2006年3月期第1四半期決算概要
<連結>
(単位:100万円)
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実績
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前年同期比
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売上高 |
5,438
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+4.4%
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営業利益 |
240
|
-47.7%
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経常利益 |
138
|
-52.1%
|
当期純利益 |
70
|
-36.3%
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前年同期比で大幅な減益ながら、既に発表されている中間決算予想に対する進捗率は売上高及び各利益段階で50%を超えており、足もと順調であることが確認できました。
<中間決算予想に対する進捗率>
2006年3月期 |
(単位 百万円)
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第1四半期(A)
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2Q(A-B)
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中間(B)
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進捗率(A/B)
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装置関連 |
2,878
|
2,309
|
5,187
|
55.5%
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電子デバイス |
876
|
373
|
1,249
|
70.1%
|
CMS |
1,684
|
1,935
|
3,619
|
46.5%
|
連結売上高 |
5,438
|
4,617
|
10,055
|
54.1%
|
売上総利益 |
1,578
|
1,432
|
3,010
|
52.4%
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販管費 |
1,337
|
1,328
|
2,665
|
50.2%
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営業利益 |
240
|
105
|
345
|
69.6%
|
経常利益 |
138
|
33
|
171
|
80.7%
|
当期利益 |
70
|
20
|
90
|
77.8%
|
2005年3月期 |
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第1四半期(A)
|
2Q(A-B)
|
中間(B)
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進捗率(A/B)
|
装置関連 |
2,578
|
2,761
|
5,339
|
48.3%
|
電子デバイス |
1,055
|
1,060
|
2,115
|
49.9%
|
CMS |
1,573
|
1,755
|
3,328
|
47.3%
|
連結売上高 |
5,208
|
5,576
|
10,784
|
48.3%
|
売上総利益 |
1,692
|
1,725
|
3,417
|
49.5%
|
販管費 |
1,232
|
1,121
|
2,353
|
52.4%
|
営業利益 |
460
|
604
|
1,063
|
43.3%
|
経常利益 |
290
|
650
|
940
|
30.9%
|
当期利益 |
109
|
349
|
458
|
23.8%
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<セグメント別の動向>
装置関連事業
シリコン製品の太陽電池向けインゴットが伸長、EB-ガン、セラミック製品等も堅調に推移しました。半導体・液晶製造装置向けが中心となる真空シール及び石英製品も、厳しい市場環境の中、前年同期並みの売上高を確保することができました。この結果、当セグメントの売上高は28
億78百万円と前年同期比11.6%増加しました。ただ、前年同期に比べ少量多品種の受注が多く生産効率が悪かったため、営業利益は2
億30 百万円と同17.3%減少しました。
電子デバイス事業
自動車温調シートや半導体製造装置向けにサーモモジュールが堅調に推移しましたが、ハードディスク・ドライブ用コンピュータシールの減少を補うことができませんでした。この結果、売上高は同17.0%減の8
億76 百万円となりました。売上高が減少する中、FFB(磁性流体動圧軸受け)の研究開発費などが継続して発生しており、営業損益は23
百万円の損失となりました。
もっとも、売上高・損益共にほぼ想定の範囲内です。また、FFB のユーザーテスト評価は順調に進んでいるとのことで、収益に貢献する日が近づいています。
CMS事業
主力のディスクリート・シリコンウェーハ及びリチウムイオン電池パック等に加え、工作機械の受託製造が順調に推移し、売上高は同7.1%増の16
億84 百万円となりました。操業の平準化により損益も安定し、営業利益は同4.8%増の44 百万円となりました。
進捗率が50%を下回っていますが、第1四半期は、どうしても季節的な要因から稼働率が下がってしまいます。特に問題ありません。
2006年3月期業績予想
<連結>
(単位:100万円)
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予想
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前期比
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売上高 |
22,400
|
+6.1%
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営業利益 |
1,800
|
+2.2%
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経常利益 |
1,500
|
+3.0%
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当期純利益 |
700
|
+10.6%
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中間及び通期の業績予想に変更はありません。
今期は下期偏重の業績予想であるため、第1四半期だけで通期を予想することは難しいですが、少なくとも中間決算予想に対しては、強含みで推移していることは確かです。
また、上記予想の想定為替レートは1ドル=105 円です。110円程度の水準が続くのであれば、通期で1億円程度の為替差益が出る計算です。
トピックス
(1)杭州新工場が竣工・稼動
5月に中国事業の更なる拡大のけん引役として期待される杭州新工場が竣工しました。同工場は杭州で3番目の工場です。第2工場の向かいにあり、敷地面積は第2工場の1.7倍の4万㎡。4棟の工場棟からなり、サーモモジュールや石英製品の拡大に伴う新しい拠点となります。
サーモモジュールでは、自動車温調シート向けの生産に加え、シートへの温調システムの組付けも行います。また、後述するロシア・ノルド社のサーモモジュールの組み立ても行う予定です。
石英製品では、中国工場の認定取得が国内外の大手半導体製造装置メーカー4社に拡大しています。また、従来の火加工に加え、より付加価値の高い切削加工による石英製品の生産も始まります。切削加工の専門企業をスピンアウトした技術者が設立したアリオンテック社を連結子会社化することで、切削加工技術をグループに取り込むことができました。これにより、認定品の品揃えがさらに拡大します。
(2)ロシア企業の買収を発表
ロシアのサーモモジュールメーカーであるSCTBノルド社(モスクワ)を5.6億円で買収することが決まりました。8月にノルド社の発行済み株式数の95%を取得し、連結子会社化する予定です。ノルド社はサーモモジュールを日本、ロシア、欧州で販売しており売上高はおよそ4億円。日本では、商社の蝶理を経由して販売されていたようです。
サーモモジュールの原料(冷熱素子)の成形方法は、「焼結(焼き固める)」、「溶融」、2通りに分けることができます。「焼結」は「溶融」に比べて、微細加工が容易でしかも硬度が高い(硬い)ため傷や欠損が生じ難いという長所がありますが、生産性が悪く3倍の製造コストがかかります。一方、「溶融」はコストを抑えることができますが、この方法で成形された原料は柔らかく傷がつきやすいため、冷熱素子の検査や組立工程の自動化(増産対応)が難しいという問題があります。
フェローテックは「溶融」を得意としてきたため、工程の多くの部分を手作業に頼っていました。一方、拡大が続く自動車温調シート向けに加え、家電製品の冷却部品としても顧客開拓が進んでいる模様で需要は旺盛。このため、生産能力を大幅に引き上げる必要がありましたが、手作業に頼っていては、掛け算で増える需要に対して足し算で生産能力を増やすようなもの。生産能力が事業拡大のボトルネックとなりつつありました。
そこでノルド社の買収となったわけです。ノルド社は先ごろ「中間的な成形方法」を開発して、ラインの自動化が可能になったのです。「中間的な方法」は「焼結」程ではありませんが、相当な硬度を有し、かつコストを抑えることができます。このため、設備投資を行う資金があれば、容易に生産量を増やすことができます。しかも、ノルド社の新素材は同社の現行品よりも15%程度の省電力効果があるそうです。
一方、ノルド社にしてみれば、営業力不足と資金不足で十分に生かしきれていなかった技術力を存分に発揮し、世界中に販売することができます。
現在、同社のサーモモジュールは中国で原料から部品製造まで一貫生産していますが、ノルドの新素材は、約1億円を投じて千葉テクニカルセンター(干葉県八日市場市)に原料製造設備を建設し、知的財産保護の観点からロシアと日本で原料を製造し、中国で組立を行う計画です。
(3)元切り上げの影響
中国通貨である「元」の対ドルレートが2%切り上げられ、対円でも1.5%程度上昇しました。中国に生産拠点を置く同社にとって、「元」の切り上げは対ドル、対円でのコスト上昇要因となりますが、今回程度の引き上げでは特に問題はありません。もともと5%程度の引き上げを想定しており、対応できる体制を整えていました。
逆に、ストックの面からは、円安を想定して海外子会社が円建ての借り入れを行っているため、差益が発生します。
取材を終えて
同社の今期の業績予想は下期偏重とは言いながらも、単に半導体市況の回復などを期待したものではなく、シリコン製品の太陽電池向けインゴットやインゴットの引き上げ炉の販売等、新しい事業の軌道化に伴う業績拡大を見込んだものです。現状では、為替の影響も含めて、通期業績の大きな下振れは考え難いと言えます。一方、ノルド社の買収に加え、家電向けで新たな商談が進むなど、来季に向けて楽しみな材料が出てきました。
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