ブリッジレポート
(5162) 株式会社朝日ラバー

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ブリッジレポート:(5162)朝日ラバー vol.5

(5162:JASDAQ) 朝日ラバー 企業HP
横山 林吉 社長
横山 林吉 社長

【ブリッジレポート vol.5】2008年3月期決算業績レポート
取材概要「08/3期は微増収となったものの、価格下落や顧客のLED化計画の遅れにより利益面で期初予想を大きく下回る結果となった。09/3期は高い売上・利・・・」続きは本文をご覧ください。
2008年7月8日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社朝日ラバー
社長
横山 林吉
所在地
埼玉県さいたま市大宮区土手町2-7-2
決算期
3月 末日
業種
ゴム製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年3月 6,284 414 325 211
2007年3月 5,314 399 375 176
2006年3月 4,578 366 353 209
2005年3月 4,057 251 251 147
2004年3月 3,449 233 211 112
2003年3月 3,154 172 159 75
2002年3月 2,907 98 85 10
2001年3月 3,582 315 336 189
2000年3月 3,140 313 300 141
株式情報(6/25現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
441円 4,553,620株 2,008百万円 7.2% 500株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
15円 3.4% 51.39円 8.6倍 659.20円 0.7倍
※株価は6/25終値。発行済株式数は直近期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
朝日ラバーの2008年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
小型電球やLEDに被せる事で様々な発色を可能にする被覆用ゴム製品を主力とする。自動車の内装用照明の他、携帯用通信機器、電子・電気機器、産業機器、文房具用・スポーツ用等、幅広い分野で利用されている。ベースとなるのはシリコーン材料の配合技術と調色技術で、前者を活かして、医療・衛生用ゴム製品や硬質ゴムと軟質ゴムの複合製品等も手掛けている。
グループは、同社の他、ゴム・プラスティック等の研究開発を行う(株)ファインラバー研究所、米国の販売会社ARI International Corp.、及び中国・東莞市に工場(来科加工工場)を持つ朝日橡膠(香港)有限公司の連結子会社3社からなる。
 
<事業内容と主要製品>
事業は、自動車の内装照明の光源向けや各種センサ向け、或いは液晶表示装置で使われる冷陰極蛍光管(CCFL)ホルダー、Oリング、電池用ゴム等に使われる工業用ゴム事業、点滴用ゴム栓や腰部クッション等の医療・衛生用ゴム事業、及び複合製品等のその他事業に分かれる。 08/3期の売上構成比は、それぞれ、87.3%、12.7%。
工業用ゴム事業は、更に彩色用ゴム製品(売上構成比50.8%)、弱電用高精密ゴム製品(同 21.2%)、卓球のラケット用ラバー等のスポーツ用ゴム製品(同 5.3%)、その他工業用ゴム製品(同 10.0%)に分かれる。
 
彩色用ゴム製品(売上構成比50.8%)
シリコーン材料をベースに独自の配合技術と調色技術を生かした、光デバイスに応用する製品をASA COLORブランドとして提供している。
 
 
 
弱電用高精密ゴム製品(同 21.2%)
液晶表示装置のバックライトに使われる冷陰極蛍光管(CCFL)のホルダー、電子部品に使われるOリング、電池用ゴム等がある。
 
 
医療・衛生用ゴム製品(売上構成比12.7%)
今後の事業領域として大きな可能性を秘めた分野であり、ディスポーザブル用ゴム製品など衛生面での配慮と後処理を考えた環境に優しい製品づくりを念頭に事業を進めている。
ディスポーザブル用ゴム製品とは、使い捨ての点滴輸液バッグ用ゴム栓や真空採血管用ゴム栓等。前者は点滴用の薬液が入ったボトルの口に使用するゴム栓で、後者は血液検査の際に使用される採血サンプル保存管のゴム栓。いずれも針を刺す際の抵抗が少なく、また針を抜いても漏れない再シール性に優れている。この他、院内感染など医療事故防止に役立つ医療製品向けの開発製品の量産が一昨年から始まっている。
 
2008年3月期決算
 
 
前期比18.2%の増収、同3.7%の営業増益。
売上の面では、彩色用ゴム製品を中心に主力の工業用ゴム事業が堅調に推移、一昨年から量産を開始した開発製品の寄与で医療・衛生用ゴム事業も伸びた。利益面では、競争激化による「ASA COLOR LED」の単価下落や新工場への生産移管の遅れ等で売上総利益率が悪化したものの、増収効果と販管費の伸びを抑えて営業利益は414百万円と同3.7%増加した。ただ、支払利息の増加や下期以降の急速な円高に伴う為替差損55百万円の計上等で営業外損益が悪化、経常利益は325百万円と同13.2%減少した。当期純利益が同19.5%増加したのは税効果による。

尚、前期までゴムキャップだけをLEDメーカーに販売していたが、今期から一部の取引について、青色LEDを仕入れてゴムキャップを接着して販売する方法に変更した。この際の青色LEDの仕入高が売上原価に計上され、ゴムキャップ接着後に販売される製品の売上高に青色LEDの売上高が含まれる。つまり、売上総利益への影響は無いものの(売上総利益率は低下する)、売上高及び売上原価が青色LEDの価格分かさ上げされる。
08/3期はこの影響が約680百万円あり、この影響を考慮した実質的な売上高は前期比5.4%増の5,604百万円、売上総利益率は同1.1ポイント低下の27.5%となる。

期初予想に対しては、売上高が2.7%超過したものの、「ASA COLOR LENS」における高収益製品(一般照明用パワーLED向け)の売上が伸びなかった事や「ASA COLOR LED」の単価下落等で、売上総利益が8.6%、営業利益が16.7%、経常利益が29.7%、当期純利益が13.2%、それぞれ下回った。詳細については次の通り。
 
(1)「ASA COLOR LENS」における高収益製品の売上減少
一般照明のLED化を進めている顧客の事業が計画通りに進まず、利益率の高い一般照明用パワーLED向け製品の量産が遅れた。このため、売上高は計画の395百万円に対して、290百万円にとどまった。また、この影響により、同社社内での開発案件の多くが中断・延期している。
 
(2)設備投資による減価償却費の増加
受注予測に基づき「ASA COLOR LED」の高付加価値品の設備導入を前倒しで進めたが、需要が低単価品に移った上、低単価品の単価も下落した。このため、償却負担が当初の予想以上に重くなった他、高付加価値品の増産に向けた要員確保に伴う人件費も負担となった。

尚、設備投資は629百万円で、内訳は「ASA COLOR LED」関連が約150百万円、医療・衛生用ゴム製品関連が約150百万円、開発・増産設備が約230百万円。減価償却費は474百万円。
 
(3)販売単価の下落
競争激化等による販売平均単価の下落の影響が100百万円発生した。
 
<セグメント別売上高>
 
工業用ゴム事業
彩色用ゴム製品
小型電球に被せる「ASA COLAOR LAMPCAP」が前期比16.4%(97百万円)減少する一方、LEDに被せる「ASA COLOR LED」が先述のLEDの仕入・販売分を差し引いた実質ベースで同22.0%(248百万円)増加した。この他、透明シリコーン応用製品である「ASA COLOR LENS」は、携帯電話の補助光源用レンズが伸長、一般照明用パワーLED向けの苦戦をカバーして同11.6%増加した。
 
弱電用高精密ゴム製品
冷陰極蛍光管のホルダーが伸びたものの、2次電池用ゴムの減少等で前期比0.7%の減少となった。
 
スポーツ用ゴム製品
卓球用ラケットのラバーが主な用途だが、新機種の量産等を受けて売上が増加した。
 
その他工業用ゴム製品
自動車関連の開発製品が順調に推移したものの、従来からの汎用品の売上が減少した。
 
医療・衛生用ゴム事業
一昨年に量産を開始した医療用開発製品(院内感染など医療事故防止を念頭に開発した製品)の売上高が増加した。
 
<子会社の状況>
 
 
ARI International Corp.が米国の景気後退の影響を受けたものの、来科加工工場(中国・東莞市)の運営が軌道に乗り朝日橡膠(香港)有限公司の損益が黒字化した。
 
2009年3月期業績予想
 
 
前期比8.1%の増収、同30.9%の営業増益予想。
彩色用ゴム製品を中心に主力の工業用ゴム事業が堅調に推移する見込み。生産性の向上などで売上総利益率を改善し、売上総利益は同8.7%増加する見込み。営業利益は543百万円と同30.9%の増加を見込む。
尚、1株当たり配当金を3円増配し、年15円(中間配当5円を含む)とする予定。配当性向は前期の25.9%から29.2%に上昇する。
 
<セグメント別売上予想>
 
工業用ゴム事業は前期比9.1%増の5,983百万円を見込む。彩色用ゴム製品が3,539百万円と同10.9%増加する見込み。けん引役となる「ASA COLOR LED」については、引き続き単価の下落が予想されるものの数量の増加で吸収、売上高は同26%増の2,620百万円を見込んでいる。一方、医療・衛生用ゴム事業は、前期比微増の805百万円を見込む。
 
<設備投資及び減価償却費>
設備投資は、開発、合理化、省力化、及び環境改善投資等で400百万円を計画(前期は629百万円)。成長の為の投資は続けるものの、投資回収を念頭に生産設備の稼働率向上を最優先に取り組む考え。また、減価償却費は490百万円と16百万円の増加を見込む。
 
 
主な独自製品の状況
 
彩色用ゴム製品  「ASA COLOR LED」
 
「ASA COLOR LED」については、技術革新による高輝度化が進む一方、競争激化により低価格化が進行している。また、販売先であるセットメーカーも、円高や材料価格高騰を背景にしたコストダウンに迫れており、価格面での要請を強めている。
こうした中、同社は、最大の強みである色度、輝度のばらつきの低減により差別化を進めると共に、低価格パッケージの拡販でシェアを確保し、数量増で売上高の拡大を図る考え。また、付加価値の高いパワーLED向け製品の開発でラインアップを増やし、ディスプレイ照明やダウンライト照明など新しい市場を開拓していく考え。
09/3期については、新車8車種での採用が確定しており、生産量が前期比40%増加する見込み。生産量の増加により稼働率も向上するため、生産効率(利益率)の改善も見込まれる。
 
彩色用ゴム製品  透明シリコーン応用製品
 
透明シリコーン応用製品は、ゲーム機等の視認性向上に使われる「透明ゴムシート」と透明なシリコーン樹脂を原料とする「ASA COLOR LENS」に分かれる。09/3期は前者の売上が180百万円と大きく落ち込む見込みだが、これは売上の見通しが立て難いため。180百万円をミニマムとして、社内的には08/3期並みの売上を目指している。また、「ASA COLOR LENS」については、顧客の一般照明のLED化計画が遅れており、同社社内での新製品の開発計画が中断・延期している状態。当面は、顧客の動向を睨みながらの展開となる。
 
開発製品 - ラバーファントム
昨年10月に販売を開始した「ラバーファントム」は、シリコーンゴムにカーボンブラックやカーボンナノチューブを配合した素材を使った電波測定用の人型検体(ファントム)。人体と同じ電気特性を有し、電波を発信する様々な機器の開発に際し、人体の存在を視野に入れた電波環境を測定する事ができる。全身だけでなく、頭や腕等の部位毎の販売もしており、徐々に引き合いが増えてきている。当面、業績への寄与は少ないものの、中期的には製品ラインナップの一つとして業績への寄与が期待できる。
 
 
取材を終えて
08/3期は微増収となったものの、価格下落や顧客のLED化計画の遅れにより利益面で期初予想を大きく下回る結果となった。09/3期は高い売上・利益の伸びが見込まれるものの、中期目標として09/3期の達成を目指していた売上高70億円、経常利益6億円には届かない見込み。
ただ、中期的なLED応用製品の市場拡大余地は疑うべくも無く、既存の照明機器に代わり、様々な分野での普及が見込まれる。もっとも、普及のためには価格の低下が避けられず、市場拡大の波に乗り業容を拡大させるためには低価格化への対応が不可欠となる。このため、今後、市場が拡大していく過程で多くの企業がコスト対応できずに振り落とされてゆくものと思われる。こうした中、同社では、白河新工場への「ASA COLOR LED」の生産移管がこの3月に完了。09/3期は生産数量の増加と相まって新工場が収益性の改善に寄与する見込みだ。計画通りに利益率を高め、利益計画を達成できるかが今期のポイントと考える。