ブリッジレポート
(8275) 株式会社フォーバル

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ブリッジレポート:(8275)フォーバル vol.22

(8275:JASDAQ) フォーバル 企業HP
大久保 秀夫 社長
大久保 秀夫 社長

【ブリッジレポート vol.22】2008年3月期決算業績レポート
取材概要「09/3期は前期買収した子会社が通期で寄与する事や固定負削減を進める事で黒字転換を見込んでいる。既存事業や固定費削減が想定通りに進捗すれば・・・」続きは本文をご覧ください。
2008年7月3日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フォーバル
会長兼社長
大久保 秀夫
所在地
東京都渋谷区神宮前 5-52-2 青山オーバルビル
決算期
3月
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年3月 34,323 -970 -1,263 -530
2007年3月 26,216 -1,918 -2,010 -1,387
2006年3月 27,500 3 14 1,063
2005年3月 40,089 1,962 1,962 1,174
2004年3月 32,981 1,446 1,360 660
2003年3月 37,402 1,522 1,334 443
2002年3月 44,411 -860 -1,027 -4,756
2001年3月 52,045 1,026 699 86
2000年3月 54,668 1,278 1,281 1,122
株式情報(6/26現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
275円 13,764,430株 3,785百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12.5円 4.5% 21.80円 12.6倍 482.34円 0.6倍
※株価は6/26終値。発行済株式数は直近期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フォーバルの2008年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
都心部の中堅・中小法人を対象に、電話機や複写機等のオフィス向け情報通信機器の開発・販売・設置・保守サービスの他、携帯電話端末の販売、光ファイバーを利用したIP 電話サービス(商品名FTフォン)、更にはセキュリティサービス等、様々なサービスを「ワンストップ」で提供している。事業セグメントは、電話機、複写機、パソコン等の販売を主とする機器関連事業と通信ネットワークやセキュリティ関連等のネットワーク関連事業に分かれ、08/3期の売上構成比は、前者が29.5%、後者が70.5%。
 
ただ、中期的には、中堅・中小企業向けの情報通信分野を核とした総合コンサルティングサービスの展開を目指しており、現在、事業改革を推進中。1980年に設立され電話機販売からスタートした同社だが、その後、ナローバンド、ブロードバンド、そしてモバイルと、時代のニーズに即した分野で様々なサービスを開発してきた。そして今尚、新たなサービスの開発と企業改革に取り組んでいる訳だ。
 
尚、社名のFORVAL(フォーバル)は、「For Social Value」を語源とし、「社会価値創出企業をめざす」という経営理念が込められている。
 
 
 
2008年3月期決算
 
連結業績
 
前期比30.9%の増収となり、営業損失が半減した。
携帯電話販売を手掛ける(株)リンクアップの買収効果等で売上高が大幅に増加。増収効果により売上総利益が増加する一方、赤字のグループ会社や部門の整理・再編を進めた事で販管費がわずかに減少、営業損益は948百万円改善した。持分法投資損失の増加等で営業外損益が悪化したものの、投資有価証券売却益の増加等で特別損益が改善、当期純損失も大幅に減少した。
 
尚、販管費は、販売促進費の増加で販売費が増加した他、連結調整勘定償却等で一般管理費も増加したものの、給与手当てを中心に人件費が減少。前期比30.9%の増収にもかかわらず、同1.9%減少した。
 
 
 
<セグメント別動向>
 
機器関連事業は前期比2.4%の減収ながら、グループの再編や人員削減等で営業損失が950百万円弱減少した。このうち、電話機販売(売上構成比11.8%)はリース審査の厳格化が響き同12.7%の減収。訪問販売に対する規制強化と相まって今後も厳しい事業環境が予想される。一方、複写機等の販売(同13.8%)は数量ベースでは業界並みに若干の減少となったものの、単価の高いカラー対応機の寄与で金額ベースでは同4.0%増加した。この他では、パソコン販売が同18.5%増加したものの、ファクシミリ販売がわずかに減少した。ただ、パソコン、ファクシミリ共に利益への影響は軽微である。
 
ネットワーク関連事業は同52.7%の増収ながら、営業損失が20百万円強増加した。このうち、通信ネットワーク(同50.0%)は、07年7月に子会社化したリンクアップの寄与で同73.4%の増収。通信サービスの請求件数も堅調に推移し、光ファイバーを利用したIP電話サービスを提供するフォーバルテレコムの売上も増加した。Web関連は同19.2%の増収。営業部門との連携を強化した事でWeb制作が伸びた。セキュリティ関連は同12.8%の減収。大手企業向けファイアウォール商品の販売が落ち込んだ事に加え、中小企業向け統合型セキュリティアプライアンス商品の販売も伸び悩んだ。その他事業は同62.5%の増収。06年7月に子会社化した新英(ドキュメント事業)が通期で寄与した他、07年4月に子会社化したFISソリューションズ(経営支援コンサルティング及び保険サービス)も増収に貢献。フォーバルキャリアファームやクリエーティブソリューションズ(いずれも人材派遣業)の業績も好調に推移した。
 
<主要企業別動向>
フォーバル個別業績
 
コスト削減を進めたものの、比較的利益率が高い電話機販売が期初予想を約15億円下回った事が響いた。
 
フォーバルテレコム連結業績
 
光ファイバーを使ったIP電話サービスの販売等において、販売代理店へ支払うインセンティブ(一時金手数料)や新規代理店の開拓に伴う費用の発生により増収ながら利益が大幅に減少した。
 
 
2009年3月期業績予想
 
09/3期は、収益構造・営業手法の転換を図ると共に、引き続き固定費の圧縮に努める。
 
(1)総合ITコンサルティングサービス「アイコン」の提供を開始
⇒コンサルティング契約によるストック型の収益構造へと転換
 
(2)「コピー機ねっと!」事業を買収
⇒Webを使ったプル型営業の推進
 
(3)オフィスの統廃合
⇒更なる固定費の圧縮
 
 
連結業績
 
前期比4.9%の増収となり、営業損益が黒字転換する見込み。
リンクアップが通期で寄与する通信ネットワークが増収を牽引。総合ITコンサルティングサービス「アイコン」の提供開始によりコンサルティング等も伸びる見込み。利益面では、オフィスの統廃合により更なる固定費の削減を進め、営業損益以下の各段階で黒字転換する見込み。
 
<セグメント別予想>
 
 
 
フォーバルグループの今後の展開
 
28年前に同社の大久保社長がリースを活用した電話機販売を開始して以来(当時はNTTの永久レンタルのみ)、四半世紀以上が経過し、リースを活用したビジネスモデルが陳腐化してきた。このため、同社では、従来のリースを活用した機器販売から、コンサルティングへ軸足を移していく(中小企業のIT担当顧問への進化)事でビジネスモデルを転換し、ストック型の収益構造を構築していく考え。
3年前から、ドットコムマスター(パソコンやネットワークに関する技能や、法律に関する基礎的な知識が必要)や個人情報保護士等、社員の資格取得を進め、営業の質やサービスの強化を進めてきた。09/3期より取り組む総合ITコンサルティングサービス「アイコン」ではこれらの人材を活用し、保守やサポートサービス等、これまでに培ってきた取引先との接点を活かして様々なサービスを提供する事で取引先との緊密な関係を構築し、ソリューションビジネス(コンサルティング)につなげていく。尚、コンサルティングに当たっては外部パートナーの協力も得ながら進めていく。
 
 
取引先の満足度を高め緊密な関係を築くために、サポートエディション、おしごと安心プラン、Webアドバイス・ナビ等の様々なサービスを用意する。また、ソリューションの事例をデータベース化する事でノウハウを蓄積・共有し、全社的なコンサルティング能力を高めていく。
 
 
 
中期的には、情報通信分野を核とした総合コンサルティングサービスの展開を目指している。フェーズ1にあたる08/3期までに、赤字のグループ会社や部門の整理・再編を終えた。フェーズ2にあたる今期から11/3期にかけては、「アイコン」サービスの育成に加え、機器販売においてもリースに代わる新たなスキームを構築してストック型に変化させ、「アイコン」サービスと「機器販売」によるストック収益の二重化を実現し安定成長軌道への回帰を目指す。そして、12/3期以降をフェーズ3として、新生フォーバルが躍進するステージとする。
 
 
取材を終えて
09/3期は前期買収した子会社が通期で寄与する事や固定負削減を進める事で黒字転換を見込んでいる。既存事業や固定費削減が想定通りに進捗すれば、今期の黒字転換は可能と考えるが、来期以降については不透明感が残る。と言うのも、来期は「アイコン」等コンサルタント事業に期するところが大きいが、コンサルタント事業は形の無いものを売るビジネスだけにある程度の実績ができてこないと、評価する事は難しい。
現在、同社の株価は予想PER12.6倍、PBR0.6倍、配当利回り4.5%の水準。配当利回りやPBRを見ると、株価は割安だが、昨今の新興市場の状況や過去数年の同社の実績を踏まえると、予想PERの面からはそれなりに評価されていると言える。しかし、実際には配当利回りの高さやPBRの低さが株価を支えており、予想PERの高さはその結果に過ぎないと言うのが実際のところであろう。つまり、必ずしも成長力(予想PER)で評価されていない状態。このため、業績予想を確実に達成していく事で成長期待を高めていく事が必要と考える。