ブリッジレポート
(8860) フジ住宅株式会社

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ブリッジレポート:(8860)フジ住宅 vol.19

(8860:大証1部,東証1部) フジ住宅 企業HP
宮脇 宣綱 社長
宮脇 宣綱 社長

【ブリッジレポート vol.19】2010年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「不況下でも根強い需要のある中古住宅「快造くん」や廉価な新築建売住宅等、事業環境に適したビジネス展開が奏功している事に加え、財務面での・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年8月25日掲載
企業基本情報
企業名
フジ住宅株式会社
社長
宮脇 宣綱
所在地
大阪府岸和田市土生町1丁目4番23号
決算期
3月
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年3月 45,300 2,584 2,388 1,361
2008年3月 48,793 2,723 2,413 2,097
2007年3月 52,221 4,233 4,090 911
2006年3月 41,333 3,229 3,196 1,312
2005年3月 43,954 3,208 2,799 1,661
2004年3月 34,387 2,034 1,891 684
2003年3月 32,905 1,198 1,028 545
2002年3月 33,419 899 692 297
2001年3月 31,433 2,928 2,681 1,503
2000年3月 34,268 1,596 1,117 -2,237
株式情報(8/21現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
334円 31,999,029株 10,688百万円 9.5% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12.00円 3.6% 30.94円 10.8倍 449.58円 0.7倍
※株価は8/21終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フジ住宅の2010年3月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
地盤である大阪府下を中心に戸建分譲等、住宅・不動産事業を展開。主力の戸建分譲は、分譲ながら間取りや設備仕様等、建築基準法の範囲内で最大限に顧客の要望を取り入れる「自由設計方式」と50~200戸規模で街並みの統一性を重視した開発を行う「街づくり」に特徴がある。この他、金融機関とタイアップした土地有効活用事業、賃貸・管理事業、不動産ファンドや個人投資家向けの賃貸マンション販売事業、及び戸建分譲のノウハウを活かした中古住宅の改装販売等も手掛けている。各事業の内容は次の通り(下記の他に「その他の事業」が売上高の約0.5%を占める)。
 
(1)分譲住宅事業               09/3期売上構成比53%
用地仕入・許認可の取得から、宅地造成、設計、建築、販売までの一貫体制を構築しており、「自由設計方式」と「街づくり」が特徴。近年では、消費者ニーズに対応した廉価な建売住宅の販売にも力を入れている。尚、地価上昇に伴う事業リスクの高まりから03年春以降、マンション用地の仕入を停止している。
 
(2)中古住宅の販売及び仲介事業          同 21%
「快造くん」のブランド名で展開している中古住宅の再生・販売が中心。地域密着営業により交差点単位での地域情報を収集し分析する。物件の鑑定力、仕入・販売価格の査定の速度と正確性、更にはリフォームのマニュアル化による独自のノウハウ等が強み。
 
(3)不動産ファンド等向け賃貸マンション販売事業  同 2%
不動産ファンドや個人投資家を対象とした事業。不動産ファンド向けは、地価上昇によるリスクの高まりから、05年秋以降、土地の仕入を行っていない。現在は、資金運用手段として根強い需要があり、立地も都市部に限定されない個人投資向けに絞り事業展開している(以下、個人投資家向け一棟売賃貸マンション事業として表記する)。
 
(4)土地有効活用事業(建築請負)         同 9%
遊休地の有効活用を目的とした賃貸マンション・アパート等の建築提案を行なっている。市場調査・企画・設計・建築・竣工引渡後の運営管理までを一貫してサポート。金融機関や既契約者からの紹介案件が多い。
 
(5)賃貸及び管理事業               同 14.5%
100%子会社フジ・アメニティサービス(株)が手掛けている。安定収益源となるばかりでなく、土地有効活用事業や不動産投資ファンド及び個人投資家向け賃貸マンションの販売等との相乗効果も高い事業。
 
2010年3月期第1四半期決算
 
 
前年同期比46.6%の増収、経常利益640百万円。
新築住宅販売及び新たに3店舗を開設した中古住宅の販売が伸びた他、引渡の前倒しもあり個人投資家向け一棟売賃貸マンション等の売上も増加した。チラシからネットへのシフト等による広告宣伝費の効率化等で大幅な増収にもかかわらず販管費が同7.2%減少、支払利息の減少により営業外損益も改善し、経常損益は第2四半期(累計)の予想としていた200百万円を大幅に上回った。
予想超過の要因は、建売住宅及び中古住宅の販売好調と個人投資家向け一棟売賃貸マンション等で引渡しが前倒しされた事だが、特に中古住宅の寄与が売上高・利益の両面で大きかった。尚、引渡しの前倒しによる押し上げ効果は、売上高で456百万円、売上総利益で161百万円。
 
 
不動産販売事業
売上高は前年同期比56.4%増の8,975百万円、営業利益613百万円(前年同期は営業損失91百万円)。このうち、戸建住宅は、売上高が同49.7%増の5,271百万円。住宅間取りや設備など多様な顧客ニーズに応える自由設計及びオプション方式の比較的単価の高い住宅及び小規模で廉価な新築建売住宅の販売が順調に推移した。
また、中古住宅は、売上高が同54.3%増の3,195百万円。堺市方面及び大阪市内での中古住宅の仕入、販売の拠点として開設したフジホームバンク堺店、泉北店、大阪店の3店舗が寄与した。この他、引渡しの前倒しもあり個人投資家向け一棟売賃貸マンションの売上高が451百万円と前年同期比283.6%増加した。
 
土地有効活用事業
7件の引渡しを行い(前年同期は6件)、売上高が前年同期比58.9%増の717百万円、営業利益が同103.3%増の95百万円となった。
 
賃貸及び管理事業
主に土地有効活用事業にリンクした賃貸物件及び管理物件の取扱い件数が増加し、売上高は1,692百万円と前年同期比7.0%増加。物件個々の特性に応じた施策が奏功し、営業利益は108百万円と同27.0%増加した。
 
その他事業
中古住宅の仲介手数料やローン事務手数料に加え、前期よりテストマーケティングを開始した住宅リフォーム事業に係る売上高15百万円を計上した事等により売上高88百万円(前年同期比64.0%増)、営業利益11百万円(前年同期は営業損失2百万円)となった。
 
 
不動産販売事業の期中契約高は前年同期比7.5%減の8,667百万円、期末契約残高は同27.9%減の14,433百万円。このうち、戸建住宅は、受注契約高が同19.8%減の5,481百万円、期末受注残高が同29.2%減の12,717百万円。また、中古住宅は、受注契約高が同50.6%増の2,994百万円、受注残高が同44.3%増の1,518百万円。

不況下でも根強い需要のある中古住宅や廉価な建売住宅に注力しているため期中契約高は減少したものの、期中契約棟数は増加しており、事業環境に適したビジネス展開(需要への対応と事業リスクの低減)が奏功している事がわかる。
また、期末受注残高は金額・棟数共に減少しているが、次の理由により問題は無いと考える。不動産業界では、一般に、マンション・住宅等の引渡し(売上計上)時期は第4四半期、特に3月に集中する傾向があるが、同社グループは、不動産販売事業における戸建住宅を中心に引渡し時期の平準化に努めており、10/3期においては、第1四半期の年間売上予想に対する進捗率が25.2%となり、ほぼ年間売上の4分の1に相当する売上実績を上げた。このため、第1四半期の売上・利益が前年同期に比べ大幅に増加したわけだが、引渡しが進んでいるため、当然、前年同期に比べて期末契約残高は減少する。(ニーズの強い廉価な分野へ注力している事も、金額ベースで減少した一因である)。
 
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー
 
 
第1四半期末の総資産は47,607百万円となり、前期末比2,297百万円減少した。期末にかけて積み増した現預金を取り崩して長期借入金を返済した事、及び未成工事支出金を含めたたな卸資産の削減が進んだ事等が総資産減少の要因である。

尚、同社グループでは、経営体質の安定化を図るため、不動産の在庫量をコントロールする3つの指標値を設定しているが、第1四半期末の実績は以下の通りである。
 
 
 
法人税の支払いが前年同期の183百万円から714百万円に増加したものの、大幅な損益の改善に加え、たな卸資産の削減が進んだ事で営業CFが黒字転換。財務CFがマイナスとなったのは、長期借入金の返済や配当金の支払い等による。
 
2010年3月期業績予想
 
第1四半期の実績を踏まえて、上期及び通期の業績予想を上方修正した。第2四半期(7-9月)は期初に想定した厳しい受注環境が続く事を想定すると共に、季節要因(夏場の需要低迷)も加味したが、自由設計の戸建住宅、個人投資家向け一棟売賃貸マンション、及び土地有効活用事業において引渡しの前倒しが予定されているため、上期の売上高及び利益は第1四半期の上振れ分に更なる積み増しを行った。一方、下期は期初予想を据え置いたが、上期の前倒し計上分が減少する。
 
 
第1四半期の売上は計画を1,389百万円上回った(達成率113.8%)。第1四半期の売上実績(11,473百万円)に、第1四半期末の受注契約残高の内、上期売上予定の8,469百万円と第1四半期と同等額の賃貸管理売上1,692百万円を加えた21,634百万円(同95.3%)が確実に上期の売上として見込まれる。これに建売及び中古住宅の7月~9月の受注契約の一部が上期の売上高に加われば、上方修正された上期の売上高予想22,700百万円を達成する事ができる。また、第1四半期の営業利益率が5.7%であったのに対して、上期は5.0%を予想しており、利益面でも無理が無い。
 
 
 
 
 
 
取材を終えて
不況下でも根強い需要のある中古住宅「快造くん」や廉価な新築建売住宅等、事業環境に適したビジネス展開が奏功している事に加え、財務面での取り組みも成果を挙げている。住宅間取りや設備など多様な顧客ニーズに対応した自由設計及びオプション方式を採用している比較的単価の高い住宅販売が伸びてこなければ本格的な業績回復とは言えないが、そのためにはマクロの景気回復が不可欠であり、企業努力を超えた問題とも言える。
(株)インベストメントブリッジでは、下期の建売住宅及び中古住宅の売上が会社予想を上回り、通期の連結売上高が470億円程度になるのではないかと考える。売上高が増加に転じれば、利益面での底打ちも近い。厳しい事業環境が続く中で、いち早く業績に底打ち感が出てきた住宅メーカーとして、マネジメント力の高さを改めて評価したい。