会社概要
「公明正大且つ信用あるオークション市場の創造と拡大」を企業理念として掲げ、美術品を中心としたオークションの企画、運営を行うオークション事業、絵画等の美術品の直接取引を希望される顧客間のマッチングを行うプライベートセール等を行うその他事業を展開しています。
オークション落札価額(注.1)又はプライベートセール等の際の取引価格に対する手数料収入(注.2)が主要な収入源となっています。ただ、営業戦略上、当社が一旦買取り、当社在庫商品としてオークションに出品する場合があります。この場合、オークション落札価額が売上高として計上されます。
その他、カタログの販売高、出品者から徴収するカタログ掲載料で構成されるカタログ収入があります。
(注.1)オークション落札価格の意味合い
出品者にとっては、一般のコレクター(最終消費者)が参加して競るので、一般買取価格より高く換金できます。一方、落札者にとっては、流通の利ざやがないため、公開の場で価値感を共有する参加者との間で価格が決定する満足感が得られます。
つまり、オークションを通すことにより、出品者は高く売ることができる一方、落札者は納得のいく価格で買うことができます。
(注.2)
手数料収入は、落札手数料と出品手数料に分かれ、それぞれ下記の料率で徴収されます。
落札手数料:100万円まで15.75%(税込)100万円を超える部分10.50%(税込)
出品手数料:10.50%(税込)
<財務戦略>
財務戦略として、次の5項目を掲げています。
・ROE15%以上の維持
・配当性向30%以上の維持
・経常利益2桁増益の継続
・在庫リスクの低減
(1年以上の在庫は持たない)
・固定資産・固定負債の管理
(フロー・ビジネスの徹底)
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<オークションの業務フロー>
<同社が主催するオークションの種類>
オークション業界
バブル崩壊後、縮小したオークション市場は、99年の一般消費者の参加を契機に認知度も高まり、デフレ経済下にあって急拡大しています。2004年1月発売の美術雑誌「月刊美術2月号」(㈱実業之日本社)集計による国内美術品オークション会社主要8社の2004年の取扱高は148.5億円となり、前年に比べて45%増加しました。
同社では、美術品取引業界の構造変革、美術品愛好家の支持の拡大、日本におけるオークションの認知向上による取扱量の増加等が市場拡大の要因と分析しています。
<国内で43%のトップシェア>
2004年美術品オークションシェア
同社は、国内美術品市場において、美術商、百貨店及び他オークション会社と競合関係にあります。
百貨店等はブランド力で優るものの、美術品に関する専門知識に加え、オークション開催に係る労働集約型業務システム(作品の預り~鑑定~査定~カタログ作成~下見会~オークション会場運営~作品の発送等)が参入障壁となり、積極手的にオークションに取り組む考えはなさそうです。
それでも、オークション会社は年々増加傾向にありますが、事業の成否は出品募集・販売の営業戦略にかかっており、業界での認知度の高さと組織力で勝る同社が圧倒的に優位なポジションにあります。
実際、前述の美術雑誌「月刊美術」の調査記事によると、「2004年1年間の国内大手オークション会社8社の中で、同社は43%のシェアを有し、国内最大級のオークション会社として美術品取引業界に幅広く認知されている」との事です。
海外には、クリスティーズ、サザビーズを筆頭に数多くのオークション会社がありますが、日本美術に関する知識、情報が障壁となり、現状では日本国内でオークションを開催する海外オークション会社はありません。
また、印象派(19世紀後半から20世紀前半にかけてフランスを中心とした印象主義に立つ一派)絵画等の一部ジャンルでは重なるものの、基本的には海外オークション会社とは取扱い作品が異なるため、競合関係にはありません。
<インターネットオークションとの違い>
会場利用のオークションは、商法上は問屋営業とされ、現物の確認と安定的な価値付けに責任を負います。一方、インターネットの普及と出品、落札の手軽さから近年急拡大しているインターネットオークションは、商法上は仲立業とされ、安定的な価値付けの責任を負わず、フリーマーケット的なマッチング機能にとどまります。このため、同社オークションに出品されるような高額品の出品は難しいと言えます。
今後の経営戦略
定着しつつある美術品オークションの事業展開を成長させると共に、新たに高額な外国絵画への展開や新たなオークションアイテムの開発に取り組んでいきます。その際、フォーカスするのは、より質の高い高級品・高額品分野です。
ただ、高額な外国絵画への展開等は、海外の有力オークション会社が得意としている分野であり、知識、経験、知名度、営業力等、全てにかかる美術品取引の総合力が要求されるため、拙速を戒め実績を重ねながら事業展開を図る考えです。
また、新たなオークションアイテムとしては、ワイン、西洋骨董、宝石、茶道具、日本骨董、中国骨董、ヴィンテージカー、家具等を考えています。
このうち、西洋骨董、宝石については、次なる事業の柱となるオークションに育成していく考えですが、専門家の導入や人材の育成等、ある程度の時間が必要であると考えられ、長期的視点に立って取り組んでいきます。
また、茶道具、日本骨董、中国骨董、ヴィンテージカー、家具等に関しては、大口の一括した換金依頼に適宜応じていきながら、今後の定期的オークション開催のための事業開発に向けた研究を進めていきます。
ワインについては、単価に限界があるため、広告宣伝としての位置付けで、年に一回程度定期的に開催する予定です。
この他、オークションビジネスにかかる顧客の全てのニーズに対応できるよう、プライベートセールを含めた包括的な顧客サービスに努めていきます。
下の図は現在の世界のオークション業界のイメージですが、同社は株式上場により高まった信用力・認知度と日本の高度な経済力・文化基盤を背景に更なる高額商品の取り扱いの拡大を目指します。
業績
2005年5月期第3四半期概要(2004年5月~2005年1月までの累計)
<単体>
(単位:100万円)
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実績
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進捗率
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売上高 |
1,229
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65.6%
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営業利益 |
357
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-
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経常利益 |
351
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89.5%
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四半期純利益 |
193
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91.9%
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取扱高、売上高共に堅調に推移しています。
個別の作品では、横山大観「霊峰不二」200,000千円(2004年9月近代美術オークション)、ピエール・オーギュスト・ルノワール「Fillette
a l'orange」150,000千円(同年7月近代美術オークション)、加山又造「狼」115,000千円(同年9月近代美術オークション)の落札が売上に大きく寄与しました。
通期の業績予想値に対する進捗率は、利益面で90%前後に達しています。
2005年5月期業績予想
(単位:100万円)
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予想
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前期比
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売上高 |
1,874
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11.50%
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経常利益 |
392
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26.00%
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当期純利益 |
210
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20.70%
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5月17日に発表された「4月度実績の概要」によると、4月末時点での累計売上高は前年同期比20.0%増の1,834百万円。11ヶ月で、ほぼ通期の予想売上高を達成しました。
5月は、宝石オークション(21日)、近代美術PartⅡオークション(21日)、近代美術オークション(上場記念オークション第1部、28日)の開催が予定されています。
取材を終えて
美術品取引業界の構造変革も追い風となり、日本において定着し始めた美術品及び高級品の流通システムであるオークション。美術品を取り巻く環境は徐々に回復の兆しを見せているようですが、一段の市場拡大には優良な作品の出品募集と販売拡大のための営業力強化が不可欠です。
国内でのブランド力と資金調達力で優位に立つ同社と言えども、更なる業容の拡大を図るためには同じことが言えます。経営戦略の進捗状況について、引き続きフォローしていきたいと思います。
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