ブリッジレポート
(6890) 株式会社フェローテックホールディングス

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ブリッジレポート:(6890)フェローテック vol.22

(6890:JASDAQ) フェローテック 企業HP
山村 章 社長
山村 章 社長

【ブリッジレポート vol.22】2010年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「第1四半期は、ほぼ想定通り。真空シールの回復ペースが鈍いようだが、太陽光発電プロジェクトに対する政府による大型の補助金支給の発表が・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年9月8日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フェローテック
社長
山村 章
所在地
東京都中央区京橋 1-4-14
決算期
3月
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年3月 36,653 2,790 2,097 743
2008年3月 36,625 3,057 2,414 1,903
2007年3月 32,517 2,288 2,081 1,703
2006年3月 23,946 1,210 1,040 708
2005年3月 21,105 1,762 1,456 633
2004年3月 15,000 615 -177 -645
2003年3月 12,845 111 -626 -899
2002年3月 14,775 916 984 -357
2001年3月 16,435 2,665 2,561 1,644
2000年3月 7,988 892 629 288
株式情報(6/5現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,079円 23,120,978株 24,948百万円 3.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12.00円 1.1% 36.86円 29.3倍 856.22円 1.3倍
※株価は6/5終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フェローテックの2010年3月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
シリコン単結晶引上装置等の太陽電池関連製品、半導体製造装置やフラット・パネル・ディスプレイ(FPD)製造装置の部品、半導体材料、各種温度調節に使われるサーモモジュール等の製造・販売を行っている。いずれも目に触れる機会はないものの、パソコンや携帯電話、液晶やプラズマ等、身近な分野で同社の技術が活かされている。
もともとは磁力を持つ液体である磁性流体応用製品のメーカー。その代表例が、半導体やFPDの製造装置の部品となる真空シールであり、ハードディスクドライブ等で使われていたコンピュータシールである。磁性流体応用製品に次ぐ製品となったサーモモジュールもそうだが、Only Oneの製品であり、超精密部品であるため、金属加工や表面処理等で高い技術が要求される。この技術を中国に持ち込み、現地の安価な労働力と融合させたのが、事業セグメントの一つである受託生産(CMS)事業である。更に、近年、急速な伸びを示しているのが太陽電池関連事業である。太陽電池の材料となるシリコン単結晶の引上装置には、同社の製品である真空シールや石英製品等が主要部材として使われており、これまで蓄積してきた技術やノウハウが活かされている。
 
事業は4セグメントに分かれ、主な製品及びサービスは次の通り
(カッコ内は09/3期売上構成比)。
 
装置関連事業(38.9%)
真空シール、石英製品、半導体用シリコン製品、セラミックス、EB-ガン等
 
太陽電池関連事業(30.1%)
シリコン(多・単)結晶製造装置、太陽電池用シリコン、石英坩堝等
 
電子デバイス事業(11.9%)
磁性流体動圧軸受、サーモモジュール、磁性流体等
 
受託生産(CMS)事業(19.3%)
シリコンウェーハ加工、装置部品洗浄、工作機械製造等
 
 
 
 
2010年3月期第1四半期決算
 
 
前年同期比28.3%の減収、106百万円の経常損失となった。
シリコン製造装置・消耗品共に伸びた太陽電池関連事業の売上が増加したものの、半導体やFPD関連が中心の装置関連事業やCMS事業が大きく落ち込んだ他、自動車向けが多い電子デバイス事業の売上も減少した。
利益面では、子会社を含めた役員報酬の削減、製造拠点での一時帰休の継続、更には従業員賞与削減など人件費を中心に経費削減に取り組んだものの、連結子会社が増えた事や年金資産の時価下落に伴う退職給付費用の増加等もあり販管費が増加、237百万円の営業損失となった。
尚、営業外損益の改善は為替差損益の改善による(差損180百万円→差益200百万円)。
 
※ 在外子会社等の収益及び費用の円貨への換算方法の変更
当第1四半期より、在外子会社等の収益及び費用の円貨への換算方法を四半期末日の直物為替相場から期中平均相場での換算に変更した。これにより従来の方法と比較した場合、売上高が109百万円減少し、営業損失が10百万円、経常損失が16百万円、それぞれ増加した。
 
 
①装置関連事業
半導体業界は設備投資の凍結と生産調整が続いており、真空シール等の装置部品に加え、石英製品等の製造プロセスに使用する消耗品も減少した。ただ、概ね計画通りの結果であり、第1四半期末にかけて底打ちの兆しが見えてきた。
 
 
②太陽電池関連事業
シリコン結晶製造装置の受注残の消化が順調に進んだ事に加え(為替の影響等で金額ベースでは微減だが)、単結晶製造装置に使用される石英坩堝も顧客からの認定取得を機に販売が大幅に増加。また、原材料の調達難が解消した太陽電池用シリコン製品も伸びた。ただ、シリコン結晶製造装置において新型及び顧客仕様に沿った製品の開発費用(約1億円)等が負担となった他、原材料となるポリシリコンの価格急落でシリコン製品の価格が弱含んだ事も響き営業利益が減少した。
 
 
③電子デバイス事業
世界的な自動車産業の低迷を受けて、自動車温調シート向けを主力とするサーモモジュールの売上が減少した。
 
④CMS事業
シリコンウェーハ加工、装置部品洗浄及び工作機械製造が、最終需要家の購入抑制及び生産調整の影響を受けて減少した。
 
 
 
第1四半期末の総資産は前期末比2,033百万円増の48,985百万円。増加の主な要因は、新株予約権の行使による現預金と純資産の増加。この他、設備投資により固定資産が増加した他、有利子負債も若干増加した。一方、売上高の減少等で売上債権が減少した。
 
 
損失計上となったものの、全般に資金効率が改善した事や税負担の減少で営業CFの黒字が増加。加えて、定期預金の解約等で投資CFが黒字転換したため、フリーCFは大幅に増加した。
 
 
2010年3月期業績予想
 
(1)業績予想
上期及び通期の業績予想に変更はない。回復ペースの鈍い分野があるものの、全般に引き合いや受注が回復傾向にある。通期予想は、連結売上高30,500百万円(前期比16.8%減)、経常利益1,000百万円(同52.3%減)、当期純利益800百万円(同7.7%増)。配当は、1株当たり期末12円を予定している。
 
 
 
(2)セグメント別予想
装置関連事業
半導体関連も石英製品、セラミックス等、全般に回復基調にあるものの、回復ペースが想定よりも緩やかで、特に真空シールのペースが鈍い。いずれにしても、最悪期を脱した感がある。
 
太陽電池関連事業
第1四半期は受注の端境期となったが、セミコン上海及びSNEC(上海新エネルギー産業協会)PV POWER EXPOへの出展効果もあり、第2四半期(子会社は4-6月が第2四半期)に入り、引き合いが活発化し受注が入り始めた。発表の通り、既に多結晶製造装置40台を受注しているが、単結晶製造装置も含めて受注時期が年末頃となる案件が多いようだ。また、第1四半期は円高の影響で円ベースでの価格が低下しているが、現地通貨ベースでの販売価格が低下しているわけではない。既存顧客の増設に対しては、価格を引き下げるケースもあるが、足下の引き合いや受注は新規顧客からの案件が中心のため価格も堅調である。尚、新規顧客は新型や独自仕様等の要望が多いため、同社では新たに中国の開発設計部隊を分社化し新会社を設立した。こうした新会社設立も第1四半期に営業減益となった一因として挙げる事ができる。
 
電子デバイス事業
原油高の影響で大型車向けの生産調整が始まっていたため、米GM破綻の影響は想定より少ない見込み。自動車向け以外では、新型インフルエンザの判定装置やマイナスイオンのエアコン等の用途拡大が期待できる。
 
CMS事業
契約上の制約から詳細な説明は無いものの、新規のCMSが始まるため、第2四半期以降、尻上がりに売上が増加する見込み。
 
 
 
取材を終えて
第1四半期は、ほぼ想定通り。真空シールの回復ペースが鈍いようだが、太陽光発電プロジェクトに対する政府による大型の補助金支給の発表があった中国を中心に太陽電池関連は引き合いが活発化しており、一部は第2四半期に受注済みである。また、シリコン多結晶製造装置では、中国企業に加え、日本企業からの引き合いも入り始めているようで取引先の拡大政策も進捗している。
尚、太陽電池国内出荷統計(太陽光発電協会)によると、4~6月期の太陽電池の国内出荷(発電能力ベース)は、05年10~12月期以来の過去最高となる前年同期比82.5%増の8万3,260キロワット。政府が1月に住宅向け太陽光発電への補助金制度を復活させた他、4月以降、地方自治体も独自の補助金制度を設けて設置を後押ししている。加えて、太陽光で発電した余剰電力の買い取り制度の年度内導入も予定されている事から、今後、市場拡大ペースが加速するものと思われる。