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(4829) 日本エンタープライズ株式会社

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ブリッジレポート:(4829)日本エンタープライズ vol.11

(4829:東証2部) 日本エンタープライズ 企業HP
植田 勝典社長
植田 勝典社長

【ブリッジレポート vol.11】2010年5月期上期業績レポート
取材概要「底打ちしたかと思われた「ゲームサイト」、「音楽サイト」だが、未だ不安定な状態が続いている。これまでであれば、デコメが好調な「メール・カ・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年1月26日掲載
企業基本情報
企業名
日本エンタープライズ株式会社
社長
植田 勝典
所在地
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-17-8
決算期
5月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年5月 2,475 292 317 175
2008年5月 3,123 572 578 272
2007年5月 3,677 774 783 447
2006年5月 3,416 694 688 418
2005年5月 3,018 587 570 348
2004年5月 1,958 205 168 226
2003年5月 1,752 134 131 58
2002年5月 1,704 51 53 23
2001年5月 1,417 301 262 126
株式情報(1/15現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
6,110円 377,000株 2,303百万円 10.4% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
130.00円 2.1% 291.78円 20.9倍 7,268.75円 0.8倍
※株価は1/15終値。
 
日本エンタープライズの2010年5月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
モバイルソリューションカンパニーを標榜。コンテンツの自社開発にこだわり、合言葉は「コンテンツで勝つ!」。音楽やゲーム・デコメ等のコンテンツを制作し携帯等を通じて配信するコンテンツサービスと、企業のコンテンツ制作・運営やシステム構築等を手掛けるソリューションが2本柱。また、日本のコンテンツを世界へ広げるべく海外展開にも力を入れており、第3世代携帯電話(3G)向けサービスが開始された中国で3Gサービスの普及を睨み、各種コンテンツを配信している他、携帯電話の加入者数が急拡大しているインドでは本格的な参入に向けて現地法人の設立に向けた準備を進めている。
 
コンテンツサービス事業
携帯電話等のキャリア(移動体通信事業者)が運営するi-mode、EZweb、Yahoo!ケータイ、CLUB AIR-EDGEといったインターネットに接続が可能な携帯電話の公式サイトに自社開発したコンテンツを提供し、月額課金あるいはダウンロード課金制により、その代金をキャリアから受取っている。主力サイトは次の通りである。
 
 
ソリューション事業
コンテンツサービスから派生したビジネス。モバイルサイト構築・運用業務、ユーザーサポート業務、デバッグ業務、サーバネットワークの運用・監視・保守、自社コンテンツの2次利用(以上、ソリューション)、他社コンテンツの制作・運営(ソリューションコンテンツ)、更には、広告、及び物販等を行っており、携帯電話はもちろん、パソコン等のあらゆるメディアに対応したソリューションを提供している。
 
2010年5月期上期決算
 
 
前年同期比減収・減益ながら営業・経常利益は期初予想を超過
売上高は前年同期比14.4%減の1,132百万円。内訳はコンテンツサービスが同12.2%減の584百万円、ソリューションが同16.6%減の547百万円。前者は「メール・カスタムサイト」(デコメ)が堅調に推移したものの、「音楽サイト」及び「ゲームサイト」の落ち込みをカバーできなかった。後者は前期第4四半期を底に回復基調にあるものの、顧客の予算縮小等で前年同期比では低迷が続いた。営業利益は同61.7%減の88百万円。コスト削減に努めたものの、コンテンツサービスのてこ入れ策として実施したサービスの拡充、新サイト立ち上げ、ブランド強化、及び積極的な広告宣伝費等の先行投資が負担となった。
 
 
コンテンツサービス事業は、「メール・カスタムサイト」が上期を通して堅調に推移したものの、第2四半期に入り、「ゲームサイト」が大きく落ち込んだ他、音楽の減少も続いた。ソリューション事業は最悪期を脱した感はあるものの、顧客の予算縮小等によるサーバネットワークの運用・監視・保守(MSP)の苦戦で第2四半期の売上が伸び悩んだ。
 
 
 
上期の売上原価は前年同期比7.1%減の448百万円。新規サイト構築等の増加要因を内製化による外注費の削減等で吸収した。販管費は同2.2%減の595百万円。経費削減を進める一方、広告宣伝費を戦略的に積み増した。
 
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
財政状態に大きな変化は無く、また、減益となったものの、フリーCFも改善した。上期末総資産は前期末比65百万円減の2,983百万円。借方では、長期預金の払戻しや1年内払戻長期預金の固定資産から流動資産への振替により固定資産が減少する一方、流動資産が増加した。貸方では、配当の支払等により純資産が減少した。CFの面では、税負担の減少等で103百万円の営業CFを確保した事に加え、長期預金の払戻しにより投資CFも黒字となり、前年同期は267百万円のマイナスだったフリーCFが238百万円の黒字となった。
 
 
 
国内事業の概況と今後の展開
 
(1)コンテンツサービス事業
コンテンツサービスを強化するべく、女性向けの情報サイト「女性のキレイ・リズム」、絵文字作成サイト「えもじ★つくり放題」を新たにオープンした他、LOTTE「パイの実」シリーズとのコラボレーションによるキャンペーンを開始した。

「えもじ★つくり放題」は、人気のデコメ絵文字やミニデコが簡単な操作で作成できるツールを豊富に取り揃えており、会員登録(月額210円)する事でつくり放題・取り放題となる。好きな言葉を入力するだけでオリジナル絵文字やミニデコが作成できる上、毎日10点のデコメ素材が更新されデザインやジャンルも豊富。誕生日お知らせ機能(バースデーメール)も備える。
また、LOTTE「パイの実」シリーズとのコラボレーションでは、製品のパッケージにあるQRコードを読み取る事で音楽総合サイト「うた&メロ取り放題☆」とデコメ総合サイト「デコデコメール」がプロデュースする限定コンテンツをダウンロードできる。限定コンテンツのダウンロードは無料だが、その後の有料サービスの利用へつなげていく考え。
尚、「デコデコ★ウィジェツト」が、社団法人インターネットコンテンツ審査監視機構(I-ROI)から青少年向け健全コンテンツの認定を受けた。
 
 
①施策の概念
携帯キャリアの公式サイト向けを基幹事業として、ぬいぐるみ・雑貨・CD等のリアルの強みを活かしつつ会員増を図る考えだが、App storeやAndroid Market等のスマートフォン向けアプリストアやミクシィ、グリー、モバゲータウン等のオープンプラットフォームへの対応も進め、収益源の多様化を進める。
 
 
②今後の展開
・独自コンテンツの強化
「デコデコメール」を中心に独占キャラクターのコンテンツ配信を強化する他、「うたがめ」を始めとする人気キャラクターのぬいぐるみや雑貨等、リアルでの商品販売を推進する。
 
・新たなプラットフォームでのコンテンツ配信
2009年12月にiPhone/iPod touch用アプリケーションとして、「Finger Air Hockey」の配信を開始した。今後、ミクシィアプリ等のソーシャルアプリやスマートフォン向けプラットフォームへの対応を強化する。
 
・ターゲット層拡大
従来の10~20代をターゲットにした邦楽カバー楽曲中心のCD展開に加え、35歳以上をターゲットとして、オリジナルの楽曲・アーティストによるオリジナル作品の制作に着手した。今後、CD販売を拡大し、サイトへの誘引強化を図る。
 
(2)ソリューション事業
当セグメントでは、ソリューション、ソリューションコンテンツ(他社コンテンツの制作・運営)、広告、及び物販等を行っており、携帯電話はもちろん、パソコン等のあらゆるメディアに対応したソリューションを提供している。事業の中心となるソリューションでは、企業やコンテンツプロバイダ等に対して、サイトの企画から運用まで一貫したサービスを提供しており、必要に応じて顧客向けのコンテンツ開発や同社コンテンツの提供、更にはリアルでの商品販売等を組み合わせたサービスも提供している。特に365日24時間体制のサポートセンターや過去に販売された延べ600機種による実機検証(新たなサービスやコンテンツの提供に先立つバグや不具合の検証)が高い評価を受けており、他社との差別化につながっている。
 
 
①事業環境
野村総研の調査によると、モバイルソリューションは2009年~2014年にかけて年率18%の成長が見込まれている。つまり、中期的な潜在成長力の大きさは調査機関も認めるところだが、足下では企業業績の悪化による予算縮小等で案件が減少しており、既存取引先からの価格要請も強まっている。このため、08年秋のリーマンショック後の落ち込みには底打ち感が出ているものの、受注面での反発力は弱く、今しばらく足場固めの時期が続く見込み。
 
②今後の展開
版権を自社保有する強みを活かし、従来からのB2BからB2B2Cへ踏み込んだ事業展開を進めていく。例えば、自社コンテンツをソリューションコンテンツの一環として顧客企業に提供した際、顧客への提供にとどまらず、その先にいる消費者からも収益を上げる事を念頭にビジネスモデルを再構築していく。
 
 
海外事業の概況と今後の展開
 
海外では、引き続き中国においてモバイルコンテンツ事業を推進すると共に、インドにおいて本格展開へ向けた準備を進めていく。
 
(1)中国
2009年1月に中国通信キャリアに第三世代携帯電話(3G)の免許が発給されたが、3Gの普及は芳しくない。約7億人の中国携帯電話ユーザーのうち、3Gユーザーは977万人(2009年10月末現在、中国工業情報化部調べ)にとどまり、しかもその過半がパソコンでの利用と言う(携帯電話での利用者は300万人未満と見る向きもある)。
ただ、チャイナモバイルが3GのTD-SCDMAへ補助金300億元(約4,000億円)の投入を発表する等、本格普及に向けた各社の取り組みが本格化してきた。
 
3Gの本格普及を見据えた新たなコンテンツ配信プラットフォーム(アプリケーションストア)の開設
チャイナモバイル「Mobile Market」    :2009年9月開設
チャイナテレコム「天翼空間」      :2009年10月開設
チャイナユニコム「UniStore(仮称)」  :2010年中に開設予定
 
同社も子会社 北京業主行網絡科技有限公司を通して上記アプリケーションストアからコンテンツの配信を開始している。コンテンツは2G及び2.5G向けであるが、3Gにも対応している。
 
北京業主行網絡科技有限公司のコンテンツ配信状況と予定
チャイナモバイル「Mobile Market」    :22タイトルを配信中(2009年11月12日現在)
チャイナテレコム「天翼空間」      :10タイトルを配信中(2009年12月 3日現在)
チャイナユニコム「UniStore(仮称)」  :サービス開始と共にコンテンツを配信する予定
 
(2)インド
2携帯電話加入件数が5億件を突破した(2009年11月末現在、インド電気通信規制庁(TRAI)調べ)インドにおいて、同社は2009年11月11日に子会社を設立し、モバイルコンテンツ市場へ本格参入した。インドで通信会社各社の3Gサービスが出揃うのは2011年以降と予想されるため(現在、国営企業1社がサービスを開始しているが、民間企業3社のサービス開始時期は未定)、当面は2G及び2.5G向けのサービス提供開始を目指す。
 
商号    :NE Mobile Services (India) Pvt. Ltd.
代表者   :植田 勝典(当社代表取締役社長)
資本金の額 :10 百万ルピー(約19 百万円)
出資比率  :日本エンタープライズ(株)99%、(株)ダイブ(当社子会社) 1%
所在地   :インド・ムンバイ
 
2010年5月期業績予想
 
 
前期比6.7%の減収、同29.2%の経常減益予想
コンテンツサービス、ソリューション共に減収が見込まれ、戦略的な広告宣伝費の投入等が負担となる。ただ、下期に限れば、コンテンツ制作やモバイルサイト構築・運用の内製化によるコスト削減の進捗に加え、前年同期がソリューションの大口案件失注等で売上・利益が大きく落ち込んだ事もあり、増収・増益に転じる見込み。配当は1株当たり130円の期末配当を予定している。
 
 
コンテンツサービスは“デコデコブランド”の強化により「メール・カスタムサイト」が堅調に推移する見込みだが、「ゲームサイト」の売上が減少する他、「音楽サイト」も苦戦が続く。一方、ソリューションは受託サイトの収入減や新規案件受注の伸び悩みで当初予想を下回るものの、需要は底堅く推移しており下期は増収に転じる見込み。
 
取材を終えて
底打ちしたかと思われた「ゲームサイト」、「音楽サイト」だが、未だ不安定な状態が続いている。これまでであれば、デコメが好調な「メール・カスタムサイト」やソリューション事業で吸収できたのだが、上期は企業業績の悪化による関連予算の縮小等でソリューション事業が伸び悩んだため吸収できなかった。同社の場合、大手自動車メーカーを有力顧客として抱えているため、一見関係ないように思われるリーマンショック以降の世界的な自動車販売の落ち込みも苦戦の一因になっているものと思われる。しかし、上期に大幅な赤字を計上した大手自動車メーカーも上期後半は黒字を確保しており、下期は半期ベースでの黒字転換が見込まれる。続く来期は業績のV字回復が期待されるだけに、One to Oneマーケティングの強化に向けモバイル関連投資も活発化してくるものと思われる。こうした動きは大手自動車メーカーに限った事ではないため、3月決算企業の新年度予算が執行される4月以降、ソリューション事業の受注モーメンタムも加速してくるものと考える。