ブリッジレポート
(6890) 株式会社フェローテックホールディングス

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ブリッジレポート:(6890)フェローテック vol.16

(6890:JASDAQ) フェローテック 企業HP
山村 章 社長
山村 章 社長

【ブリッジレポート】フォローテック vol.16
(取材概要)2007年6月19日掲載
「かつては利益の大半を稼ぎ出したコンピュータシールの製品寿命が終息し、2007年3月期はほとんど売上・利益への貢献がありませんでした。しかし、業績は・・」続きは本文をご覧ください。
企業基本情報
企業名
株式会社フェローテック
社長
山村 章
所在地
東京都中央区京橋 1-4-14
決算期
3月
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2007年3月 32,517 2,288 2,081 1,703
2006年3月 23,946 1,210 1,040 708
2005年3月 21,105 1,762 1,456 633
2004年3月 15,000 615 -177 -645
2003年3月 12,845 111 -626 -899
2002年3月 14,775 916 984 -357
2001年3月 16,435 2,665 2,561 1,644
2000年3月 7,988 892 629 288
株式情報(6/13現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
918円 18,889,406株 17,340百万円 9.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
10円 1.1% 71.50円 12.8倍 956.23円 1.0倍
※株価は6/13終値、ROEは前期実績
 
フェローテックの2007年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
会社概要
 
半導体製造装置やフラットパネル・ディスプレイ(FPD)製造装置の部品、半導体材料、温度調節に使われるサーモモジュール等の製造・販売を行っています。部品や技術というカタチでサービスを提供しているため、目に触れる機会はありませんが、パソコンや携帯電話、液晶やプラズマ等の大型テレビをつくるときに、同社の技術が活かされています。
 
 
もともとは磁力を持つ液体である磁性流体応用製品のメーカーでした。その代表例が、真空シールであり、ハードディスクドライブ等で使われていたコンピュータシールです。いずれもOnly Oneの製品であることはもちろん、超精密部品であるため、金属加工や表面処理等で高い技術が要求されます。この技術を中国に持ち込み、現地の安価な労働力と融合させたのが、事業セグメントの一つである受託生産事業です。また、今後の市場拡大が期待できる太陽電池関連の事業に取り組んでいます。太陽電池の材料となるシリコン単結晶の引上装置は、真空シールや石英製品等が主要部材として使われ、これまで蓄積してきた技術やノウハウが活かせる分野です。
 
<事業内容>
 
1.装置関連事業
半導体及び液晶・PDP・有機ELなどFPD製造装置向け製品を取り扱っています。主な製品には、磁性流体技術を応用した「真空シール」、半導体製造工程に不可欠な「石英製品」、半導体材料のシリコン製品等があります。
 
真空シールとは、
回転運動を伝え、気密空間を守る部品です。半導体ウェーハや液晶パネルの製造工程では、超精密な成膜加工を実現するため、密閉された真空空間で加工が行われています。空気、ガス、蒸気、微細粒子などの不純物が紛れ込むことは、回路パターンの品質を落とすことにもつながりかねないからです。真空シールは、加工が行われる密閉空間を外部から隔離するとともに、密閉空間の作業に必要な様々な運動を伝える役割も担っています。
 
石英製品とは、
純度99.99%のピュアで、熱や化学反応に強いガラスです。半導体製造プロセスでは、高熱処理や化学処理が頻繁に行われます。純度99.99%のシリカガラスからなる石英製品は、高温作業に耐え、活性ガスにも化学変化を起こしません。そのため、シリコンウェーハの薄膜生成・搬送・洗浄などの工程でウェーハを固定する部材、あるいは洗浄槽として大量に用いられています。当社では、原材料の調達から製造・加工、販売までを行い、半導体製造工程に必要なあらゆる石英製品をラインアップしています。
 
2.電子デバイス事業
情報通信機器・自動車・エレクトロニクス機器などハイテク産業分野向けの製品を取り扱っています。主な製品は、情報通信・エレクトロニクス・バイオなど幅広い分野で活用される冷熱素子「サーモモジュール」や同社のコアテクノロジーでもある磁性流体及びその応用製品である磁性流体シールで、基板実装等も手掛けています。
 
サーモモジュールとは
電流の流れで、対象物を温めたり、冷やしたりする半導体冷熱素子です。N型とP型という異なる性質を持った半導体素子に、直流の電気を流すと熱が移動し、一方の面が吸熱(冷却)し、反対の面が放熱(加熱)するというペルチェ効果を応用したものです。電源の極性を逆にすると吸熱と放熱を簡単に切り替えることができます。
 
3.CMS事業
中国における生産能力、オペレーションノウハウを活かした事業です。同社の生産対応力と同社に生産を委託するパートナー企業がもつ優位性のある技術を融合することで、グローバル市場において競争力をもった製品を創出する新たなビジネスモデルの構築に努めています。現在の主力事業は、個別半導体用小口径シリコンウェーハの受託加工です。東芝セラミックス(株)とのパートナーシップにより、小口径シリコンウェーハ用生産設備及び加工技術を上海工場へ移管。この他、装置部品洗浄、シリコン単結晶引上装置製造、工作機械製造等を手掛けています。
 
<グループ>
企業グループは、同社の他、連結子会社16社、持分法適用会社6社、及び非連結子会社2社。本社機能と生産技術等の開発を担う同社(単体)は、純粋持株会社に近い性格を持っています。
 
 
2007年3月期決算
 
<連結>
 
半導体及びFPD製造装置向けの真空シールや石英製品に加え、半導体向けシリコン製品、更には自動車温調シート向けサーモモジュールや新製品の太陽電池用シリコン単結晶引上装置等、事業全体が順調に拡大しました。 好業績を反映して、1株当たり配当は2円の増配と中国進出15周年の記念配2円を加えた12円とする考えです。
 
<セグメント別別動向>
 
装置関連事業
半導体メーカー・FPDメーカーの積極的な設備投資の継続と生産の拡大を受けて、真空シール、石英製品、EB-ガン等が伸長。太陽電池向けを中心に単結晶シリコン(シリコン製品)も拡大しました。原材料高が続いているものの、増収に伴う量産効果とコストダウン努力で吸収し、営業利益は2,014百万円と前期比76.2%増加しました。
 
電子デバイス事業
サーモモジュールが自動車温調シートや半導体向けに伸長。CCD カメラ、家電製品、レーザー機器用途での採用が拡大する等、用途も広がっています。オーディオスピーカー向けが中心の磁性流体は、5.1チャンネル・サラウンドシステムでの採用が進展しました。利益面では、新製品FFB(磁性流体動圧軸受)の評価用サンプル出荷や関連事業における開発費用が引続き負担となっているものの、増収に伴い営業損益が黒字転換しました(営業利益64百万円)。
 
CMS事業
中国工場への設備移管が完了したシリコンウェーハ加工が拡大した他、太陽電池用シリコン単結晶引上装置、装置部品洗浄及び工作機械製造も堅調に推移しました。ただ、品目構成の変化で営業利益は266百万円と前期比42.8%減少しました。
 
<貸借対照表>
 
売上の拡大に伴い売上債権、買入債務が増加。中国における単結晶引上装置等の新工場完成やサーモモジュールの増産投資により、有形固定資産が増加しました。一株当たり純資産は956円となりました(前期末は857円)。
 
<キャッシュ・フロー>
 
下期に売上が拡大した事による期末の売上債権の増加や法人税の支払額の増加に加え、期末が金融機関の休日であった事もあり、営業CFが前期より大幅に減少しました。ただ、大型投資の一巡により、投資CFの赤字幅も縮小傾向にあります。
 
2008年3月期業績予想
 
<連結>
 
半導体・FPD投資が一服するとの前提の下、全般的に保守的な予想となりました。
当期純利益が減少するのは、前期は有価証券売却益等の特別利益を計上しているためです。
尚、1株当たり配当は、記念配2円を落とした10円を予定しています。
 
<セグメント別予想>
 
装置関連事業
真空シール・石英製品共に米国向けが好調を持続する見込みですが、半導体投資の動向を慎重に見ている上、国内のFPD関連投資が調整局面を迎えると考えています。このため、真空シールは前期比微増を予想、OEM(相手先ブランドによる生産)供給が好調なものの、石英製品も同5.5%の増加にとどまるとの予想です。ただ、台湾が好調を持続する見通しである上、自国産業育成に力を入れている韓国に現地法人を設立し、営業を強化します。
 
電子デバイス事業
主力のサーモモジュールが自動車温調シート向け(欧州車でも採用が拡大中)を中心に拡大する見込みです。また、家電向けに加え、医療機器、バイオ機器、光学分野など高性能を求める市場向けも拡大が期待できます。
 
*サーモモジュールの販売先
 
CMS事業
シリコンウェーハ加工が大口顧客の在庫調整により、また、装置部品洗浄がDRAMの落ち込みによる半導体メーカーの稼働率低下により、それぞれ減収が予想されます。また、単結晶引上装置も、原料となる多結晶シリコンの不足からユーザーが設備投資を見合わせています。一方、工作機械製造は、日本や台湾の工作機械メーカーからのオーダーが堅調です。
 
太陽電池関連製品の今後の戦略
 
真空シールや石英製品に加え、自社開発及び製造のコントローラーやホットゾーンを使った単結晶引上装置は同社にとって付加価値の固まり。シナジーの高い戦略製品であり、更なる事業拡大に取り組んでいく考えです。
 
<事業別の取組>
 
1.太陽電池用シリコン単結晶製造(引上)事業
上海でのシリコン単結晶製造(原材料自社調達)に加え、原材料顧客支給での製造請負も行なっています。また、シリコン単結晶の製造能力の増強にも取り組んでいます。
 
2.単結晶引上装置開発事業
今期中に月産10台規模へ生産能力が拡大します。また、新製品8インチ専用全自動装置を発表しました。顧客要求に基づくカスタム仕様製品の製造販売を強化します。
 
3.単結晶引上サポート事業
消耗品である装置用るつぼ(消耗品)、装置用カーボン部品(定期交換)の製造・出荷を開始しました。また、装置オペレーターの育成サービスや装置の保守・メンテナンスサービスの提供に向けて準備を進めています。
 
4.単結晶引上ソリューション事業
工場建設/設計/設備購入コンサルティング、運営支援(オペレーター育成・メンテナンス)、歩留保証付工場運営指導等を提供していく考えです。
 
<工程別の取組>
成長市場において、シリコン単結晶を中心に製造から組立までのソリューションを展開します。
 
*グループ売上高の推移
 
*中国の生産能力
 
取材を終えて
かつては利益の大半を稼ぎ出したコンピュータシールの製品寿命が終息し、2007年3月期はほとんど売上・利益への貢献がありませんでした。しかし、業績は2001年3月期に次ぐ会社設立以来2番目の好決算となりました。この要因は、同社が得意とする技術を活かせる範囲で収益源を多様化してきた事、及び国内中心であった取引先がグローバルに拡大した事です。このため、店頭登録から10年が過ぎた同社ですが、前出の売上高推移を見て頂ければ分かるように、事業年齢は未だ5~6年の若い企業です。
2008年3月期は慎重な業績予想となりましたが、生産の拠点とする中国では、今後、北京五輪、上海万博と大きなイベントが続きます。ローカルメーカーの開拓も進んでおり、同社が会社設立30周年を迎える2010年(2011年3月期)には、業績が一段と拡大しているものと思われます。