ブリッジレポート
(7839) 株式会社SHOEI

プライム

ブリッジレポート:(7839)SHOEI vol.12

(7839:東証2部) SHOEI 企業HP
山田 勝 会長
山田 勝 会長
安河内 曠文 社長
安河内 曠文 社長
【ブリッジレポート vol.12】東京モーターサイクルショー見学レポート
取材概要「今秋には「東京モーターショー」の開催が予定されているが、米国自動車メーカー等、大手の出展取りやめが喧伝されており、東京モーターショーに・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年4月7日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社SHOEI
会長
山田 勝
社長
安河内 曠文
所在地
東京都台東区上野5-8-5
決算期
9月 末日
業種
その他製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年9月 14,995 3,608 3,532 2,214
2007年9月 13,586 2,942 2,751 1,630
2006年9月 11,796 2,310 2,117 1,248
2005年9月 10,661 1,581 1,510 890
2004年9月 9,725 1,364 1,282 732
2003年9月 9,575 757 703 381
2002年9月 8,700 379 190 85
2001年9月 9,088 694 592 359
 
3月27日(金)から3月29日(日)にかけて、江東区有明の東京ビッグサイトにおいて第36回東京モーターサイクルショーが開催されました。東京モーターサイクルショーは、春のバイクシーズンに先がけて毎年3月下旬に開催されるオートバイ関連の見本市。今回は国内外のオートバイメーカー、パーツメーカー、販売店、出版社等、約150社が出展しました。高品質・高付加価値の「プレミアムヘルメット」が世界の有力ライダーから高い評価を受けている世界No.1のヘルメット・メーカー SHOEI のブースを訪ねてみました。
 
 
東京モーターサイクルショーは、東京モーターサイクルショー協会の主催によるものです。同協会は、モーターサイクル産業の振興と健全なモーターサイクル文化の育成・普及を通じ、豊かな社会生活の実現と経済の発展に寄与することを目的に、1993年10月6日に設立されました。
現在、正会員16社、モーターサイクル関連企業等の準会員29社、及びモーターサイクル関連団体10団体によって構成されています。


同社のブースは、西1ホールの一角、西側入場口に近いところにありました。ヘルメット・メーカーのブースとしては、比較的大きな同社ブースで、平野明人取締役管理本部長とスタッフの皆さんにお話を伺いました。
 
 
革新的シールドシステムを装備した「Z-6」
 
今回の展示会における同社の目玉は、革新的なシールドシステムを装備すると共にデザインを一新したプレミアムヘルメット“Zシリーズ”の新製品「Z-6」。国内では3月26日より出荷を開始しており、4月上旬にかけて順次小売店の店頭に並ぶ予定である。
 
 
(1)機能性、快適性、スタイリングを融合し、新しいスポーツフルフェイスを創造した「Z-6」
「Z-6」の特徴として、革新的な機能を提供するQ.R.S.A.システムや新型Pinlock®に対応するワイドなCW-1シールドといった機能性、デュアルライナーシステムや高度なベンチレーションシステムにより実現された快適性、更にはシャープで個性的なスタイリングの3点を挙げる事ができる。
 
①機能性
・Q.R.S.A.(Quick Release Self Adjusting)システム
新開発のQ.R.S.A.システムは、簡単着脱に加え、シールドの密着性を高める可変軸Wアクション機構を搭載。シールドを下げて閉じる段階でスプリングによってシールドベースが後方にスライドするため(Down&Press!)、シールドがへルメットに圧着される(シールドの高い密着性を実現)。このため、雨の浸入や風の巻き込みを大幅に低減した他、風切り音の発生も極限まで抑える事ができた(高い静粛性の実現)。
 
 
また、シールドと窓ゴムの密着性を高めるため、窓ゴムの構造も一新した。上部は弾力性の高いリップ形状、側面と下端はカール&リップ形状とし、Q.R.S.A.システムによって前方からスライドしてくるシールドと窓ゴムが全周にわたってしっかりと密着する。
 
・CW-1シールド
新シールド「CW-1」を装着するZ-6のアイポートは、従来比(Z-5、Mサイズ比)で上下10mm・左右幅4mmと大幅に拡大した。次項のイメージ写真のようにアイポートが広がると安全性はもちろんライディングの爽快感も高まる。また、CW-1は同社が長年にわたって開発し続けてきた、3次元成形ポリカーボネイト(高い対衝撃性を有する熱可塑性樹脂)製。ゆがみの少ないクリアな視界を確保すると共に、飛び石等に対しても優れた保護性能を有する。
 
 
・新型Pinlock®に対応
Z-6に標準装備しているCW-1シールドは、視界のほとんどをワイドにカバーする新型Pinlock® fog-free sheet(オプション)にも対応している。防曇シート+シールドの2層構造を特徴とするPinlock® fog-free sheetは、雨天や低気温下でも曇りを抑えてクリアな視界を確保する。加えて、従来モデルでカバーできなかった視界上部まで幅広くカバーするため(下:イメージ写真)、視界のほぼ全域が確保される。
 
 
②快適性
・コンパクト&ライトウェイト
従来のZ-5ではL、XLの2つのサイズのシェルで全サイズをカバーしていたのに対し、Z-6ではよりコンパクトなMサイズのシェルを新設定した。従来、Mサイズの人はLサイズを購入し大型のライナーで調節していたため、サイズが必要以上に大きく、重かった。
 
 
・デュアルライナーシステム
衝撃吸収ライナーを2層構造にしてその間にエアルートを設ける、SHOEI独自のデュアルライナーシステムを搭載しており、ヘルメット内の熱気や湿気をエアルートに吸い上げて効率よく排気する。また、エアルートに通じる排気ポートも増設しているため、通気性に優れ蒸れ難い。
 
 
・ベンチレーションシステム&エアロダイナミックス
アッパーエアインテークから導入したフレッシュエアをヘルメット内部に効率よく導き、ヘルメット内の熱気と湿気を効果的に排気するのが、後頭部に装備したエアロウイングスポイラーで、高速走行時にヘルメットが浮き上がろうとする「LIFT」の低減にも貢献する。
 
 
・3DフルサポートインナーIV
新開発の3DフルサポートインナーIVは、頭頂部に新開発の立体熱成形パッドを配し、はちまわりは適度にパンチングを施したウレタンで面圧を調整、頬部は立体形状のウレタンでホールドする事で包み込むようなフィット感とホールド性能を生み出した。また、内装表面の生地には高い吸水性と速乾性を両立した次世代の合成繊維“HYGRA”(UNITIKA FIBERS LTD.が提供)を採用すると共に密度を高める事で吸水力を向上。また、チークパッドも柔らかな起毛素材とのハイブリッドにする事で吸水力を高めると共に着脱時の感触を追求した。取り外しや洗濯等のメンテナンス、サイズ調整も容易にできる。
 
 
③スタイリング
絞り込まれた特徴的なボトムや厚みを抑えた縁ゴムライン等、より洗練されたデザインを追求している他、高いデフロスター効果を発揮するロアエアインテークも、操作レバーを内部に収納した新デザインを採用した。
 
 
(2)「Z-6」の09/9期業績への寄与
既に国内では「Z-6」の出荷が始まっており、海外向けは、現地の安全基準に準拠した認定が必要であり、また、体格の違いもあるため、上記の新技術は盛り込むものの、国内で販売しているものと全く同じと言う訳ではない(製品名も「Z-6」ではない)。

国内では下期から業績に寄与するものの、前期実績ベースで同社の国内売上高は全体の16.5%にとどまる。また、国内で販売される製品は「Z-6」だけではないので、09/9期業績への寄与は大きくない。
一方、前期に連結売上高の83.5%を占めた海外では、当初から想定していた事ではあるが、下期中の販売を予定しているため、今期への寄与は少ない見透し。

為替レートが一時期よりも円安水準にシフトしている事は同社の業績を考える上で好材料だが、欧州での在庫調整の長期化は予想以上である。同社の場合、輸出は円建てであり、円安、円高にかかわらず為替レートを考慮した価格調整は行なわないため、前期までのように極端なユーロ高・円安の場合、そのメリット(ユーロベースでの仕入れ価格低下)は現地の代理店が享受する(消費者に一部還元される場合もあるだろうが)。ただ、ユーロベースで割安感が出た事による代理店の仕入数量増の恩恵を同社も受けてきた。しかし、急激な景気の悪化で欧州での需要に一時の勢いがなくなったため、現在、代理店は在庫整理に追われておりユーロ安と相俟って仕入を手控え気味だ。
 
取材を終えて
今秋には「東京モーターショー」の開催が予定されているが、米国自動車メーカー等、大手の出展取りやめが喧伝されており、東京モーターショーに限らず、自動車関連のイベントは相次いで縮小されるようだ。こうした中、東京モーターサイクルショー運営事務局によると、35回目を迎える「東京モーターサイクルショー」の出展者数は、146社と前回の140社に比べて6社増加、総来場者数も99,739名と同4.8%増加したそうで、国内モーターサイクル市場の熱気は冷めていないようだ。
一方、同社の09/9期業績予想は、不安定な為替相場と来期以降の成長に向けた踊り場の形成を前提としており、当初から慎重なものであった。依然として厳しい外部環境が続いているため、今後の業績については必ずしも楽観できないが、今回の取材によって、国内モーターサイクル市場の冷めやらぬ熱気を感じる事ができ、そして、同社においても、来期以降を見据えた新製品戦略が順調に推移している事が確認できた。