5つ目の柱:新規事業「交通分野」への進出
同社は赤外線を使用したセンシングや画像処理をコア技術に、現在は防犯製品、自動ドア、産業機器、環境関連という4つの事業分野を手がけています。
「売上高 20%成長」を目指している同社ですが、現状はやや足踏み状態であり、小林社長を始めとして、再び高い成長を実現するためには、グランドデザインに基づいた新規事業の開発が急務と考えていました。
こうした中、5番目の柱として「交通分野」への進出を決断。その第一弾が今回の「ドライブトレーナー」です。
アイデア段階では2004年12月にスタートし、1年足らずで製品リリースまでたどり着きました。従来に比べ極めて短期間での製品化ということで、力の入れようが表れているようです。
同社の経営方針である「安全・安心・快適な生活環境への創造」に適合し、コア技術が活用でき、なおかつ市場規模も大きい「交通分野」の将来性、成長性を見据え、事業拡大に注力していく考えです。
開発の背景
警察庁の事故発生状況推移によると、平成16年中の交通事故による死者数は、昭和32年以来46年ぶりに7,000人台前半まで減少しました。
しかし一方で、発生件数及び負傷者は、過去最悪を記録した一昨年をわずかながら上回り、発生件数は5年連続で90万件を超え、負傷者数は6年連続で、100万人を超えています。
エアバッグの普及などで死亡事故は減少しているものの、交通事故そのものは増加の一方であり、交通事故の削減および原因解明が急務であり、その一助とするため、危険運転防止を目指して開発したのが、「ドライブトレーナー」です。運転マナーの向上、そして危険運転を警告して画像で保存するので、安全運転指導に役立てることができます。
交通事故削減を目指す国土交通省も大変注目し、普及をバックアップする方針です。
また、参入決定にあたっては、先行企業はありましたが企業規模もそれほど大きくなく、同社の総合力優位が見込めたことも大きな要因でした。
「ドライブトレーナー」とは?
<概要>
危険運転(急ブレーキ・急ハンドル・急アクセル)を行ったとき、「ドライブトレーナー」の加速度センサが作動し、警告と同時にその状況を高感度CCDカメラで記録し、メモリカードに保存するものです。
安全運転を促すとともに、「何故、急な操作になったのか?」、「何が起こったのか?」を明確にします。
保存データは、簡単に管理できるので的確な運転診断が可能です。ドライバーの癖を分析して、事故を未然に防ぐことができます。
動画は危険運転の「前 15秒、後 5秒」が記録され、危険運転や交通事故の原因をはっきりと認識することができます。
通常のドライブレコーダは、文字通り事故映像の記録を主目的とするものです。これに対し、同社の「ドライブトレーナー」は、物流トラックや業務用車両を対象に、「安全運行管理=運転の履歴を運行管理者が確認し、安全運転指導に役立てる」という性格のもので、この点が他社製品とのコンセプトにおける大きな違いです。
<特徴> 1. 危険度の高い画像を優先して記録
従来のドライブレコーダは、道路の小さな段差などにも反応してしまい、メモリカードは不要なデータで一杯になり、肝心な危険運転画像を消去してしまうことがありました。
このような不要な画像を業界では「ゴミ画像」と呼ぶそうですが、従来製品は、ゴミ画像が8割近くを占め、記録画像を検索する際に大きな負担となっています。
「ドライブトレーナー」は、急ブレーキ、急ハンドル、急アクセルという大きな挙動があった際に発生する信号により、危険度の高い順に優先して記録するため、メモリカードの限りある容量を効果的に活用することができます。
このため、運転管理者の手を煩わせることなく的確なドライバー教育が可能です。
同社は、センサ専業メーカーとして長年培ったノウハウを活用し、この性能を実現しました。
2. 簡単な操作で、記録映像と危険運転のグラフを確認可能
アイコンをワンクリックすることで運転履歴の検索ができます。
画面は記録映像に加え、走行スピードや危険運転の時点を示すグラフを一体にした、分かり易いビジュアル表現となっています。
3. 運転の危険レベルを光で警告
ドライバーの運転状況を、青・緑・赤3色のLEDでリアルタイムに知らせます。
運転に応じて、通常の青からやや危険な緑、危険度が高い赤へと変化します。ドライバーの安全運転の意識を高めます。
4. カメラと本体の一体型で、多彩な取り付けが可能
「ドライブトレーナー」本体内に高感度CCDカメラ、加速度センサ、メモリカードを収納しています。サンバイザー、フロントガラス、ルームミラーのステー等に設置できます。多彩な取り付け方法に対応しながらも、本体がコンパクトなためドライバーの視界を妨げません。車種を選ばず使用可能です。
<販売・営業活動>
発売初年度となる2006年は5億円(1万台)の売上を見込んでいます。
直販体制で、タクシー会社、運送会社、多数の社用車を運行している企業などを対象に営業活動を進めていきます。
タクシーは現在全国で約27万台ありますが、その内ドライブレコーダを搭載しているのはまだ3万台に過ぎず、現在は地方でも普及が進んでいるということです。
また、社名入り社用車を多数保有し、公共性の高い企業にとっては、企業ブランド維持の観点から交通事故の削減は必須であり、こうした企業も有力な対象です。
現在日本の乗用車以外の車両台数は1,800万台であり、潜在的には極めて大きなマーケットです。
<今後の展開>
第一弾をリリースしたばかりですが、既に様々な機能を付加したバリエーションに富んだラインアップを準備しています。
石田部長は、製品リリース前から見込み先には好感触を得ていたということで、今回のリリースを機に、一段とマンパワーを増強させ、「初年度から一気に立ち上げたい。」と豊富を力強く語っていらっしゃいました。
交通関連分野売上は、第5の柱として2008年には20億円規模を目指しています。
取材を終えて
環境関連事業のスタートが1996年なので、「交通関連事業」は同社にとっては約10年ぶりの新規事業であり、再び高成長路線へ回帰するために大きな期待がかかっています。
まだスタートしたばかりですが、石田部長によれば、非常に好感触を得ているとのことでした。
「ドライブトレーナー」を手に説明される石田部長
前回のレポートで触れたように同社では事業開発本部を新設し、この後も新規事業の立上げを積極的に検討、推進していく考えです。
足元の業績と共に、ドライブトレーナーの普及状況などもウォッチしていきたいと思います。
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