ブリッジレポート
(6890) 株式会社フェローテックホールディングス

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ブリッジレポート:(6890)フェローテック vol.18

(6890:JASDAQ) フェローテック 企業HP
山村 章 社長
山村 章 社長

【ブリッジレポート】フェローテック vol.18
(取材概要)2008年1月8日掲載
「下期の見通しは慎重なものとなりました。確かに為替や半導体製造装置向け製品の見通しには、不透明感があります。ただ、年明け以降は、この中間期に苦戦した・・」続きは本文をご覧ください。
企業基本情報
企業名
株式会社フェローテック
社長
山村 章
所在地
東京都中央区京橋 1-4-14
決算期
3月
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2007年3月 32,517 2,288 2,081 1,703
2006年3月 23,946 1,210 1,040 708
2005年3月 21,105 1,762 1,456 633
2004年3月 15,000 615 -177 -645
2003年3月 12,845 111 -626 -899
2002年3月 14,775 916 984 -357
2001年3月 16,435 2,665 2,561 1,644
2000年3月 7,988 892 629 288
株式情報(12/21現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,015円 19,073,358株 19,359百万円 9.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
10円 1.0% 78.64円 12.9倍 1,038.15円 1.0倍
※株価は12/21終値。発行済株式数は直近中間期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フェローテックの2008年3月期中間決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
会社概要
 
半導体製造装置やフラット・パネル・ディスプレイ(FPD)製造装置の部品、半導体材料、温度調節に使われるサーモモジュール等の製造・販売を行っています。部品や技術というカタチでサービスを提供しているため、目に触れる機会はありませんが、パソコンや携帯電話、液晶やプラズマ等の大型テレビをつくるときに、同社の技術が活かされています。
もともとは磁力を持つ液体である磁性流体応用製品のメーカーでした。その代表例が、真空シールであり、ハードディスクドライブ等で使われていたコンピュータシールです。いずれもOnly Oneの製品であることはもちろん、超精密部品であるため、金属加工や表面処理等で高い技術が要求されます。この技術を中国に持ち込み、現地の安価な労働力と融合させたのが、事業セグメントの一つである受託生産事業です。また、今後の市場拡大が期待できる太陽電池関連の事業に取り組んでいます。太陽電池の材料となるシリコン単結晶の引上装置は、真空シールや石英製品等が主要部材として使われ、これまで蓄積してきた技術やノウハウが活かせる分野です。
 
 
<売上高の推移と売上構成比>
 
 
事業は3セグメントに分かれ、主な製品及びサービスは次の通りです。
 
装置関連事業 :真空シール・部品、石英製品、シリコン製品、EB-ガン等
電子デバイス事業 :磁性流体動圧軸受、サーモモジュール、基板実装、磁性流体等
CMS(受託生産)事業 :シリコンウェーハ加工、装置部品洗浄、工作機械製造、単結晶引上装置等
 
2008年3月期中間
 
<連結>
 
 
真空シール・部品や石英製品など半導体関連の製品が大きく伸びた事に加え、自動車温調シート向けを中心にサーモモジュールも堅調に推移。また、太陽電池用シリコン単結晶引上装置も大型受注に成功する等、3セグメントがいずれも好調を持続。大幅な増収・増益となりました。
 
期初予想との差異
(1)売上高
半導体の生産増により真空シール及び石英製品の販売が計画を超過しました。
 
(2)営業利益
収益性の高い装置関連事業の好調による売上高の計画超過に加え、中国子会社の生産性も向上した事で売上総利益が計画を超過。増収に伴う変動費の増加や期末換算レート(円安)による円ベースの増加で、販管費も計画を超過したものの、売上総利益の増加で吸収、営業利益は期初予想を大きく上回りました。
 
<セグメント別売上高>
 
 
1.装置関連事業
DRAM及びフラッシュメモリーなど一部の半導体には価格下落の影響がありましたが、パソコン、デジタル家電及び自動車等に搭載される半導体の需要増加を受けて、日本及びアジアにおける半導体メーカー各社は300 ミリウエーハを中心とした設備投資を継続しました。これを受けて、半導体製造装置部品として使われる真空シールの売上高が伸長。また、半導体の生産量も順調に推移したため、製造プロセスに欠かせない石英製品の売上も米国のOEM先向けを中心に前年同期の1.5倍に拡大しました。一方、太陽電池向けのシリコン製品(単結晶シリコンのインゴット)は、需要は強いものの、原材料のポリシリコン不足により十分な供給ができませんでした。また、半導体向けシリコンも在庫調整により前期並みの売上となりました。EB-ガン・その他には、セラミックや石英ルツボが含まれています。
利益面では、原材料高による影響を増収に伴う量産効果とコストダウン努力で吸収しました。
 
 
2.電子デバイス事業
サーモモジュールの販売が、主力の自動車温調シート向けを中心に、半導体、バイオ、光学、民生向けと幅広く拡大。利益面では、開発費用が引続き負担となっているものの、営業損益増収効果で黒字転換しました。
 
 
3.受託生産(CMS)事業
CMS事業は大きく、各種CMSとシリコン関連に分かれます。
 
 
(1)各種CMS
中国上海工場でのディスクリート向けシリコンウェーハ加工が計画通りに進捗。装置部品洗浄及び工作機械製造も堅調に推移しました。一方、太陽電池向けのシリコン単結晶引上装置は、中国セルメーカーからの受注が増加し、9 月末までに150 台以上の受注を得ています。この結果、前期末で終了したリチウムイオン二次電池のパッケージングの減収要因を吸収して、売上高はほぼ前年同期並みの水準を維持しました。
リチウムイオン二次電池のパッケージングの終了が、CMS事業全体の収益改善に寄与しました。
 
(2)シリコン関連
シリコンウェーハの表面研磨等を行なうシリコンCMSは、大口顧客の在庫調整の影響により微減となりました。一方、シリコン単結晶引上装置は、中国主要結晶メーカーからの受注が大幅に増加しました。尚、売掛金回収策として入金後出荷の条件のため出荷待ち製品が増加しています。
尚、太陽電池向けの単結晶シリコンのインゴット及び半導体向けシリコン製品の売上高は、有価証券報告書や決算短信におけるセグメント上は装置関連事業のシリコン製品に含まれていますが、下のグラフではシリコン関連事業全体の状況を示すため、シリコン製品を含めてグラフ化しています。
 
 
<産業別売上高>
 
 
前年同期に比べて、半導体・FPDの構成比が1.7ポイント上昇。半導体・FPDへの依存度が高く業績が大きく振れがちですが、半導体・FPDで取引先が広がっている事に加え、太陽電池等の新しい事業の育成も進んでいます。
 
2008年3月期業績予想
 
<連結>
 
 
増収・増益の予想です。期初予想を上方修正しました。
足元、期初予想を上回って推移しているものの、第3四半期以降の半導体投資の減速や原材料高等を想定した結果、下期の予想は慎重なものとなりました。
また、下期の想定為替レートは1ドル=115円ですが、下期だけで155億円ほどの為替差損を見込んでいます。
 
<セグメント別予想>
 
 
装置関連事業
真空シールは、米国・欧州向けが好調を維持するものの、日本・アジア向けのFPD(フラット・パネル・ディスプレイ)関係の調整が続く見込みです。ただ、足下の引き合いには底打ち感があり、年明け以降、受注に反映されてくるものと思われます。また、モーター内蔵製品を開発・製品化、「Ferro Drive(登録商標)」として、セミコン・ジャパンで発表しました。
また、石英製品は、米国顧客向けが好調を維持、中国ローカルメーカー向けの拡大も見込まれます。また、連結子会社フェローテック台湾も現地ファウンドリーからの受注が好調ですが、国内顧客向けが減少する見込みです。
 
電子デバイス事業
主力のサーモモジュールが自動車温調シート向けに増加する他、医療機器、バイオ機器、光学分野等高性能・高信頼製品を求める市場向けの拡大も見込まれます。
 
受託生産(CMS)事業
各種CMSでは、台湾や日本の工作機械メーカーからのオーダーが続いている工作機械製造が堅調に推移する見込みです。また、装置部品洗浄もDRAM生産の底打ちから受注が回復傾向にあります。
シリコン関連では、リコン製品は太陽電池向けが原材料不足で横ばいにとどまる他、半導体向けは在庫調整の影響により弱含みで推移する見込みです。一方、シリコンCMSは大口顧客の在庫調整完了で回復に転じる見通しです。また、シリコン単結晶引上装置は旺盛な受注に対応するため、増産体制が急務となっています。
 
太陽電池関連製品について
 
同社では、新たな事業の柱とするべく、太陽電池関連製品事業を育成中です。事業は、太陽電池用シリコン単結晶引上事業、単結晶引上装置開発事業、及び単結晶引上サポート事業に分かれます。
 
1.事業別の取り組み
(1)太陽電池用シリコン単結晶引上事業
装置関連事業のシリコン製品に含まれます。上海でシリコン単結晶の製造・販売を行なっている他、顧客から原材料の支給を受けて製造(製造請負)も行なっています。
 
(2)単結晶引上装置開発事業
CMS事業に含まれます。今期中に月産30台規模へ生産能力を引き上げる考えです。現行の主流機種は6~8インチ結晶炉が中心ですが、次期主力機種の大型自動装置(8インチ専用135Kgチャージ)の量産を開始しました。
 
(3)単結晶引上サポート事業
CMS事業に含まれ、装置用るつぼ(消耗品)や定期的に交換する装置用カーボン部品等の販売を行なっています。足元、装置用るつぼの製造・出荷が順調です。
 
単結晶シリコン引上装置(下の写真)は、真空シールや石英製品、更には独自開発の部品等、自社製品がふんだんに使われているため収益性が高く、しかも価格競争力があります。
 
 
2.今後の戦略
環境にやさしいエネルギー源である太陽電池は今後の市場拡大が期待できますが、現在は、市場の草創期。太陽電池向け単結晶シリコン及び向け単結晶シリコン引上装置にも同じ事が言えます。これまでに培ってきた「自社技術の塊」とも言える引上装置を強みに、製造から組立までのソリューションを展開していく考えです。
 
 
3.市場動向
 
 
太陽電池の国内市場は引き続き、高い成長が期待できます。加えて、この中間期に大口受注に成功したように、同社は巨大な中国マーケットでの展開も進んでいます。
 
取材を終えて
下期の見通しは慎重なものとなりました。確かに為替や半導体製造装置向け製品の見通しには、不透明感があります。ただ、年明け以降は、この中間期に苦戦したFPD向けの本格的な受注再開が見込まれています(収益回復に伴う液晶パネルメーカーの投資の再開は、大方の予想するところであり違和感はありません)。また、中国メーカーから受注した太陽電池向けシリコン単結晶引上装置の出荷も本格化する見込みです。これまで好不調の波が大きかった同社ですが、取引先の拡大や収益源の多様化により継続的に業績を拡大させるための経営基盤の整備が進んでいます。半導体製造装置向けが極端に落ち込まない限り、FPD関連、サーモモジュール、太陽電池向けシリコン単結晶引上装置をけん引役に続く2009年3月期も好業績が期待できると思います。