ブリッジレポート
(4829) 日本エンタープライズ株式会社

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ブリッジレポート:(4829)日本エンタープライズ vol.1

(4829:東証2部) 日本エンタープライズ 企業HP
植田 勝典社長
植田 勝典社長

【ブリッジレポート】日本エンタープライズ vol.1
(取材概要)2007年8月14日掲載
「携帯向けコンテンツプロバイダーの多くが苦戦を強いられる中、ソリューションをけん引役に同社の業績は拡大が続いています。自らがコンテンツを提供・・」続きは本文をご覧ください。
企業基本情報
企業名
日本エンタープライズ株式会社
社長
植田 勝典
所在地
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-17-8
決算期
5月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2007年5月 3,677 774 783 447
2006年5月 3,416 694 688 418
2005年5月 3,018 587 570 348
2004年5月 1,958 205 168 226
2003年5月 1,752 134 131 58
2002年5月 1,704 51 53 23
2001年5月 1,417 301 262 126
株式情報(7/26現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
25,200円 375,800株 9,470百万円 18.6% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
350円 1.4% 1,303.89円 19.3倍 6,712.33円 3.8倍
※株価は7/26終値
 
日本エンタープライズの2007年5月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
会社概要
 
モバイルコンテンツ事業を展開しています。音楽やゲーム・動画などのコンテンツを制作し携帯等を通じて配信するコンテンツサービスと、企業のコンテンツ制作・運営や業務効率化のためのシステム構築等を手掛けるソリューションが2本柱です。
また、海外展開にも力を入れており、特に中国においては子会社を設立して、現地有力企業との提携によるコンテンツ配信など多角的に事業を進めています。
 
<沿革>
1989年にパソコンの販売、及びソフトウェアの開発・販売を目的として設立され、その後、携帯電話やPHSの販売、携帯電話向けコンテンツ制作へと展開し業容を拡大。2001年2月にナスダック・ジャパン(現ヘラクレス)へ、2007年7月に東証2部へ株式を上場しました。
 
<事業内容>
コンテンツサービス
携帯電話等のキャリア(移動体通信事業者)が運営するi-mode、EZweb、Yahoo!ケータイ、CLUB AIR-EDGEといったインターネット接続可能な携帯電話の公式サイトにコンテンツを提供し、月額課金あるいはダウンロード課金制により、その代金をキャリアから受取っています。
同社の代表的なコンテンツとしては、「うた&メロ取り放題」、「うた&メロ取り放題フル」といった音楽系コンテンツ、総合ゲームコンテンツ「最強!GAME王国」及び総合デコレーションメールコンテンツ「デコデコメール」などの公式コンテンツがあります。
 
ソリューション
自社コンテンツを提供している上記のコンテンツサービスとは違い、ソリューションでは他社コンテンツの制作・運営、企業の業務効率化に役立つシステムの構築を行っており、携帯電話はもちろん、パソコン等のあらゆるメディアに対応したソリューションを提案しています。
 
2007年5月期決算
 
<トピックス>
5期連続の増収・増益を達成しました。コンテンツサービスではリッチコンテンツの拡充、ソリューションではクライアントからの受注が継続した他、各種の新規取り組みも進展、海外では中国の3G(第三世代)コンテンツ時代の到来へ向けた体制の整備を進めました。
 
コンテンツサービス
・音楽 着うたフル(うた&メロ取り放題フル)に参入
・ゲーム 乙女ゲームの参入、人気ゲームサイトの3キャリア展開
・画像・ツール UI力スタマイズの拡大
ソリューション:持続的拡大
・クライアントからの受注継続
・企業独白携帯サービスの展開 ~トヨタオリジナル携帯への「無料コンテンツ倉庫」提供~
・自社コンテンツの2次利用拡大
・店頭アフィリエイトのシステム確立及び契約店舗数の拡大
・一般サイトヘの参入
海外
・コンテンツ配信の拡大
・瑞思豊通の設立申請
・江南大学と大阪電気通信大学との教育事業の提携
 
<連結業績>
 
ソリューションをけん引役に増収・増益となりました。
 
<第4四半期の状況>
 
第3四半期終了時点で通期の利益計画の達成率が85%と好調であったため、第4四半期はサイトリニューアル、一般サイト参入、大型の物販等で、経費の積み増しを行いました。2008年5月期に向けた先行投資です。
 
<サービス別売上高>
 
*ソリューション売上高の推移
 
2007年5月期の業績を牽引したソリューションですが、既存大手クライアントのモバイルサイト構築案件が拡大、サイト運用業務、ユーザーサポート業務、サーバ保守管理業務、携帯用Flash・着うた・着メロ・各種画像制作、BREW開発支援業務等での積極的な営業展開の成果も現れました。
コンテンツサービスが前期の実績を下回りましたが、事業の軸足は、自社サイトでコンテンツを提供するコンテンツプロバイダーから、同社のコンテンツを顧客に提供したり、顧客のコンテンツ制作を受託したりといったソリューションにシフトしつつあります。
 
国内事業の概況と今後の展開
 
<モバイルコンテンツ事業展開図>
 
<コンテンツサービスの概況>
2007年5月期は、画像・ツール分野(ジャンル別売上概況の赤線)が堅調に推移したものの、音楽分野(同 黄線)が減少、ゲーム分野(同 青線)も第3四半期に回復した後、減少に転じました。キャリア別では、マルチキャリア化を進めた結果、NTTドコモ(キャリア別売上概況の青色)やソフトバンク(同 グレー)の比率が上昇しました。
 
 
1.公式サイト:サウンド
2007年5月期は、「着うた」から「着うたフル」へシフトする市場動向に対応して、「着うたフル」のサービス拡大を図りました。
2008年5月期は、「着うたフル」のプロモーションを強化する他、NTTドコモ向け「うた・ホーダイ @LOUNGE RECORDSの拡大を図ります。「@LOUNGE RECORDS」とは、新機種発売に合わせて5月25日にスタートした定額制の新しいサウンド展開です。高品質ながら、月額取り放題で税込み315円。退会すると、それまでにダウンロードした曲が再生できなくなるサブスクリプション方式を採用しています。
 
 
2.公式サイト:ゲーム
「最強!GAME王国」、「らぶ★乙女ゲーNo.1」、「EZオセロ&定番ゲーム」等のコンテンツがあります。2007年5月期は、マルチキャリア戦略の下、ゲーム数の拡大はもちろん、ターゲット(コア&広い層)を選定した上でのサービス拡大を図りました。2008年5月期も引き続きマルチキャリア戦略の下、ゲーム数の拡大を図ると共に、ターゲット毎のプロモーション展開を図ります。
 
 
3.公式サイト:画像・ツール
画像・ツールの分野は、今後、対応機種の普及等で大きな成長が期待できる分野です。同社が提供するコンテンツとしては、デコレーションメール「デコデコメール」、UIカスタマイズ「アレンジ&取り放題」等があります。2007年5月期はマルチキャリア展開を進める事で、市場の拡大を享受できる体制の整備を進めました。2008年5月期も引き続きマルチキャリア戦略を進める他、コンテンツの充実やプロモーションの強化に取り組みます。
 
<コンテンツ&ソリューション>
1.サウンド展開
ハイクオリティなカバーアレンジ楽曲(原盤配信に比べて利益率が高い)の制作・配信を計画しており、8月にCDを発売する予定です。
 
 
また、上記のカバーアレンジ楽曲をレーベル化します。携帯コンテンツプロバイダー初の試みですが、リアル店舗での販売と連動させる事で相乗効果を高めていく考えです。
 
 
<ソリューションの概況>
ソリューション
企画・開発・構築、ユーザーサポート・デバッグ・検証等を一括して提供、自社コンテンツの2次利用にも取り組んでいます。
 
ソリューションコンテンツ
既存クライアントにおける業務拡大を図ります。
 
広告
キャリアメニューの集客力に依存しない独自の集客が可能な一般サイトにおいて、「無料!うたメロ♪ゲーム's」のサービスを開始しました。目標会員数は、10万人規模。コンテンツの成約件数が月間10,000件規模の有力な集客媒体に成長しつつある店頭アフィリエイトを活用する事で契約件数の拡大を図ります。
 
コマース
デコメールのキャラクターである「ぺそぎん」のぬいぐるみをクレーンゲーム機向けに提供し、全国展開しています。今後ライセンス事業へ発展させて行く考えです。
 
1.今後の受託領域
携帯がメディアとして認識されつつある事を踏まえて、「ケータイ世代」を対象に展開している企業や「ケータイ世代」を開拓したい企業に対して、売上拡大や集客向上に貢献できるモバイルソリューションを提供していきます。
 
 
海外事業の概況と今後の展開
 
<中国の携帯電話市場動向>
中国の携帯電話加入件数は拡大トレンドが続いており、3G(第三世代)時代が徐々に具現化しつつあります。
 
 
<中国での事業展開>
中国において、日本エンタープライズグループとしてモバイルコンテンツ事業、教育事業を推進して行く考えです。
 
 
1.モバイルコンテンツ事業
モバイルコンテンツ配信を担う「北京業主行網絡科技有限公司」が、IVR(音声コンテンツ)を中心としたSMS(ショートメッセージサービス)、WAP(文字コンテンツ)、Java等のコンテンツ配信を行い、「因特瑞思(北京)信息科技有限公司」がコンテンツ制作等を手掛けます。
 
 
また、北京オリンピック・上海万博など歴史的イベントの開催により多くの観光客の入国が予想される事から、「観光地図情報サービス」の提供事業を計画しています。豊田通商株式会社及び北京図新経緯導航系統有限公司と合弁会社を設立する計画で、その準備を進めています。
 
 
この他、中国拠点をUIカスタマイズ、電子書籍、デコメール、FLASH等の大量生産拠点(デジタル化ファクトリー)としても育成していく考えです。
 
2.教育事業
デジタルアニメーション関連において、2012年に初の卒業生を輩出すべく、江南大学(中国)と大阪電気通信大学(日本)との提携による人材育成事業を進めています。
 
 
更に、①3G対応学部新設への協力、②実践教育を意識したインターンシップの展開、③動漫、ゲーム分野におけるイベント事業への参画、④産学連携によるコンソーシアムの設立・運営等を計画しています。
 
2008年5月期業績予想
 
<事業方針>
1.コンテンツサービス(&コンテンツ派生ソリューション)
音楽コンテンツの本格展開、コンテンツ卸事業の強化(二次利用の促進)、及び一般サイト(広告モデルサイト)の本格展開を図ります。
 
(1)音楽コンテンツの本格展開
音楽コンテンツでは、着うたから着うたフルヘのシフトに伴い、着うたフルの「取り放題」モデルを拡大し高品質なカバーアレンジ楽曲を提供。公式サイト月額課金を軸に、パッケージ販売、新サービス等を展開し相乗効果を高めます。
 
(2)コンテンツ卸事業の強化(二次利用の促進)
Flash素材、デコメ素材、UIカスタマイズ素材等、自社制作素材のコンテンツ卸事業を強化(二次利用の促進)します。
 
(3)一般サイト(広告モデルサイト)の本格展開
一般サイトで会員増を図り、自社コンテンツへの誘導、広告モデルの展開、他社コンテンツとの協業推進に取り組みます。
 
2.ソリューション
企業における携帯を活用したビジネス展開の余地は大きく、今後も需要の拡大が期待できます。「企業独自の携帯電話サ-ビス」の実現を視野に、コンサルティングからサイト構築、コンテンツコーディネート、運営サポート等のサービスを一括して提供していきます。また、店頭アフィリエイト事業の拡大により自社コンテンツの販路を広げると共に、携帯電話販売店との協業ネットワークを活かした新ビジネスの展開を図ります。更に、「ぺそぎん」等の自社キャラクターのライセンス事業を展開していく考えです。
 
3.中国
コンテンツ配信ビジネスの安定化に取り組むと共に、10月の3Gサービス開始に合わせて3Gコンテンツの配信を開始します。また、中国拠点のデジタルファクトリー化を進め、日本向けデジタルコンテンツ制作(電子書籍、UIカスタマイズ、デコレーションメール、ゲーム)の基盤拡充を図ります。
 
<連結業績>
 
引き続きソリューション事業をけん引役に増収・増益が見込まれます。
売上の内訳は、コンテンツサービスが2,360百万円、ソリューションが1,570百万円。海外事業は101百万円を予想しています(コンテンツサービス及びソリューションに含まれる合計額)。
 
<株主還元>
同社は、業績に応じた安定的な株主還元を実施して行く考えです。
2007年5月期は、1株当たり20円の増配と東証2部上場記念配30円を含めて年350円の配当を実施しました。2008年5月期は、記念配30円を落とすものの、30円増配する事で、350円を維持する考えです。
 
 
 
取材を終えて
携帯向けコンテンツプロバイダーの多くが苦戦を強いられる中、ソリューションをけん引役に同社の業績は拡大が続いています。自らがコンテンツを提供するだけでなく、他社のコンテンツビジネスを支援する力があり、そのサービスを提供する顧客基盤を持っている事が同社の強みであると思われます。
携帯電話の契約加入台数は、2007年5月末で9,758万台と前年同月末比5.4%の増加にとどまりましたが、第三世代携帯電話端末の契約者数については同42.6%増の7,314万台と高い伸びを示しました。高速・高機能な情報インフラの普及により、今後、付加価値の高いコンテンツに対するニーズが高まるものと思われます。コンテンツの高付加価値化はコンテンツ提供者の負担増をも意味しますから、企業のコンテンツビジネスを支援する同社にとっては、ビジネスチャンスの到来です。