ブリッジレポート
(2925) 株式会社ピックルスコーポレーション

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ブリッジレポート:(2925)ピックルスコーポレーション vol.5

(2925:JASDAQ) ピックルスコーポレーション 企業HP
荻野 芳朗 社長
荻野 芳朗 社長

【ブリッジレポート vol.5】2009年2月期業績レポート
取材概要「国内景気が冷え込む中で業績は堅調である。内食への回帰が追い風となっている面もあるが、それ以上に新規開拓の進展や惣菜事業の成長、更には新・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年5月26日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社ピックルスコーポレーション
社長
荻野 芳朗
所在地
埼玉県所沢市くすのき台3-18-3
決算期
2月末日
業種
食料品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年2月 18,502 399 413 202
2008年2月 17,870 286 373 205
2007年2月 16,775 293 355 218
2006年2月 16,563 158 205 -37
2005年2月 18,186 74 146 144
2004年2月 18,038 268 285 99
2003年2月 18,047 101 98 36
2002年2月 16,542 548 514 230
2001年2月 16,895 302 287 266
株式情報(4/23現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
310円 6,394,774株 1,982百万円 4.0% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
10.00円 3.2% 33.54円 9.2倍 810.15円 0.4倍
※株価は4/23終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
ピックルスコーポレーションの2009年2月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
浅漬・惣菜の製造・販売及び青果物・漬物等の仕入販売を行なっている。「野菜の元気をお届けします」をスローガンに掲げ、コーポレートカラーの緑は新鮮感を表している。自社製品は、契約栽培によるトレーサビリティの確保された国産野菜(約70%が契約栽培)が中心で保存料・合成着色料は使用しない。また、製造現場では、工場内での温度管理の徹底や入室前の全従業員の服装・健康チェック、更にはISO9001、HACCPの取得や5S活動に取り組む等、「安全な食へのこだわり」は強い。

資本関係では、「きゅうりのキューちゃん」の東海漬物(株)が株式の49.6%を保有するが、依存度は低く、わずかにふる漬等の仕入があるのみだ(09/2期は仕入高全体の3.9%)。むしろ同社を語る上で忘れてならないのが、セブン&アイ・ホールディングス(3382)で、09/2期は同グループ向けの売上が全体の51.2%を占めた。
09/2期の品目別売上構成は、製品売上が54%(浅漬41%、惣菜10%、ふる漬3%)、商品売上が46%(漬物39%、青果物7%)。また、販路別では、量販店55%、コンビニ24%、外食・その他21%。
 
 
2009年2月期決算
 
 
前期比3.5%の増収、同10.7%の経常増益。

中国産冷凍餃子中毒事件等の影響により国産原料を使用した漬物の需要が拡大する中、積極的な営業活動や新製品の投入により、漬物、惣菜等の自社製品が量販店(スーパー等)向けに伸びた。利益面では、製品の売上構成比が上昇した事や原材料野菜の価格安定等により売上総利益率が0.9ポイント改善。営業開発人員の増員や売上増及び取引先の拡大による物流費増等で販管費が増加したものの、売上総利益の増加で吸収、営業利益が同40%弱増加した。
営業利益に比べて、経常利益の伸びが低いのは、受取配当金が減少する一方、投資有価証券償還損を計上したため。固定資産除却損40百万円など特別損失49百万円を計上したため、当期純利益は同1.5%減少した。

尚、売上高が予想を下回ったのは、中国産野菜を使用した仕入商品が伸び悩んだため。一方、相対的に利益率の高い製品の好調で各利益段階で予想を上回った。
 
 
製品売上が順調に伸びる一方、商品売上が減少した。商品の売上減少は、利益貢献の少ない青果物の取扱を抑えた事と中国産野菜を使用した漬物の苦戦が要因。
 
 
入り繰りはあったものの、資産規模に大きな変化はなく、期末総資産は前期末比20百万円(端数処理の関係で上のBS上では21百万円の減少)減の10,729百万円。借方では、売上債権が増加する一方、減価償却が進み有形固定資産が減少した。貸方では、返済までの期間が1年未満となった長期借入金が流動負債に振り替えられた事もあり、流動負債が増加する一方、固定負債が減少した。尚、有利子負債全体では、344百万円減少した。
 
 
納税額の減少もあり営業CFが大幅に増加。長期借入金の返済を進めたものの、現金及び現金同等物の期末残高は453百万円と前期末比98百万円増加した。
 
(4)トピックス
国産野菜の生産・利用拡大優良事業者表彰制度の一環として行われた「第2回国産野菜の生産・利用拡大優良事業者」において、「生産局長賞」及び「(独)農畜産業振興機構理事長賞」を受賞した。
尚、国産野菜の生産・利用拡大優良事業者表彰制度は、加工・業務用需要に対応した野菜の生産流通の拡大等に向けて、加工・業務用野菜の生産流通に先進的に取り組む生産者、流通業者及び実需者等を農林水産省及び独立行政法人農畜産業振興機構等が表彰する制度である。
 
 
漬物業界の動向と外部環境
 
(1)漬物業界の動向
漬物市場は約4,000億円と推定され、今後も安定的な推移が予想される。ただ、量販店間の競争激化による製品の低価格化、量販店にとって利益率の高いプライベートブランド商品への対応、更には国産原料需要の増加等で、今後、体力の無い小規模メーカーの淘汰と大手による市場の寡占化が予想される。実際、全日本漬物協同組合連合会の加盟企業は毎年100社前後減少しており、かつて2,000社を超えていた加盟企業が現在1,200社程度にまで減少している。現在、売上高が100億円を超えるのは5社のみで、同社のシェアは約4.5%(個別ベース)。M&Aにも積極的に対応する事でグループでのシェアアップに取り組んでおり、中期的には10%程度にグループシェアを引き上げたい考え。
 
市場規模に関する主なデータ
 漬物出荷額(漬物新報社08年4月17日)          4,053億円
 野菜漬物製造業出荷額(日本食料新聞 07年9月29日)   4,145億円
 漬物品目別推定出荷額(食品新聞 08年8月22日)     3,800億円
 
 
(2)外部環境
景気の悪化や低価格志向の高まりに加え、少量化対策による製造コストの上昇等、事業環境は厳しさを増している。ただ、その一方で、外食から内食へのシフトは追い風であり、「食の安心・安全」に対する消費者及び販売先の意識の高まりは、SO9001・HACCPの取得や5S活動への取り組み等、同社の強みをアピールするチャンスである。
 
①販売環境
景況感悪化による消費の低迷 :量販店の出店計画の見直し
売れ筋価格帯の変化(低価格
志向の高まり)
:量販店は低価格帯でのPB商品を拡充
:少量化等による商品販売単価引き下げ
内食化傾向の高まり :消費者の外食費の削減、強まる中食や内食の傾向
:食品スーパーの業績は堅調
 
②コスト面の動き
中国産食品への不安により上昇した国産野菜等の価格は安定化傾向にあるが、一方で、少量化対策により原価率が上昇している。
 
③安心・安全
「食の安心・安全」に対する消費者及び販売先の意識は高く、更なる質的向上が求められている。
 
2010年2月期業績予想
 
 
前期比6.3%の増収、同8.0%の経常増益予想。

グループネットワークを活用してベンダー(メーカー機能と商社機能を併せ持つ)機能を強化すると共に、ブランド戦略を明確化する事で新規得意先の開拓を進める。また、製造面ではISO9001の認証及びHACCPの仕組みを最大限に活用して品質管理レベルの向上を図ると共に、原料野菜の安定調達と資材購買方法の見直しを継続しコスト削減に努める。

連結売上高は同6.3%増の19,666百万円を見込んでいる。品目別では、引き続き青果物の取扱が減少するものの、浅漬や第2の柱に育ちつつある惣菜が伸びる他、前期落ち込んだ漬物の回復も見込まれる。営業開発要員の増員により人件費が増加する他、新規取引先の増加により物流費の増加も見込まれるものの、製品の売上構成比が55.5%と前期比6.4ポイント上昇する等で利益率が改善、増収効果と相まって営業利益は同8.2%増加数見込み。
 
 
高付加価値キムチ商品の開発、各種データや全国ネットワークを活用したベンダー機能の強化、更には同社の強みである全国レベルでの提案型営業の推進により、新規得意先の開拓と既存取引先への拡販に努める。また、惣菜については、内食化の進展に対応した製品ラインアップの充実を図る。
仕入商品については、仕入調達コストの改善に取り組むと共に、ベンダー機能の強化と商品管理レベルの向上、及び物流コストの削減に取り組み、売上高の拡大と収益力の強化を図る。
 
(3)経営戦略
ベンダー機能、全国を網羅した生産・物流体制、食の安心・安全と環境保全への取り組み、といった強みを活かすと共に、主力の浅漬製品、高い伸びを示している惣菜製品、及び新製品が販売好調なキムチ製品の拡充を図る事で量販店の新規取引先開拓と既存得意先深耕に取り組む。
 
①商品戦略
漬物製品及びキムチ製品は、ナショナルブランド製品とプライベートブランド製品の両面で積極的に製品開発に取り組む。また、惣菜製品は、ナムル、ふろふき大根等の既存製品の改善に取り組むと共に新製品開発を進める。
 
ヤフーブログ内のランキング上位の常連で、「こうちゃんの簡単料理レシピ」シリーズなどの著者である幸せ料理研究家 相田 幸二さんとのコラボレーションキムチの第二弾。
幸せキムチのコンセプト(「こうちゃんの!幸せキムチ」の説明文参照)を残しつつ、購入しやすい価格帯での販売を目指し改良を加えた。パッケージのデザインを工夫し(略称の「熟生」を大きく表示する事で、見るだけで“どんなキムチなのか”わかるようにした他、相田幸二さんのキムチレシピがわかるQRコードを添付し調理して食べる楽しみも味わう事ができるようにした。
発売以来、商品の知名度向上と売上拡大に向けて販売促進キャンペーンや広告宣伝活動を積極的に展開している。キムチ製品の柱として期待のかかる新製品である。
契約農家から仕入れた国産の白菜を使用(100%)し、りんご、玉ねぎによる自然な甘味でまろやかに仕上げ、アミ塩辛をはじめ鰹や昆布の魚介の旨味が後を引く。増粘剤も使っていないため、舌触りもすっきり。素材の食感を堪能できるキムチである。
もちろん、保存料・着色料は一切使用せず、韓国唐辛子の自然な色合いが発酵により鮮やかな赤みへと変化していく。酸味料やpH調整剤を使用せず、キムチ本来の自然な乳酸発酵も特徴である。
 
尚、両キムチ共に、キムチ本来の自然な乳酸発酵を特徴としているため乳酸発酵が進むと酸味が強くなる。このため、発酵による酸味が苦手な方は賞味期限から1週間前ごろまでに召し上がって頂きたい。一方、本格的な発酵キムチがお好きな方は、賞味期限間近のものがお奨めだ。
 
②営業戦略
全国ネットワークを活かした営業戦略を進める考えで、広告・販売促進策として、電車広告やキャンペーン等を実施していく。
 
 
③製造・物流部門
製造及び物流コストの削減を進めると共に、HACCP認定及びISO9001認証の範囲拡大(全工場での取得)により品質・衛生管理体制を強化する。また、不採算部門の改善にも努める。
製造コストの削減については、作業効率の改善により生産性の向上を図ると共に、原料調達コストの見直しを進める。また、物流コストについては、配送ルートの見直し等でコスト削減を図る。不採算部門の改善については、中京地区が3月に黒字転換しており、通期で黒字化が見込まれる。東北地区及び3月に社名変更した(株)ピックルスコーポレーション札幌(旧:(株)札幌フレスト)は収益改善が残る課題である。
 
④設備投資計画
大阪に新工場を建設する計画。用地は取得済みで10/2期中に着工する予定。このため、10/2期は設備投資額が771百万円とかさむ(09/2期は175百万円)。
 
(4)中期経営目標
来期(11/2期)に、連結売上高210億円、連結営業利益5億円の達成を目指している。

達成に向けた取り組み
①全国ネットワークを活用してスーパー、生協等向けを拡大
②惣菜売場向け製品及びナショナル製品開発を強化
③関西地区新工場建設
 
 
取材を終えて
国内景気が冷え込む中で業績は堅調である。内食への回帰が追い風となっている面もあるが、それ以上に新規開拓の進展や惣菜事業の成長、更には新製品の好調等によるところが大きい。もちろん市場は成熟しているが、同社の場合、大手スーパーとの取引拡大余地が大きく、また、既存の取引先についても惣菜の販売拡大余地が大きいため、食品メーカーと言う固定観念で捉えると、その潜在成長力を見誤る。加えて、今後、ますます要求が強まると思われる品質・衛生管理面での社内体制の整備が進んでいる事も強みであり、関西地区で建設を予定している新工場の稼動により供給余力が高まれば、成長が加速するものと思われる。