ブリッジレポート
(2462) ライク株式会社

プライム

ブリッジレポート:(2462)ジェイコムホールディングス vol.14

(2462:東証1部) ジェイコムホールディングス 企業HP
岡本 泰彦 社長
岡本 泰彦 社長

【ブリッジレポート vol.14】2010年5月期第2四半期業績レポート
取材概要「厳しい事業環境の中で苦戦は否めないものの、首都圏を中心にした東日本での事業拡大やコスト削減の進展で業績は堅調だ。労働者派遣法改正の・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年1月26日掲載
企業基本情報
企業名
ジェイコムホールディングス株式会社
社長
岡本 泰彦
所在地
大阪市中央区西心斎橋 2-1-3
決算期
5月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年5月 14,162 913 953 340
2008年5月 12,404 885 907 489
2007年5月 9,605 812 786 444
2006年5月 6,657 594 552 274
2005年5月 4,684 284 281 152
2004年5月 3,271 142 141 56
2003年5月 2,222 90 88 45
2002年5月 1,616 77 76 40
2001年5月 1,369 73 70 34
株式情報(1/7現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
91,700円 45,630株 4,184百万円 9.4% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
4,000.00円 4.4% 12,272.72円 7.5倍 82,679.57円 1.1倍
※株価は1/7終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
ジェイコムホールディングスの2010年5月期第2四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
大阪市に本社を置き、中核事業会社であるジェイコム(株)において、営業支援等の総合人材サービス事業と携帯電話キャリアショップ運営のマルチメディアサービス事業を展開している。主力の総合人材サービス事業は、携帯電話業界に特化した差別化戦略が奏功。業界動向や顧客ニーズを的確に捉えたサービスと情報の提供が、顧客企業から高い評価を受けている。ただ、中期的には、既存事業を中心としつつも、特定の業界、年齢層、或いは派遣業等に捉われる事なく、幅広いサービスを提供する総合人材サービス会社として事業を進めていく考えで、この一環として09年12月に持株会社体制へ移行した。グループは、同社の他、人材サービスの連結子会社ジェイコム(株)、及び認可保育園等運営の関連会社(株)サクセスアカデミー、及び人材育成等を手掛ける同(株)ガーディアンシップの3社。
 
<沿革>
1993年9月、パッケージ旅行の企画会社(株)パワーズインターナショナルとして設立され、その後、携帯電話業界へシフト。96年4月に携帯電話ショップの運営を開始し、同年11月にはジェイコム(株)に商号変更すると共に業態を変更。98年10月にはショップ運営のノウハウを活かし、携帯電話業界向け人材ビジネスに展開した。2005年12月の東証マザーズ上場を経て、07年2月に東証1部に上場した。09年12月1日付で、持株会社体制へ移行し、商号をジェイコムホールディングス(株)に変更した。
 
<事業内容>
事業は総合人材サービス事業と携帯電話ショップ運営のマルチメディアサービス事業に分かれ、09/5期は前者の売上高が全体の96.1%を占めた。主力の総合人材サービス事業では、携帯電話ショップや量販店等販売店向けのスタッフ派遣(販売支援サービス)や業務請負(アウトソーシングサービス)の営業支援サービス、職業紹介や紹介予定派遣を行う就職支援サービス、及びオフィスやコールセンターへのスタッフ派遣が中心の人材派遣サービスを手掛け、マルチメディアサービスでは、各通信キャリアと丸紅テレコムとの三者間契約により、関西地区でドコモショップ1店舗、ソフトバンクショップ1店舗を運営している。
 
<若年層のステップアップを支援>
総合人材サービス事業では、派遣社員等やアルバイトを受け入れる企業側のメリットだけを追求するのではなく、働く側のキャリアアップにも配慮している。具体的には、派遣社員もしくはアルバイトとして採用した社会経験の浅い学生やフリーター等の若年層を、教育やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)により勤続年数に応じてステップアップさせ、最終的には希望する職業へ正社員として就職できるよう支援するシステムが構築されている。
 
 
2010年5月期第2四半期決算
 
 
前年同期比3.4%の減収、同5.4%の経常増益
売上高は前年同期比3.4%減の6,709百万円。同社の主要取引先である携帯電話業界では、端末の高価格化や個人消費の低迷により、PHSを含む国内移動電話の販売台数(4~10月累計)が17,664千台と前年同期比17.3%減少した((社)電子情報技術産業協会:JEITA)。販売台数の落ち込みにより人材サービス需要も低迷したものの、首都圏での事業拡大に加え、携帯キャリアや大手販売代理店向けの営業強化により同社の売上高は小幅な減少にとどまった。
営業利益は同6.9%増の407百万円。雇用情勢の悪化に伴う登録者の増加で求人効率が改善した事に加え、人員や拠点規模など営業体制の見直しによる経費削減、更には子会社インダス(株)を売却した影響もあり、販管費が同12.7%減少、売上総利益の減少をカバーした。四半期純利益の伸びが大きいのは特別損益の改善によるもので、関係会社株式売却益30百万円など特別利益32百万円を計上する一方、持株会社化関連費用16百万円など特別損失17百万円を計上した(前年同期は投資有価証券評価損32百万円など特別損失35百万円を計上)。
尚、09年11月に、事業効率化の一環として体育会大学生に特化した新卒向け就職支援サービスを手掛ける連結子会社インダス(株)の株式を全株売却する(連結財務諸表上は第2四半期首に売却が行われたものとみなしている)一方、成果報酬型求人サイト事業へ参入した。成果報酬型求人サイト事業は、既存事業で培った採用活動やマッチングの経験を活かせる上、優秀な人材との接点が増えるため営業支援サービスとのシナジーも期待できる。
 
 
両事業共に売上が減少。総合人材サービスは、首都圏での事業拡大により主力の携帯電話業界向けが小幅な減収にとどまったものの、金融業界向けが大きく落ち込んだ他、情報通信業界向けも苦戦。インダス(株)の売却も減収要因となった。マルチメディアサービスの減収は端末販売の減少による。
 
 
営業支援サービスでは、派遣(販売支援サービス)から請負(アウトソーシングサービス)へのシフトが進んだ他、キャンペーン受注の増加でアウトソーシングサービスの売上が大きく増加した。人材派遣サービスも堅調に推移したものの、就職支援サービスが雇用情勢の悪化による売上の減少やインダス(株)の売却等で大幅な減収となった。
 
 
首都圏での事業拡大や携帯キャリアや大手販売代理店向けの営業強化により主力の携帯電話業界向けが小幅な減収にとどまったものの、世界的な信用収縮により厳しい事業環境にある金融業界向けが落ち込んだ他、情報通信業界向けも苦戦を強いられた。
 
 
携帯キャリア向けや大手代理店向けが堅調に推移したものの、地場の中小代理店を対象とするその他の販売代理店向けは事業撤退や大手の買収等による取引先の減少で売上が減少した。尚、携帯キャリア向けの売上がわずかに減少したのは、取引先のうち1社が抵触日(派遣開始から3年目)を迎える派遣社員の受け入れを一旦停止した事と別の取引先が請負から派遣へ契約を切り替えた事が要因。
 
 
首都圏を中心に東日本の売上が順調に拡大したものの、関西圏での苦戦が響き西日本地区での売上が大きく落ち込んだ。
 
 
10/5期2Qの1Q比の売上減少は、既に説明した通り、抵触日及び請負から派遣への切り替えの影響による。
 
 
①原価率の上昇   80.8%→81.5%(個別:81.2%→81.6%)
売上総利益率の高いインダス(株)の売却の影響、及び開通センターなど高収益案件の受注減少による。
 
②販管費率の改善  13.7%→12.4%(個別:12.5%→12.1%)
販管費の主な減少要因として、雇用環境の悪化に伴う求人効率の改善による採用教育費の減少、第1四半期におけるインダス(株)の経費削減及び同社売却等による人件費や営業変動費の減少、及び人員や拠点規模など営業体制の見直しによるその他の経費の減少、を挙げる事ができる。
 
 
第2四半期末の総資産は前期末比101百万円減の5,048百万円。借方では、有価証券や信託受益権の償還等により現預金が増加する一方、インダス(株)の株式売却等で投資その他が減少。貸方では、未払金(スタッフへ支払う賃金)が減少する一方、純資産が増加した。
 
 
フリーCFが343百万円のマイナスとなったのは余資運用によるもの。全般に資金効率が改善したものの未払金の減少等で営業CFの黒字が減少、余資運用に伴い投資CFがマイナスとなった。
 
2010年5月期業績予想
 
2009年12月1日付で持株会社制へ移行した。グループ管理機能を強化し、M&Aを含めた成長事業・新規事業への投資を積極的に行うと共に、コンプライアンス及びコーポレートガバナンスの強化にも取り組み、1,000億円企業を目指す。
 
 
 
(株)サクセスアカデミーの株式取得
09年12月1日付で(株)サクセスアカデミー(神奈川県藤沢市:柴野豪男社長)の株式を取得し(発行済株式数の20%)、持分法適用関連会社とした。
(株)サクセスアカデミーは、子供を持つ女性の就業を支援するべく「保育のプロフェッショナル」として高品質な保育サービスの提供を念頭に、認可保育園・認証保育所、公設民営保育園、学童クラブ等を運営。また、同社の100%子会社であるサクセスプロスタッフ(株)が、病院、企業、学校内の保育施設運営受託を手掛けている。

保育園の運営及び保育施設運営受託は、民主党政権下で進められている「保育サービスの充実」や「学童保育の拡充」といった政策を追い風に市場の拡大が見込める上、人材サービスを提供する子会社ジェイコム(株)のスタッフに対する保育サービスの充実、ひいてはスタッフの安定的な確保にもつながる事から、グループ・シナジーも期待できる。

(株)サクセスアカデミーの08/12期の業績は、新しい保育園の立ち上げが負担となり68百万円の営業損失となったが(売上高は3,066百万円)、09/12期は売上高が4,500百万円に増加し、営業損益が5百万円の黒字に転換した模様。続く10/12期以降についても増収増益が見込まれると言う。資産規模は、08/12期末の総資産が1,973百万円、純資産は404百万円。
 
 
通期の業績予想に変更は無く、前期比9.4%の増収、同4.9%の経常増益予想
下期も引き続き厳しい事業環境が予想されるものの、成長余地の大きい首都圏での事業拡大と大手代理店向けアウトソーシング受注の強化で売上の増加を図る。利益面では、増収効果やコストコントロールの徹底に加え、のれん償却負担が無くなる事や前期赤字だったインダス(株)を売却した事も利益の押し上げ要因となり営業利益が同10.6%増加する見込み。経常利益の増加が同4.9%の増加にとどまるのは、信託受益権収益配当金の減少や保険解約返戻金が無くなるため。
配当は1株当たり2,000円の期末配当を予定している(上期末配当2,000円と合わせて年4,000円)。
 
(2)事業環境と重点施策
①事業環境
人材ビジネス業界
・全体的な案件減少、価格競争
・クライアントとの契約の大幅見直し
・労働者派遣法への対応
⇒ 業界再編や淘汰の動きが強まる
携帯キャリアの動き
・各社間でのシェア獲得競争激化
・高速データ通信や法人需要の取り込み
・販売領域の多様化・差別化を強化
・消費者への説明範囲や説明責任の拡大
⇒ 優秀な販売スタッフへの需要は依然として高水準で推移
 
②重点施策
10/5期を「景気回復局面における売上の飛躍的拡大のための足場固めの期」と位置付け、“収益性の向上”と“他社との差別化”に注力する。重点施策として、携帯電話業界におけるシェア拡大、収益率の向上、新規ビジネス及び新規業界への注力による第2の柱の構築、及びキャリアアップ支援の充実とコンプライアンスの徹底、の4項目を挙げている。
 
携帯電話業界におけるシェア拡大
・携帯業界の業務請負化への対応
・キャリアショップ及び携帯販売代理店向け研修やデータカードの販売支援等関連事業での受注拡大
収益率の向上
・収益性の高い「セールスプロモーション」の受注等、高付加価値サービスの拡大
・倉庫物流系等新規請負の拡大
・コールセンターの受注拡大
・コストコントロールにより高収益体質を維持
新規ビジネス及び新規業界への注力による第2の柱の構築
・業種特化・採用課金型の成果報酬求人サイト事業への参入
・認可保育園・認証保育所の運営等を手掛ける(株)サクセスアカデミーへの出資
キャリアアップ支援の充実とコンプライアンスの徹底
・教育研修体制の充実
・持株会社体制の構築によるグループ経営のガバナンス及びコンプライアンスの強化
・改正労働者派遣法への対応を順次実施
 
(3)新規事業 成果報酬型求人サイト「Jobマーケット」
成果報酬型求人サイト「Jobマーケット」は、既存事業で培った採用活動やマッチングの経験を活かして求職者と求人企業のニーズをより正確に把握し、従来の人材サービスと違った観点から若年層の就業を支援する。

具体的には、アパレル販売や美容師等の業種をターゲットとして業種毎のサイトを開設し(業種特化型サイト)、その業界での役割等をわかりやすく説明して求職者が希望の仕事を見つけやすくする事で他社サイトとの差別化を図る。成果報酬型(採用課金型)のシステムをとっているため、求職者が勤務を開始するまで掲載費用がかからず、求人企業は採用に関してリスクを負う事なく求人情報を掲載できる。

この事業は、総合人材サービス企業として求人企業の採用活動にまでサービスを拡大するものだが、既存事業で培った経験とノウハウを活かせるため、大きな参入コストを要しない。10/5期の業績予想に関連費用を折り込み済みで、来期11/5期以降の業績貢献が期待される。
 
 
(4)労働者派遣法改正の影響と同社の対応
09年12月28日の労働政策審議会答申によると、労働者派遣法改正のポイントは、①登録型派遣の原則禁止、②製造業務派遣の原則禁止、③日雇派遣の原則禁止、④均等待遇、⑤マージン率の情報公開、⑥違法派遣の場合における直接雇用の促進、の6項目である。
このうち、①については影響を受ける可能性があるが、②、③、④、⑤については特に影響はない。また、⑥については、コンプライアンス・資本力の観点から派遣会社の選別が進む可能性があり、この場合、同社にとって追い風となる。

尚、登録型派遣が禁止となった場合、サービス利用者の選択肢は、請負、直雇用、常用雇用派遣となるが、これに対する同社の対応は次の通り。
 
 
結論として、労働者派遣法全体で見れば、マイナスとなるものの、今後、コンプライアンスや資本力により派遣会社が選ばれる時代の到来が予想されるため、同社はこの機会をチャンスと捉え、クライアントから選ばれる事でシェアを獲得し収益性を高めていく考え。
 
取材を終えて
厳しい事業環境の中で苦戦は否めないものの、首都圏を中心にした東日本での事業拡大やコスト削減の進展で業績は堅調だ。労働者派遣法改正の影響は気になるところだが、得意先が派遣から請負への切り替えにより対応するのであれば、同社業績への影響は少ない。同社の主要得意先では、携帯キャリア各社の対応が未だ不明確ではあるが、大手販売代理店各社は派遣から請負へのシフトを進める考えで、一部の得意先では既に動き出しているようだ。下期はこうしたニーズの取り込みに力を入れていく考え。成果報酬型求人サイト「Jobマーケット」や(株)サクセスアカデミーの事業展開と共に、今後の同社の業績を考える上でポイントとなる。