2%の経常減益
4媒体(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ)の縮小が続く中で堅調に推移してきたプロモーションだが、一昨年秋のリーマンショック以後は減少に転じており、広告予算が一段と絞り込まれた09年度は更に厳しさを増した。こうした中、同社の上期は、横浜開港博関連等の大型イベントが堅調だった事で売上高がわずかな減少にとどまったものの、大型イベントは総じて利益率が低い事や全体的な売上の減少もあり売上総利益率が悪化。一方、人件費や家賃等を中心に販管費が増加したため、営業利益は同46.6%減少した。
 
 
上期末の総資産は前期末比559百万円減の8,534百万円。売上の減少に伴う売上債権及び仕入債務の減少や、未払法人税の減少が主な要因。
 
 
利益の減少や税負担の増加等で営業CFが減少する中、本社移転に伴う敷金の差入や有形固定資産の取得で投資CFがマイナスとなったが、フリーCFは黒字を維持した。財務CFのマイナスは、配当の支払等による。
 
 
案件獲得件数が645件と前年同期を下回ったものの、大型案件が堅調に推移した他、新規営業窓口や新規銘柄開発が進んだ事で1,000万円以下の案件の獲得が進んだ。新規営業窓口や新規銘柄については、この実績を中大型案件の受注(取引の拡大)につなげる事ができるか否かが今後のポイントであり、そのために実店舗でのプロモーション、Web、及びイベントを組み合わせた複合的な提案を強化していく考え。
 
 
厳しい事業環境の中、需要を掘り起こすべく自主提案を積極的に行った結果、勝率が低下したものの、新規営業窓口や新規銘柄開発が進み提案案件数が増加した。また、提案案件の単価が下がったものの、競合案件及び指定案件の単価は上昇している。つまり、クライアントは広告の絞込みは行っても、必要な広告には予算を惜しんでいないようだ。尚、勝率も、前期の下期(22.2%)との比較では改善している。
 
 
自動車や情報・通信に次ぐ、第3の柱となる業界の開拓に注力したものの、食品・飲料・嗜好品や精密機器・その他製造の売上が減少する等、十分な成果を上げる事ができなかった。同社では、「イベント中心の提案から複合提案へのシフトが必ずしも進んでいない事がその主因である」と考えている。
 
 
横浜開港博関連等で博展を中心にイベントの売上が増加したものの、プロモーション(SP)の減少を補えなかった。一昨年の秋に減少に転じたプロモーションだが、企業業績の悪化による総広告費の削減を受けて、今期は一段と厳しさを増した。
 
 
2010年6月期業績予想
 
(1)業績予想
通期業績予想に変更は無く、前期比4.7%の減収、同31.6%の経常減益予想
新規営業窓口や新規銘柄の開発が進むなど明るい材料はあるものの、下期も厳しい事業環境が続く見込み。ただ、下期は大型案件が無い事や原価管理の徹底による利益率の改善で、前年同期比14.7%の経常減益にとどまる見込み。配当は、1株当たり16円の期末配当を予定しており、上期末配当16円と合わせて年32円。
 
 
 
(2)受注残等の動向
受注残高が減少しているが、前年同期の受注残高には横浜開港博関連が6億円程度含まれていた(売上の一部が10/6期上期に計上される)事を考慮する必要がある。一方、期中受注・期中売上の源泉となる企画案件(竹・梅)が前年同期を上回っている事に加え、新規開拓の進捗で自動車・情報通信以外の業種でも提案件数が増加している。
 
 
 
(3)今後の対策
大手広告代理店が新聞・雑誌・ラジオ・テレビといったマス広告からプロモーションへのシフトを加速している事から、今後、プロモーション領域の更なる拡大が予想される。同社は、こうした市場環境の変化に対応すると共に自動車や情報・通信に次ぐ第3の柱を育成するべく、社内体制を見直すと共にワンストップ体制及び提案力の強化を図った。
 
基本施策
厳しい事業環境下で業績拡大を図る足下対策として、イベント中心からプロモーション全域での対応を強化すると共に、中期的な成長力強化策として、業界の傾向である専門特化型から脱却し、ワンストップ力を強化する事でゆるぎないポジションを確立する。
 
施策.1 社内体制の見直し
人員配置の見直しと対電通対応の新チームを編成した。人員配置の見直しでは、名古屋からの人員シフトで大阪支社や対電通を強化した他、博報堂チームの編成を見直した。また、担当役員がチームリーダーを兼務する未達成社員だけの対電通対応の新チームを編成し指導を強化する。
 
施策.2 ワンストップ体制と提案力強化
店頭・営業支援に強みを持つとジェイコムホールディングス(株)との資本・業務提携により店頭・流通対策を強化した他、(株)コンテンツからプロモーションWeb サイト制作事業を譲受しWeb部門を拡充すると共に、(株)ペッププランニングの子会社化によりグループのイベント制作体制を強化した。
 
店頭対策強化
店頭・営業支援に強みを持つジェイコムホールディングス(株)と資本・業務提携を締結した。共同営業開発、新プロモーションシステム開発、及び新コンテンツ開発に取り組むと共に、相互に約1億円規模の資本参加を行う。
 
Web部門拡充
Web対応力の強化やWeb&リアルプロモーションの提案力強化に加え、内政化を進めるべく、(株)コンテンツからプロモーションWebサイト制作事業を譲受した。
 
イベント制作体制強化
制作体制の強化とグループでの内製化推進により本社社員のプロデュース力の底上げを図るべく、メディアに強みを持ち、イベント制作で多くの実績を有する中堅イベント制作会社(株)ペッププランニングを子会社化した。
 
施策.3 収益力再強化
制作管理チームの権限強化、本部長を責任者とした指定案件の改善強化、及び内製化強化により収益力の再強化を図る。制作管理チームの権限強化では、仕入単価のチェックから案件全体の収益管理に制作管理チームの権限を広げた。また、内製化強化では、たWeb部門の拡充やイベント制作体制の強化を営業面だけでなく、収益力の強化にもつなげていく。
 
 
取材を終えて
上期決算は厳しい事業環境を反映したものとなった。企業業績の悪化により広告費が抑制され、また、広告予算を全額使い切らない企業も増えていると言う。こうした事業環境では営業努力が結果につながり難いものだが、1,000万円以下の案件が増加する等、積極的な企画提案活動の成果が徐々に現れつつある。日経新聞社の集計によると、上場企業の10/3期は、コスト削減等が主要因ではあるが、10%を超える増益が見込まれており、業績の底入れを受けて来期(11/3期)の広告予算は増加に転じる可能性が高い。加えて、同社自身においても、社内体制の見直しや資本・業務提携及びM&Aの効果が期待できる事から、業績は今期を底に回復に向かうものと思われる。