ブリッジレポート
(4955) アグロ カネショウ株式会社

スタンダード

ブリッジレポート:(4955)アグロ カネショウ vol.20

(4955:東証2部) アグロ カネショウ 企業HP
櫛引 博敬 社長
櫛引 博敬 社長

【ブリッジレポート】アグロカネショウ vol.20
(取材概要)2008年3月25日掲載
「2008年12月期は、先行投資が利益を圧迫するため、2期連続の減益が見込まれます。今後の同社の成長ドライバーとして、有望新剤の登録、農家密着営業・・」続きは本文をご覧ください。
企業基本情報
企業名
アグロ カネショウ株式会社
社長
櫛引 博敬
所在地
東京都港区赤坂 4-2-19
決算期
12月
業種
化学(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2007年12月 13,391 533 476 258
2006年12月 12,851 576 497 272
2005年12月 12,154 442 385 114
2004年12月 10,742 536 366 186
2003年12月 7,322 -220 -208 -278
2002年12月 7,792 113 150 41
2001年12月 7,733 242 279 63
2000年12月 8,300 662 709 423
1999年12月 7,821 642 656 224
株式情報(3/13現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
700円 6,697,008株 4,688百万円 230.0% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20円 2.9% 20.90円 33.5倍 1,677.30円 0.4倍
※株価は3/13終値。発行済株式数は直近期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
アグロカネショウの2007年12月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
会社概要
 
人と自然と環境にやさしい農薬づくりに取り組む農薬専業メーカー。農薬は果樹・野菜向けを主体とし、農家密着型の営業展開により他の農薬メーカーと差別化を図っています。一般の農薬流通は、農薬メーカーを起点として川上から川下に商品を押し込むプッシュ型ですが、同社は農家を起点として需要をくみ出すプル型の流通体制を構築しています。
 
 
<グループ>
 
グループは、同社の他、連結子会社2社、非連結子会社1社で構成されています。
連結子会社は、03年に独BASF社から事業買収した土壌処理剤を取り扱う、三井物産(8031)との合弁会社「Kanesho Soil Treatment(KST)」及び04年に子会社化した染料、医薬、農薬等の受託製造・販売を行う三和化学工業(株)です。非連結子会社は、この07年3月に新設したグリーン カネショウ(株)があります。
 
 
2007年の日本における農薬の出荷金額は、約3,193億円。農薬メーカーには、総合化学メーカー、医薬品メーカー、外資系化学メーカー等があり、住友化学、石原産業、日産化学、バイエルグループ、日本曹達、クミアイ化学等の外資系を含む総合化学メーカー6社が70%のシェアを有しています。こうした中、同社は業界唯一の農薬専業メーカーとして、国内17位のポジションにあります。しかしながら同社はダニ防の開発・販売を得意とし、99年に自社開発のダニ剤「カネマイト」(マイト:miteとは英語でダニ)の登録を取得し、海外展開もしています。加えて、03年には独BASF社から土壌処理剤事業を買収、これらが原動力となり日本国内の農薬出荷金額が漸減傾向にある中で業績拡大が続いています。
 
<特徴>
同社の特徴として、果樹・野菜分野への特化、農家密着型営業、及び海外展開の3点を挙げる事ができます。

1.果樹・野菜分野への特化
農家へのきめ細やかなサポートが必要な果樹・野菜分野に特化した農薬事業を展開しています。売上高の37%を土壌処理剤が占め、以下、害虫防除剤(18%)、ダニ剤及び除草剤(共に16%)と続きます。2008年以降、土壌線虫防除剤「ネマキック」など有望新剤による売上げへの寄与が見込まれています。
 
 
農薬の登録には、農林水産省を窓口として、同省の他、厚生労働省、環境省による検査、さらには内閣府食品安全委員会の審査を受ける必要があります。近年では、これらの各省から要求される試験成績も増えており、こうした要求の一つ一つに応えていく必要があります。一般的には、開発から登録まで1剤当たり、約10年間の年月と、15億円の投資が必要と言われています。
 
 
2.農家密着型営業
本社のほか、6支店、10営業所を全国に展開しています。TCA(テクニカル・コマーシャル・アドバイザー:営業技術普及担当)が担当地域をカバーしており、農家、卸売業者、農協、小売店とのコミュニケーションを密にして営業活動を行っています。
 
 
「製品を売るのではなく、技術を売る」をモットーに独自の販売体制を構築して、流通上の自由度を維持しています。農家、会員店、販売店、JAとの密なる連携による技術普及を重視した現場直結の営業、それが「トライアングル作戦」です。
 
3.海外展開
韓国、台湾、北米、中・南米にダニ剤「カネマイト」を輸出しています。欧州については、2005年4月にEUへの原体登録申請を行っており、ドイツで2006年6月に食用作物、オランダで2007年6月に花卉の登録を取得しました。現在、日本を含めて14カ国で登録され、販売を行っていますが、2008年は欧州各国での登録が進む見込みです。また、土壌処理剤を販売している子会社KSTの業績も好調で、海外売上高が順調に拡大しています。輸出高の比率は未だ5.5%にとどまりますが、今後も、伸ばしていきます。
 
 
<中期ビジョン>
同社は、2012年12月期に "単体当期純利益6億円" という中期ビジョンを掲げています。そして、その6億円のうち、2億円を研究開発のための内部留保に、2億円を社員のために、2億円は株主還元に充てる予定です。
 
 
土壌処理剤分野において「バスアミド」、「D-D」という有力な剤を有し高いシェアを維持していますが、2008年には、土壌線虫防除剤「ネマキック」がラインナップに加わる予定です。この他、新規剤についても2012年以降に、登録を予定しています。この剤は、15億円程度の年商が見込まれています。

また、同社の研究施設は、現在、埼玉県所沢事業所内にありますが、同所の生産施設も老朽化してきたため、大規模なリニューアルを行います。具体的には、所沢の研究施設を改築・強化すると共に、生産効率の改善を図るべく生産設備を福島工場に移転します。2010年にかけて行われる総額20億円の大型投資です。
 
農薬の必要性と農薬市場
 
無農薬栽培や有機栽培といった言葉をよく耳にしますが、「農薬で病害虫や雑草の防除対策をしないと、世界の農産物の収穫量の30%以上が失われてしまう」と言われています。例えば、社団法人 日本植物防疫協会によると、農薬を使用しなかった場合の販売用農作物の減収率は、水稲27.5%、麦35.7%、桃にいたっては100%とと推定されています。
 
 
また、農薬の使用は過酷な農作業からの開放にもつながり、農業を半世紀で25分の1に省力化しました。
 
 
<日本の農薬市場>
 
 
水稲が大きく出荷額を減らしているのに対して、同社の製品市場である果樹・野菜向けの農薬出荷額は比較的安定しています。
 
<世界の農薬市場>
 
 
世界に目をやると、市場規模は日本の10倍以上の約3兆5,000億円。しかも、成長市場です。
 
2007年12月期決算
 
<連結>
 
 
増収ながら、減益となりました。
土壌処理剤「バスアミド微粒剤」の売上が国内外で伸びた他、「カネマイトフロアブル」、「アルバリン水溶・粒剤」、「D-D」もほぼ計画通りの販売を達成しました。ただ、ユーロ高による仕入原価の上昇に加え、研究開発費や新剤の登録費用の増加が利益を圧迫しました。
 
2008年12月期業績予想
 
<連結>
 
 
減収・減益の予想です。
北米と韓国でカネマイトの在庫調整が見込まれます。また、利益面では、ユーロ安で原価率の改善が見込まれるものの、農薬の登録費用や所沢事業所のリニューアル及び工場移転費用が負担となります。
 
<製品売上高の推移>
2008年12月期の製品別の予想売上高は、害虫防除剤2,617百万円(07/12期2,859百万円)、病害防除剤5,928百万円(同5,947百万円)、除草剤1,390百万円(同1,376百万円)、その他3,005百万円(同3,209百万円)です。
 
 
<販管費の推移>
 
 
本来、同社の販管費は安定していますが、2007年12月期は円安の影響で円ベースの販管費の伸びが大きくなりました。
 
取材を終えて
2008年12月期は、先行投資が利益を圧迫するため、2期連続の減益が見込まれます。今後の同社の成長ドライバーとして、有望新剤の登録、農家密着営業の強化、海外展開の推進などを挙げており、現状の先行投資が今後いかに回収され、同社の成長に寄与していくのか等に着目していきたいと思います。