ブリッジレポート
(2468) 株式会社フュートレック

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ブリッジレポート:(2468)フュートレック vol.5

(2468:東証マザーズ) フュートレック 企業HP
藤木 英幸 社長
藤木 英幸 社長

【ブリッジレポート】フュートレック vol.5
(取材概要)2007年6月26日掲載
「同社は2005年12月27日にマザーズ市場へ新規上場したばかりの若い企業です。ただ、06年3月期、07年3月期実績ともに増益を達成するなど、安定した利益計上が可能・・・」続きは本文をご覧ください。
企業基本情報
企業名
株式会社フュートレック
社長
藤木 英幸
所在地
大阪市淀川区西中島 6-8-31
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2007年3月 1,253 249 256 162
2006年3月 1,443 173 165 99
2005年3月 1,059 69 79 33
2004年3月 907 9 6 -1
2003年3月 736 12 12 3
2002年3月 435 17 34 29
株式情報(6/4現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
193,000円 22,940株 4,427百万円 8.8% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
1,200円 0.6% 6,316.00円 30.6倍 79,730.66円 2.4倍
※株価は6/4終値
 
フュートレックの2007年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
会社概要
 
当社グループは、当社及び子会社の(株)インストームにより構成されており(4月には(株)シンフォニックを設立)、大規模半導体集積回路(LSI)や半導体素子の開発・設計・製造・販売を主な事業としています。売上分類としては、前期までは①音源部門、②カード部門、③受託開発部門に区別されていましたが、今期からは積極的に育成している音声認識事業を分離独立し、①第一事業部(音源事業)、②第二事業部(受託開発・カード事業)、③第三事業部(音声認識事業)の新たな3分類で事業展開していく方針です。
 
<社名の由来>
社名の「フュートレック(FueTrek)」の"FUE"は、『Fun(楽しく)』『Useful(便利な)』『Easy(簡単な)』を実現する新しいモバイル機器のサービス・商品を企画・開発する――という理念が由来です。魅力的なアプリケーションと最先端の技術の提供を通じて、人々の生活をより快適に、より豊かにしていくことを目指し、社会貢献することを経営の基本方針としています。
 
<2007年3月期の事業区分>
音源部門…今や、携帯電話に不可欠な存在となった「着信メロディ」の音源機能をもつLSI設計データ/組込みソフトウエアを、通信キャリアや半導体ベンダー等へ供給しています。主に初回契約時のイニシャルフィーと、出荷台数に応じて支払われるロイヤルティが同社の収益源です。2005年1月からはNTTドコモとライセンス契約を締結し、FOMAなどの多機種に渡って採用されているほか、また海外でも半導体ベンダーを通じて海外端末にも搭載されています
 
 
カード部門…カード部門では、内部メモリーとしてマスクROMを使用したコンテンツ入りROMカードの製造販売とコンテンツをメモリーカードに書き込む事業を主な事業としています。コンテンツ入りROMカードとコンテンツのメモリーカード書込み事業は、教育市場と携帯電話市場向けがあり、教育市場向けでは、複数の大手模擬試験業者から「英語リスニング試験用メモリーカード」の販売・書込みサービスとオーサリング(文字や画像、音声、動画などのデータを編集して一本のソフトウエアを作る作業)を受注しています。
 
 
受託開発部門…創業時から蓄積されたLSI設計技術を活かし、多様なニーズに応える「システムLSI設計技術」及び「ソフトウエア開発技術」を行っています。当部門の主な役割は、自動車関連のアナログセンサー分野や携帯機器の研究開発型試作分野で、付加価値の高いエンジニアリングサービス提供を目的としています。この研究開発型試作・受託分野から、次世代を担う新たな技術開発商品として実用化へ向けて立ち上がった「音声認識」事業は、今期から新たな独立事業部へと成長しています。
 
 
<目標とする経営指標>
同社グループは、技術革新の早い携帯機器業界などにおいて、豊かで快適な生活を提供するサービス・商品を開発し続ける考えです。また、そのために必要な研究開発を実行しうる利益確保に努めています。目標にすえる経営指標を、本業での収益を測る経営指標である「売上高営業利益率」としています。付加価値の高い事業を継続的におこなうと共に、低コスト経営を実践して、高い売上高営業利益率を維持していく方針です。また、株主価値の向上のため「1株当たりの当期純利益」の向上も重視する経営指標に掲げています。
 
2007年3月期決算
 
 
1.売上高
音源部門…同事業の売上高は6億8120万円(前期比9.5%減)となりました。国内市場の音源搭載台数は、NTTドコモの搭載機種増加により、前期から434万4000台増加し、1230万5000台となりましたが、海外市場では78万2000台減少し、238万3000台にとどまりました。国内外を合わせた音源搭載総数は、356万2000台増加しましたが、計画値(国内市場1374万4000台、海外560万台)を下回る結果となりました。
 
カード部門…同事業の売上高は1億3369万円(同73.8%減)となりました。この主な要因は、英語リスニング用模擬試験ビジネスで、メモリーカード本体が複数年使用のため、前期はカード本体の売上が発生しない年で、書込みサービスのみとなったことです。売上高の内訳は、模擬試験ビジネスが1億1832万円、その他が1536万円となりました。
 
受託開発部門…同事業の売上高は、4億3875万円(同143.4%増)となりました。前期は通常の受託開発業務に加え、大型の研究開発案件があり、売上高が大幅に増加しました。
 
 
2.各利益と諸経費
売上高は減収となったものの、一方で、売上総利益は前期6億1370万円から今期7億1938万円に増加、販管費を4億3991万円から4億7004万円への増加で抑えた効果もあって、営業利益は2億4900万円(前期比43%増)に大幅増益を達成しました。目標に設定する売上高営業利益率で見ても11%から19%へ大幅に向上させています。この改善が経常利益2億5600万円(同54%増)、当期純利益1億6200万円(同63%増)という大幅増益に繋がりました。これによって、1株利益は7074円(前期実績4704円)に増加しています。
 
2008年3月期業績予想
 
 
<概況>
08年3月期について、会社側では、積極的な研究開発及びニュービジネスの展開に注力し、現在の主力製品の「音源IP」に続く次代の主力事業として「音声認識」、「VAD(バーニアADコンバーター)」の収益化に取り組む方針です。収益化への道筋のついた「音声認識」事業を08年3月期から「第3事業部」へと分離独立させました(音源部門は第1事業部へ移行、受託開発・カード部門を第2事業部へ統合)。
また、この4月に新設した子会社の(株)シンフォニックでは、将来的に自動車業界を対象とした事業拡大に向けて、基盤づくりに取り組むことも明らかにしています。
 
上記の事業活動に伴う次期業績見通しは、連結売上高15億7300万円(前期比25.5%増)、営業利益2億5500万円(同2.4%増)、経常利益2億6100万円(同2.1%増)、当期純利益1億4400万円(同10.7%減少)を予想しています。
 
売上高は第一事業部(音源事業)で、携帯電話への音源搭載台数の増加を見込んでいますが、利益面では営業利益、経常利益が微増、当期純利益は減益を見込んでいます。この要因として、同社が「技術開発会社」から、技術開発力をベースとした「技術サービス会社」への変化を目指して、特に上半期において「ひと」「もの」「かね」の各分野に資本を注力していく方針としたことが挙げられます。
 
「ひと」の分野では、6名(うち技術者4名)の採用を予定しています。同社では、新たな技術開発をし続けるための優秀な技術者の確保と、企業マネジメント力を高めるための販売管理部門の増員が不可欠と考えており、企業規模の拡大に必要な販売管理経費の増加も見込んでいるためです。「もの」の分野においては、有用な技術開発を推進するための外注研究開発費を増額する方針です。また、「かね」の分野については、業績成長に必要と考える、技術開発や市場獲得のための新会社設立、資本提携などに出資を行っていくとしています。
 
当期における、「ひと」「もの」「かね」の各分野についての費用増加額は下記のとおりです。
 
 
<各事業分野の計画>
第1事業部(前期まで音源部門)…売上高は、10億1800万円(前期比3億3700万円増)を見込んでいます。国内市場では、前期後半からNTTドコモと音源IPライセンス契約に基づいて、ロイヤルティ収入を得る体制となっており、今期はNTTドコモからのロイヤルティ収入が期初から見込める体制となりました。音源搭載台数を2075万1000台(前期比844万5000台増)を予想しています。一方、海外市場では452万台(同213万6000台増)を予想しています。
 
 
第2事業部(前期までの受託開発部門・カード部門)…売上高は、3億700万円(前期比2億6400万円減)を見込んでいます。受託開発部門は、事業部門制度導入に伴い、従来の受託開発部門に含まれるべき「音声認識」事業を別事業部として分離したことで減収となる見込みです。また、当事業部の開発商品であるVAD(バーニアADコンバータ)は、今期も引き続き、よりユーザーのニーズを掘り下げ市場ニーズに即した商品開発を推進し、事業の早期収益化を図っていく方針です。一方、カード部門では、今期も英語リスニング検定試験ビジネスを中心に事業を展開していく方針ですが、使用者側のカードの耐用状況、受験者経費負担軽減などから前期に引き続き継続してメモリーカード本体をリサイクルして使用されることとなったため、今期はカードの全面的な買換需要の発生は見込めず、前期実績程度の売上高を予想しています。今後は、売上高の標準化を図るべく、仕入額を反映しない方策を検討していくとしています。
 
 
第3事業部(音声認識)…今期は2億4600万円の売上高を見込んでいます。同事業部では、06年12月の(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR)との業務提携契約締結で、同契約に基づくビジネスが今下期辺りから事業の収益化が見込まれています。音響関連技術に音声認識技術を融合させた商品、サービスで、音源IPに次ぐ商品として事業収益化を積極的に推進していく方針です。
 
 
 
ニュービジネス(自動車業界向け事業)…従来から受託開発部門で行っていた自動車業界向けの技術開発を踏まえて、この4月11日に、北九州の学研都市内にソフトウエアの技術開発、技術者の派遣を事業内容とする子会社を立ち上げました。九州各地には、大手自動車メーカーが、アジア展開の拠点として、続々進出してきており、ソフトウエア技術、ソフトウエア技術者の需要が非常に大きいものと会社側では予想しています。今期は先行投資から赤字計上を見込んでいますが、産学連携の拠点で、北九州市の第三セクターが運営する同地で、3年後の黒字化に向けた基盤づくりに邁進していくとしています。
 
<配当予想>
利益配分の方針としては、将来の事業展開と経営体質強化のために必要な内部留保の確保を図るとともに、株主への利益還元を、経営の重要項目と位置付け、積極的に実施していくことを基本方針としています。今期は1株当たり年間1200円を予定(期末一括)。配当水準については配当性向の目標値を20%に設定しています。内部留保金につきましては、今後予想される経営環境の変化に対応すべく、今以上にコスト競争力を高め、市場ニーズに応える開発体制を強化し、更にはグローバル戦略の展開を図るために、有効投資していくとしています。
 
中期展望
 
前述のように、同社はこれまでの「技術開発型会社」から、「技術開発サービス型会社」へと進化していくことを目指しています。
従来及び現在のビジネスフィールドは、ハード音源IPの開発や、センサー分野の受託、VADの開発等、半導体を中心としたハードウェアの分野と、ソフト音源や分散音声認識など、ソフトウェアの分野です。
これに加え、今後はこれまでに培ってきたハード・ソフトの技術をベースに、異業種も視野に入れたサービス分野へ参入することにより、一段と大きな成長を目指すとともに、社名の由来となっている「楽しく(Fun)・便利(Useful)・簡単(Easy)」を一層進化させ、より豊かな生活の実現を通して、社会貢献していきたいと考えています。
 
 
今後の成長の中心となるのは、やはり第3事業部であり、また様々な開発案件の中から事業の柱となりうるものについては、第4事業、第5事業といったように、切り出して育成していく考えです。
 
 
取材を終えて
同社は2005年12月27日にマザーズ市場へ新規上場したばかりの若い企業です。ただ、06年3月期、07年3月期実績ともに増益を達成するなど、安定した利益計上が可能な筋肉質の企業体質をしています。上場間もない企業には珍しく、配当も実施していることから、新興ベンチャー企業には珍しく(?)、律儀な会社と捉えることもできるでしょう。
これは時期の企業計画を策定する際にも共通しており、上場来2期連続して期初の利益計画を上ブレて着地するなど、藤木英幸社長自ら「コミット(宣言)した利益見通しは必達目標」と断言しています。08年3月期を「変革の年」と位置づける同社では、今後の取り組みでも、決して無理なく、着実な道を辿ってゆくのではないでしょうか?