2005年3月期第3四半期決算概要 <連結>
(単位:100万円)
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第3四半期累計
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前年同期比
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進捗率
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売上高 |
16,221
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153.0%
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78.0%
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営業利益 |
1,393
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820.9%
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84.4%
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経常利益 |
1,172
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黒字転換
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90.2%
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当期純利益 |
574
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黒字転換
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92.6%
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同社が軸足を置くエレクトロニクス産業はデジタル家電の在庫調整が半導体、電子部品などへ波及し、一部で景況感に変化の兆しが見えてきました。しかしながら同社においては、装置関連事業が引き続き高い伸びを示したほか、CMS事業も堅調に推移し、連結売上高は162億21百万円と前年同期比53.0%増加しました。
利益面では、装置関連事業における増収効果やこれまで先行投資の続いたCMS事業が黒字転換するなどで、営業利益が前年同期の8.2倍に拡大しました。
<セグメント別動向>
(単位:100万円)
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第3四半期累計
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前年同期比
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装置関連事業 |
8,335
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147.1%
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電子デバイス事業 |
2,813
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104.0%
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CMS事業 |
5,074
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227.5%
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連結売上高 |
16,221
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153.0%
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装置関連事業 |
1,076
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927.6%
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電子デバイス事業 |
232
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72.7%
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CMS事業 |
116
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黒字転換
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消去 |
-32
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- 同
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営業利益 |
1,393
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820.9%
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装置関連事業
半導体・液晶製造装置に使われる真空シールや石英製品が伸びたほか、シリコン製品、EB・ガン、セラミック製品も堅調に推移しました。
電子デバイス事業
HDD(ハードディスクドライブ)モーターの流体動圧軸受化に伴いコンピュータシールは落ち込みましたが、自動車温調シートや半導体製造装置向けにサーモモジュールが拡大したことで増収を維持しました。ただ、利益面では、コンピュータシールの落ち込みを吸収することができませんでした。もっとも、コンピュータシールの落ち込みは当初から予想されていたことで、計画に織り込まれていました。
CMS(受託生産)事業
主力のシリコンウエハー加工の操業度が向上、工作機械及び新規顧客の開拓が進む装置部品洗浄も売上高が増加しました。当セグメントの営業損益は第2四半期に黒字転換しており、黒字基調が定着しつつあります。
2005年3月期 予想 <連結>
(単位:100万円)
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予想
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前期比
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売上高 |
20,800
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138.7%
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営業利益 |
1,650
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268.3%
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経常利益 |
1,300
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黒字転換
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当期純利益 |
620
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黒字転換
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装置関連事業に含まれる石英製品事業は、中国への生産移管が完了したことでコスト競争力が向上し新規の顧客の開拓(米国2社、国内1社)が進んでいます。また、CMS事業は主力のシリコンウエハー加工が、期末までに技術の最終移管を完了する見込みです。
足下、コンピュータシールの退潮が鮮明ですが、今期業績には織り込み済みです。一方、装置関連事業の好調に加え、CMS事業の収益改善もあり、営業利益が前期比3.7倍程度に拡大する見込みです。また、会計上の利益だけでなく現金収支も改善。営業キャッシュフロー及びフリーキャッシュフロー(営業キャッシュフローから設備投資額を引いたもの)の黒字化が見込まれ、今後、財務内容の改善も期待できそうです。
トピックス 来期以降、一段の収益性改善が見込まれるCMS事業 (1)売上高の31%強を占めるCMS事業とは
CMSとは、Contract Manufacturing Service(コントラクト・マニュファクチュアリング・サービス) の略で、同社では「受託生産」と説明しています。顧客から委託を受けて機器や装置あるいはそれらの部品を生産します。米国では、自らは開発・設計やマーケティングに特化して生産を外部に委託する、いわゆるファブレス(工場を持たない)・メーカー等に利用されるケースが多いようです。
一方、国内企業では、コスト競争力強化の一環として大手メーカーが積極的に活用するようになってきています。
同社は、上海、杭州(いずれも中国)を拠点にCMS事業を展開しており、機器や装置等の生産にとどまらず、半導体製造装置等で使われる部品の洗浄サービスなども提供しています。ポイントは、「顧客が要求する品質の製品やサービスを、いかに低廉な価格で提供できるか」。国内での装置関連事業や電子デバイス事業で培った精密加工や粉体加工、あるいはメッキや洗浄等の技術を中国価格で提供できることが、同社の強みです。
(2)CMS事業の中核をなすシリコンウエハー加工
同社はCMS事業において、様々な製品の生産やサービスの提供しておりますが、顧客企業との間で厳格な守秘義務契約が結ばれているため、個々の案件についての詳細な説明はできない状況にあります。
ただ、シリコンウエハー加工が、大きなウエートを占めている模様です。シリコンウエハーは、シリコンのインゴットを円盤状にスライスしたもの(これをシリコンウエハーと言う)で、このシリコンウエハーに電子回路を書き込んで(正確には焼き込む)半導体を作ります。同社のシリコンウエハー加工は、インゴットのスライスとシリコンウエハーの表面研磨の工程を受託したものです。
CMS事業は大規模な設備や人員の確保が必要となる案件が多く、先行投資負担が重いためこれまで利益は水面下にありました。今第2四半期(中間決算)にようやく黒字転換したわけですが、この原動力は特に投資負担の大きかったシリコンウエハー加工であった思われます。シリコンウエハー加工は、受託先の顧客企業から技術移管を受けて進められました。具体的には、一連の作業を6工程に分けて移管が進められ、途中、SARS(急性肺炎)の影響等を受けて数ヶ月間が遅れたこともありましたが、この1-3月期(中国子会社の'05年度)に完了する予定です。
(3)来期以降、収益性の改善が進展
移管の進展に伴い、シリコンウエハー加工(CMS事業)の売上高は拡大しましたが、シリコンウエハー加工は技術的な難易度が極めて高いうえ、一つの工程が終わるとすぐに次の新しい工程に進んだため、その都度歩留まりが悪化し、売上が増える割には利益が出なかったようです。本来、CMS事業は先行投資負担が重い装置産業的な事業であり、売上の拡大と共に収益性の改善が進む事業なのですが、技術移管の段階では上記の理由から装置産業的な単純な限界利益率では説明できない面がありました。中間決算で黒字転換したといっても、33億円強の売上高に対して、営業利益は75百万円(営業利益率2.2%)に過ぎませんでした。
その技術移管が、1-3月でようやく終わります。移管に時間がかかっただけに減価償却も進んでいる模様で、来期以降、その収益性は大幅な改善が見込まれます。
取材を終えて
今期の業績予想を下方修正する企業が少なくないエレクトロニクス業界にあって、同社は高い利益成長を見込んでいます。このため計画達成に不安を感じる投資家の方がいるかもしれませんが、足下、計画通り推移しており、計画達成に向けて特に不安はないようです。
かつて屋台骨を支えたコンピュータシールがその製品寿命を終えようとする中、同社はCMS事業をけん引役に売上高を急拡大させてきました。しかし、この間、資産効率や収益性が犠牲になったことは否めません。CMS事業の黒字化を機に、今後は資産効率や収益性にも気を配りつつ企業経営を進める必要があると考えます。
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