ブリッジレポート
(8931) 和田興産株式会社

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ブリッジレポート:(8931)和田興産 vol.5

(8931:JASDAQ) 和田興産 企業HP
和田 憲昌 会長
和田 憲昌 会長
小阪 堅三 社長
小阪 堅三 社長
【ブリッジレポート vol.5】2009年2月期業績レポート
取材概要「前期後半からの急激な業界環の変化により、前記決算は前述のように大幅な減益となった。分譲マンション販売の不振に加え、棚折資産の評価損を計上し・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年6月9日掲載
企業基本情報
企業名
和田興産株式会社
会長
和田 憲昌
社長
小阪 堅三
所在地
〒650-0023 神戸市中央区栄町通4-2-13
決算期
2月 末日
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年2月 32,333 2,577 1,548 118
2008年2月 29,564 4,020 3,063 1,613
2007年2月 30,629 3,318 2,736 1,357
2006年2月 25,256 2,769 2,366 1,292
2005年2月 22,965 2,594 2,203 1,162
2004年2月 23,723 2,226 1,689 912
2003年2月 22,080 2,100 1,499 652
2002年2月 22,630 2,296 1,846 917
2001年2月 22,926 3,399 2,941 1,315
株式情報(4/23現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
223円 10,000,000株 2,230百万円 0.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
15円 6.7% 30.00円 7.43倍 1,360.0円 0.16倍
※株価は4/23終値。発行済株式数は直近期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
和田興産の2009年2月期業績について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
兵庫県神戸市を地盤に、明石市、芦屋市、西宮市、尼崎市、大阪市等で、マンション分譲を中心に、不動産賃貸、土地有効活用等のソリューション、及び木造戸建分譲等を手掛ける。マンション分譲は、「ワコーレ」ブランドで50戸前後の中規模マンションが中心。神戸市内では、8年連続で「供給戸数」第1位、11年連続で「供給棟数」第1位の実績を誇り、2009年2月末現在の累積供給実績は297棟(10,908戸)。木造戸建分譲は、これまで試験的に行ってきたが、前期(09/2期)から本格的に展開している。
また、安定収益源として育成中の不動産賃貸では、住居、店舗、事務所、駐車場(月極・時間駐車)等を扱っている。事業はマンション分譲を中心とする不動産販売事業と賃貸その他事業に分かれ、2009年2月期は、不動産販売事業が売上高の91.8%を、売上総利益の76.8%を占めた。
 
 
神戸市内のマンション供給戸数
 
<沿革>
1899年1月、神戸市にて不動産賃貸業を創業。1966年12月に和田興産(有)として法人化され、79年9月に和田興産(株)に改組。分譲マンションの一棟売りで実績をつくり、91年3月、自社ブランド「ワコーレ」ブランドによる分譲マンション事業を本格化。95年1月の阪神淡路大震災を受けて、96年6月には震災復興のための優良建築物等整備事業にも従事した。04年12月に、株式をJASDAQ市場に上場した。
 
2009年2月期業績
 
 
<非連結業績:損益計算書>
 
下半期に入り急速な環境変化に見舞われ、前期比で大幅な減益となった。売上高こそ前期比9%以上伸びているが、約16.6億円の棚卸資産評価損(うち原価分6.2億円、特別損失分10.4億円)を計上したことが要因。また繰延税金資産を112百万取り崩したことから、当期純利益は上記のように大幅な減益となった。

厳しい環境ながら、分譲マンションの引渡戸数は620戸、売上高は24,544百万円(前期比9.8%増)となった。賃貸事業は売上高2,508百万円(同19.8%増)となり、同部門への通期投資額は約36億円となった。このうち20.2億円が固定資産分、4.8億円がその他資産分であった。また同部門での減価償却費は6.1億円(前期5.8億円)となった。
 
 
<事業別動向>
 
(不動産販売事業)
不動産販売事業の内訳は以下の通りとなった。

主力の分譲マンションの実績は付表のようであったが、厳しい環境の中で620戸の引渡により売上高24,544百万円(前期比、売上総利益3,724百万円(売上総利益率15.2%)を計上した。その他不動産販売は、不動産市場への資金流入の停滞等により不動産の流動化が悪化、売上高5,149百万円、売上総利益567百万円(同11.0%)にとどまった。
 
 
 
(賃貸その他事業)
賃貸その他事業の売上高は、2,508百万円(前期比19.8%増)、売上総利益は1,154百万円(同16.7増)となった。賃貸物件へは引き続き積極的な投資を行い、通期での投資額は3,600百万円となった。期末時点の入居率は93.5%の高水準だが、住居系に限れば96.8%になっている。滞納率(金額ベース)は3.1%にとどまっている。
 
 
<貸借対照表>
 
下表は貸借対照表の要約であるが、市場環境を考慮して在庫を絞り込んだことから、期末の在庫(販売用不動産および仕掛り)は262億円(前年同期313億円)へ約50億円減少した。一方で前受金などの仕入債務が45億円ほど減少しており、ほぼ相殺された形となったが、分譲マンションの引渡しが順調に推移した結果である。主な棚卸資産、固定資産の内訳は以下のようになった。
 
 
 
前期末の完成在庫は34戸。供給戸数に対する比率は6.1%であったが、これは上表のように市場平均に比べればかなり低い水準になっている。
 
 
一方で借入金残高は、賃貸用物件への積極的な投資を行ったこともあり、344億円(同309億円)へ増加した。同社の借入れ先は下表のようにメガバンク、地銀、信用金庫だけであり、ノンバンク、外資系金融機関などは無いので、「貸し剥がし」を懸念する必要は全くないと会社側は述べている。加えて、信用力を背景に安定的かつ機動的な資金調達の手段として、メガバンクをアレンジャーとするコミットメントラインを締結すると共に住宅金融支援機構や日本政策金融公庫などの公的資金も積極的に活用していくと述べている。
 
 
<キャッシュ・フロー>
 
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は、925百万円(前年同期は1,307百万円の増加)となった。
税引前純利益445百万円、たな卸資産の減少4,596百万円等による資金増加があった一方で、仕入債務2,832百万円の減少、前受金1,695百万円の減少および法人税等の支払額1,722百万円等による資金流出によるもの。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、3,548百万円(前期は3,804百万円の使用)となった。
主な要因は、事業用有形固定資産の取得による支出3,963百万円等によるもの。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、3,316百万円(前期は2,849百万円の取得)となりました。
主な要因は、マンション用地および賃貸不動産の購入資金等として長期借入金の調達12,372百万円の資金流入に対し、運転資金等の短期借入金609百万円及び長期借入金の返済8,797百万円等の支出によるもの。
 
 
2010年2月期業績予想
 
<非連結業績>
 
厳しい市場環境を鑑みて会社側では今期(2010年2月期)の業績を下表のように予想している。
「分譲マンション事業の再構築」が課題である、と述べている。
売上高は横ばいを予想しているが、売上原価の上昇および価格低下により利益は大きく減少すると見込んでいる。
 
 
主力の分譲マンション事業の売上高は前期比微増の250億円、売上総利益は24億円(売上総利益率9.6%)を見込んでいる。契約戸数は住宅ローン減税をはじめとした支援制度拡充の追い風を受け、大きく増加させる計画。
 
 
<分譲マンション事業の課題と施策>
 
下表は神戸市におけるマンション市場動向を示したものだが、価格に対するユーザーの感覚(購入希望価格)と販売価格に大きなギャップが生じており(価格のミスマッチ)、これが大きな課題となっている。
 
 
そこで今期の最大の施策として、同社ではこのギャップを埋めるべく今期は下表のように販売価格を大きく引き下げ、これによって引渡戸数の増加を図る。土地・不動産価格・建築コストなどは下降傾向にあるため、市場に受け入れられる価格の商品づくりに注力する。
 
 
具体的な施策としては、
①借地物件(2棟129戸計画)等の取り扱いおよび販売価格の見直しにより一次取得者層の潜在需要を彫りおこす。
②供給エリア(主力の明石~神戸~阪神間)を絞り込み、常設マンションギャラリーによるコストの圧縮
③販売会社と一体となった効果的な販売活動を徹底
④販路拡大・優良顧客の囲い込み ⇒ 大手企業の従業員への職域販売を拡充

(株)リクルート社の調査では、同社のマンションを購入した顧客の総合満足度は94.3%(08年)となっており、業界平均の88.0%を大きく上回っている。この高い満足度を維持するためにも引き続き企画力の強化と品質向上に努めると会社側は述べている。

集客状況については、08年2月期の同社のマンションギャラリーへの来場者数は3,664組であったが、09年2月期には4,709組(前期比28.5%増)となっており、潜在需要は堅調であると会社側は見ている。したがって、価格面で購入者側と折り合いがつけば契約に結びついていくであろう、と会社側は述べている。

最近の契約状況だが、リーマンショックのあった後の昨年10-12月には同社の契約率は50%以下まで落ち込んだが、年明け以降の1-3月には回復傾向にあり、2月、3月の契約率は60%を上回り、同社の月間契約戸数も50戸前後に回復している、と会社側は説明している。

さらに業界大手のMAJOR7社が実施した「関西圏でどこに住みたいか」というアンケートによれば、上位5地区は、①芦屋 ②西宮 ③神戸 ④夙川 ⑤岡本 であり、これらはすべて同社の事業エリアである。したがって、これらの地域では潜在的な住宅購入が高いと予想され、需要にマッチした企画や価格を提供出来れば販売戸数の増加につながると同社では見ている。

また同社では、引き続き不動産業の生命線である「用地取得能力」を高めるため、地元ネットワークの構築に注力している。
 
用地情報 ⇒ 地元業者・金融機関・土地所有者 ⇒ 創業100年の実績と信頼・用地に応じた出口の創造
 
 
<賃貸事業の施策>
 
売上高2,400百万円を計画。主な施策としては、
・仕入れ環境が好転する現在、賃貸物件の入れ替えを積極的に進める。
・賃貸物件の高稼働率(2009年2月末で93.5%)を維持する。
・住居系以外の物件開発も積極的に推進する。
 
 
 
また中期的な計画としては、2600戸、年間賃料収入30億円を目指して安定的に拡大していく。
 
収益向上戦略 売上総利益50%以上を確保する。仕入れ環境の良い中で、資産の入れ替えを進めて利益率を向上させる。
・第2四半期までに仕入れを集中させ、賃料受領期間の確保による経費率の低減。
・高利回りを確保出来る中古物件の取得に注力。
管理戦略 営業ツールの整備や周期的イベントの実施により、入居率95%を目指す。
・タイムロスの無いスケジュールで入退去スケジュールを短縮
・賃料支払方法の拡充ときめ細かい滞納者フォローにより滞納率5%以下を維持
仕入れ戦略 築10年未満の中古を中心に高利回り物件を取得し、利回り基準を12%以上に設定。
・仕入れエリアを神戸・阪神間、大阪中心部、北摂等の人気エリアに絞り込む
・積極的な物件入れ替えにより、最適なポートフォリオを構築する
<その他不動産事業・戸建事業>
 
その他不動産販売事業多彩な事業ポートフォリオを目指す
 
商品の拡充 ⇒ 収益マンション・木造賃貸・工業用地等の取得
豊富な用地・物件情報をもれなく生かす(機会損失の排除)
不動産価値最大化のため、住宅以外の分野にも進出
情報流通力の強化 ⇒ 個人投資家への情報発信

戸建住宅事業:2008年3月期に戸建事業推進室を設立
堅調な需要が見込める木造戸建住宅の開発を本格的に展開する。
RC造りに比べて木造建築コストは低廉 ⇒ 一次取得者層に優良な戸建住宅を提供出来る好機
 
<配当について>
会社側は年間15円の配当を維持すると宣言している。
 
 
取材を終えて
前期後半からの急激な業界環の変化により、前記決算は前述のように大幅な減益となった。分譲マンション販売の不振に加え、棚折資産の評価損を計上したことが要因。業界全体の環境を考えれば、やむを得ない結果であろう。

今期(2010年2月期)についても会社側は厳しい状況が続くと見ており、引き続き大幅な減益を予想しているが、この予想(目標)達成も簡単ではないだろう。第1四半期、第2四半期の状況を注視する必要があろう。「底打ち、回復」を宣言出来るのはその先になる。