ブリッジレポート
(4323) 日本システム技術株式会社

プライム

ブリッジレポート:(4323)日本システム技術 vol.5

(4323:東証2部) 日本システム技術 企業HP
平林 武昭 社長
平林 武昭 社長

【ブリッジレポート vol.5】2008年3月期決算業績レポート
取材概要「08/3期は利益が急拡大したが、この利益水準が同社の本来の実力。教育機関向け業務パッケージのシェア拡大に期待したい。もっとも、成長の源泉・・・」続きは本文をご覧ください。
2008年8月5日掲載
企業基本情報
企業名
日本システム技術株式会社
代表取締役社長
平林 武昭
所在地
〒530-0005 大阪市北区中之島2-2-7
決算期
3月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年3月 10,705 931 945 426
2007年3月 9,711 389 405 138
2006年3月 7,917 111 125 605
2005年3月 8,189 522 502 319
2004年3月 7,767 540 537 67
2003年3月 7,064 676 635 194
2002年3月 6,939 658 606 181
2001年3月 6,285 834 814 282
株式情報(7/8現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
795円 5,035,202株 4,003百万円 11.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
25.0円 3.1% 95.30円 8.3倍 782.63円 1.0倍
※株価は7/8終値。発行済株式数は直近期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
日本システム技術の2008年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
ソフトウェアの受託開発(08/3期売上構成比68.7%)、教育機関向け業務パッケージの開発・販売(同13.5%)、及び情報システム関連機器等の販売(同17.8%)を行っている。
 
<沿革>
設立は、1973年3月。JAST(同社)の特徴である教育機関向け業務パッケージには、90年代前半から取り組んでおり、94年10月に学校事務支援統合システムパッケージソフト「GAKUENシリーズ」の販売を、98年8月に大規模大学向けERP「GAKUEN REVOLUTION(学務)」の販売を、2000年2月に学校関係者間の情報ネットワークを実現する統合型Webサービスシステム「UNIVERSAL PASSPORT」の販売を、それぞれ開始。01年11月のジャスダック上場を経て、03年2月に東証二部に株式を上場した。
 
<特徴>
(1)国内トップシェア誇る教育機関向け業務パッケージ
大学向け経営改革ソリューションとして提供している統合業務パッケージは、94年10月の発売以来、230余校への導入実績を有し、文教マーケットにおいて高い評価を受けている。特徴は、大規模な総合大学から小規模の短期大学に至るまで、主要業務を全方位でカバーしているため、パラメーターの設定だけで大学個々のニーズに柔軟に対応できる事。つまり、カスタマイズの必要がないため、ユーザーは導入時及びその後の運用・メンテナンスに関わるトータルコストを削減する事ができる。尚、1案件当たりの導入金額は数10万円~数億円と、導入規模により幅広い。
少子化問題への取り組み戦略のひとつとして、大学各校は優秀な学生を確保するべく、学生向けサービスや経営品質の向上に取り組んでいる。しかし、全国に約1,200校あると言われる大学・短大の大半がメインフレーマー等による手作りのシステムやカスタマイズを前提としたパッケージを使っていると言う。品質・価格両面での優位性から競合は少なく、販売拡大の余地は大きいと。現在20%のシェアを、早期に30%に引き上げたい考え。
 
 
(2)大手優良企業群との長期取引
 
 
(3)グループ拠点展開
 
 
大阪と東京の2本社制を敷いている事、早い段階から海外に開発拠点を展開している事も特徴。また、2006年9月末には、大学向けマーケットを中心とする文教分野での業容拡大を図るべく、首都圏の大規模大学を中心に、システム機器等の販売で実績のあるアルファコンピュータ(株)の全株式を取得した。これにより、パッケージ、情報機器及びネットワーク等を一貫して提供する大学向けSI(システム・インテグレーション)事業の大規模展開が可能となった。
 
2008年3月期決算
 
 
前期比10.2%の増収、同138.9%の営業増益。
新製品の販売好調でパッケージ事業の売上が伸びた他、システム販売事業が通期で寄与、売上高は同10.2%増の10,705百万円となり、会社設立以来、初めて100億円を超えた。利益面では研究開発費負担が一巡したパッケージ事業の損益が大幅に改善、繰延税金資産取り崩しの一時的変動要素が消滅したことも影響して、当期純利益は同3.1倍に拡大した。また、1株当たり配当金を5円増配の25円とした。
中間時予想との比較では、売上高が7%弱予想を下回ったものの、営業利益は2%弱予想を上回った。売上未達の要因は、ソフトウェア事業のエンジニアリングアプリケーション分野(通信・制御・技術系システム)において、携帯電話組込みシステムが期末に向けて縮小傾向となった事や、システム販売事業において一部案件のクロージングが翌期に持ち越しとなった事。一方、利益上振れの要因としては、開発工程管理が有効に機能し全事業にわたって不採算案件がほぼゼロに近い状況であった事や、パッケージ事業において新製品販売が好調だった事等が挙げられる。ただ、税効果等で当期純利益は9%強、予想を下回った。
 
<セグメント別売上高・営業利益>
 
ソフトウェア事業は、流通・サービス業向けが増収となったものの、取引先で事業再編があり携帯電話向け等の組込み系システムの事業規模が縮小、エンジニアリングアプリケーション分野(通信・制御・技術系システム)の売上が、第3四半期以降、予想以上に減少した。これによって通信業向けが減少、開発の一巡で金融機関向けもわずかに減少した。一方、受注は、ビジネスアプリケーション分野を中心に好調に推移し、前期比27.7%増加した。
パッケージ事業は、教育機関向けパッケージの新製品「UNIVERSAL PASSPORT EX」、「GAKUEN REVOLUTION EX」学務系 及び「GAKUEN EX」学務系の販売が軌道化。製品開発投資の収束に伴い研究開発費が約6億円(740百万円⇒144百万円)減少したことも加わって、営業損益が大幅に改善した。
また、今期より通期での寄与となった(前期は下期のみの寄与)システム販売事業は、引合い及び受注が堅調に推移したものの、期末に売上計上を見込んでいた一部案件の成約が翌期に期ズレした事、上半期に低採算案件があった事、及びのれんの償却負担(65百万円)もあり、営業損失となった。
 
(1)パッケージ事業品目別売上構成
 
新製品の発売で教育機関向けパッケージの販売が伸長。販売に伴い需要が発生する導入サービスやEUC開発も伸びた。一方、パッケージ保守も売上高は伸びたが、業務の性格から他の業務ほどには急激に売上が伸びないため、売上構成比が低下した。
 
(2)顧客主要グループ別売上及び最終顧客業種別売上の動向
 
顧客主要グループ別では、クレジットカードやカードビジネス、銀行との直接取引、マイクロソフト等との提携事業、大規模大学向けシステム販売、更には大手ベンダ向けパッケージ販売等でその他の売上構成比が上昇、8大顧客向けの売上構成比が50%を下回った。

また、最終顧客業種別では、流通・サービス業が20%以上の増収となった他、教育機関もシステム販売事業の通期寄与とパッケージ販売の好調で66%増収。一方、通信業は10%の減収。大手キャリアの社内情報系が堅調に推移したものの、携帯組込み系が30%以上減少した事が響いた。金融業は微減。メーカー経由の案件が減少したものの、地銀等との直接契約が増加した。この他、製造業も20%減少した。
 
2009年3月期業績予想
 
 
前期比12.1%の増収、同10.6%の営業増益予想。
3セグメント全てで増収が見込まれる。システム販売事業の売上構成比の上昇等で利益率が若干低下するものの増収効果で吸収、営業利益以下の各利益段階で二桁の増益が見込まれる。

ソフトウェア事業は、分野毎にバラツキはあるものの、全般に堅調な推移が見込まれる。引き続きプロジェクトの原価・工程・品質管理に注力する事で不採算案件の防止に努めると共に、エンジニアリング分野からビジネス分野への技術者のシフト、新卒・キャリア採用の拡大、更には協力会社の新規開拓等を進め、受注体制を強化する。
パッケージ事業は、教育機関向け業務パッケージにおいて、人事、経理等の法人系製品の段階的なリリースを予定。製品ラインナップが揃い、本格的な回収期を迎える。
システム販売事業は、親会社からのSE(システムエンジニア)を移籍させ、これまで外注に頼っていたSE部門を強化し情報通信インフラ構築の案件拡大を図る他、パッケージ事業とのシナジーを追求。来10/3期の、のれん償却後の営業利益黒字化につなげていく考え。
 
取材を終えて
08/3期は利益が急拡大したが、この利益水準が同社の本来の実力。教育機関向け業務パッケージのシェア拡大に期待したい。もっとも、成長の源泉はパッケージ事業だけではなく、パッケージ事業とシステム販売事業とのシナジーの追及、ソフトウェア事業における上流工程の強化や元請比率の引上げ等、現在の課題ではあるが、将来の伸びシロとして期待される部分も多い。少子化等で中期的には大学をはじめ、教育機関の再編が予想されるだけに、この分野でNo.1の実績を誇る同社のビジネスチャンスは拡大しよう。