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(4955) アグロ カネショウ株式会社

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ブリッジレポート:(4955)アグロ カネショウ vol.26

(4955:東証2部) アグロ カネショウ 企業HP
櫛引 博敬 社長
櫛引 博敬 社長

【ブリッジレポート vol.26】2009年12月期業績レポート
取材概要「同社の利益予想は保守的な傾向が強く、10/12期予想についても例年の傾向通りと考える。「下方修正しなければ、それで良い」と言うわけではないが・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年2月23日掲載
企業基本情報
企業名
アグロ カネショウ株式会社
社長
櫛引 博敬
所在地
東京都港区赤坂 4-2-19
決算期
12月
業種
化学(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年12月 12,556 1,079 1,021 593
2008年12月 13,592 694 652 -108
2007年12月 13,391 533 476 258
2006年12月 12,851 576 497 272
2005年12月 12,154 442 385 114
2004年12月 10,742 536 366 186
2003年12月 7,322 -220 -208 -278
2002年12月 7,792 113 150 41
2001年12月 7,733 242 279 63
2000年12月 8,300 662 709 423
1999年12月 7,821 642 656 224
株式情報(2/12現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
790円 6,506,523株 5,140百万円 5.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.00円 2.5% 89.70円 8.8倍 1,620.30円 0.5倍
※株価は2/12終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
アグロ カネショウの2009年12月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
人と自然と環境にやさしい農薬づくりに取り組む農薬専業メーカー。売上の約96%を農薬の製造・販売が占め、国内の売上が全体の82.5%。病害・害虫防除剤、除草剤など果樹・野菜・花卉向けを主体とし、農家密着型の営業展開により他の農薬メーカーと差別化を図っている。一般の農薬流通は、農薬メーカーを起点として川上から川下に商品を押し込むプッシュ型だが、同社は農家を起点として需要を汲み上げるプル型の流通体制を構築している。
グループは、同社の他、ベルギーに本社を置き、D-Dやバスアミドといった農業用土壌処理剤事業を取り扱うKanesho Soil Treatment(同社出資比率60%。以下、KST)、及び染料、医薬、農薬等の受託製造・販売を手掛ける100%子会社の三和化学工業(株)の2社。
 
 
<沿革>
1951年、農業薬品・肥飼料の売買・輸入販売を目的に光洋貿易(株)として設立され、同年、商号を兼商(株)に変更。59年に兼商化学工業(株)を設立し、製造及び研究開発を本格化させた。60年以降は、販売特約店との共同出資による販社を全国展開。80年には大型新剤(土壌消毒剤)を投入、85年に兼商化学工業(株)と兼商(株)が合併し、現商号に変更。99年には自社開発のダニ剤「カネマイト」を発売した。2002年に生物農薬を手掛けるセルティス ジャパンを三井物産(株)と合弁で設立(07年に株式を三井物産に売却)。03年には独BASF社より農業用土壌処理剤事業を譲受し、同剤を取り扱うKSTをベルギーに設立。04年には染料、医薬、農薬等の受託製造・販売を行う三和化学工業(株)を子会社化した。資本政策では、93年の株式店頭公開を経て、2000年に東証2部に株式を上場した。
 
 
国内で農薬の製造・販売を行なうためには、薬効試験、薬害試験、人畜・環境への安全性試験など約200項目にわたる試験を経た後、農林水産省、厚生労働省、環境省、消費者庁、食品安全委員会の審査を受ける必要がある。一般的には、開発から登録まで1剤当たり約10年間、15億円の直接費用を要すると言われている。
 
線虫防除剤「ネマキック」の登録取得
2010年1月18日に、土壌処理剤(線虫防除剤)「ネマキック」の農薬登録が完了、2月18日に発売を開始する予定である。「ネマキック」は有機リン系の線虫防除剤で、作付け直前の使用が可能、長期間の残効性、線虫の種類を問わず安定した効果が期待できる等の特徴を有する。初年度5億円、5年内に15億円の売り上げを目指しており、「D-D」や「バスアミド」と共に線虫防除剤の粒剤の分野で早期に30%のシェアを確保したい考え(線虫防除剤には、粒剤と液剤があり、市場規模は前者が約40億円、後者が約45億円)。尚、線虫防除剤は、開発が難しい農薬のため競合剤が少なく、また、これまで線虫剤で抵抗性を示した例が無いため薬剤の寿命が長い。
 
 
「ネマキック」については、海外展開も進めていく考えで、韓国では既に5%粒剤と30%液剤の農薬登録申請を済ませており、前者が2011年に、後者が2012年に、それぞれ登録取得が完了する見込み。韓国の線虫防除剤市場は14~15億円規模で、同社は粒剤で年間270~300トン、液剤で5~7キロリットルの販売を目指している。韓国以外では、台湾や米国での展開を検討中である。
 
<農薬の必要性と市場規模>
無農薬栽培や有機栽培といった言葉をよく耳にするが、「農薬による病害虫や雑草の防除対策をしないと、農産物の世界の収穫量の30%以上が失われてしまう」と言われている。例えば、財団法人 日本植物防疫協会によると、農薬を使用しなかった場合の農作物の減収率は、水稲24.0%、小麦35.7%、桃70%、りんごに至っては97.0%との事。
また、除草剤が農作業の負担軽減に大きく貢献しており、農薬の使用は過酷な農作業からの開放にもつながり、農業を半世紀で30分の1に省力化しました。ともすると、「農薬=悪」と連想しがちだが、世界的な食糧増産の必要性が叫ばれる中で、環境との調和に配慮しつつ農作物を病気や害虫から守り、食糧増産を進めるために農薬は必要不可欠な存在と言える。
日本の農薬市場は1995年の3,876億円をピークに縮小が続いていたが、2007年の3,193億円を底に2009年は3,400億円にまで回復している。大まかな内訳は、野菜畑作が1,180億円、果樹550億円、水稲1,200億円、その他460億円。国内上位は、住友化学(株)、石原産業(株)、日産化学工業(株)等の総合化学大手で、同社は16位。
 
 
2009年12月期決算
 
 
値上げ効果と委託試験費の減少で55.4%の営業増益
カネマイトなど病害虫防除剤の値上げを実施したものの、値上げ前の駆け込み需要の反動減と対円でのユーロ安(152.0円→130.2円)の影響等で売上高は前期比7.6%減少した。ただ、値上げ効果による売上総利益率の改善に加え、円高ユーロ安で委託試験費を含めた海外子会社の円ベースの経費が減少したため、同55.4%の営業増益。営業外に為替差損104百万円を計上したものの、受取ロイヤリティーの計上や金融費用の減少でほぼ相殺、経常利益は同56.7%増加した。尚、前期の当期純損益が108百万円の損失となったのは、減損損失528百万円など特別損失619百万円を計上したため。設備投資は研究開発拠点である所沢事業所や福島工場の再構築を中心に1,102百万円(前期は884百万円)、減価償却費は790百万円(同746百万円)。
配当は、1株当たり期末普通配当20 円に、創立60 周年記念配当20円を加えた40 円を予定。
 
 
値上げ前の駆け込み需要の反動と円高ユーロ安で害虫防除剤が大きく落ち込んだ他、土壌処理剤を含めた病害防除剤も「バスアミド」や「D-D」が数量ベースで伸びたものの円高ユーロ安が響いた。一方、「ターム水溶剤(温州みかん向け)」、「ヒオモン水溶剤(りんご、梨向け)」、「アークランド液剤(メロン向け)」といった植物成長調整剤の新製品3剤の寄与もあり、除草剤の売上が伸びた。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比10百万円減の18,027百万円。借方では、CFの改善で現預金が増加した他、生産及び開発体制の整備に伴い有形固定資産が増加。一方、償却によりのれんが減少。貸方では、仕入債務や海外子会社の借入金減少で有利子負債が減少する一方、純資産が増加した。CFの面では、利益の増加と売上債権の回収が進んだ事で営業CFの黒字が大幅に増加(1,167百万円→1,932百万円)する一方、定期預金を解約し設備投資資金を確保したため、投資CFのマイナスが減少(△1,958百万円→△808百万円)。フリーCFは1,123百万円の黒字となった(前期は△790百万円)。
 
 
 
2010年12月期業績予想
 
 
前期比7.0%の増収、同6.0%の経常減益予想
「ネマキック」の寄与に加え、駆け込み需要の反動減の一巡、更には為替も若干の円安ユーロ高が見込まれ売上高が増加する。ただ、委託試験費の増加(200百万円)、「ネマキック」の広告・販促費負担、6月に増改築の終わる所沢事業所の減価償却費増(減価償却費全体で213百万円増)、更には円安ユーロ高による円ベースの海外子会社の販管費増(30百万円)等もあり、営業利益が同13.9%減少する見込み。営業外損益の改善は、為替差損を見込んでいないため。設備投資は358百万円を計画しており、減価償却費は1,003百万円を織り込んだ。為替の前提は1ユーロ=133.5円。配当は、記念配を落とし1株当たり期末20円を予定。
 
 
駆け込み需要の反動一巡で害虫防除剤が回復する他、「ネマキック」の寄与で病害防除剤が増加する。
 
(3)中期ビジョン -創立60周年、農家と共に100年企業を目指して-
同社は2010年に創立60周年を迎える。この記念すべき年に、「ネマキック」の登録を取得し、所沢事業所のリニューアルも完了する(10年6月予定)。今後は独創的な新剤を生み出す研究開発により更なるポートフォリオの拡大を図ると共に、農家密着型営業により需要を直接掘り起こす技術普及販売活動を推進していく事で新たな成長モデルを構築していく考え。また、「ネマキック」や「カネマイト」を中心に海外展開も積極的に進めていく考え。「ネマキック」は既に韓国での農薬登録申請を済ませており、台湾や米国での展開も検討中である。また、「カネマイト」は、現在、世界16カ国で販売されているが、2011年~2012年には32カ国に拡大する見込み。

こうした自社開発製品の拡大に加え、のれん償却や委託試験費の減少、更には有利子負債の削減に伴う支払利息の減少等も見込める事から、同社は中期ビジョンとして、12/12期に個別決算ベースで当期純利益6億円の達成を掲げている(2010年12月期予想340百万円)。2億円を研究開発のための内部留保に、2億円を社員へのために、そして2億円は株主還元に充てる考えだ。
 
 
取材を終えて
同社の利益予想は保守的な傾向が強く、10/12期予想についても例年の傾向通りと考える。「下方修正しなければ、それで良い」と言うわけではないが、同社の場合、天候や為替等の影響を大きく受けるため、止むを得ないところだ。しかし、今後、大型の設備投資一巡による減価償却費の減少、毎期7~8億円を計上しているKSTのれん償却の終了、「ネマキック」に続く新剤が順次登録を取得していく事による委託試験費の減少、更には有利子負債の減少による利払い負担の軽減等が見込まれ、「ネマキック」をけん引役とする売上の増加と相まって、収益性の大幅な改善が期待できる。同社は、10/12期に3.4億円を予想している個別ベースの当期純利益を12/12期に6億円に引き上げたい考えだが、ターゲットが射程距離に入ってきたようだ。