ブリッジレポート
(2925) 株式会社ピックルスコーポレーション

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ブリッジレポート:(2925)ピックルスコーポレーション vol.7

(2925:JASDAQ) ピックルスコーポレーション 企業HP
荻野 芳朗 社長
荻野 芳朗 社長

【ブリッジレポート vol.7】2010年2月期第2四半期業績レポート
取材概要「利益貢献の少ないファミリーレストラン向けの野菜販売の減少で売上全体の伸びが鈍いため、投資家に与えるインパクトが弱くなりがちだが、新規・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年11月10日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社ピックルスコーポレーション
社長
荻野 芳朗
所在地
埼玉県所沢市くすのき台3-18-3
決算期
2月末日
業種
食料品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年2月 18,502 399 413 202
2008年2月 17,870 286 373 205
2007年2月 16,775 293 355 218
2006年2月 16,563 158 205 -37
2005年2月 18,186 74 146 144
2004年2月 18,038 268 285 99
2003年2月 18,047 101 98 36
2002年2月 16,542 548 514 230
2001年2月 16,895 302 287 266
株式情報(10/23現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
326円 6,394,774株 2,085百万円 4.0% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
10.00円 3.1% 39.03円 8.4倍 835.71円 0.4倍
※株価は10/23終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
ピックルスコーポレーションの2010年2月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
浅漬・惣菜の製造・販売及び青果物・漬物等の仕入販売を行なっている。「野菜の元気をお届けします」をスローガンに掲げ、コーポレートカラーの緑は新鮮感を表す。自社製品は、契約栽培によるトレーサビリティの確保された国産野菜(約70%が契約栽培)が中心で保存料・合成着色料は使用しない。また、製造現場では、工場内での温度管理の徹底や入室前の全従業員の服装・健康チェック、更にはISO9001、HACCPの取得や5S活動に取り組む等、「安全な食へのこだわり」は強い。

資本関係では、「きゅうりのキューちゃん」でお馴染みの東海漬物(株)が株式の49.6%を保有するが、取引はわずかにふる漬等の仕入があるのみ(09/2期は仕入高全体の3.9%)。むしろ同社を語る上で忘れてならないのが、セブン&アイ・ホールディングス(3382)で、09/2期は同グループ向けの売上が全体の51.2%を占めた。
09/2期の品目別売上構成は、製品売上が54%(浅漬41%、惣菜10%、ふる漬3%)、商品売上が46%(漬物39%、青果物7%)。また、販路別では、量販店55%、コンビニ24%、外食・その他21%。
 
 
2010年2月期上期決算
 
 
前年同期比0.8%の減収ながら、経常利益は同49.7%増加した。
全国の製造・販売ネットワークを活かし、スーパーや生協など量販店向けの拡販を積極展開すると共に、大手量販店向けプライベートブランド商品やナシヨナルブランドキムチの開発、更には惣菜製品等の新商品開発等によりラインナップの強化を図った。個人消費の低迷や天候不順等の影響があったものの、上記の積極的な営業展開と製品ラインナップの強化が奏功し、ほぼ前年同期並みの売上高を確保。利益面では、原料野菜価格の安定に加え、製品原材料や工場資材等の原材料調達価格の見直し効果、更には減収の主な要因が利益貢献の少ない青果物のファミリーレストラン向け販売であった事等もあり、営業利益は345百万円と同37.8%増加。投資有価証券償還損等が無くなり営業外損益が改善した他、特別損失も減少した結果、四半期純利益は同67.9%増加した。
 
期初予想との差異要因
個人消費の低迷や天候不順の影響等で売上高が下振れしたものの、契約栽培の拡大効果と野菜価格の安定に加え、製造工程における作業効率の改善等もあり、製品原価率が改善。商品を中心にした売上の下振れによる物流費負担の軽減等も利益の押し上げ要因となり、営業利益以下の各利益段階で期初予想を大幅に上回った。
 
 
スーパーや生協など量販店向けに惣菜の売上が大きく伸びた他、ふる漬けの売上も増加したが、コンビニ向けの浅漬の苦戦や外食チェーン向けの野菜販売の減少による青果物の落ち込みをカバーできなかった。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
利益を計上した事と設備投資等で上期末の総資産は11,480百万円と前期末比750百万円増加した。借方では、大阪での新工場建設に伴い土地等の有形固定資産が増加した他、現預金や売上債権が増加。一方、貸方では、設備投資資金等を賄うため、短期借入金を中心に有利子負債が増加した他、仕入債務や純資産も増加した。CFの面では、運転資金の増加等で営業CFが微増にとどまる中、新工場建設に伴い投資CFのマイナスが拡大したためフリーCFが109百万円のマイナスとなった。しかし、積極的な営業展開や新製品開発を進める中でも営業CFが安定的に黒字基調を維持している事に注目したい。
 
 
 
2010年2月期業績予想
 
 
前期比1.3%の増収、同16.5%の経常増益予想。
下期も厳しい事業環境が予想される上、引き続き青果物販売の減少が見込まれるものの、「ご飯がススム こうちゃんのキムチ」、「カレーに合うキャベツの甘酢漬」、「なまらうまいキムチ」等、新製品の寄与が見込まれる。
利益面では、プレセールスが好調だった「ご飯がススム こうちゃんのキムチ」を中心にテレビCM及び交通広告など販促活動の積極展開に伴い広告宣伝費が増加するものの、製品売上の増加と野菜価格の安定や製造原価及び商品原価の低減により営業利益は同13.4%増加する見込み。
 
(2)品目別の見通し
品目別の売上予想は、製品が前期比4.3%増の10,384百万円。新製品効果で惣菜が同26.5%と大きく伸びる他、浅漬けもほぼ前期並みの売上を確保する見込み。一方、青果物の売上が減少する商品は同2.3%減の8,350百万円。
 
 
 
外部環境と今後の施策
 
(1)漬物・惣菜業界の動向と同社を取り巻く環境
①漬物業界
漬物市場は約4,000億円と推定され、今後も安定的な推移が予想される。ただ、量販店間の競争激化による製品の低価格化、量販店にとって利益率の高いプライベートブランド商品への対応、更には国産原料需要の増加等で、今後、体力の無い小規模メーカーの淘汰と大手による市場の寡占化が予想される。実際、全日本漬物協同組合連合会の加盟企業は毎年100社前後減少しており、かつて2,000社を超えていた加盟企業が現在1,200社程度にまで減少している。現在、売上高が100億円を超えるのは5社のみで、同社のシェアは約4.5%(個別ベース)。M&Aにも積極的に対応する事でグループでのシェアアップに取り組んでおり、中期的には10%程度にグループシェアを引き上げたい考え。
 
 
②惣菜業界
同社の資料によると、弁当等を含む惣菜市場の規模は約8兆円で、03年から07年にかけて年率3%強の成長が続いている。販売チャネル別(07年)、総合スーパーが12%、食料品スーパーが23%、コンビニが25%、百貨店・専門店他が40%。
 
③同社を取り巻く環境
消費低迷もあり主要取引先である量販店は出店を抑制し、不採算店の閉店を進めているが、その一方で消費者ニーズが見込まれる商品の少量化や低価格と収益性を両立するべくPB商品の拡充に力を入れている。また、仕入の面で、中国産食品に対する不安感が沈静化しつつあることも昨今の特徴だ。一方、消費者は、低価格、少量化、更には安心・安全・健康に対する要求を強めている。
同社はこうしたニーズを踏まえ、成長余地の大きい惣菜を中心にキムチや浅漬の差別化製品の開発を強化すると共に、同社の強みを活かした提案力の向上に取り組んでいく考え。
 
<製品開発>(画像はいずれも同社資料より)
・「ご飯がススム こうちゃんのキムチ」(2009年10月発売)
料理研究家 相田幸二氏とのコラボレーション第3弾の製品で、コンセプトは、ご飯によく合い、ご飯が「ススム」。
りんごをふんだんに使用した甘味とアミ塩辛等の魚介の旨味が、具沢山ヤンニョムによってご飯とよく絡み、ついついおかわりしたくなるこってりとした味わい。

主原料は国産、保存料、着色料は不使用
希望小売価格:248円
良好なプレセールスの結果を受けて、知名度向上を図るべく販促活動にも力を入れる。下期はテレビCMに加え、首都圏の8,000車両を使った交通広告等を展開する。
・「カレーに合うキャベツの甘酢漬」(2009年9月発売)
内食の増加とカレーライス人気への対応として、シャキシャキ感のあるキャベツの甘酢漬を発売した。福神漬けやらっきょもいいが、歯ごたえと甘酸っぱさでカレーライスにアクセントが付くキャベツの甘酢漬もなかなかのもの。

「ご飯がススム こうちゃんのキムチ」と同様、材料はもちろん国産で、保存料や合成着色料は不使用。
・「なまらうまいキムチ」(2009年9月発売)
地域ブランド活用の一環であり、北海道発(北海道子会社開発)の商品。
健康面からも注目を浴びる「がごめ昆布」を使用しており、魚介類のうま味と甘味、そして辛味のバランスが絶妙な逸品。敢えて説明するまでもなく、材料は国産で、保存料や合成着色料は不使用。
ちなみに、「なまら」とは「とても」とか「すごく」と言う方言。渋谷系コギャル風に言えば、「メッチャ うまいキムチ」といったところだ。
・「ベジカクテル」(2009年9月発売)
イトーヨーカドー、FANCL、
の3社による共同開発製品。女性をターゲットとしており、健康・美容にも良い、おしゃれなお漬物。
「赤のベジカクテル」にはイタリアン、「黄のべジカクテル」には柑橘系、「緑のベジカクテル」には青しそドレッシングをあえて食べる。ドレッシングにはFANCLのHTCコラーゲンを配合。
 
・野菜をキーワードにした惣菜製品の開発
四季の味覚を堪能できる事も惣菜の良さ。例えば、春はセロリを使った「セロリのマリネ」、夏はきゅうりを使った「ピリ辛胡瓜」、そして、足下、大人気の「ふろふき大根」等。惣菜の良さを活かした製品開発を進め、差別化を図る。
 
 
<関西地区の事業拡大(新工場建設)>
関西地区の拠点である子会社(株)彩旬館は、賃借している本社工場の老朽化が進んでいる事に加え、現在フル稼働の状態で増産余力が無い。加えて、品質衛生管理レベルを高める必要もある事から、新工場の建設を進めている。新工場は2010年3月の竣工・引渡、4月の稼動を予定しており、本社機能を含めた全ての機能を移転させる考え。新工場の稼動により、生産性の改善はもちろん、生産能力がほぼ倍増する見込みで、現在、年産2万パック(年商ベースで20億円)の生産が、4月以降は同3万パックに拡大し、将来的には4万パックに引き上げる。
 
 
 
取材を終えて
利益貢献の少ないファミリーレストラン向けの野菜販売の減少で売上全体の伸びが鈍いため、投資家に与えるインパクトが弱くなりがちだが、新規開拓と既存取引先深耕の両面から課題である量販店の開拓が着実に進んでいる。
切れ目無く投入しているキムチや惣菜等の新製品がいずれも好評で、特に10月に発売した「ご飯がススム こうちゃんのキムチ」のプレセールスは良好だったようだ。美味さの決め手は「りんごの甘み」と「アミ塩辛の甘味」で、日本人の味覚に合う、しっかりとした甘味・旨味のある味付けに仕上げてある。そのままご飯に乗せるだけでも十分だが、QRコードで簡単な食べ方アレンジや料理レシピを公開しているため、家族で様々な食べ方を楽しむ事もできる。これまでの主力商品は年商7~8億円規模で収益に貢献してきたが、プレセールスの結果を踏まえると、その2~3倍は期待できるのではないかと思われる秀作だ。このため、販促にも力を入れており、今後、TVCMや電車の中で広告を目にする機会が増えるだろう。
来期は大阪新工場の稼動により、生産能力の増強と生産性の改善が進む見込みで、景気回復の後押しがあれば、成長ペースが一段とテンポアップしてくるものと思われる。しかし、先ずは、「ご飯がススム こうちゃんのキムチ」、
「カレーに合うキャベツの甘酢漬」、更には「なまらうまいキムチ」等の新製品をご賞味あれ。