ブリッジレポート
(4783) NCD株式会社

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ブリッジレポート:(4783)日本コンピュータ・ダイナミクス vol.13

(4783:JASDAQ) 日本コンピュータ・ダイナミクス 企業HP
伊藤 敬夫 社長
伊藤 敬夫 社長

【ブリッジレポート vol.13】2008年3月期決算業績レポート
取材概要「システム開発は、顧客の費用対効果に対する意識の高まりから、一時期、多くのSierが利益確保で苦戦したが、ここにきて、苦戦が続く企業がある・・・」続きは本文をご覧ください。
2008年5月29日掲載
企業基本情報
企業名
日本コンピュータ・ダイナミクス株式会社
会長
下條 武男
社長
伊藤 敬夫
所在地
東京都品川区西五反田 4-32-1
決算期
3月
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年3月 9,539 553 581 315
2007年3月 9,292 261 315 186
2006年3月 8,851 409 424 199
2005年3月 7,607 321 348 228
2004年3月 7,570 340 368 160
2003年3月 6,859 322 283 74
2002年3月 6,168 293 292 152
2001年3月 5,088 247 182 46
2000年3月 4,447 307 339 149
株式情報(5/28現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
333円 7,237,670株 2,410百万円 13.9% 1,000株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
13円 3.9% 45.59円 7.3倍 328.37円 1.0倍
※株価は5/28終値。発行済株式数は直近期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
日本コンピュータ・ダイナミクスの2008年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
独立系ソフトウェア開発会社のパイオニア。コンサルティングからシステム運用までを手掛けるシステム開発事業、システムの運用管理とテクニカル・サポートを主体としたサポート&サービス事業、及び自転車駐輪場対策として社会性も高いパーキング・システム事業を展開。社名の“日本コンピュータ・ダイナミクス”には、“コンピューターをダイナミックユースして社会に貢献する(Dynamic use of Computer)”と言う創業時の思いが込められている。
 
<経営戦略>
経営戦略として、成長の加速、収益構造の改善、株主重視経営の推進の3項目を掲げている。
 
(1) 成長の加速
①パーキング・システム事業の全国展開
当事業は、自治体の業務委託制度から指定管理者制度への移行、法改正による路上駐輪場建設の容認や建築基準法での公開空地駐輪場設置合法等により更なるビジネスチャンスの広がりが期待できる。ただ、今後の競争激化が予想されるため、先行メリットを活かし全国展開を図ると共に拠点拡充を進める事で事業基盤の強化を図る考え。この一環として、子会社での展開から代理店方式に切り替え、事業展開の速度を上げた。
 
②IT事業でのワンストップサービス実現
システム開発等のIT事業では、コンサルティング、システム構築、運用管理を網羅する一貫したサービス(ワンストップサービス)を提供する事で顧客満足度の向上を目指している。また、古くから付き合いのある大手顧客の深耕を図ると共に、100~1,000億円規模の企業向けに(株)オービックビジネスコンサルタント(以下、OBC)の会計ソフト「勘定奉行」の新ERP版奉行シリーズ等を用いたパッケージソリューションを展開している。
 
(2) 収益構造の改善
価格や納期等のユーザー要請に応えると共に一段の収益力強化を実現するため、コストダウンの拠点として中国拠点の強化・拡充、契約時の仕様確定の徹底、及びリスクマネジメントやプロジェクトマネジメントの強化による採算管理の徹底に取り組んでいる。また、コスト要請に応えうる体力のある協力会社との関係強化にも努めている。
 
(3) 株主重視経営の推進
配当性向等を総合的に判断し安定的な配当を維持する方針。現在の利益水準では利益が振れやすい事もあり、配当性向のみに基づく株主還元にも問題があると考えている。IR活動については、継続的に強化していく考え。
 
2008年3月期決算
 
 
前期比2.7%の増収となり、営業利益は同2.1倍に拡大した。
主力のシステム開発事業においてプロジェクト管理の徹底が成果を上げた他、好採算の新製品投入効果でパーキング・システム事業の利益率も大幅に改善した。各セグメントで収益性が改善し売上総利益が増加(利益率は18.8%と2.4ポイント上昇)、一方、代理店網の整備が一巡した事や人員の効率的な配置等で販管費が減少した(販管費比率は13.0%と0.6ポイント低下)。

中間決算発表時予想との比較では、売上の面では、次期に先送りとなった案件の発生でパーキング・システム事業の売上が予想を下回ったものの、システム開発事業における既存顧客からの受注や、アウトソーシング業務における新規顧客からの受注が、好調に推移した事でほぼ予想通りの着地。利益面では、見積り精度の向上や契約形態の見直し、更にはプロジェクト監視の徹底等によりシステム開発事業におけるプロジェクトの採算が大幅に改善、地方拠点の採算改善や子会社にける開発要員の稼働率向上もあり、中間時予想を大きく上回った。
 
<セグメント別動向>
 
 
システム開発事業
見積り精度の向上や契約形態の見直し、更にはプロジェクト管理の徹底等により不採算案件がなくなった他、個々の案件の利益率も向上した。また、課題だった地方事業所において、見積精度の向上やプロジェクト管理の強化により利益体質が定着してきた他、中国子会社のオペレーションも軌道に乗りシステム開発の原価低減に寄与し始めた。尚、売上総利益は前期比25.7%増の1,035百万円。
 
サポート&サービス事業
前期にスタートしたマネージドサービスセンター業務が順調に拡大した。このサービスは、24時間365日の障害対応等、顧客のシステム運用部門に替わり顧客のシステムを包括してサポート(運用・管理)するもので、これまでは顧客個々の施設に常駐してサービスを提供していたが、同社社内にマネージドサービスセンターを開設すると共に、システム開発事業とサポート&サービス事業の部門を統合して、ワンストップサービスを提供できる体制を整えた。システム開発からインフラ構築、更には運用・管理までの一括した受注体制やSLA(Service Level Agreement、注)の明確な定義が評価され、新規顧客の開拓が進んだ。売上総利益は同5.9%増の248百万円。

(注)SLA
サービスの提供者と委託者が契約を行う際に、提供するサービスの内容と範囲、品質に対する要求水準を明確にして、それが達成できなかった場合のルールを含めてあらかじめ合意しておく事。(08/3期同社決算短信より)
 
パーキング・システム事業
道路法施行令の一部改正により道路上への駐輪場設置が可能になった事を受けて、道路上案件への営業を強化した。この成果で、バイクポートを含めた歩道上駐輪場案件が増加。期末時点の自転車及びバイクの管理台数が10万台を突破した。また、以前設置した駐輪場の機器入れ替えが徐々に増えてきた他、前期に競争力強化のためにサポートセンターの充実や営業人材の獲得・育成に投資した成果も現れ始めた。ただ、前期に売上が急拡大した大阪の代理店でその反動減があった事や次期に先送りとなった案件等もあり売上は微減。一方、新型ラックや新型精算機の開発による機器の原価低減により売上総利益は499百万円と同9.1%増加した。
 
その他事業
今後の発展が見込めない二次元コード関連事業を整理したものの、既存顧客のシステムの運用(人材派遣)が増加。売上総利益は同14.7%増の13百万円となった。
 
2009年3月期業績予想
 
 
前期比36.3%の増収、同12.1%の営業増益予想。
昨年12月に子会社化した(株)ゼクシス(08年8月に100%子会社化を予定)が通期で寄与する事で売上を押し上げる。利益面では、ゼクシスののれん償却やオフィスの増床等で販管費が増加するものの、利益率の高いパーキング・システム事業の売上が伸びる事、プロジェクト管理の強化、更にはゼクシスの100%子会社化によるグループ経営の効率化等で吸収、営業利益は620百万円と同12.1%増加する見込み。当期純利益の伸びが低くなるのは、税効果等による。
 
<セグメント別売上予想>
システム開発事業は前期比46.3%の増収見込み。大型プロジェクトの売上計上が始まる事に加え、ゼクシスの通期寄与もあり売上が伸長。利益面では、プロジェクト管理の徹底によりゼクシスを含め、収益性の改善が見込まれる。サポート&サービス事業は同18.5%の増収見込み。既に受注済みの既存顧客向けサービスをベースに、新規顧客の開拓で売上の上積みを図る。また、標準化により業務効率の改善が進んでおり、利益率の向上も見込まれる。
パーキング・システム事業は同27.5%の増収見込み。前記落ち込んだ大阪の代理店が回復する事に加え、名古屋の代理店が通期で寄与。パスモやスイカへの対応を進めてきた成果も期待で増収に転じる。新規駐輪場ニーズに加え、既存駐輪場の機器入れ替えが増加するため、営業及びサポートセンターを含めた管理要員の増員により需要の取り込みを図る。
 
 
取材を終えて
システム開発は、顧客の費用対効果に対する意識の高まりから、一時期、多くのSierが利益確保で苦戦したが、ここにきて、苦戦が続く企業がある一方、同社のようにコスト対応とプロジェクト管理の徹底により収益性改善が進む企業も現れてきた。同社の場合、パーキング・システム事業と言う安定的な収益が期待でき、かつ成長力もある独自のビジネス領域を有する事も強みである。景気の先行き不透明感から設備投資の減速懸念が高まっているが、企業間競争に打ち勝つための情報化投資は避けて通れない。当面、勝ち組の業績拡大が続こう。