ブリッジレポート
(5162) 株式会社朝日ラバー

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ブリッジレポート:(5162)朝日ラバー vol.3

(5162:JASDAQ) 朝日ラバー 企業HP
横山 林吉 社長
横山 林吉 社長

【ブリッジレポート】朝日ラバー vol.3
(取材概要)2007年12月11日掲載
「この中間期は、新製品や開発製品、更には生産の自動化等への取組みを強化した事で多くのロスが発生、増産に向けた設備投資や人員の増強も利益の圧迫要因・・」続きは本文をご覧ください。
企業基本情報
企業名
株式会社朝日ラバー
社長
横山 林吉
所在地
埼玉県さいたま市大宮区土手町2-7-2
決算期
3月 末日
業種
ゴム製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2007年3月 5,314 399 375 176
2006年3月 4,578 366 353 209
2005年3月 4,057 251 251 147
2004年3月 3,449 233 211 112
2003年3月 3,154 172 159 75
2002年3月 2,907 98 85 10
2001年3月 3,582 315 336 189
2000年3月 3,140 313 300 141
株式情報(12/5現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
550円 4,554,696株 2,505百万円 6.1% 500株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12円 2.2% 54.89円 10.0倍 624.02円 0.9倍
※株価は12/5終値。発行済株式数は直近中間期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
朝日ラバーの2008年3月期中間決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
会社概要
 
車載用機器、携帯用通信機器、電子・電気機器、産業機器、文房具用・スポーツ用などに使用される工業用ゴム製品の製造・販売を中心に、医療・衛生用ゴム製品や、硬質ゴムと軟質ゴムの複合製品等も手掛けています。
 
<沿革>
1970年5月、有限会社朝日ラバーとして設立。76年6月、株式会社に改組し、彩色用ゴム製品「アサ・カラー」(現:ASA COLOR LAMPCAP)及び弱電用高精密ゴム製品「ホルダー」の生産を開始しました。89年11月、医療用ゴム製品の生産を開始。98年9月に、株式を店頭登録(ジャスダック上場)しました。
 
<事業内容と主要製品>
事業は、工業用ゴム事業、点滴用ゴム栓や腰部クッション等の医療・衛生用ゴム事業、及び複合製品等のその他事業に分かれます。 2008年3月期中間期の売上構成比は、それぞれ、88.2%、11.7%、0.1%。 工業用ゴム事業は、更に彩色用ゴム製品(売上構成比50.4%)、弱電用高精密ゴム製品(同 23.0%)、卓球のラケット用ラバー等のスポーツ用ゴム製品(同 4.8%)、その他工業用ゴム製品(同 10.0%)に分かれます。
 
彩色用ゴム製品
シリコーン材料をベースに独自の配合技術と調色技術を生かした、光デバイスに応用する製品をASA COLORブランドとして提供しています。ASA COLORは、従来製品の「アサ・カラー」及び「LEDホワイトキャップ」、「超透明シリコーンレンズ」などの製品に適合するブランドとして使用し、それぞれ、「ASA COLAOR LAMPCAP」「ASA COLOR LED」「ASA COLOR LENS」と製品名に変更することで、同社のコア技術のイメージを顧客に浸透させることを目的としています。
 
 
 
弱電用高精密ゴム製品
冷陰極蛍光管(CCFL)ホルダー、Oリング、電池用ゴム等があります。
 
 
医療・衛生用ゴム製品
今後の事業領域として大きな可能性を秘めた医療・介護向けに、ディスポーザブル用ゴム製品など衛生面での配慮と後処理を考えた環境に優しい製品づくりを念頭に事業を進めています。
 
ディスポーザブル用ゴム製品とは、使い捨ての点滴輸液バッグ用ゴム栓や真空採血管用ゴム栓等です。前者は、点滴用の薬液が入ったボトルの口に使用するゴム栓です。後者は、血液検査の際に使用される容器内が真空の採血サンプル保存管のゴム栓です。いずれも針を刺す際の抵抗が少なく、また針を抜いても漏れない再シール性に優れています この他、院内感染など医療事故防止に役立つ医療製品向けの開発製品の量産が一昨年から始まっています。
 
 
2008年3月期中間決算
 
<連結>
 
11月9日に中間期の業績予想を上方修正しており、修正値に沿った着地となりました。
期初予想との比較では、売上高が予想を超過した事及び独自の開発製品の歩留り改善による利益率の向上や販管費の抑制効果等が上方修正の要因です。中間純利益が期初予想を大きく上回ったのは、税効果により税負担が予想ほどではなかったためです。
 
前年同期との比較では、増収(中間期ベースで6期連続の過去最高更新)ながら白河新工場の稼動に伴う減価償却費の増加と人員増に伴う人件費の増加により各利益は2002年3月期中間以来の減益となりました。
尚、ASA COLOR LEDの仕入れ・販売で、前期までゴムキャップだけをLEDメーカーに販売していた商流について、今期から、青色LEDを仕入れてゴムキャップを接着して販売する方法に変更しました。この影響で売上高及び仕入高が約320百万円かさ上げされました。前年同期の基準による売上高は2,678百万円(前年同期比3.4%増)。また、売上総利益は影響を受けなかったものの、売上総利益率を低下させる要因となりました(前年同期の基準によると27.1%)。
 
<セグメント別売上高>
 
工業用ゴム事業の売上高は2,643百万円と前年同期比18.9%増加しましたが、医療・衛生用ゴム事業の売上高が351百万円と同2.6%減少。客先の在庫調整等により前期に量産がスタートした新製品のうちの一品種の売上が減少した事が響きました。尚、工業用ゴム事業の製品毎の状況は次の通りです。
 
彩色用ゴム製品  売上高1,511百万円(前年同期比35.7%増)
小型電球の彩色用ゴムとして使われるASA COLOR LAMPCAPの売上高は、車載機器光源のLED化の影響を受けて248百万円と前年同期比18.8%減少しました。一方、自動車の内装照明分野向けを主な用途とする自社開発製品ASA COLOR LEDの売上高は、積極的な拡販活動及び商流変更よる影響もあり、969百万円と同77.1%増加しました。尚、商流の変更による増収効果320百万円を除いた実質的な増収率は約20%(約1億円の増収)です。また、光透過率94.0%以上の特性を持つ超透明シリコーン製品の売上高は、携帯ゲーム機向け応用製品の受注が減少したものの、高輝度LEDと組み合わせたASA COLOR LENSの受注が好調に推移した結果、294百万円と同12.8%増加しました。
 
弱電用高精密ゴム製品
弱電用高精密ゴム製品は、電子機器、通信関連機器や情報関連機器向け電子部品のシール材などに使われていますが、主要顧客の海外生産シフトによる海外現地調達の増加や価格競争の激化など厳しい事業環境が続いています。この中間期は、二次電池ゴム製品が減少したものの、液晶テレビのバックライト(冷陰極間)用ホルダーが406百万円(同36.0%増)と伸長、売上高は688百万円と前年同期比7.4%増加しました。
 
スポーツ用ゴム製品
スポーツ用ゴム製品は、卓球用ラバーが主な用途です。この中間期は、新製品が伸びたものの、既存製品の減少が響き、売上高は142百万円と前年同期比3.8%減少しました。
 
その他の工業用ゴム製品
自動車関係の新製品が伸びたものの、既存製品が苦戦した事で、売上高は300百万円と前年同期比6.2%減少しました。
 
<減益要因>
昨年11月からの白河新工場の稼動に伴う建物の償却負担、ASA COLOR LEDやASA COLOR LENSの増産投資に係る償却負担、社員が30名増加した事による人件費の増加、更には、ASA COLOR LEDの単価下落等が減益の要因となりました。売上総利益ベースでの影響額は次の通りです。
 
 
<単体>
 
 
中間純利益が前年同期を上回ったのは、税効果会計の影響による税負担の減少が要因です。
 
<連結子会社の状況>
中国・東漢に生産拠点を有する朝日橡膠(香港)有限公司は、売上の伸び悩み(計画未達)、材料費の上昇、更には為替差損の発生等で13百万円の中間純損失となりました。
 
 
<連結貸借対照表>
 
 
設備投資の資金を借入金で賄ったため、短期借入金が増加しました。一方、減価償却費は前年同期比35%増の220百万円でした。
尚、設備投資額は314百万円。独自の開発製品の量産立ち上げや既存製品の増産に向けた設備投資を行いました。主なものは、ASA COLOR LED関連関連(150百万円)、ASA COLOR LENS ASA COLOR LENS関連(30百万円)等です。
 
2008年3月期業績予想
 
<連結>
 
 
売上高は6期連続の過去最高更新が見込まれ、各利益も過去最高益を更新する見込みです。
売上高のうち約6億円がLEDの仕入れによるもので、実質的な売上高は5,630百万円となり前期比約6%の増加です。当期純利益は繰延税金資産の取り崩しがなくなり、前期比41.6%の増加が見込まれます。
また、中間期に損失を計上した中国子会社は、下期に入り売上が回復。東莞工場の生産性も改善しており、中間期の損失を回収できる見込みです。
 
<単体>
 
 
<セグメント別予想>
 
 
彩色用ゴム製品の内、商流変更の影響もありASA COLOR LEDは前期比380百万円(前期比33%)の増収。海外メーカーを中心に受注が拡大しているASA COLOR LENSは同67%の増収が見込まれ、歩留まりの向上と生産性の改善効果も加わり黒字転換が見込まれます(前期は65百万円の損失)。また、一部の製品が客先の在庫調整の影響を受けていた医療・衛生用ゴム事業も売上が回復しており、通期では増収見込み。利益面でも目標に近づいているとの事です。
 
<設備投資及び減価償却費>
通期の設備投資は約560百万円を予定しています(中間期の設備投資実績は314百万円)。下期は約245百万円を予定しており、既存製品の効率化及び合理化のための投資が中心となり、特に医療製品関連に約140百万円を投じる考えです。また、減価償却費は前期比19%増の464百万円を予定しています。
 
<独自開発製品の売上推移>
 
 
2004年3月期には477百万円であった独自開発製品の売上が順調に拡大しており、今期は3,400百万円が見込まれます。
 
<主な独自製品の状況>
彩色用ゴム製品
(1)ASA COLOR LED
ASA COLOR LEDの今期の売上高は前期比約980百万円(85.5%)増の2,140百万円を計画しています。
幅広い色調範囲とLED単独では困難な中間色を実現できる事が同社製品の強みで、顧客の要求する色と光をピンポイントで再現。肉眼では識別できないくらいバラツキをなくしており、日系の自動車メーカー、電装品メーカーから高い評価を受けています。
今期は、青色LEDの仕入増分(600百万円)を除いた実質ベースでは前期比約380百万円(33%)の増収と、売上の伸びが鈍化する見込みですが、これは単価の低下と下期に予定していた新製品の立上げの遅れが原因です。ただ、単価の低下には歯止めがかかりつつあり、また、今期末には新製品の生産がスタートする見込みです。また、自動車の照明分野等で新たな動きが出てきているそうです。
 
 
また、CEATEC展示会に出展し、一般照明市場への参入に向けた取り組みを開始しました。CEATEC(Combined Exhibition of Advanced Technologies)展示会とは、(社)電子情報技術産業協会(JEITA)、情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)、(社)コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)の3団体が、関係官庁、関係団体等の協賛・協力のもと、開催する最先端IT・エレクトロニクスの総合展示会です。毎年秋に開催され、2007年は10月2日(火)から6日(土)までの5日間にわたり、幕張メッセで開催されました。
 
(2)超透明シリコ-ン
超透明シリコ-ンの応用製品には、液晶向け透明シートとASA COLOR LENSがあり、今期の売上高は前期比7.4%増の590百万円を計画しています。
 
①液晶向け透明シート
携帯電話やゲーム機等の液晶画面を見やすくするため(視認性の向上)に使われる透明ゴムシートです。今期の売上高は同20.1%減の300百万円を計画。顧客の在庫調整の影響のため減収となりますが、下期以降、携帯ゲーム機の新機種向けの受注が増加しています。
 
②ASA COLOR LENS
300℃に近い高温でも性能が全く変化しないシリコーン樹脂製のレンズです。今期の売上高は同67.0%増の290百万円を計画。前期スタートした量産品が好評で、携帯電話向けのLEDとのセット品や自動車のセンサー向けで国内外のLEDメーカーから受注が増加しています。
 
 
開発製品  ラバーファントム
ラバーファントムとは、電波測定用の人型検体(ファントム)です。電波を発信する様々な機器の開発に際し、人体への影響など電波環境を測定する機関向けの製品で、①単独で直立、②電気特性の調整が可能、③硬さの調整が可能、④分子構造上安定した素材、⑤手首、腕などパーツ毎の取替えが可能等の特徴を挙げる事ができます。2008年4月からの量産化を予定しており、現在、体制の整備を進めています。
 
北海道大学大学院と同社の100%子会社(株)ファインラバー研究所が共同研究を続けていたもので、昨年の後半から製造に着手しました。シリコーンゴムとカーボンナノチューブを主原料としており、従来に無い安定性を実現しています。
人間の体は筋肉と脂肪で電気特性が異なっており、また、臓器によっても異なるそうです。このラバーファントムは、主原料のシリコーンゴムやカーボンナノチューブ、或いは導電性のカーボンブラックの配合を変えることで、様々な電気特性を再現する事が可能です。また、全身の人体モデルはもちろん、上半身、下半身、頭等、部位毎の提供も可能です。
 
 
取材を終えて
この中間期は、新製品や開発製品、更には生産の自動化等への取組みを強化した事で多くのロスが発生、増産に向けた設備投資や人員の増強も利益の圧迫要因になりました。来期以降に顕在化するであろう、これら先行投資の成果に期待したいと思います。
また、ラバーファントムというユニークな開発製品も登場しました。携帯電話やコンピュータネットワークの普及、更には将来のユビキタス社会の到来により、電波(電磁波)の利用は今後更なる増加が予想されます。このため、電波と人体との関係を調べる事の必要性も高まるものと思われ、ラバーファントムのような電波測定用人体モデルの需要拡大が期待できます。ちなみに、これまでは、生理食塩水をボトルに入れたようなものが使われていたそうで、全身の人体モデル等は無く、高価で重く、しかも経時変換するといった問題がありました。これに対して、同社の製品はシリコーンの高い安定性に加え、全身の人体モデルはもちろん、上半身、下半身、頭等、部位毎の提供も可能といった充実振りです。