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ブリッジレポート:(2462)ジェイコム vol.13

(2462:東証1部) ジェイコム 企業HP
岡本 泰彦 社長
岡本 泰彦 社長

【ブリッジレポート vol.13】2009年5月期業績レポート
取材概要「飽和感が否めない携帯電話市場だが、携帯電話業界で働く派遣社員の数は減っていないと言う。店舗は減少傾向にあるが、減少しているのは複数キャリ・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年7月7日掲載
企業基本情報
企業名
ジェイコム株式会社
社長
岡本 泰彦
所在地
大阪市中央区西心斎橋 2-1-3
決算期
5月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年5月 14,162 913 953 340
2008年5月 12,404 885 907 489
2007年5月 9,605 812 786 444
2006年5月 6,657 594 552 274
2005年5月 4,684 284 281 152
2004年5月 3,271 142 141 56
2003年5月 2,222 90 88 45
2002年5月 1,616 77 76 40
2001年5月 1,369 73 70 34
株式情報(7/2現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
108,200円 45,510株 4,924百万円 9.4% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
4,000.00円 3.7% 12,272.72円 8.8倍 79,267.16円 1.4倍
※株価は7/2終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
ジェイコムの2009年5月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
大阪市に本社を置き、営業支援等の総合人材サービス事業と携帯電話キャリアショップ運営のマルチメディアサービス事業を展開している。主力の総合人材サービス事業は、携帯電話業界に特化した差別化戦略が奏功。業界動向や顧客ニーズを的確に捉えたサービスと情報の提供が、顧客企業から高い評価を受けている。大阪本社の他、東京、横浜、東海、中国、東北、九州、北海道の7支社、栃木、茨城、群馬、千葉、新潟、静岡、北陸、岡山、四国、鹿児島のサテライトオフィス10ヶ所、及び携帯電話ショップ2店舗を展開している。
 
<沿革>
1993年9月、パッケージ旅行の企画会社(株)パワーズインターナショナルとして設立され、その後、携帯電話業界へシフトした。96年4月に携帯電話ショップの運営を開始し、同年11月には現商号に変更すると共に業態を変更した。98年10月にはショップ運営のノウハウを活かし、携帯電話業界向け人材ビジネスに展開。サービス分野を絞り込んだ高品質なサービスが携帯キャリアや携帯電話販売代理店等から高い評価を得て事業が順調に拡大した。
業績拡大を受けて2005年12月に東証マザーズに上場、07年2月には東証1部上場を果たした。同社では、東証1部上場以降を第2の創業期と位置付けており、同年6月に新規事業として就職支援サービスを立ち上げ、11月には体育会の学生向けに就職支援サービスを提供するインダス(株)を連結子会社化した。中期的には、従来の事業を中心に据えつつも、特定の業界、年齢層、或いは派遣業務等に捉われる事なく、幅広いサービスを提供する総合人材サービス企業として更なる発展を目指しており、この一環として、09年12月に持株会社体制へ移行する予定。
 
<事業内容>
事業は総合人材サービスと携帯電話ショップ運営のマルチメディアサービスに分かれ、09/5期は前者の売上高が全体の96.1%を占めた。マルチメディアサービスでは、各通信キャリアと丸紅テレコムとの三者間契約により、関西地区でドコモショップ1店舗、ソフトバンクショップ1店舗を運営している。
 
総合人材サービス
主力の総合人材サービス事業は、営業支援サービス、就職支援サービス、及び人材派遣サービスに分かれ、営業支援サービスについは、更にスタッフ派遣の販売支援サービスと業務請負のアウトソーシングサービスに分かれる。
 
営業支援サービス
同社が派遣するスタッフが、携帯電話ショップや量販店等販売店での接客、商品説明、販売活動、販売員に対するアドバイスや営業情報の収集・報告といった店舗巡回業務等のサービスを提供(販売支援サービス)。また、これら業務を請負うアウトソーシングサービスも提供している。主な業務内容は次の通り。
 
 
上記業務を行うスタッフに対して、同社社員を専任担当者として配置し、スタッフに対する各種研修や勤怠管理、ショップ運営のサポート、更にはそこから得た営業情報やマーケティングデータを得意先にフィードバックしている。
 
就職支援サービス
携帯電話販売の枠に捉われず職業紹介や紹介予定派遣を行なっている他、連結子会社インダス(株)が体育会大学生に特化した新卒向け就職支援を行っている。
 
人材派遣サービス
営業支援サービス以外のオフィスやコールセンターへのスタッフ派遣が中心で、同社が雇用し、教育・研修を行ったスタッフを派遣する。
 
<若年層のステップアップを支援>
総合人材サービス事業では、派遣社員等やアルバイトを受け入れる企業側のメリットだけを追求するのではなく、働く側のキャリアアップにも配慮している。具体的には、派遣社員もしくはアルバイトとして採用した社会経験の浅い学生やフリーター等の若年層を、教育やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)により勤続年数に応じてステップアップさせ、最終的には希望する職業へ正社員として就職できるよう支援するシステムが構築されている(下図参照)。
 
 
2009年5月期決算
 
 
前期比14.2%の増収、同5.1%の経常増益となった。
1店舗を閉鎖したマルチメディアサービス事業の売上が減少したものの、携帯電話業界向けを中心に総合人材サービス事業の売上が伸び、連結売上高は14,162百万円と同14.2%増加した。ただ、健康保険料率の大幅上昇やアウトソーシングから派遣へのシフトが進んだ事で売上総利益率が悪化、東京支社移転や拠点拡充に伴う販管費の増加も負担となり、営業利益は同3.2%の増加にとどまった。当期純利益が減少したのは、インダス(株)の「のれん」の一括償却(259百万円)等で特別損失328百万円を計上したため。
 
 
総合人材サービスは携帯キャリア向け及びキャンペーンの受注増で首都圏を中心に売上が増加。一方、マルチメディアサービスは国内の携帯電話販売台数が3割強落ち込んだ厳しい事業環境の中で苦戦を強いられた。
 
 
就職支援サービス等が景気悪化の影響を受けたものの、販売支援サービスの売上高が首都圏を中心に伸長。新規事業の育成を目的に07年6月に新設したMF事業部の活動が軌道に乗り、人材派遣サービスの売上高も増加した。
 
 
携帯電話業界向けは、携帯販売台数が低迷する中、首都圏を中心にしたシェア拡大により二桁成長を維持した。また、プロバイダー等、ネットワーク関連を中心に情報通信業界向けも伸びた。
 
 
東日本地区が大きく伸びた事に加え、主力の西日本地区も堅調に推移した。尚、3月以降、首都圏の売上高が関西地域を上回って推移している。
 
 
量販店への派遣契約が大手代理店経由から量販店との直接契約に変わったため、大手代理店向けの売上高が前期比6.2%の増加にとどまる一方、量販店向けの売上高が伸びた。その他の販売代理店向けの売上高が減少したのは併売店等の苦戦による。また、アパレル業界や携帯電話と密接な関係のある通信業界向けの営業強化が奏功し、その他の売上が高い伸びを示した。尚、ジェイコム個別ベースの取引社数は、265社と前期比18社増加した。
 
稼動スタッフ数及び四半期別売上高の推移
 
 
②マルチメディアサービス
厳しい事業環境に加え、ソフトバンク伊丹西野を08年9月23日に閉店した影響もあり、売上高が減少した。
 
 
①原価率の上昇   79.6% ⇒ 80.7%、+1.1ポイント(個別:80.3% → 81.2%、+0.9ポイント)
健康保険料率の大幅な上昇(前期比+0.927%)及び利益率の高いアウトソーシングから派遣への契約変更が要因
 
②販管費率の改善  13.3% ⇒ 12.8%、△0.5ポイント(個別:12.6% → 12.0%、△0.6ポイント)
登録者数増加による採用効率の改善等により採用教育費の対売上比が0.7ポイント改善する一方、東京支社移転(08年1月)に加え、横浜支社やサテライトの開設に伴い地代家賃の対売上比が0.3ポイント上昇した。
 
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー
良好な財政状態が維持されており、営業キャッシュ・フローの黒字も増加した。
 
 
期末総資産は前期末比76百万円減の5,150百万円。借方では、余資運用で有価証券が増加する一方、減損の実施等による連結子会社インダス(株)の「のれん」の減少で無形固定資産が減少した。貸方では、スタッフの増加等に伴う未払給与の増加で未払金が増加する一方、未払法人税等が減少した他、10月から11月にかけて実施した自己株式の取得により純資産も減少した。
 
 
売上債権の回収が進んだ事や現金支出を伴わないのれんの減損損失を計上した事等で営業CFの黒字が増加。投資CFがマイナスとなったのは余資運用による。
 
2010年5月期業績予想
 
 
前期比9.4%の増収、同4.9%の経常増益予想。
携帯電話販売台数の大幅な回復は見込めないものの、携帯キャリア間での契約者獲得競争の活発化に加え、消費者に対する説明領域の拡大や説明義務の高まり等を背景に、携帯電話販売スタッフへの需要は引き続き高水準で推移するとみている。加えて、首都圏等でのシェアアップも見込まれ、総合人材サービスの売上が伸びる。利益面では、増収効果に加え、「のれん」の償却負担の減少もあり、営業利益が同10.6%増加する見込み。
 
 
総合人材サービス事業
主要マーケットである携帯電話業界では、急激に落ち込んだ携帯電話販売台数の大幅な回復は見込めないものの、3,000万台を超す販売台数、1億1千万件を超す契約数を背景に、各携帯キャリア間での活発な契約者獲得競争が続いている。加えて、消費者に対する説明領域の拡大や説明義務の高まりもあり、携帯電話の販売スタッフへの需要は引き続き高水準で推移する見込み。
 
マルチメディアサービス事業
携帯電話販売台数の大幅な回復は見込めない上、前期の店舗閉鎖の影響もあり、売上の減少が続く見込み。
 
 
上期
法規制の影響を受ける上、更なる景気悪化を想定しているが、首都圏でのシェアアップが見込まれる営業支援サービスをけん引役に総合人材サービスが増収基調を維持する。利益面では、就活シーズンに向けた準備期となるインダス(株)が16百万円の赤字となるが、ジェイコム個別では、前期並みの原価率(81.2%)を想定しており、採用効率の改善やコストの見直し効果等もあり、営業利益率は6.0%と連結の5.8%を上回る見込み。
 
下期
上期での土台作りの成果が、繁忙期にあたる下期にフルに寄与する見込み。キャンペーン受注の増加や新規業界及び新規事業の拡大も見込まれる。利益面では、例年、下期に収益率が改善している事から、ジェイコム個別の原価率は80.8%と上期比での改善を想定。就活シーズンを迎えたインダス(株)の利益貢献も見込まれ、連結営業利益率は7.1%を見込む。
 
 
携帯キャリアの地域別事業構成では、首都圏が60~65%を占めている。このため、同社の首都圏での成長余地は未だ大きく、早期に50%を達成したい考え。
 
(4)当期の施策
①携帯電話業界において引き続きシェアの拡大
・拡大余地の大きい首都圏を中心に営業体制を強化し、シェアの大幅な拡大
・収益性の高い業務請負案件の獲得や直営ショップ向け派遣の増加
 
②収益率の向上
・利益率の高いキャンペーンの受注拡大(首都圏でキャンペーン実績豊富な社員の一部を関西、東海へシフト)
・コストコントロールを徹底して行い、景気変動時においても高収益体質を維持
 
③新規ビジネス、新規業界への注力による第2の柱の構築
・事業領域の拡大を図り、アパレル、コールセンター等の他業界や新事業として求人関連を展開予定
 
④キャリアアップ支援の充実とコンプライアンスの徹底
・スタッフの能力開発とキャリアアップ支援
・コンプライアンスの徹底による社会的役割
 
2010年5月期の事業環境と施策
 
(1)事業環境
①人材サービス業界
世界的な金融危機のあおりを受けて企業収益が悪化しており、多くの企業が雇用調整を強いられている。その一方で、派遣先の雇用調整や雇い止め・直雇用化等も見られ、派遣労働者が減少傾向にある。
⇒ クライアントからはもちろん、スタッフからも選ばれる人材サービスには根強いニーズがある
 
②携帯電話業界
割賦販売制度の一般化による買替えサイクルの長期化やインセンティブの見直しによる携帯端末の高価格化により、携帯電話の販売台数減少が続いている。ただ、その一方でキャリア各社は高速データ通信や法人需要等、販売領域の多様化と差別化に取り組んでおり、利用者への説明範囲が拡大している他、これまで以上に説明責任も求められている。
⇒ 優秀な販売スタッフへの需要は、引き続き高水準で推移する
 
(2)持株会社の目的とグループの方向性
同社グループは、これまで若年層の社会進出支援を行う事を企業目的として、携帯電話業界向けの販売スタッフ派遣を中心に事業展開に努めてきた。しかし、今後は事業の拡大と社会的役割を高めるべく、既存事業をグループの中心に据えつつも、特定の業界、年齢層、或いは派遣業務等に捉われる事なく、幅広いサービスを提供する事により、総合人材サービス会社として更なる発展を目指す。このビジョンを実現するために09年12月1日に持株会社体制へ移行する。将来的な目標として、売上高1,000億円企業を挙げている。
 
 
持株会社体制への移行方法
 
100%出資子会社ジェイコムスタッフ(株)を分割準備会社として6月2日に設立(分割に先立って官庁の認可取得)し、12月1日をもって、ジェイコム(株)を分割会社、ジェイコムスタッフ(株)を承継会社として、ジェイコム(株)の全ての事業を移管し、ジェイコム(株)は純粋持株会社へ移行する。ジェイコムスタッフ(株)がジェイコム(株)へ社名を変更する。純粋持株会社へ移行するジェイコム(株)は、「ジェイコムホールディングス」等への社名変更やブランディングを検討中である。
 
取材を終えて
飽和感が否めない携帯電話市場だが、携帯電話業界で働く派遣社員の数は減っていないと言う。店舗は減少傾向にあるが、減少しているのは複数キャリアを扱うが機種変更等ができない併売店が中心。同社売上の80%以上を占める通信キャリアや大手代理店は、こうした店舗や中小の販売店を買収して販売ネットワークの整備を進めており、人材サービスに対するニーズを強めている。ただ、通信キャリアや大手代理店が人材サービス会社に要求するレベルは高く、眼鏡にかなう人材サービス会社は限られる。同社はその中の1社であり、実際、首都圏では未だ同社の供給体制が需要に追いついていない状態。加えて、収益性悪化の一因であった派遣からアウトソーシングへのシフトが一巡しつつある上、採用効率の改善により採用コストもピークアウトしている。
携帯電話市場に対するイメージと同社の実体とは一致しておらず、当面、今期予想並みの10%程度の利益成長は可能と考える。PEG倍率1倍とすると、フェアバリューは12万円強になる。