ブリッジレポート
(4829) 日本エンタープライズ株式会社

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ブリッジレポート:(4829)日本エンタープライズ vol.5

(4829:東証2部) 日本エンタープライズ 企業HP
植田 勝典社長
植田 勝典社長

【ブリッジレポート vol.5】2008年5月期決算業績レポート
取材概要「同社の特徴は、自社コンテンツへのこだわりであり、他社のように外部からのコンテンツ調達に依存しない事。メリットは一定の品質を保つ事が可能・・・」続きは本文をご覧ください。
2008年7月29日掲載
企業基本情報
企業名
日本エンタープライズ株式会社
社長
植田 勝典
所在地
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-17-8
決算期
5月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年5月 3,123 572 578 272
2007年5月 3,677 774 783 447
2006年5月 3,416 694 688 418
2005年5月 3,018 587 570 348
2004年5月 1,958 205 168 226
2003年5月 1,752 134 131 58
2002年5月 1,704 51 53 23
2001年5月 1,417 301 262 126
株式情報(7/15現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
7,080円 377,000株 2,669百万円 10.4% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
130.0円 1.8% 464.19円 15.3倍 7,157.27円 1.0倍
※株価は7/15終値。
 
日本エンタープライズの2008年5月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
モバイルソリューションカンパニーを標榜。コンテンツの自社開発にこだわりを持ち、「コンテンツで勝つ!」がモットー。
音楽やゲーム・動画等のコンテンツを制作し携帯等を通じて配信するコンテンツサービスと、企業のコンテンツ制作・運営や業務効率化のためのシステム構築等を手掛けるソリューションが2本柱。また、海外展開にも力を入れており、特に中国においては子会社を設立しての現地有力企業との提携によるコンテンツ配信等、多角的に事業を進めている。
 
コンテンツサービス事業
携帯電話等のキャリア(移動体通信事業者)が運営するi-mode、EZweb、Yahoo!ケータイ、CLUB AIR-EDGEといったインターネットに接続が可能な携帯電話の公式サイトにコンテンツを提供し、月額課金あるいはダウンロード課金制により、その代金をキャリアから受取っている。同社の代表的なコンテンツとしては、「うた&メロ取り放題」、「@LOUNGE RECORDS」といった音楽系コンテンツ、総合ゲームコンテンツ「最強!GAME王国」及び総合デコレーションメールコンテンツ「デコデコメール」等の公式コンテンツがある。
 
ソリューション事業
コンテンツサービスから派生したビジネス。モバイルサイト構築・運用業務、ユーザーサポート業務、デバッグ業務、サーバ保守管理業務等の企業向けサービス、携帯電話ショップとの提携により成功報酬型のコンテンツ販売を行う店頭アフィリエイト、自社コンテンツの2次利用(以上、ソリューション)、他社コンテンツの制作・運営(ソリューションコンテンツ)、更には、広告、及び物販等を行っており、携帯電話はもちろん、パソコン等のあらゆるメディアに対応したソリューションを提供している。
 
2008年5月期決算
 
 
前期比15.1%の減収、同26.1%の営業減益。
企業向けサービスや広告・物販等のソリューション事業が伸びたものの、音楽やゲームの苦戦によるコンテンツ事業の落ち込みが響いた。利益率の良いソリューション案件の受注に成功した事や提供コンテンツを自社で保有する同社ビジネスモデルの強みから、売上総利益の減少は同6.5%にとどまったものの、新規事業の展開に伴い広告宣伝費、人件費、販売手数料等が増加した他、オフィスの増床やサポートセンターの移転費用等の計上もあり販管費が増加、営業利益は同26.1%減少した。加えて、東証2部上場費用の計上等で営業外損益が悪化した事に加え、中国事業に関連した持分評価損(30百万円)を含む投資有価証券評価損(34百万円)を特別損失に計上したため、当期純利益は同39.0%減少した。
 
セグメント別の動向
 
コンテンツサービスの売上高は前期比26.3%減の1,763百万円。音楽分野では、「着うたフルサイト@LOUNGE RECORDS」のプロモーションが、レーベル化に伴うCD販売に波及する等の効果があったものの、「着うたサイト(45秒)」の会員減少に歯止めがかからなかった。また、ゲーム分野では、「女性向けゲーム(乙女ゲーム)サイト」が好調に推移したものの、全般に一般サイトの無料ゲームとの競合が激化した。一方、画像・ツール分野では、「デコレーションメールサイト」が堅調に推移。ソフトバンクモバイル(株)が提供する「デコレメール」用メール素材の無料ダウンロードサービスに同社の「デコレメール」素材を独占的に配信する等のプロモーションの強化が奏功した。

ソリューションの売上高は前期比6.0%増の1,360百万円。携帯電話を活用したビジネスの拡大を背景に、企業向けソリューションで新規案件や大型案件の受注が増加した他、認知度の向上で「店頭アフィリエイト」も、契約店舗数・成約件数共に増加した。また、コンテンツに関連したソリューションも大手クライアントからの受注が増加。この他、自社サイトの媒体力向上により広告売上が伸びた他、「着うたフル」のコンテンツを利用したCD販売も当初予想を上回った。
 
 
国内事業の概況と今業績の展開
 
コンテンツサービス
08/5期は、「音楽」でテコ入れを図った他、「デコメ」の集客力拡大を進めたが、「音楽」で十分な成果を得る事ができなかった。また、「ゲーム」では、一般サイトでの提供が増えている無料ゲームに対する対策が遅れた。
09/5期は、「着うたフル」・「デコメール」にけるブランディング強化、「UIカスタマイズ」・「デコメアニメ」の新規サイト立上げ、及び「着うた」・「ゲーム」におけるリテンション(会員の囲い込み・つなぎ止め)強化に取り組む。ブランディング強化の一環として、この7月に、レーベルビジネス部門を分社化しアットザラウンジ(株)を設立した。主力ブランドである「@LOUNGE RECORDS」を他の商品・サービス等と連動しながら強化していく考え。機種依存度が高く機種毎に対応を進める必要のある「ゲーム」は、ラインナップの集約を進め機動力の向上を図った。
 
 
また、集客力の向上も課題である。このため、公式メニューからの誘引を維持しつつ、「キャリア連動」、「リアル連動」、「広告」、「クロスメディア」等の施策により動線の間口を広げ、経営資源(ソリューション)とのシナジーを高めていく。
 
 
ソリューション
08/5期は、ソリューション、ソリューションコンテンツ、広告、物販の全ての分野で成果があがった。この流れを維持すると共に、クライアントの利益に貢献できる総合モバイルソリューションの提供に取り組む事で更なる事業の拡大を目指す。具体的には、高度化・大型化をキーワードにした高付加価値ソリューションの提供、及びリアル連動・クロスメディアをキーワードにしたトータルソリューションの提供に注力する。
また、携帯利用者(3G携帯の普及に伴う検索機能の向上とユビキタスによる利便性の追求等)、企業(携帯を利用したマーケティングや販促等)、携帯電話販売店(法人顧客の開拓等)、それぞれのニーズをくみ上げ、総合的なコンサルティングサービスを提供する事で受託領域を広げていく。特にナショナルブランドの企業において、携帯電話を利用したソリューションに対するニーズが増えていると言う。

音楽(LOUNGE)事業については、別会社化でブランドの強化を図り、CDの制作・販売、コンテンツ・プロバイダ事業、デジタル配信事業、更にはキャンペーンの受託や他社コンテンツ・プロバイダへの楽曲の貸し出し等の二次利用ソリューション事業を複合的に進めていく。また、中期的には、CD付き音楽雑誌の出版や他誌とのタイアップによる出版事業、或いはイベント事業への展開も視野に入れている。
 
 
店頭アフィリエイトについては、対象を携帯販売店からその他の対面販売店へも広げ、プラットホームの基盤である対面販売店舗のネットワーク(現在800店舗)拡大を図る。また、モバイルコンテンツの拡充に加え、その他の商材へも取扱商品を広げていく考え。ターゲットは携帯電話のコンテンツの利用が少なく開拓が難しいとされているものの、課金サービスの利用が見込める30~40歳代である。
 
 
楽楽車(らくらくカー)サービス
同社は、08年7月4日にauショップ全店舗でサービスを開始した「ナカチェン」に、車をテーマとしたナカチェンパック「楽楽車(らくらくカー)パック」及びこのパックの設定により簡単にアクセスできる車関連総合サイト「楽楽車(らくらくカー)」の提供を開始した。

「ナカチェン」とは、メニューデザインやボタン操作、コンテンツ等、ケータイの中をまるごとチェンジするサービス(チェンジサービスは無料)。「EZケータイアレンジ」と、お薦めサイトやゲームアプリ、EZブック (電子書籍) などをひとつのパッケージ「ナカチェン パック」としてまとめてご提供する。好みの「ナカチェンパック」を設定する事で、メインメニューのメニュー要素に最大3つの「ナカチェンボタン」が追加され、ワンクリックで希望の情報サイトやコンテンツにメインメニューから直接アクセスできる。

同社が提供する車をテーマとしたナカチェンパック 「楽楽車(らくらくカー)パック」は、待ち受け画面やメニュー画面等、携帯電話をクルマ関連にカスタマイズする。具体的には、メニュー画面(機能選択画面)上の3つのボタンに「My Car登録」、「給油」、「My Car情報」のショートカットボタンを配置する事で、車総合サイトにダイレクトでアクセスできるようになる。
また、車関連総合サイト「楽楽車(らくらくカー)」では、ガソリンの価格(情報は集計値であり、店舗が保証したものではない)を簡単に検索できる機能や車関連の情報を提供しており、今後、ドライブ情報、グルメ情報、中古車情報等車関連の様々な情報の追加・拡張や、他の車関連サイトへのリンクを追加・掲載していく予定である。
尚、当サイトは、非ナカチェン対応機種からも、「スポーツ・レジャー」⇒「車・バイク」からアクセスが可能。
 
 
海外事業の概況と今後の展開
 
電子書籍、デコメ、UI等の日本向けコンテンツに加え、Flashアニメ、Flashゲーム、BREWアプリ等の中国向けコンテンツの制作も順調に拡大している。また、モバイルコンテンツの技術者育成を目的とした教育事業では、江南大学(中国)と大阪電気通信大学(日本)との学術交流協定による教育プロジェクトに、1年半の中国カリキュラムを修了する第1期生が、09年春から3年間の日本カリキュラムを受講するため来日する予定。更に08年9月から始まる第2期生のプロジェクトも始動している。
一方、3G対応への影響で豊田通商との合弁会社 瑞思豊通信息科技有限公司による観光地図情報の配信事業を見直した他、中国製ギョーザ問題等の影響からプロジェクトが止まっていたCCTV(中国中央電視台、中国国営テレビ)と瑞思放送(北京)数字信息科技有限公司による「食品・薬品の安全情報の提供」を中止した。
本格的な3G時代に向けて、引き続き中国キャリアと良好な関係を維持しつつ、モバイルコンテンツ事業を進めていく考え。
 
 
2009年5月期業績予想
 
 
前期比4.0%の減収、同51.1%の営業減益予想。
引き続きソリューションの伸びが見込まれるものの、コンテンツサービスの減少をカバーできず、売上の減少が続く見込み。減収に加え、ソリューションの売上構成比上昇で売上総利益率の低下が見込まれる一方、先行投資負担等で販管費が増加するため、営業利益の減少幅が拡大する。ただ、主力サイトのブランディング強化、リテンション強化を図りつつ、新規サイトの寄与等で、苦戦が続いたコンテンツサービスが下期に増収に転じる見込み。1株当たり配当金は、期末130円を予定している。
 
 
取材を終えて
同社の特徴は、自社コンテンツへのこだわりであり、他社のように外部からのコンテンツ調達に依存しない事。メリットは一定の品質を保つ事が可能で、一旦開発してしまえば、外部調達のように継続的なロイヤリティの支払いで収益が圧迫される事が無い。しかし、大きな技術の変化やトレンドの変化があった場合、これを踏み台にしてジャンプアップするには、ある程度の助走期間が必要となる。同社の場合、携帯のコンテンツが音声から文字や画像に変わる際にも、同じように苦戦を強いられた時期があったが、その後、07/5期にかけて大きく飛躍した事は周知の事。今回も、今しばらくは苦戦が続くものと思われるが、足元、ソリューションの順調な拡大に加え、「楽楽車(らくらくカー)サービス」のように車関係での強みを活かした新しいサービスの投入や「画像・ツール」の好調等、音楽依存体質からの脱却も進みつつある。アップル社「iPhone(アイフォーン) 3G」の発売により関連サービスの拡大も期待できるため、今下期から来期にかけてある程度の道筋が見えてくるものと考える。