ブリッジレポート
(5162) 株式会社朝日ラバー

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ブリッジレポート:(5162)朝日ラバー vol.1

(5162:JASDAQ) 朝日ラバー 企業HP
横山 林吉 社長
横山 林吉 社長

【ブリッジレポート】朝日ラバー vol.1
(取材概要)
「シリコーンゴムに蛍光体を配合する技術と調色技術を強みに自動車メーター表示等に使われる彩色ゴムで国内市場をほぼ独占する同社ですが、単価下落が悩みの種。この・・」続きは本文をご覧ください。
企業基本情報
企業名
株式会社朝日ラバー
社長
横山 林吉
所在地
埼玉県さいたま市大宮区土手町2-7-2
決算期
3月 末日
業種
ゴム製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2007年3月 5,314 399 375 176
2006年3月 4,578 366 353 209
2005年3月 4,057 251 251 147
2004年3月 3,449 233 211 112
2003年3月 3,154 172 159 75
2002年3月 2,907 98 85 10
2001年3月 3,582 315 336 189
2000年3月 3,140 313 300 141
株式情報(6/4現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
685円 4,519,340株 3,096百万円 6.3% 500株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12円 1.8% 53.77円 12.7倍 634.25円 1.1倍
※株価は6/4終値
 
朝日ラバーの2007年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
会社概要
 
車載用機器、携帯用通信機器、電子・電気機器、産業機器、文房具用・スポーツ用などに使用される工業用ゴム製品の製造・販売を中心に、医療・衛生用ゴム製品や、硬質ゴムと軟質ゴムとの複合製品等も手掛けています。
 
<沿革>
1970年5月、有限会社朝日ラバーとして設立。76年6月、株式会社に改組し、彩色用ゴム製品「アサ・カラー」(現:ASA COLOR LAMPCAP)及び弱電用高精密ゴム製品「ホルダー」の生産を開始しました。89年11月、医療用ゴム製品の生産を開始。98年9月に、株式を店頭登録(ジャスダック上場)しました。
 
<事業内容と主要製品>
事業は、工業用ゴム事業、医療・衛生用ゴム事業、及び硬質ゴムと軟質ゴムとの複合製品のその他事業に分かれます。2007年3月期の売上構成比は、それぞれ、86.2%、13.6%、0.2%。
工業用ゴム事業は、更に彩色用ゴム製品(売上構成比43.2%)、弱電用高精密ゴム製品(同 25.2%)、スポーツ用ゴム製品(同 5.7%)、その他工業用ゴム製品(同 12.0%)に分かれます。
 
 
 
2007年3月期決算
 
 
5期連続の増収となりました。
当期純利益が減少したのは、繰延税金資産の回収可能性の見直しに伴うものです。
 
 
 
 
彩色用ゴム"ASA COLOR LED(旧製品名LEDホワイトキャップ)"は、青色LEDに被せることで豊富なカラーバリエーションを付加することができます。主用途は自動車の内装照明分野向けです。採用車種の拡大により、売上高は1,154百万円と前期比84.6%増加しました。また、光透過率が94%以上の特性を持つ超透明シリコーン製品は、高輝度LEDと組み合わせた用途向けのASA COLOR LENS(旧製品名超透明シリコーンレンズ)が、期初に予定していた新機種製品の量産開始時期が遅れはあったものの、携帯ゲーム機向けの応用製品の受注が大きく伸びた結果、売上高は375百万円と同122.4%増加しました。
一方、小型電球彩色用ゴムのASA COLOR LAMPCAP(旧製品名アサ・カラー)は、車載機器の光源のLED化に伴う売上減少が更に進み、売上高は595百万円と同23.2%減少しました。
 
尚、当期よりグループのコア技術の一つである調色技術を応用し、シリコーン材料を用いた光デバイス向け製品を「ASA COLOR」ブランドと設定したことにより、製品名を変更しています。
 
 
電子機器、通信関連機器、情報関連機器で使われる弱電用高精密ゴム製品は、液晶テレビのバックライト用ホルダー製品が伸びたものの、価格競争や重要顧客の海外生産シフトによる影響をカバーできず減収となりました。
 
 
ディスポーザブル用ゴム製品とは、点滴輸液バッグ用ゴム栓や真空採血管用ゴム栓等、使い捨てのゴム製品です。2007年3月期は、新製品による売上拡大で営業損益が黒字化しました。
 
 
利益計画未達の要因として、次の3点を挙げることができます。
 
・ASA COLOR LENSの量産開始が計画より遅れたことによる固定費負担増(65百万円の計画未達)
・弱電用高精密ゴム製品の品質仕様変更に伴う労務費の大幅な増加
・販売単価引き下げによるASA COLOR LEDの利益率低下(60百万円計画未達。但し、販売数量は増加)
 
 
朝日橡膠(香港)有限公司は、創業費用を吸収できずに損失計上となりましたが、月次ベースでは既に黒字化しています。
 
 
流動資産の減少は、社債の償還により現預金が657百万円減少した事が主な要因です。一方、固定資産は、白河工場の建築(447百万円)や機械装置等(263百万円)などの設備投資で増加。社債の償還(700百万円)や設備投資の資金を賄うため、短期借入金が511百万円、長期借入金が464百万円、それぞれ増加しました。
 
 
新製品・開発製品の市場供給のための積極投資に伴い、フリー・キャッシュ・フローが321百万円の赤字となりました。2007年3月期の設備投資は1,122百万円、減価償却費は388百万円でした。
 
 
2008年3月期業績予想
 
 
増収・増益の予想です。
6億円分のLEDの有償支給(LEDを6億円で仕入れて、この6億円を販売価格に転嫁して販売する)があるため、売上高及び原価が6億円分かさ上げされます。このため、実質的な売上高は、連結で前期比7.1%増の5,659億円となります。
 
*ゴムキャップをLEDメーカーに販売していた商流の一部が変更となり、同社が青色LEDを仕入れて、ゴムキャップを接着してLEDメーカーに販売する事となりました。このため、今期からは、LEDの仕入原価(今期は6億円)が発生する一方、売上高には青色LEDの販売価格(今期は6億円)が上乗せされます。
 
 
<設備投資・減価償却費>
設備投資は560百万円を計画。独自開発製品の売上構成比率を50%超にまで高めるため、引き続き積極的な設備投資を行って行く考えです。減価償却費については、500百万円を予定しています。
 
 
<独自開発製品の売上高推移と売上高比率>
 
<彩色用ゴム製品>
ASA COLOR LED   売上高1,153百万円(前期比84.6%増)
 
日系カーオーディオメーカー、セットメーカーへの販売が拡大した事で、日系自動車メーカーの採用が増えています。ただ、LED価格の下落と白色LEDメーカーの対応強化の影響で販売単価は低下傾向にあります。このため、利益率の低下が見込まれますが、数量増で大幅な増収が見込まれます。
 
今後の課題は、販売単価引下げに歯止めをかけ、利益を確保する事です。このため、幅広い色調範囲とLED単独では困難な中間色を実現する事で、付加価値を高めていく考えです。また、品質管理レベルの向上による製品歩留まりの改善にも取り組みます。
 
 
ASA COLOR LENS 売上高173百万円(前期比1.9%減)
 
従来の樹脂素材よりも耐熱性と耐紫外線に優れたシリコーン材料を用い、集光・拡散の機能をもたせた透明レンズについて、一般照明用、携帯電話向けの高輝度LED用途、更にはセンサー用途向けに営業展開を進めましたが、LED価格下落による単価の見直しや信頼性試験延長の影響で、新規案件の量産開始時期が遅れました。
ただ、市場は確実に存在しており、将来の成長が見込めるため、客先の要求する仕様、価格を精査し受注獲得につなげていく考えです。
 
 
 
工業用ゴム製品のうち、彩色用ゴム製品のASA COLORブランド製品を生産する専用工場です。生産現場はクリーンルームに対応、2006年11月に創業を開始しました。 総投資額は約9億円。延べ床面積5,225㎡の一層鉄骨造りです(敷地面積33,000㎡)。2007年秋には、福島工場からの設備移管が完了する予定です。
 
<ASA COLOR ブランド>
シリコーン材料をベースに独自の配合技術と調色技術を生かした光デバイスへの応用製品をASA COLORブランドとして表現しました。アルファベット表示としたのは、グローバルな販売活動を視野入れているからです。
 
 
*ライティングフェアへの出展
3月6日から東京ビッグサイトで開催された「ライティングフェア2007」にASA COLORブランド製品を展示しました。同社の技術と製品の認知度を高める事で、販売拡大を図る考えです。
 
 
取材を終えて
シリコーンゴムに蛍光体を配合する技術と調色技術を強みに自動車メーター表示等に使われる彩色ゴムで国内市場をほぼ独占する同社ですが、単価下落が悩みの種。このため、幅広い色調範囲やLED単独では困難な中間色の実現による高付加価値化が今後の課題です。また、拡大余地の大きい海外展開を進めるためには、ワールドワイドなネットワークの構築も必要です。今回ブリッジレポート初登場となった同社ですが、2009年3月期に売上高70億円、経常利益6億円を目指す新3ヵ年計画の進捗状況と共に、同社の取り組みをタイムリーにレポートしていきたいと思います。