この飛躍を実現させるための重点施策は以下の3点です。 1. 重点ターゲットの強化 土壌処理剤事業の強化
平成15年のBASFの土壌処理剤買収、平成19年の新剤「ネマキック」の上市(予定)で大きく拡大します。
以前のレポートで触れたように、BASFの同事業部門買収に伴いベルギーにワールドワイドのマーケティングを担うKSTを設立しました。現在、拡販のための登録認可申請を強化しており、2006年第1四半期には米国でのバスアミドの食用(いちご、トマト)登録が認可される予定です。
国内市場はアグロ カネショウが販売し、台湾、韓国にもアグロ カネショウを通じて輸出します。
これによってバスアミドの取扱い数量は、国内他社への原体供給も加わり飛躍的に増大します。
また平成17年1月以降農薬として臭化メチルの使用が原則禁止となることで、バスアミドの代替需要が増大すると予想されること、ネマキックの上市で土壌処理剤のラインアップが拡充され、同分野の成長が加速されると見ています。
ダニ剤事業の強化
ダニ剤の現在の主力は「カネマイトフロアブル」ですが、今後続々と新剤が登場する予定です。
「AKD-1102」 |
|
果樹、園芸用ダニ剤。多くの種類のハダニに高い効果が見込まれます。抵抗性(続けて使用することで効果が無くなってしまうこと)がつきにくく、商品寿命が長いのが特徴です。
平成17年の登録申請、平成20年の登録取得に向け開発中です。
年商10億円を見込んでいます。 |
「AKD-2136」
|
|
みかん、りんご、茶のサビダニに効果が高く、ハダニとの同時防除も可能です。
AKD-1102と同時期の登録取得予定です。
年商5億円を見込んでいます。 |
「AKD-2115」
|
|
茶、りんご、野菜をはじめ、多種のハダニに効果があり即効的で長く効果が続きます。
平成24年ごろの販売開始予定で、年商15億円を見込みます。 |
生物農薬事業の強化
生物農薬の販売を主体とするセルティスジャパンの初年度売上高は1.5億円を計上し、着実な成果を上げています。
生物農薬の市場規模は現在国内30億円、全世界500億円ですが、将来的には国内500億円、全世界1,500億円まで成長すると期待されています。
2.農家密着型営業の強化
農家と直接対話できるチャネルを持っているのが同社の特徴であり、信頼関係の構築が同業他社と比較して高い利益率と成長につながっています。
この農家密着型営業の強化策としてトライアングル作戦を展開しています。
「同社」、「農家」、「販売店・JA」の3者間の相互コミュニケーションを緊密に行うことで、従来以上に顧客ニーズの機動的・迅速な収集、活用を可能にする営業技術普及活動です。
農薬を正しく理解してもらい、自然環境との調和の中で農薬を正しく使って食糧生産に従事してもらうことが重要と考えています。
78名のTCA担当者(営業技術普及担当)が全国の各担当地域をカバーし、営業活動を行っています。
3.海外展開の進展
主力のダニ剤カネマイトフロアブルは現在、韓国、台湾向けに輸出が始まっています。
平成15年10月にはエクアドル、チリにおいて登録が認可されました。同年11月にはアメリカでも非食用分野の登録が認可され、今年7月には食用分野についても認可されました。
ヨーロッパでは平成15年4月に登録申請を行いました。
アメリカ、ヨーロッパ向けにそれぞれ5-10億円程度の輸出が可能と考えています。
2004年12月期中間決算概要
<単体>
(単位:100万円)
|
|
中間期実績
|
対前年同期比
|
売上高 |
5,307
|
+19.7%
|
営業利益 |
541
|
+163.4%
|
経常利益 |
553
|
+154.3%
|
中間純利益 |
378
|
+324.7%
|
大幅な増収・増益となりました。 カネマイトフロアブル、アルバリン等の他、BASFから譲受けたDD剤、バスアミドの売上が増加しました。
粗利率は利益率の低いDD剤、バスアミドの原体売りの増加で若干低下しましたが、販管費は経費節減努力で減少しました。
2004年12月期通期予想 <単体>
(単位:100万円)
|
|
通期予想
|
対前期比
|
売上高 |
9,100
|
+24.3%
|
営業利益 |
190
|
+389
|
経常利益 |
210
|
+388
|
当期純利益 |
150
|
+410
|
通期でも増収・黒字転換を見込んでいます。
売上高
害虫防除剤: |
アルバリン、カネマイトフロアブルの増収 |
病害防除剤: |
バスアミド、DD剤の寄与 |
除草剤: |
カソロン剤、モゲトンが順調で堅調な推移 |
バスアミドの原体売りが寄与 |
販管費
販促費の増加、新規剤のDDの物流費用増などが見込まれる一方、委託試験費が減少し横這いと予想しています。
これに加え、今期はカネマイトフロアブル、モゲトンのEUにおける登録手数料の発生がないことから研究開発費は前期に比べ12.4%の減少となる見込みです。
配当
今期も20円を維持する予定です。
<連結>
(単位:100万円)
|
|
通期予想
|
売上高 |
10,500
|
営業利益 |
700
|
経常利益 |
500
|
当期純利益 |
250
|
<KST>
(単位:100万円)
|
|
通期予想
|
売上高 |
3,264
|
営業利益 |
565
|
経常利益 |
351
|
当期純利益 |
206
|
KSTの同社以外への売上高でバスアミド528百万円、DD837百万円が単体売上高に追加され105億円の連結売上を見込んでいます。
トピックス:三和化学工業(株)の買収
5月10日に農医薬の中間体を供給し、特殊分野において高い技術を有している三和化学工業の買収を発表しました。
この買収で、同社グループは原体の製造から、特殊合成、製剤、販売までを一貫して行うことが可能となります。
また、医薬、顔料、染料などへの市場参入が可能になり、同社の収益拡大に貢献することを期待しています。
取材を終えて
BASFの土壌処理剤事業買収が寄与し売上高が順調に増加したことに加え、研究開発費も減少したことで、通期でも大幅な増収・増益が見込まれます。
今後は土壌処理剤事業の大幅な成長が期待できるということで、その他の経営方針の進捗状況と合わせて引き続きフォローしていきたいと思います。
|