ブリッジレポート
(8860) フジ住宅株式会社

プライム

ブリッジレポート:(8860)フジ住宅 vol.4

(8860)フジ住宅 今井 光郎社長
2005年5月16日(月)

フジ住宅の2005年3月期決算説明会に出席しました。
山田常務が決算概要、中期経営計画についてお話されました。

同社は、本年3月1日付けで、東京証券取引所及び大阪証券取引所市場第一部に昇格しました。
今2006年3月期の年間配当は、一部昇格に伴う記念配5円を含めた17円(1:2の株式分割を考慮すると実質34円配当)を予定しています。また、今期から中間配当(記念配5円を含めた11円)を実施する予定です。


今井 光郎社長
2005年3月期決算概要
<連結>
(単位:百万円)
 
実績
前期比
売上高
43,954
+27.8%
営業利益
3,208
+57.7%
経常利益
2,799
+48.0%
当期純利益
1,661
+142.8%

2004年の全国新設住宅着工戸数は約1,189千戸と、貸家・分譲住宅をけん引役に前年比2.5%増加しました。低金利の住宅ローンに加え、住宅取得資金贈与の特例など住宅税制上の優遇措置が需要を下支えしているものと思われます。ただ、その一方で、金融緩和を背景とした土地取得競争の激化や分譲マンションの大量供給による販売競争の激化など、業界を取り巻く環境は厳しさを増しました。

こうした中、同社は2003年4月以降これらの状況を予測して分譲マンション用地の仕入れを中止し、代わりに戸建用地の取得を増加させて分譲部門の業績を向上させています。 同社の2005年3月期は、主力の分譲住宅事業を中心に各事業が順調に拡大。不動産ファンド向け賃貸マンションの販売もあり、売上高が28%弱増加しました。一方、販売好調により販売促進費の負担が軽かったこと等から販管費の伸びが小幅にとどまり、営業利益以下の各利益段階で高い伸びを示しました。

<セグメントの動向>
(単位:100万円)
 
実績
前期比
分譲住宅

24,462

+25.60%
中古住宅
6,816
+18.80%
土地有効活用
5,259
+6.20%
ファンド向け賃貸マンション
2,517
-
賃貸及び管理
4,623
+17.10%
その他事業
273
+3.00%
合計
43,954
+27.80%

分譲住宅事業
同社の戸建分譲事業の特徴は、間取りや設備仕様に顧客要望を反映させる「自由設計方式」と100~150戸を中心とするプロジェクト毎の特徴ある魅力的な街づくりにあります。ノウハウの蓄積と効率的なオペレーションを確立できれば高い付加価値が得られますが、手間がかかるためコスト高になりがちで、同業者は容易に追従できません。 当期もこの「自由設計方式」住宅が好評なことに加え、大阪市内及び大阪北部方面への販売エリア拡大策が奏功、分譲住宅の引渡し戸数は、戸建住宅では「パラモア」114戸、分譲マンションでは「シャルマンフジ中百舌鳥パームスィート」142戸など合計820戸となりました。 分譲マンションについては前述の状況で、2006年3月期以降は新規物件の供給はありません。分譲住宅事業は全て戸建にシフトします。

中古住宅事業(中古住宅再生事業)
中古の土地付建物を買い取り、リフォームして販売する当事業(商品名「快造くん」)は仕入れ・リフォーム・販売に独特のノウハウが必要となるため、やはり他社の追従を許さないビジネスです。当期は335戸の引渡しを行いました。また、当期は分譲住宅事業の一環で取得した土地の一部を、ある医療法人の要望により19億円弱で売却しました。当セグメントの売上高は、通常リフォームした土地付建物の販売金額合計ですが、当期はこの土地のみの売上高が含まれています。このため、一時的な要因でかさ上げされていると言えます。

土地有効活用事業
銀行ルートでの提案営業により顧客開拓を進めており、銀行営業店の取引先が顧客となるケースが多いようです。美観性が高く、居住性の良い木造賃貸住宅「フジパレス」が土地所有者から高い評価を得ており、建築請負が好調に推移しました。 前期に低コストのRC造マンション「F・コンスパイヤー」シリーズを開発し、都市部での建築請負において競争力のある商品となっています。このほか、定期借地権付分譲住宅19戸の引渡しも行いました。

不動産ファンド向け賃貸マンション事業
当セグメントは分譲住宅事業、賃貸管理事業、土地有効活用事業で培ったノウハウが活かされています。当期は3棟の引渡しを行いました。仕入競争の激化から不動産ファンドの購入対象は、同社が地盤とする大阪府下にも広がりを見せています。住まいのトータルクリエイターとして不動産住宅事業の多角展開を進める同社は、賃貸マンションとしての立地の選定、設備・仕様の企画、設計、建築と事業に係る全てのノウハウを備えており、大阪府下の賃貸マンションの供給会社として優位に立っています。

賃貸及び管理事業
土地有効活用事業にリンクして賃貸物件及び管理物件の取扱い件数が増加、稼働率が大きく改善しました。

その他の事業
中古住宅の仲介112件を成約しました。

2006年3月期業績予想

(単位:100万円)
 
予想
前期比
売上高
44,000
+0.10%
営業利益
3,485
+8.60%
経常利益
3,300
+17.90%
当期純利益
1,333
-19.70%

不動産ファンド向け賃貸マンション事業において、今期の売上を予定した一部の物件が前期に前倒しで売却された事、及び前期の中古住宅等事業の売上高が一過性の土地の売却でかさ上げされている事から、今期の売上高は前期比微増にとどまる見込みです。

利益面では、戸建分譲住宅を中心に営業エリアを大阪府下全域と兵庫県南部へ広げた効果で同事業の収益性が高まります。営業外損益の改善もあり、経常利益が同17.9%増加するものの、不動産関連の特別損失1,040百万円を計上するため、当期純利益は同19.7%減少する見込みです。

特別損失1,040百万円は、新設子会社への賃貸及び管理事業部門の営業譲渡等に伴い発生する損失815百万円及び減損損失等325百万円です。
同社は2002年3月期に土地再評価法を適用して固定資産の時価評価を済ませているため、減損損失はこれ以降の不動産価格の値下がり分としての325百万円程度ですが、営業譲渡に関しては親子会社間の売買ということで税務上の安全性を期して、売却を目的とした厳しい不動産鑑定評価に基づいた売買価格としたことから、815百万円の譲渡損失が発生する見通しです。
この営業譲渡によって、2002年3月期の土地再評価法適用の際に賃貸物件関連で発生した1,608百万円の繰延税金資産を解消し、結果として税務上の実現損を発生させ、1,608百万円の要納税額の減少・キャッシュインフローが発生し、財務体質の改善強化が図れます。1,608百万円のキャッシュインフローはEPS換算で@49.26円になります。


中期経営計画

(単位:100万円)
 
'06年3月期
'07年3月期
'08年3月期
売上高
44,000
52,000
60,000
売上総利益
8,644
9,420
10,595
販管費
5,159
5,460
5,858
営業利益
3,485
3,960
4,737
経常利益
3,300
3,800
4,600
税前利益
2,260
3,800
4,600
当期純利益
1,333
2,242
2,714
1株当たり利益
40.84
68.69
83.15

これまで同社は中期経営計画に基づき経営基盤の強化と業績の向上に努めてきましたが、当面の目標であった東証・大証市場第一部指定を達成しました。これを機に更なる経営基盤の強化と業容の拡大を図るべく、新たに3ヵ年(2006年3月期~2008年3月期)の中期経営計画を策定しました。 この新中期経営計画では、各事業年度で最高益を更新し、最終の2008年3月期に連結売上高600億円(2005年3月期比36.5%増)、経常利益46億円(同64.3%増)の達成を目指します。

<中期経営計画のポイント>
(1)地域戦略
①これまで限定的に展開してきた中古住宅再生事業「快造くん」の営業地域を一部拡大します。
②分譲住宅と土地有効活用事業部門は、2005年3月期に進出・拡大した兵庫県南部と大阪府下全域を深耕します。

(2)新規事業
不動産投資ファンド向け賃貸マンションの開発・販売を更に積極化します。また、これと同じビジネスモデルで個人富裕層に向けた小規模の賃貸マンションの供給も開始します。

(3)商品づくり
各々の事業分野で、「建てていただく」、「買っていただく」、「住んでいただく」お客様に向けた住宅づくりを目指します。

(4)経営の効率化
賃貸管理事業部門と賃貸物件を新設子会社に営業譲渡し、経営資源を集中させて経営の効率化を図ります。


<配当政策>

今2006年3月期から中間配当を実施します。
中間配当は、本年9月末現在の株主に対し、1株につき一部昇格記念配当5円を含む計11円を予定しており、期末配当は2006年3月末現在の株主に対し6円、年間17円を予定しています。なお、17円の配当は株式分割前に換算すると34円に相当し、16円の増配となります。
大幅増配の要因としては、2006年3月期の1,040百万円の特別損失は一過性であること、また特別損失発生の主要因である子会社への営業譲渡によって1,608百万円(EPS換算@49.76円)のキャッシュインフローが発生すること、目標数値達成に自信があることが挙げられます。
また、次年度以降も業績に見合った配当で、株主還元を実施していく考えです。

 

<セグメント別施策>
(単位:100万円)
   
'06年3月期
'07年3月期
'08年3月期
  分譲住宅
27,573
28,155
29,295
  中古住宅
6,544
8,253
11,148
  土地有効活用
4,588
5,614
5,680
  ファンド向け等賃貸
-
4,148
7,400
  賃貸及び管理
5,007
5,525
6,150
  その他事業
288
305
327
連結売上高
44,000
52,000
60,000
  分譲住宅
2,443
2,337
2,431
  中古住宅
380
476
735
  土地有効活用
353
334
537
  ファンド向け等賃貸
473
661
  賃貸及び管理
264
283
305
  その他事業
45
57
68
営業利益
3,485
3,960
4,737

(1)分譲住宅事業
従来の大阪府南部地域に加え、大阪府北部地域で仕入れ及び販売を強化すると共に、兵庫県南部地域へ本格的に進出、分譲を開始します。100㎡の土地付建物の相場は、大阪府最南部では1,800万円程度ですが、本社のある岸和田市内では3,000万円、堺市では3,500万円、更に大阪市内では4,500万円に上昇します。1戸売る手間は変わらない一方で、販売単価が上昇するため、収益性が高まる見込みです。

戦略としては、プロジェクト毎の特徴ある魅力的な街づくりによる街並み資産の向上を念頭に入れ、お客様の夢の実現を可能にする「自由設計方式」を全面に出すことでパワービルダー(建売を得意とする地域の有力工務店等)等との差別化を図っていきます。また、設備・仕様の各品目について、3,000アイテムから成るオプション制度の充実を図っていきます。

一方、当計画では、分譲マンションの供給はないものとして計画しています。理由は、大阪市内を中心とする分譲マンションが供給過剰傾向にある中で、地価及び建築コストが上昇しているため、適正利潤の確保ができないと考えているからです。ちなみに分譲マンション用地は2004年3月期以降仕入れていません。もちろん分譲マンションの市況が回復する見通しが立てば、供給を再開し更なる業績の向上を目指します。


(2)中古住宅事業 (中古住宅再生事業「快造くん」)

当社は中古住宅再生事業を最も成長性のある重要事業と位置付けています。これまで大阪府南部地域に限定して事業展開していましたが、既に確立している「快造くん」のノウハウをもって他地域へ進出することで業容の拡大を目指します。

より市場規模の大きい大阪府北部地域に段階的に進出し、この地域で大阪府南部地域以上の事業規模を目指します。交差点単位での地域情報とその分析による物件の鑑定力、及び仕入れ・販売価格の査定の速度と正確性、更にはリフォームのマニュアル化により、他社との差別化を図ります。

今期は堺市に進出します。3年間をかけて市場深耕を図る考えで、事業の成功には立地と価格設定がポイントとなるため土地勘と相場観を養う必要があります。このため、先ず人材育成を先行させる必要があります。


(3)土地有効活用事業

従来通り銀行ルートでの提案営業を活動の中心とします。地域密着の強みを活かし、所有地に関する迅速かつ適切な市場性の調査・診断サービスの提供、或いは賃貸マンションやアパートの経営に関する多角度からの助言サービスの提供に努めます。
主力商品の「フジパレス」シリーズに、低コストのRC造マンション「F・コンスパイヤー」を新シリーズとして加えます。 また、分譲住宅部門と並行して営業地域を拡大し、より需要の多い地域へ進出する考えです。


(4)不動産投資ファンド等向け賃貸マンション販売事業

土地有効活用事業や賃貸及び管理事業で培った情報網やノウハウを行かせる、既存の営業エリアに絞って事業を進めていきます。立地の選定、用地の仕入れ、長期的に高稼働の見込める設備・仕様等の企画、設計・建築・販売の全工程について、各事業部門のスタッフによるプロジェクトチームを編成。専属者を置かずに、住まいのトータルクリエイターとしての当社独自のノウハウをこの事業に活かします。

前2005年3月期に初めて、3棟、2 ,517百万円の売上を計上しました。今2006年3月期に引渡しを計画していた物件も、前倒しで引渡しを済ませたため、今期の売上計画はありません。しかし、この3棟を手がけたことで不動産投資ファンド等向け賃貸マンションの開発・販売ノウハウを取得、事業拡大の目処が立ちました。また、同様のビジネスモデルで個人富裕層に向けた小型の賃貸マンションの開発・販売にも着手し、2008年3月期には不動産ファンド向けで50億円、個人富裕層向けで24億円、合わせて74億円の売上高を計画しています。

当事業は、新築物件を竣工時に引き渡すだけでなく、一定期間保有運営し、稼働実績を付けて販売する方式もあり、これにより賃貸収入と販売利益の両方を確保できます。また、個人富裕層向けの賃貸マンション販売は、土地有効活用事業の顧客網を活用し、提案商品が増えることでのマンション・アパート等の建築請負事業との相乗効果も期待できます。


(5)賃貸及び管理事業

不動産投資ファンド等向け賃貸マンション販売後の管理業務の受注に努めます。また、管理物件の大規模修繕提案を推進し収益の増大を図ると共に、経営の合理化と賃貸管理原価の低減に努めます。 2005年6月に賃貸管理事業を専業とする100%出資子会社を新設し、同年9月に子会社に賃貸管理事業及び賃貸物件を譲渡します。これにより専門性に特化し、経営の合理化と原価低減を含む収益性の向上をはかります。


取材を終えて
株式を上場する住宅メーカーは数多く、単に住宅を作って売っているだけと考えると、その多くが集団の中に埋没してしまいがちです。
しかし、同社の場合、自由設計方式による戸建分譲や中古住宅再生事業といった、収益性の高い独自のビジネスを持っており、2005年3月期の売上高営業利益率は13.1%と業界内でも飛び抜けています。

また、資金力と信用力を有する上場企業でありながら営業エリアの拡大を急がず、地域密着にこだわってきたが故に、土地有効活用事業や不動産投資ファンド等向け賃貸マンション販売事業でも他社の追従を許さない状況です。前者は銀行とのコラボレーションであり、おいそれと同社の真似をすることはできません。後者についても同様です。と言うのは、ファンドバブルの感もある不動産業界ですが、都心物件の収益性低下でファンド各社は地方での物件手当てに力を入れています。こうした中、同社はこの事業に必要な土地勘、相場観、資金力の三拍子を備えた、この地域で数少ない企業の1社だからです。
一方、説明会翌日の同社の株価(終値)は621円で、配当利回りは2.7%にもなります。

http://www.fuji-jutaku.co.jp/