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ブリッジレポート:(4709)インフォメーション・ディベロプメント vol.19

(4709:JASDAQ) インフォメーション・ディベロプメント 企業HP
舩越 真樹 社長
舩越 真樹 社長

【ブリッジレポート】インフォメーションディベロプメントvol.19
(取材概要)
「1990年代のバブル崩壊後、ほとんどの同業他社が固定費削減のために運用・保守部門を切り離してしまったため、現在、保守・運用を行う会社が非常に少なくなり、特に同社のように100人以上の技術者を持つ会社は数えるほど・・・」 続きは本文をご覧ください。
企業基本情報
企業名
株式会社インフォメーション・ディベロプメント
会長
尾崎 眞民
社長
舩越 真樹
所在地
東京都千代田区二番町 7-5
決算期
3月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2006年3月 13,028 851 845 430
2005年3月 11,378 550 557 119
2004年3月 11,203 625 628 203
2003年3月 11,668 598 591 274
2002年3月 11,081 548 546 272
2001年3月 9,738 756 735 242
2000年3月 8,468 640 586 320
株式情報(12/1現在データ)
株価 時価総額 発行済株式数 単元株数
890円 7,123百万円 8,003,725株 100株
インフォメーション・ディベロプメントの2007年3月期中間決算について、会社概要と共にブリッジレポートにてご報告致します。
 
会社概要
 
金融向けITアウトソーシング業務に強みを有する独立系の情報サービス会社。ソフトウエア開発、システム運営管理、データ入力等のサービスを提供しています。
 
<沿革>
1969年10月、コンピュータの高度利用のための広範な技術サービスの提供を目的とした(株)インフォメーション・ディベロプメントとして設立されました。82年9月、日本ユニシス(株)との共同出資により、(株)ソフトウエア・ディベロプメント(現・連結子会社)を設立、98年11月、日本証券業協会に株式を店頭登録しました。
 
2001年10月、ソフトウエア開発の品質、生産性向上の目的に(株)スペースリンクを、02年4月、情報システム設計・開発の方法論の保有・販売及びコンサルティング等を手掛ける(株)プライドを、それぞれ連結子会社化。04年4月、中国湖北省武漢市に子会社ID武漢を設立。現在、同社及び連結子会社4社で企業グループが形成されています。
 
同社は品質管理及び環境マネジメント等へも積極的に対応しており、01年12月に受託開発部門が、04年12月にシステム運営管理部門が、それぞれ国際標準化機構の品質保証規格「ISO9001」の認証を取得。05年12月には、システム運営管理業務について環境マネジメントシステムの国際規格である「ISO14001」の認証を取得しました。前後しますが、03年9月にはプライバシーマーク許諾事業者に認定されています。
 
<事業内容>
事業は、システムインテグレーション事業(SI)、ITアウトソーシング事業(ITO)、ビジネスプロセスアウトソーシング事業(BPO)、コンサルティング&セキュリティ事業(SCS)に分かれます。2007年3月期中間連結決算の売上構成比は、それぞれ、34.6%、45.5%、15.7%、4.1%でした。
 
システムインテグレーション事業(SI)
「独立系SE集団」として、特定のマシン、OS、ツール、開発言語にとらわれず、顧客の開発ニーズに合わせたシステム構築をサポート。400名規模の技術者を擁し、大型汎用機から携帯端末まで、金融、公共、サービス分野を中心に豊富な実績を誇ります。
 
ITアウトソーシング事業(ITO)
1,000名規模の技術者を擁する専門部隊が、導入後のシステム運用管理をサポート。ミドルウェアのカスタマイズからハードウェアの保守、24時間体制のオペレーションまで、トータルかつ高付加価値のアウトソーシングを実現しています。
 
ビジネスプロセスアウトソーシング事業(BPO)
経営の効率化・スピード化によって高まるコア業務以外のアウトソースニーズに対応。金融機関等へ「データ入力業務」、「バックオフィス業務」、「電話業務」等のサービスを提供しています。
 
コンサルティング&セキュリティ事業(SCS)
「セキュリティ・マネジメント」、「外部からの攻撃対策」、「内部不正への対策」の3つの側面から企業をサポート。世界の大手ベンダーと提携し、各種セキュリティ製品の提供からコンサルティング、セキュリティ環境の構築・導入・運用・サポートまで一貫したサービスを提供しています。
 
<顧客業種別売上高>
銀行・保険等の金融機関向けに強みを有する事も同社の特徴。2007年3月期中間決算の業種別売上高は次の通りです。
 
 
2007年3月期中間決算
 
<ハイライト>
 
<連結>
 
1.売上高
SI(+7.1%)事業及びIT0(+11.7%)事業が拡大した他、アウトソーシング事業も堅調に推移。顧客業種別では、金融・保険関連が好調でした。
 
2.売上原価
技術者不足により外注費が増加しましたが、想定の範囲内でした。
 
3.販管費
ステークホルダーである社員への還元の一環として賞与等が増加しました。
 
4.営業利益
期初計画を19.1%上回りました。
 
<売上高分析>
1. ITO・BPO事業が堅調に推移、アウトソーシングの売上構成比が前年同期比0.9ポイント上昇しました。
2.金融機関のシステム投資が活発化しており、金融関連の売上構成比が同4.6ポイント上昇しました。
3.契約形態別では、直接契約の比率が同3.4ポイント上昇しました。
 
 
<財政状況及びキャッシュ・フロー>
1.財政状況
 
有利子負債が前年同期に比べ2億60百万円減少、残高が過去最低の水準に低下。自己資本比率は62.3%と安定的な財務体質が更に強固なものとなりました。
 
2.キャッシュ・フロー
 
税負担の増加によりフリー・キャッシュ・フロー(営業キャッシュ・フロー+投資キャッシュ・フロー)が資金流出となりました。財務キャッシュ・フローの資金流出要因は自己株式の取得及び配当金の支払によります。
ただ、期末キャッシュ残高(現金及び現金同等物の期末残高)は、前年同期比2億43百万円増加しました。増加したキャッシュは、事業の拡大や投資に活用する考えです。
 
<月次売上高(個別)の推移>
 
 
売上高は月次ベースで底打ちした感があります。
 
<顧客別状況>
 
金融が伸びた他、情報・通信・サービスも堅調に推移しました。その他ではガス・製造が減少しました。
 
<事業別状況(連結)>
 
<株式情報>
発行済株式数:8,003,725株 株主数 : 2,210名
 
1.大株主上位
 
2.株主構成
 
業界動向と同社の状況
 
<事業別見通し>
2006年8月発表の「経済産業省:特定サービス業調査動態統計速報」のデータを基に作成した情報サービス産業の事業別の見通しは全般に良好。特に、受注ソフトウエア、システム運営管理といった同社の事業領域の見通しは良好です。
このため、同社の中間決算において好調であったSI事業(前年同期比7.1%増)及びITO事業(同11.7%増)は引き続き好調が続きそうです。
 
 
<顧客業種別見通し>
同様に作成した顧客業種別見通しによると、金融・保険業、情報通信業、製造業、サービス業の見通しが特に良好です。
このため、同社の中間決算において好調であった金融・保険業(前年同期比10.1%増)、輸送業(同11.7%増)、情報通信・サービス業(同4.5%増)は引き続き好調が続きそうです。
 
 
同社の中間決算にける顧客業種別動向
 
同業他社の状況
 
同社では、今期を業界全体で4~5%の成長と見ています。
下の図は、情報サービス会社の中で同社と類似した事業内容の会社に、業界の代表的な存在であるNTTデータと野村総研を加え、中間期実績()及び通期見通し)を比較したものです。
比較対照企業の多くは下期偏重型の業績であるため、)右肩上がりです。
 
 
2007年3月期業績予想
 
<連結>
 
増収・増益の予想です。
SI事業及びITO事業が安定的に拡大する見通しです。
中間決算において5.7%であった営業利益率が、通期では前期並みの6.5%に改善する見込みです。
 
中期計画の進捗状況
 
現在、同社では新中期経営計画「Challenge to the 2008」に取り組んでおり、最終の09/3期に連結売上高150億円、営業利益率8.0%、ROE11.0%を目指しています。
達成のポイントは、(1)既存ビジネスの拡大、(2)新規顧客の開拓、(3)品質・生産性の向上の3点です。
 
(1)既存ビジネスの拡大
取引規模や今後のビジネスの拡大傾向等を分析し既存ビジネスにおける「優先順位」を明確にすることにより、同社グループの資源の効率的な配分を行います。既存サービスの拡大のみではなく、新規サービスの提供及びシステム開発から運営、事務代行に至る事業部横断的なBOO(ビジネスオペレーションズアウトソーシング)展開を進めます。
 
(2)新規顧客の開拓
戦略的なパートナーと協業することにより営業チャネルの拡大を図り、新規顧客を開拓します。
 
(3)品質・生産性の向上
開発及び運営部門で既に取得しているISO9001の推進やマネジメントレベルの人材育成に注力することにより品質・生産性の更なる向上を目指します。また、人材の確保・育成も不可欠であり、この一環として、女性の開発技術者、運用運営技術者を積極的に採用していく考えです。現在の女性比率は、ITO事業が16.0%、SI事業が19.3%ですが、「25%運動」を展開し、09/3期には共に25%まで引き上げることが目標です。女性を積極的に採用するのはコスト削減が目的ではなく、男女の区別無く採用活動を進めることで技術者の増員を容易にする事が目的です。同社では、男女間の賃金差はありません。また、配属先を明確にして採用することにより、定着率の維持向上にも努める考えです。
 
 
取材を終えて
1990年代のバブル崩壊後、ほとんどの同業他社が固定費削減のために運用・保守部門を切り離してしまったため、現在、保守・運用を行う会社が非常に少なくなり、特に同社のように100人以上の技術者を持つ会社は数えるほどしかないそうです。しかし、保守・運用により収益が安定しているため、同社の営業利益率は6.5%と、開発中心の会社の平均3.5~4%よりも高い水準にあります。開発中心の場合はハイリスク・ハイリターンで、不採算案件を抱えると利益率が大きく落ちてしまいます。価格競争や国内外の企業との競争も激しいこともあり、同社では運用・保守と言う強みを更に強化し伸ばしていく考えです。
また、同社は株式の流動性を高め、個人株主の増加を図ることを資本政策上の重要課題として掲げており、2000年8月1日より1単元株式数を1,000株から100株に引下げると共に、同年から03年にかけて1:1.1の株式分割を実施、今期も1:1.3の株式分割を実施しました。
このように強みとする事業領域を持ち、株主への配慮も厚い同社ですが、株価は調整局面を迎えていることもあり、現在、予想PER13.2倍、配当利回り1.79%の水準。値幅調整はかなり進んでいるとも見られます。