ブリッジレポート
(6890) 株式会社フェローテックホールディングス

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ブリッジレポート:(6890)フェローテック vol.19

(6890:JASDAQ) フェローテック 企業HP
山村 章 社長
山村 章 社長

【ブリッジレポート vol.19】太陽電池事業説明会レポート
取材概要「同社は、05年5月に国内の大手液晶メーカーにインゴット製造装置の1号機を納入し、合計41台を販売した。その後、新エネルギー政策を進めてい・・・」続きは本文をご覧ください。
2008年8月5日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フェローテック
社長
山村 章
所在地
東京都中央区京橋 1-4-14
決算期
3月
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年3月 36,625 3,057 2,414 1,903
2007年3月 32,517 2,288 2,081 1,703
2006年3月 23,946 1,210 1,040 708
2005年3月 21,105 1,762 1,456 633
2004年3月 15,000 615 -177 -645
2003年3月 12,845 111 -626 -899
2002年3月 14,775 916 984 -357
2001年3月 16,435 2,665 2,561 1,644
2000年3月 7,988 892 629 288
株式情報(7/28現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,740円 21,665,322株 37,698百万円 9.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12円 0.7% 77.82円 22.4倍 1,004.39円 1.7倍
※株価は7/28終値。
 
7月24日に開催された太陽電池事業説明会の概要をお伝えします。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
シリコン単結晶引上装置等の太陽電池関連製品、半導体製造装置やフラット・パネル・ディスプレイ(FPD)製造装置の部品、半導体材料、各種温度調節に使われるサーモモジュール等の製造・販売を行っている。目に触れる機会はないものの、パソコンや携帯電話、液晶やプラズマ等、身近な分野で同社の技術が活かされている。
もともとは磁力を持つ液体である磁性流体応用製品のメーカー。その代表例が、真空シールであり、ハードディスクドライブ等で使われていたコンピュータシールである。また、サーモモジュールは磁性流体応用製品に次ぐ収益の柱として育成していたもの。いずれもOnly Oneの製品である事はもちろん、超精密部品であるため、金属加工や表面処理等で高い技術が要求される。この技術を中国に持ち込み、現地の安価な労働力と融合させたのが、事業セグメントの一つである受託生産(CMS)事業。また、今後の市場拡大が期待できる太陽電池関連の事業にも取り組んでいる。太陽電池の材料となるシリコン単結晶の引上装置には、同社の製品である真空シールや石英製品等が主要部材として使われており、これまで蓄積してきた技術やノウハウが活かされている。
 
事業は3セグメントに分かれ、主な製品及びサービスは次の通り。
 
装置関連事業 :真空シール・部品、石英製品、シリコン製品、EB-ガン等
電子デバイス事業 :磁性流体動圧軸受、サーモモジュール、基板実装、磁性流体等
CMS(受託生産)事業 :シリコンウェーハ加工、装置部品洗浄、工作機械製造、単結晶引上装置等
 
連結売上高の推移
 
 
太陽光発電を取り巻く環境
 
(1)国策として進められている太陽光発電
先の洞爺湖サミット(2008年7月7日~9日)では、環境問題が主要議題の一つとして取り上げられ、「2050年に世界の温室効果ガスを半減させる」とする数値目標が合意された。こうした地球温暖化問題に加え、昨今の原油価格の高騰もあり、化石燃料に替わる次世代エネルギーとして世界的な注目を集めているのが、太陽光発電である。
太陽光発電の特徴は、環境負荷が少なく、資源を枯渇させずに利用する事が可能な再生可能エネルギーである事。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO:New Energy and Industrial Technology Development Organization)によると、地球上に降り注ぐ太陽光のエネルギー量は1㎡当たり約1kWで、ゴビ砂漠に太陽電池を敷き詰めると、現在地球上で人間が使っているエネルギーの全てを賄う事ができると言う。

このため、洞爺湖サミット以前からも、欧州を中心に太陽光発電の利用を国策として進めている国は多く、太陽光発電システムの設置を支援する補助金の支給や太陽光からつくられた電気を通常の電気料金よりも高い価格で買い取る優遇政策(固定価格買い取り制度:フィードインタリフ制度)が導入されている。例えば、ドイツには補助金の他、太陽光発電による電気を通常の電気料金の約2.5倍で買い取るといった優遇政策があり(この結果、ドイツでは電気料金が上昇したが、上昇率はわずか4~5%にとどまった)、ドイツ以外でも、ギリシャ(約6.4倍)、イタリア(約2倍)、スペイン(約3倍)等、買い取りを実施している国は多い。アジアでも、韓国が約3倍で買い取りを行っており、米国では、ワシントン州やカリフォルニア州等の一部の州が買い取りを実施している。
また、クリーンエネルギーを推進する立場から、国が大型の太陽光発電所を建設するケースも増えている。例えば、中国では、2050年にエネルギー総需要量の30%以上を新エネルギー(風力、太陽、バイオマス等)によって賄うとしており、この一環として、中国政府、上海市、フランスの合弁により、2011年の完成をめざして上海郊外の宗明区に、1,000メガワット級の発電規模を持つ太陽光発電所の建設を進めている。06年の太陽光発電パネルの世界総出荷量が約2,500メガ(メガ=100万)ワット相当(PV News より)であった事を考えると、その規模の大きさがうかがえる。

太陽光発電による総発電量は、未だ、火力、原子力等を含めた全世界の総発電量のわずか0.04%に過ぎないが、国際エネルギー機関(IEA)が、この比率を10%(250倍)に引き上げる事を提言している他、現在、風力発電が総発電量の10%を占めているスペインでは、太陽光発電の比率を20%に引き上げようとしている。また、韓国では3ヶ所で風力発電所の建設計画が進められており、米国でもアカリフォルニア州で建設計画が進行中だ。
 
(2)原料ポリシリコンの供給状況
太陽光を電気に変換するために使われるのが太陽電池だが、その原料となるポリシリコンの生産量は年間8万トンで、半導体用と太陽電池用で概ね50%ずつ消費されている。ただ、太陽電池用は半導体製造に使われたシリコンの屑も利用できるため、実際に太陽電池用として使われているのは約5万トン程度との事。過去数年間は、ポリシリコンの供給不足がボトルネックとなっていたが、ここにきてシリコンメーカーの量産体制が整いつつあり、09年には10万トン程度に拡大する見込み。加えて、中国メーカーによる大規模な生産計画が進められており、中国メーカーだけも11年には生産量が10万トン程度に達する見込みとの事で、大量供給によりポリシリコン価格が低下し、それが太陽電池の価格に反映される事で太陽電池の市場拡大が加速すると見られている。
 
 
太陽電池の製造工程と製造装置
 
(1)太陽電池の種類
太陽電池は、シリコン系と化合物系に分かれ、後者は信頼性が高いものの、高価で人工衛星や宇宙ステーション、或いは電卓や時計等に用途が限られる。我々が目にするのは前者で、結晶系とアモルファス系(薄膜系)に分かれる。結晶系は、更に単結晶シリコンと多結晶シリコンに分かれ、単結晶シリコンは変換効率が高く長寿命だが、生産コストが高く、公共事業や僻地対策として使われる事が多かった。一方、多結晶シリコンは、単結晶と比べると変換効率で劣るものの、生産コストが安く大量生産が容易で、住宅用等に使用されてきた。薄膜系は、アモルファス(非晶質)シリコンや結晶シリコンの薄い膜(1μm程度、マイクロメートルは100万分の1メートル)をガラス等の基板上に形成したもので、高温特性に優れる(高温時も出力が落ちにくい)他、使用するシリコン原料が少なく、製造に際してのエネルギーやコスト的に有利であるが、変換効率が悪い。
電気への変換効率は、概ね単結晶シリコンが17~18%、多結晶シリコンが13~14%程度、薄膜系が7~8%程度との事である。
 
 
(2)太陽電池の製造工程
太陽電池の製造工程は半導体の製造工程と似ているが、半導体ほどの微細加工を必要としない。先ず、原料のポリシリコンからインゴットを製造し、外周研磨、バンドソーにより形を整えた後、スライスしてウェーハに加工される。その後、セル工程へと進み、エッチング ⇒ 光を電気エネルギーに変える拡散層形成 ⇒ 洗浄 ⇒ 光を反射せず吸収するための反射防止膜形成 ⇒ 電極形成(印刷) ⇒ リード線のはんだ付け ⇒ 特性検査へと進む。
 
 
セル工程を終えると、モジュール工程へと進み、セルテスト(太陽電池の最小単位であるセルに一枚ずつ模擬太陽光を当てて、その発電量を検査し、発電量によって各セルをランク分けする) ⇒ 自動はんだ(強化ガラス等に貼り付けた各セルを連続的に配線する) ⇒ ラミネータ(セルや保護シート等をラミネートしてモジュールを完成させる)、と進みモジュール工程を終える。更に、ラミネートされたモジュールはパネル工程へと進み、アルミ等の外枠が取り付けられる。
 
 
フェローテックの太陽電池製造装置事業
 
同社では、単結晶シリコン引上装置及び多結晶シリコン製造装置(いずれもシリコンインゴット製造装置)を手掛けている他、09/3期からは東京製綱との提携によりスライスの際に使われるマルチワイヤーソーの販売も開始した。マルチワイヤーソーは、単結晶引上装置3台に付き1台、多結晶製造装置1台に付き1台が必要と言う。
 
 
また、単結晶シリコン引上装置には同社の主力製品である真空シールが使われている他、石英ルツボ(消耗品)やカーボンルツボ(定期交換品)といった主要部品の製造・販売も行っている(1回のシリコン引上げで、1個の石英ルツボが必要)。この他、薄膜系の製造装置向けに、真空シールを供給している。
 
 
 
(3)主な取引先
主な取引先は、Trina Solar(中期生産計画 1ギガワット)、Rene Solar(中期生産計画 600メガワット)、Comtec Solar(中期生産計画 600メガワット)、LDK Solar(中期生産計画 1ギガワット)、Suntec Power(以上、中国)、Canadian Solar(カナダ、中期生産計画 600メガワット)、シャープ等。このうち、中国メーカー各社とCanadian Solarの売上の95%は、ドイツ、スペイン、イタリア、スイス、ノルウェー等への輸出である。
尚、中国メーカーとの取引は代金の回収が問題となるため、原則として出荷前に代金の95%を受け取るシステムとなっている(受注時に前金として30%、出荷前に65%、据付・検収後に5%。売上計上は出荷時)。
 
(4)中期売上見込み
競争力を左右するのは、「性能」、「価格」、メンテンスやアフターサービスの充実による「顧客満足度」、及び「開発スピード」であり、同社の場合、消耗品も含め装置に必要な部品を全て自社で賄う事で、上記の全ての要件を満たしている(特にホットゾーンのナ良否が品質やスループットに大きな影響を及ぼすと言う)。また、中期的には、他社製品を組み込む事で、インゴット製造からセル工程までの一連の設備をターンキーで提供できる体制を整え顧客満足度を高めていく考え。
同社では、今後3~5年間は、太陽電池関連市場が50%程度の成長を続けるとみており、シリコンインゴット製造装置、マルチワイヤーソー、更には薄膜系装置向け真空シール等の自社製品及び他社製品からなる装置関連を中心に、消耗品や自社での引上げによるシリコンインゴット製造、更にはメンテナンス周辺機器等の販売を伸ばす事で、年商390億円程度に事業を拡大させたい考えだ。尚、08/3期の連結売上高は366億円で、このうち太陽電池関連が46億円(売上構成比12.7%)だった。今09/3期は、それぞれ400億円、102億円(同 25.5%)を見込んでいる。
 
 
*単結晶シリコン引上装置シェア
 
 
シェアNO.1の北京京云通は価格訴求力重視の戦略でシェアを伸ばしており、同社はこうした企業と一線を画している。また、コスト競争力、研究開発等の面から、ある程度の事業規模が必要であり、今後3~5年の間に業界の再編が進むと見ている。
 
取材を終えて
同社は、05年5月に国内の大手液晶メーカーにインゴット製造装置の1号機を納入し、合計41台を販売した。その後、新エネルギー政策を進めている中国市場へ展開し、現地メーカーの3倍の値段ながら10台を販売。この結果、06/3期は日本と中国で51台を販売した。続く07/3期は中国で57台を販売し、08/3期には前期比約3倍の172台に拡大した。09/3期は6月末時点で単結晶シリコン引上装置400台(約108億円相当)、多結晶シリコン製造装置60台(約38億円相当)を受注している。また、需給が逼迫しているマルチワイヤーソーは、今期30台の出荷を計画しているが、50台程度の販売が見込めると言う。
新興市場において太陽電池関連とされる銘柄は同社以外にもあるが、取引先の多さ、生産能力、そして納入実績等で同社は群を抜いている。09/3期は半導体関連や自動車向けを中心にしたサーモモジュール等の苦戦が予想され、前期比4.7%の営業増益見込みだが、太陽電池関連をけん引役に上振れ期待が高まってきた。