ブリッジレポート
(7839) 株式会社SHOEI

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ブリッジレポート:(7839)SHOEI vol.16

(7839:東証2部) SHOEI 企業HP
山田 勝 会長
山田 勝 会長
安河内 曠文 社長
安河内 曠文 社長
【ブリッジレポート vol.16】2009年9月期業績レポート
取材概要「09/9期は景気悪化の影響に加え、円建て取引をしている欧州のディストリビュータが急激な円高を受けて小売価格の改定を行った事も需要の減少に・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年12月8日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社SHOEI
会長
山田 勝
社長
安河内 曠文
所在地
東京都台東区上野5-8-5
決算期
9月 末日
業種
その他製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年9月 10,300 1,047 1,335 837
2008年9月 14,995 3,608 3,532 2,214
2007年9月 13,586 2,942 2,751 1,630
2006年9月 11,796 2,310 2,117 1,248
2005年9月 10,661 1,581 1,510 890
2004年9月 9,725 1,364 1,282 732
2003年9月 9,575 757 703 381
2002年9月 8,700 379 190 85
2001年9月 9,088 694 592 359
株式情報(11/27現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
899円 13,772,336株 12,381百万円 11.2% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
34.00円 3.8% 68.25円 13.2倍 487.24円 1.8倍
※株価は11/27終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
SHOEIの2009年9月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
世界ナンバーワンのヘルメットメーカー。オートバイ用を中心に、航空機用や戦車用等の官需用のヘルメットを製造している。販売網は日本のみならず、ヨーロッパやアメリカをはじめ世界50カ国以上を網羅。「SHOEI」ブランドはその安全性と機能性、そして造形の美しさが世界各国で高い評価を受け、高級ヘルメットの代名詞となっている。独自の技術とノウハウ、優れたデザイン力により、右の3つの世界一を実現する事を経営方針に掲げている。
また、「商品戦略」、「生産戦略」、「市場戦略」を融合させた三位一体の事業戦略も同社の特徴。三位一体の事業戦略を進める事で、顧客満足度、株主及び役職員の満足度向上に努めている。
 
<事業内容>
オートバイ用のヘルメット(二輪乗車用ヘルメット)の売上高が約90%を占めている。なかでも、高品質で高付加価値の「プレミアムヘルメット」に特化し、茨城工場(茨城県稲敷市)、岩手工場(岩手県東磐井郡)の国内2工場で生産。国内生産にこだわる事で、より高い品質を維持すると共に技術の流出防止にも努めている。
また、業界では唯一の「トヨタ生産方式」導入企業として、高い限界利益率と在庫回転率、及び優れた資産効率を誇る。
 
<沿革>
1954年、ポリエステル加工メーカーとして創業。59年3月に昭栄化工(株)として法人化、一般用ヘルメットの生産を開始。翌60年1月、二輪乗車用ヘルメットの生産に着手。68年7月、アメリカに子会社を設立し海外展開を開始、87年7月には子会社設立によりフランスへも進出した。92年5月、会社更生手続開始を申立、同年9月、現山田会長が管財人となり更生手続きを開始。93年12月、更生計画が認可された。更生手続き中の94年3月、子会社を設立し、ドイツに進出。98年3月、会社更生計画認可から4年3ヶ月という短期間で会社更生手続を終結した。同年12月には社名を(株)SHOEIに変更。04年7月、JASDAQに株式を上場し、07年9月には、東証第2部に上場(JASDAQは上場廃止)した。
 
<ヘルメット主要モデル>
 
 
 
 
                             (説明会資料より)
 
2009年9月期決算
 
 
景気悪化や円高等の悪材料が重なり減収・減益
売上高は前期比31.3%減の10,300百万円。国内外で新製品の投入効果があったものの、景気悪化による市場低迷、新製品投入前の買い控えと(流通)在庫調整、大幅な円高に伴う海外円建代理店の購買力低下と小売価格の引き上げ、更には連結子会社への円高の影響等、悪材料が重なった。営業利益は同71.0%減の1,047百万円。広告宣伝費を中心に販管費の削減が進んだものの、販売の落ち込みや円高による円ベースでの目減りで売上総利益が大幅に減少した。経常利益が同62.2%の減少にとどまったのは、為替予約による差益効果(314百万円)等による。設備投資は683百万円(08/9期:961)、減価償却費は730百万円(同495百万円)。
尚、開示されている経常利益ベース(同2,196百万円減)での増減要因によると、減益要因としては、製品売上の減少(1,282百万円)、為替の影響(359百万円)、コスト増(352百万円、うち新製品金型の減価償却費が247百万円)、子会社の損益悪化(508百万円)。一方、増益要因が、販管費の減少(194百万円)及びその他(111百万円)。
 
 
国内
  新製品「Z-6」の投入効果があったものの、景気悪化等によるプレミアムヘルメットユーザーの多い中・大型二輪車の販売減少(車種によって差があるものの、前期比で3割~5割減)の影響を大きく受けた。
欧州
  欧州では、現地の子会社2社による直接販売と代理店販売を並行して進めているが、景気悪化で欧州全域に渡りヘルメット販売が大幅に減少(数量ベースでは30%減)。急激な円高に伴う円建代理店の仕入単価上昇(小売価格の引き上げ)も需要の減少に拍車をかけた。
北米
  新製品のオフロード用ヘルメットが高い評価を受けたものの、第3四半期以降、景気悪化による需要の減少が顕著(数量ベースでは5%減)となった他、円高も響いた。
その他
  通貨安の影響もあり、前期好調だった豪州やブラジル等の資源国市場での販売が落ち込んだ。
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比2,858百万円減の8,431百万円。有利子負債に依存しない健全な財政状態が維持されているものの、利益の減少等でフリーCFが減少する一方、配当負担の増加等で現預金が減少した。この他、売上の減少で売上債権も減少したが、新製品の投入に伴う在庫の積み増しでたな卸資産は増加した。投資その他の資産の減少は長期預金の取り崩しによる。貸方では、仕入債務、未払法人税、純資産等が減少した。
 
 
 
2010年9月期業績予想
 
 
前期比9.5%の増収、同9.3%の経常増益予想
新製品の寄与と在庫整理の完了した欧州子会社を核にした販売強化で売上拡大を図ると共に、引き続きコスト削減に努める。為替の前提は1ドル=90円(△3.84円)、1ユーロ=135円(+5.74円)。ユーロについては必要量の2/3相当にあたるEUR8,600,000(平均予約レート135.65円)の為替予約が完了しており、不透明感の強いUSドルについては随時予約を入れていく考え(為替感応度は1円当たり約20百万円)。足下、主力の欧州を中心に受注は回復傾向にあり、北米も12月の完了を目標に在庫整理が進んでおり、新製品の評価が高い。この他、豪、ブラジル、ロシア向けも受注が回復傾向にある。配当は1株当たり4円増配の34円を予定。
 
 
中期計画
 
「健全な財務基盤」、「世界に広がる販売ネットワーク」、そして「世界的なブランド力」をバックボーンに顧客満足度の向上と世界プレミアムヘルメット市場でのシェアアップを図り、長期安定成長と安定利益を追及していく。
 
(1)大型設備投資が一巡
 
成長のために必要な大型投資は09/9期で一巡。減価償却費も10/9期がピークとなる見込み。この12月に完成予定の大型風洞実験場はベンチュレーションやノイズのデータをとる事ができる本格的なシミュレーション機能を備えている(時速180 km以上の走行テストが可能なため、上記施設の完成後は高速道路での走行テストが不要になる)。また、社内製作の自動塗装機の設置も進んでいる。この塗装機は、社内に蓄積された職人の技術とノウハウをソフトウェアと精密制御技術で実現(塗料の使用量にも配慮が及んでいる)。1人で4台の管理が可能なため(従来は半自動機であったため1人で2台の管理)、今後、塗料の使用量削減も含めたコストダウン効果が見込まれる。
 
(2)人材の育成と活性化
若い社員の想像力とベテラン技術者の職人技術を融合する事で、品質の向上とコストダウンを図ると共に、革新的な設計とグラフィックデザインを生み出していく。また、新製品開発により、10年間で製品ラインナップの全面切り替えを行う他(計画は策定済み)、既存販売先の深耕と新興市場(ロシア、ブラジル、東欧、中東等)の拡大に向けた海外要員の強化にも取り組む。
 
(3)同社を取り巻く環境と当面の戦略
金融危機に端を発した景気悪化により消費が急激に冷え込む中、同社は今秋からの新製品への切り替えを図るべく、流通在庫の圧縮と製品の入替えに取り組んでいる(この12月には遅れていた北米での在庫調整も終わる見込み)。言うなれば、今は「新シールドシステム装備のヘルメット」と言う新兵器で武装し、ほふく前進で敵陣へ向かっている状態。
 
 
取材を終えて
09/9期は景気悪化の影響に加え、円建て取引をしている欧州のディストリビュータが急激な円高を受けて小売価格の改定を行った事も需要の減少に拍車をかけたようだ。海外への製品デリバリーは、船便で4ヶ月間を要するため、在庫の増加に気が付いてオーダーを止めても、既に出荷され海上にある4ヶ月分は受け取らざるを得ない。需要が低迷する中で、この4ヶ月分の在庫調整が重荷となった。また、バイクやバイク用アクセサリーの場合、ディストリビュータ、小売店共に多様な商品及びブランドを扱っているため、在庫の単品管理が難しいという業界特有の問題もあったようだ。
しかし、欧州ではほぼ在庫調整が完了しており、北米もこの12月には在庫調整が終わる見込み。加えて、10/9期は前期後半に投入した海外向け主力製品が通期で期待する他、期中に既存製品のフルモデルチェンジを予定している。未だディストリビュータの動きは鈍いものの、いち早く在庫調整を完了して機動力を回復している子会社を中心に販売の拡大を図る考えだ。10/9期は大幅な営業増益予想だが、上期の業績がほぼ予想通りであれば、より現実味を増してくる。