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(4847) 株式会社インテリジェント ウェイブ

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ブリッジレポート:(4847)インテリジェント ウェイブ vol.2

(4847:JASDAQ) インテリジェント ウェイブ 企業HP
山本 祥之 社長
山本 祥之 社長

【ブリッジレポート vol.2】2010年6月期第1四半期業績レポート
取材概要「当初の予想通りとは言え、第1四半期はクレジットカード業界や証券・金融業界のシステム投資抑制の傾向に大きな変化は見られなかった。第2四半期・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年12月1日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社インテリジェント ウェイブ
社長
山本 祥之
所在地
東京都中央区新川1-21-2 茅場町タワー
決算期
6月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年6月 5,527 228 235 187
2008年6月 6,695 417 403 -5
2007年6月 6,367 389 407 -295
2006年6月 7,137 1,482 1,452 947
2005年6月 5,174 678 688 264
2004年6月 5,257 371 365 156
2003年6月 5,891 1,177 1,161 539
2002年6月 5,505 1,854 1,846 1,003
株式情報(11/13現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
15,960円 246,782株 3,939百万円 4.6% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
500.00円 3.1% 713.18円 22.4倍 15,867.85円 1.0倍
※株価は11/13終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
インテリジェント ウェイブの2010年6月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
クレジットカードの決済システムに強みを持つソフトウェア開発会社。リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術、システムを止めないためのノンストップ技術、更には高度なセキュリティ技術を技術的な基盤としており、証券関連の情報集配信システムでも豊富な実績を有する他、カード不正利用検知システムや内部情報漏洩対策システム等も手がける。
グループは、同社の他、米国の販売子会社と韓国の開発・販売会社子会社の2社(いずれも連結子会社)。
 
<事業内容>
事業は、カードビジネスのフロント業務、システムソリューション業務、及びセキュリティシステム業務に分かれ、09/6期の売上構成比は、それぞれ46.7%、37.3%、16.0%。
 
カードビジネスのフロント業務
クレジットカード会社、銀行、大手小売業等向けに、自社開発パッケージ「NET+1」をベースにしたカード決済ネットワークシステムの構築を行い、大手クレジットカード会社向けではシェア70%の実績を誇る。
システムソリューション業務
証券取引所等から提供される市況データ等を素早く社内の各端末に配信する市況情報配信システム「FACE」、クレジットカード不正利用検知システム「ACE Plus」等の自社製品及び他社製品(海外商品)を用いたシステム構築を行っている。
セキュリティシステム業務
自社製品である内部情報漏洩対策システム「CWAT」の他、USBメモリ「Cstickシリーズ」やウイルス対策ソフト「Virus Chaser」といった他社製品の販売を行っている。
 
※カードビジネスのフロント業務の特徴
クレジットカードの利用に際しては、その都度、与信限度額や返済状況の確認作業が行われ、また、キャッシシングの際には口座残高の確認も必要となる。こうした確認作業はネットワークを介してリアルタイムで行われ、特にクレジットカードの場合、世界的なネットワークを介しての作業となる。また、システムが止まるとカードが使えなくなるため、24時間365日システムを止めないための技術やノウハウも必要だ。つまり、同社のビジネスには、リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術、システムを止めないためのノンストップ技術、ノウハウ、そして何よりも顧客となる金融機関等からの信頼性が不可欠なため参入障壁は高い。
また、技術やネットワークの進歩に加え、様々な社会犯罪等への対応で更新需要が絶えず発生しており、振れはあるものの趨勢的に市場の拡大が続いている。
 
 
2010年6月期第1四半期決算
 
 
クレジットカード会社のシステム投資抑制が響き、165百万円の経常損失
売上高は前年同期比40.8%減の650百万円。証券系システム構築の寄与でシステムソリューション業務が増加したものの、クレジットカード会社のシステム投資の抑制を受けてカードビジネスのフロント業務が落ち込んだ他、自社パッケージの苦戦でセキュリティシステム業務も減少した。利益面では、家賃の削減や人件費の抑制等で販管費が大きく減少したものの、利益率の高い自社パッケージの減少による売上総利益率の悪化が響き164百万円の経常損失となった。
尚、大幅な減収となり、損失計上を余儀なくされたものの、クレジットカード会社のシステム投資抑制は当初から予想された事であり、上記業績は予想の範囲内である。
 
 
カードビジネスのフロント業務
売上高は前年同期比60.1%減の281百万円、営業利益は同77.7%減の65百万円。保守売上が堅調に推移したものの、主要顧客であるクレジッ卜カード会社の投資抑制で、システム開発受託、システム保守、自社パッケージ「NET+1」、更にはハードウェア販売も大きく落ち込んだ。
クレジットカード会社各社は、利息制限法改正による過払い金返還請求への対応に追われている他、賃金業法及び割賦販売法の改正に対応するためのシステム投資の必要にも迫られ、フロント業務への投資を抑制している事が苦戦の要因だ。
 
個別ベースでの主なサブセグメントの増減(個別と連結のセグメント売上高は同額)
ソフトウェア開発  386百万円 → 147百万円
自社パッケージ    71百万円 →  0百万円
保守売上      101百万円 →  98百万円
ハードウェア販売  129百万円 →  19百万円
 
システムソリューション業務
売上高は前年同期比9.1%増の255百万円、営業利益は同1,070.5%増の23百万円。東証の次世代システム関連で主要顧客である証券会社等からのシステム開発受託が増加した他、保守やクレジットカード不正利用検知システム「ACE Plus」も堅調に推移した。利益面では、自社パッケージの売上増に加え、販管費の抑制により営業利益が8.7%から9.4%に改善した。
 
個別ベースでの主なサブセグメントの増減(個別と連結のセグメント売上高は同額)
ソフトウェア開発  153百万円 → 154百万円
自社開発パッケージ  15百万円 →  33百万円
保守売上       51百万円 →  62百万円
 
セキュリティシステム業務
売上高は前年同期比28.9%減の114百万円、128百万円の営業損失(前年同期は112百万円の損夫)。製造業を中心にした一般企業の設備投資の落ち込みで、情報漏洩対策システム「CWAT」やその他のセキュリティ製品等の販売が減少した。
 
個別ベースでの主なサブセグメントの増減
(個別ベースの当セグメントの売上高は09/6期1Q:160百万円、10/6期1Q:112百万円)
ソフトウェア開発   11百万円 →  8百万円
自社開発パッケージ  71百万円 → 28百万円
保守売上       51百万円 → 55百万円
仕入商品       22百万円 → 17百万円
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
第1四半期末における総資産は前期末比256百万円減の4,755百万円。借方では回収が進み売上債権が減少、貸方では、仕入債務や損失計上で純資産が減少した。ただ、有利子負債に依存しない健全な財政状態が維持されおり、自己資本比率は82.3%と高水準。また、営業損失となったものの、営業CFは黒字を確保。投資有価証券の売却や匿名組合出資金の払い戻し等で投資CFも黒字となり、フリーCFが増加した。
 
 
 
 
2010年6月期業績予想
 
(1)業績予想 上期及び通期の業績予想に変更無し
上期は前年同期比40.8%の減収、389百万円の経常損失予想。上期予想に対する売上高の進捗率は39.6%にとどまるが、前年同期(1Q実績/上期実績)も同じ39.6%。期中受注・期中売上が可能な小型案件が減少しているものの、豊富な受注残の消化で売上目標の達成を目指している。尚、コスト抑制や新人事制度の導入による生産性の改善で利益の進捗は売上以上に順調だ。このため、売上が予想通りであれば、利益は上振れる可能性が高い。

下期は豊富な受注残の消化に加え、リーマンショック以降の世界的な景気悪化で前年同期の落ち込みが大きかった事もあり増収に転じる。コスト抑制や生産性改善効果も見込まれ、経常利益は552百万円と同155.8%増加する見込み。この結果、通期では前期比9.5%の減収ながら、163百万円の経常利益を確保。1株当たり500円の配当を予定している。
 
 
 
 
 
※上記の受注残高の推移において、カードビジネスのフロント業務の受注残高からハードウェア分を除いた残高は、08/6期1Q末が1,006百万円、09/6期1Q末が911百万円、10/6期1Q末が931百万円。厳しい事業環境が続いており、期中受注・期中売上の短期・小型案件が減少しているものの、収益のベースとなる長期の大型案件については底堅く推移しているようだ。
 
(2)事業環境と今期の施策
カードビジネスのフロント業務
個人消費の低迷と過払金返還の高止まりで、クレジットカード会社を取り巻く環境は厳しい。加えて、賃金業法及び割賦販売法の改正に対応するためのシステム投資の必要にも迫られており、フロント業務への投資には資金を回し難い状況が続いている。
 
 
ただ、事業の拡大に意欲的なネット銀行がフロント業務へのシステム投資を積極的に行っている他、「資金決済に関する法律(資金決済法)」の施行(09年6月に可決され、1年以内に施行)もビジネスチャンスを広げる。
資金決済法とは、送金コストの引き下げと利用者の利便性向上を目的とした法律で、銀行以外の事業者にも資金移動サービスを認める。具体的には、現在、送金等の為替取引は銀行のみに認められているが、同法施行後は資金移動業者として登録すれば、銀行以外の事業者でも少額取引に限り為替取引が可能になる。また、取引額の上限については、今後政令で定めるとしており、国会審議で50万円から100万円程度とするのが妥当とする見解が示されている。同法の施行により、ノンバンク各社の為替取引参入が予想される他、米PayPal社のような海外の資金移動サービスの専業事業者の日本進出も予想され、フロント業務における投資需要の拡大が期待できる。
 
システムソリューション業務
東証の次世代システム(10年1月に稼動予定)関連が一巡したため、今後はクレジットカード不正利用検知システム「ACE Plus」の販売強化と大証の次世代システムへの対応需要取り込みに注力する。前者については、国内営業の強化はもとより、韓国子会社を中心に海外展開を強化する。また、大証の次世代システムは上場商品の多様化、24時間取引対応、世界標準のサービス提供等を目的に、システム投資総額約130億円を予定している。
この他、プロジェクト管理の厳格化と効率化、及び固定費の削減にも努め、生産効率向上と経費節減を進める。
 
セキュリティシステム業務
景気や業績の悪化により企業のIT投資が縮小すると共に、費用対効果に対するユーザーの目が厳しくなっている。このため、自社パッケージソフトの単品販売にとどまらず、周辺サービスを含めたソリューション営業を拡大させる他、既存顧客へ新たなサービスの提案を強化し収益の重層化を図る。
 
 
中期的な取り組み
 
(1)中期的な見通し
クレジットカード各社の収益構造改革に伴い発生する需要の取り込みを図る。具体的には、キャッシング事業の縮小が避けられない中で、各社は銀行代理業務、電子マネー、ネット決済等の新規事業分野の育成が避けて通れない。
こうした新規分野での開発需要に加え、既存のハードウェアが更新期を迎える事、更には業法改正対応投資の一巡等で中期的には事業機会の拡大が期待できる。このため、同社では業績回復の時期2012年6月期と見ている。
 
(2)中期的な取り組み
「業界の構造変化を好機と捉え、“IT×業務”の更なる推進によりクレジットカード関連業務におけるビジネスチャンスを確実に取り込む」と言う基本的な取り組みは不変だ。その上で、「収益性の向上」と「新製品の投入による既存顧客への訴求と新規顧客の獲得」と言う2つのポイントを挙げている。
 
①収益性の向上
「NET+1」、「ACE Plus」、「CWAT」と言った自社パッケージソフト関連の受注拡大により収益構造を強化すると共に、新規開発により事業領域の拡大を図る。具体的には、加盟店管理分野等での新規開発と「NET+1」の機能強化により、クレジットカード会社の基幹系関連への業務拡大を図ると共に、ネット銀行、海外送金事業への対応を強化する。また、「ACE Plus」、「CWAT」については海外展開により市場の拡大を図る。この他、収益性向上施策の一環として、セキュリティ関連の新製品投入を行っている。
 
※海外戦略
エリア特性に応じた販売戦略を展開し、日本発の世界に通用するソフトウェアベンダーを目指して事業を進める。
このため、現地事業者等との協力関係強化、人的ネットワーク・チャンネルの確立及び採用と人材育成、更にはセキュリティ関連ビジネスによる海外での地盤固めに取り組む。
 
 
②新製品の投入による既存顧客への訴求と新規顧客の獲得
クレジットカード関連において、事務系製品の開発に注力する他、セキュリティ関連において、サービスの拡充に取り組むと共に「EUCSecure」等の新製品を投入する。
尚、「EUCSecure」は10月5日に販売を開始した。「EUCSecure」は販売・導入の手間がかからず、有力代理店を通じた量販が可能な製品。IT統制の強化が必要な企業、膨大な量の内部資料を共用し一元管理を必要とする企業、及び人事情報・機密情報強化を志向する企業等をターゲットとしている。また、販売は、直販の他、パートナー営業を活用する他、OEM供給にも対応していく考え。今期30百万円、向こう3年間で300百万円の売上を目指している。
 
※「EUCSecure」
EUC文書ファイルを暗号化すると共に、利用制限の付与や操作ログの取得を可能にするソフト。EUC文書ファイルとは、企業内でエンドユーザがMicrosoft社のExcel、Word、PowerPoint、或いはAdobe社のAcrobat等で作成した文書ファイルの事で、「EUCSecure」は、重要なEUC文書ファイルの暗号化を業務現場で可能にすると共に、ファイル利用先の利用制限を行い、操作の利用履歴(ログ)の取得により、情報漏洩リスクを大幅に低減し、コンプライアンスや内部統制を強化する事ができる。
 
③大日本印刷との取り組み
この他、セキュリティシステム業務において、「SSFC(Shared Security Formats Cooperation)」をはじめとしたセキュリティ関連ビジネスの強化を図ると共に、セキュリティ以外のシステム開発案件にも取り組む。「SSFC」とはICカードのデータフォーマットの事で、FeliCa等のICカードシステムを用いた社員の個人認証に加え、プリンター等のOA機器とICカードの認証システムとの連携による重要書類の管理といった、セキュアなオフィス体制の構築を目指している。
「SSFC」を推進する業界団体の事務局長を大日本印刷が務めている。
 
 
取材を終えて
当初の予想通りとは言え、第1四半期はクレジットカード業界や証券・金融業界のシステム投資抑制の傾向に大きな変化は見られなかった。第2四半期以降も状況の大きな改善は期待し難いが、クレジットカード会社の多くが改正法施行(6月)への対応を来年初から実施するため、改正法対応のシステム投資があらかた年内に一巡する見込み。今後、徐々にフロント業務関連への投資が回復してくるものと思われる。加えて、各社はキャッシング事業の縮小を補うべく、銀行代理業務、電子マネー、ネット決済等の新規事業分野の育成が避けて通れない。このため、システム投資に対する潜在需要は大きく、中期的には同社にとって好材料は多い。また、優れた財務内容も強みであり、過度に悲観する必要は無いと思われる。