ブリッジレポート
(8931) 和田興産株式会社

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ブリッジレポート:(8931)和田興産 vol.3

(8931:JASDAQ) 和田興産 企業HP
和田 憲昌 会長
和田 憲昌 会長
小阪 堅三 社長
小阪 堅三 社長
【ブリッジレポート vol.3】2009年2月期中間期業績レポート
取材概要「業界環境が大きく変化する中で、中間期業績は営業利益、経常利益は当初予想を上回ったが、これは経費を削減できたことと、下期に計上予定であ・・・」続きは本文をご覧ください。
2008年11月11日掲載
企業基本情報
企業名
和田興産株式会社
会長
和田 憲昌
社長
小阪 堅三
所在地
〒650-0023 神戸市中央区栄町通4-2-13
決算期
2月 末日
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年2月 29,564 4,020 3,063 1,613
2007年2月 30,629 3,318 2,736 1,357
2006年2月 25,256 2,769 2,366 1,292
2005年2月 22,965 2,594 2,203 1,162
2004年2月 23,723 2,226 1,689 912
2003年2月 22,080 2,100 1,499 652
2002年2月 22,630 2,296 1,846 917
2001年2月 22,926 3,399 2,941 1,315
株式情報(10/30現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
285円 10,000,000株 2,850百万円 31.5% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
25円 8.8% 97.00円 2.94倍 1,416.98円 0.2倍
※株価は10/30終値。
 
和田興産の2009年2月期中間期業績について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
兵庫県神戸市を地盤に、明石市、芦屋市、西宮市、尼崎市等で、マンション分譲を中心に、不動産賃貸、土地有効活用等のソリューション、及び戸建分譲等を手掛ける。マンション分譲は、「ワコーレ」ブランドで50戸前後の中規模マンションが中心。神戸市内では、7年連続で「供給戸数」第1位、10年連続で「供給棟数」第1位の実績を誇り、2008年8月末現在の累積供給実績は289棟、10,619戸。戸建分譲は、これまで試験的に行ってきたが、今09/2期から本格的に展開している。
また、安定収益源として積極展開中の不動産賃貸では、住居系を中心に、店舗、事務所、駐車場(月極・時間駐車)等を展開している。事業セグメントはマンション分譲を中心とする不動産販売事業と賃貸その他事業に分かれ、2009年2月期中間期は、不動産販売事業が売上高の93.6%を、売上総利益の83.4%を占めた。
 
 
 
<沿革>
1899年1月、神戸市にて不動産賃貸業を創業。1966年12月に和田興産(有)として法人化され、79年9月に和田興産(株)に改組。分譲マンションの一棟売りで実績をつくり、91年3月、自社ブランド「ワコーレ」ブランドによる分譲マンション事業を本格化。95年1月の阪神淡路大震災を受けて、96年6月には震災復興のための優良建築物等整備事業にも従事した。04年9月に、株式をJASDAQ市場に上場した。
 
2009年2月期中間期業績
 
<非連結業績:損益計算書>
 
不動産業界を取り巻く市場環境は厳しい状況が続いている。会社側の分析による主なポイントは、
建築費:鋼材価格の上昇等に伴うコストの高騰が継続
地 価:下降トレンドに入った
法改正等:会計基準の変更、建築基準法の改正
不動産業界:マンション販売の不振、新興デベロッパーの破綻
金 融:不動産業界に対する金融機関の融資姿勢が厳格化
株式市場:全世界的に株価暴落
為 替:急激な円高の進行
景気動向:日銀短観5年ぶりマイナス、企業の景況感は一段と悪化

このような状況下、同社は「原点回帰」(神戸・阪神間において地域密着戦略を展開)をスローガンに事業を展開、2009年2月期中間期は、上表のように前年同期比で売上高86.2%増、営業利益86.6%増、経常利益96.8%増を達成した。売上高は概ね計画どおりであったが、営業利益、経常利益は当初の計画を上回った。経費の削減に加え、9月引渡しを予定していた物件が、8月中に引渡しとなり、売上げ計上されたため、通期予想に変更はない。
 
 
 
<事業別動向>
(不動産販売事業)
不動産販売事業の内訳は下表のようになった。この中には同社初の100億円プロジェクトである「ワコーレ・トアロード・レジデンス」(2008年5月竣工)も含まれている。
 
主力である分譲マンションの実績は下表のようになった。
 
 
(賃貸その他事業) 賃貸その他事業の売上高は、1,363百万円(前年同期比38.1%増)となったが、この数値は「その他賃貸収入」も含む。純粋な賃貸事業としては、物件が2棟185戸の増加、賃貸収入は931百万円(同5.2%増)となった。
 
 
<貸借対照表>
 
上表は貸借対照表の要約であるが、市場環境を考慮して在庫を絞り込んだことから、中間期末の在庫(販売用・仕掛販売用不動産)は269億円(前年同期313億円)へ減少した。 主な棚卸資産、固定資産の内訳は以下のようになった。
 
 
 
 
一方で借入金残高は、賃貸用物件への投資を行ったこともあり、356億円(同309億円)へ増加した。同社の借入れ先は下表のようにメガバンク等、地銀、信用金庫だけであり、ノンバンク、外資系金融機関などは無く、リレーションは強固であり、「貸し剥がし」を懸念する必要は全くないと会社側は述べている。加えて、信用力を背景に安定的かつ機動的な資金調達の手段として、メガバンク3行をアレンジャーとするコミットメントラインに53億円(08年10月末)に増額した。(07年8月末は46億円)
 
 
<キャッシュ・フロー>
 
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は、2,806百万円(前年同期は7,785百万円の使用)となった。
税引前中間純利益1,263百万円の計上、たな卸資産の減少2,626百万円等による資金増加があった一方で、仕入債務3,380百万円の減少、前受金2,213百万円の減少および法人税等の支払額951百万円等による資金流出によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、2,151百万円(前年同期は2,905百万円の使用)となった。
主な要因は、事業用有形固定資産の取得による支出2,286百万円等によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、4,457百万円(前年同期は9,279百万円の獲得)となった。
主な要因は、マンション用地および賃貸不動産の購入資金等として長期借入金の調達10,303百万円の資金流入に対し、運転資金等の短期借入金1,372百万円及び長期借入金の返済4,224百万円等の支出によるもの。
 
2009年2月期業績予想
 
<非連結業績>
中間期の結果、現在の市場環境に鑑みて通期の業績予想を下表のように下方修正した。
 
 
棚卸資産の評価に関する会計基準を今期から早期適用し、特別損失として1,042百万円を計上。さらに市場環境に鑑みて分譲マンション価格を保守的に算定したこと、建築基準法の改正に伴って工事遅延が予想されること、当初は今期中に竣工予定であった分譲マンション1棟(総戸数44戸、売上高約15億円)の引渡し(竣工)が2009年4月にずれ込むこと、などから通期の予想を修正した。
 
<今後の施策>
会社側は今後の施策として、以下のような点を挙げている。

キーワードは「原点回帰」

① 地元での信用力:経営資源を「神戸・阪神間」に集中
② 同社の使命:一次取得者向けを中心とする良質な住宅供給
③ 不動産有効活用:豊富な物件情報を生かす
④ 創業時の原点:「神戸の大家」を目指して賃貸事業を強化

不動産業の生命線である「用地取得能力」を高めるため、同社では地元ネットワークの活用に注力している。

用地情報 ⇒ 地元業者・金融機関・土地所有者 ⇒ 創業100年の実績と信頼・用地に応じた不動産の有効活用。
 
 
 
(分譲マンション事業)
厳しい環境下で競争力を発揮する地域密着型の戦略を展開する。
・  ワコーレブランドの高い認知度を生かす
・  尼崎市から明石市までの間に設置された20ヶ所のマンションギャラリーを生かす
・  地元の仲介業者からの豊富な情報を生かす
・  地域を知りつくした企画力(需要創造力)を生かす
 
  ※2009年2月期計画:発売700戸、契約700戸、引渡し:700戸
   中間期末時点での引渡計画における契約率は約60%である。
   用地取得は来期利益計画において60%を取得済み
 
(賃貸事業)
・  仕入れ環境が好転する現在、賃貸物件の拡充に一段と注力 ⇒ 通期の投資額は4,265百万円を計画
・  毎期、約300百万円の賃貸収入増を確保する
・  住居系以外の物件開発も積極的に推進
 
  ※「3つの15戦略」=資産入替えの基本的考え方
   表面利回り15%、築年数加重平均15年、借入金返済15年以内
 
(その他不動産販売)
・  ソリューション機能を発揮する
・  豊富な用地・物件情報をもれなく検討する
・  不動産価値最大化のため、住宅以外の分野にも進出
 
(戸建事業)
2008年3月に戸建事業推進室を新設して本格的に同市場に参入したが、今後も堅調な需要が見込める木造戸建住宅の開発を本格的に展開する ⇒ RCに比べ木造の建築コストは廉価であり、一時取得者層に優良な戸建住宅を提供できる好機と捉えている。
<配当について>
会社側は年間25円の配当を維持すると宣言している。現在の株価で予想利回りを計算すると、8%以上となる。
 
 
取材を終えて
業界環境が大きく変化する中で、中間期業績は営業利益、経常利益は当初予想を上回ったが、これは経費を削減できたことと、下期に計上予定であった物件が8月に売上げ計上されたことによる。その一方で、会計基準の変更を前倒しで実施したことから特別損失を計上、これにより当期中間純利益は計画を下回った。

さらに中間期の実績、業界環境等に鑑みて通期予想を下方修正したが、これは現在の業界環境を考慮すれば止むを得ないことであり、当然とも言える。その一方で完成在庫を圧縮し、コミットメントラインを増額するなど、財務面での対策も行っており、この点は評価できよう。

現在の業界環境からすると、通期の予想達成も容易ではなく、再度修正の可能性もある。しかしかなり保守的に予想を下方修正したと思われるので、下方修正されたとしてもその幅は限られるだろう。そうであれば、年間配当25円は十分に可能であり、利回り面からは現在の株価は魅力的と思われる。