2004年3月期決算概要
<連結>
(単位:100万円)
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実績
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対前期比 |
売上高 |
54,081
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+7.9%
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営業利益 |
4,004
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-3.5%
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経常利益 |
4,060
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+4.5%
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当期純利益 |
2,138
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+4.9%
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売上高
主力の寮事業は、大学・専門学校との提携強化により契約数を伸ばした他、ワンルームマンションタイプ寮のドミール事業も増加しました。
ホテル事業も高稼働となりました。
デベロップメント事業では、特定目的会社を使用した手法を含めた寮などの開発棟数の増加や分譲マンション事業が好調でした。
営業利益
減益となりましたが、その要因は2003年3月期末に実施した所有不動産9物件の流動化コスト、本社移転費用、ザ・ビーチタワー沖縄の開業準備費など、どれも一時的な費用であり、特殊要因を調整した実質的な営業収益力は増益傾向を堅持しています。
<主なセグメント別動向>
寮事業 |
売上高 |
29,213百万円
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(前期比 +2.1%)
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営業利益 |
4,731百万円
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(前期比 -1.8%)
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学生寮に関しては、進学率の上昇により学生数が増加し、少子化の影響を吸収した形となっています。前回のレポートでも紹介したように、従来は専門学校が中心でしたが、四年制大学への営業も強化した結果、早稲田大学、上智大学などとの提携も実現しました。この結果、利用実績学校数1,503校(前期比 +8.8%)、契約者数13,975名(前期比 +5.2%)ともに増加しています。
社員寮は、福利厚生アウトソーシングに関する問題解決型の提案営業を展開し、幅広い業種で大口案件を獲得しましたが、関西地区における厳しさなどから利用実績企業数は1,236社(前期比 -5.0%)と減少しました。
ドミール事業は積極的に開発を進め入居者、売上高とも増加しています。 |
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ホテル事業 |
売上高 |
5,905百万円
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(前期比 +15.6%)
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営業利益 |
-165百万円
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(前期比 -112百万円)
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長期滞在型ビジネスホテルのドーミーイン事業は、顧客ニーズを的確に捉えたサービス内容が好評で、全事業所が87.1%という高い稼働率となりました。
ビジネスモデルが確立できたと考えています。
リゾート事業も、「進化する下宿屋」を自負する同社が取り組む「癒しの宿」の商品企画に注力しました。また平日稼働率の改善活動に全社で取り組んだ結果、前期を13.1ポイント上回る62.9%となりました。
全体で売上高は増収となったものの、今年7月開業予定の「ザ・ビーチタワー沖縄」の開業準備費負担で、営業損失額は拡大しました。
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デベロップメント事業 |
売上高 |
12,349百万円
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(前期比 +104.6%)
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営業利益 |
471百万円
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(前期比 +139.6%)
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特定目的会社を利用した投資ファンドを組み込んだ開発提案を開始しました。その結果、開発件数は寮5棟、ドミールガーデン2棟となりました。加えて、ザ・ビーチタワー沖縄の建設の計上、分譲マンション3棟の販売が好調でした。 |
その他のセグメント動向は、フーズ事業の大幅な収益の改善、その他事業(シルバー事業、人材事業など)の黒字転換などとなっています。
2005年3月期業績予想
<連結>
(単位:100万円)
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予想
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対前期比
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売上高 |
58,200
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+7.6%
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営業利益 |
4,450
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+11.1%
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経常利益 |
4,270
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+5.2%
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当期純利益 |
2,250
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+5.2%
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増収・増益と着実な業容拡大を見込んでいます。
寮事業では、新たに京都、新潟に進出するなど商圏の拡大を図る一方、首都圏での開発を一層強化していきます。2005年3月期の期初稼働率は95.9%となっています。
また、ホテル事業は、7月に「ザ・ビーチタワー沖縄」の開業、ドーミーイン事業の全国都市圏での開発促進などで、セグメント別営業利益の黒字化を見込んでおり、これによってフーズ事業以外はすべて黒字化となります。フーズ事業も営業損失が前期の-59百万円から、-33百万円へ改善が進みます。
新中期経営計画
2009年3月期へ向けた「新中期経営計画」を策定しました。
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2009年3月期計画
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売上高 |
935億円
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経常利益 |
78億円
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純利益 |
41億円
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ROE |
15%
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株主資本比率 |
26%
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ネットDER |
1.0倍以下
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重点施策
1. 大学との提携による学生寮事業の成長加速
主力である寮事業の一段の強化を図ります。 2002年の205万人をピークに減少が続いている18歳人口は、2008年に底入れすると見られます。一方で進学率の上昇により、大学入学者数は微増、専門学校入学者数も低下が止まり横這いとなっています。
こうした中、前述のように有力四年制大学を中心に提携学校数は増加しています。 前期の早稲田大学、上智大学に続き今期も6校程度の大学と新規に提携する予定です。
また前述のように、全国展開の中で首都圏と京都を重点ターゲットとします。京都は約2000室の需要があると見られており、全国では38,000室の需要を見込んでいます。
学生寮の開発は今期1,106室、2009年3月期には2,240室を計画しています。
2. ビジネスホテル事業の強化
ビジネスモデルが確立したビジネスホテル事業「ドーミーイン」の開発を強化します。
2004年4月1日現在全国で11ヶ所ですが、今期は3ヶ所開業の予定です。
ビジネスホテルの全国平均稼働率75%に対し、同社は85%と大きく上回っています。
差別化要因として「顧客のニーズを的確に捉えて、他のホテルにはない付加価値を向上させリピーターの多いホテル作り」を進めていきます。
3.新しいリゾートホテル事業の基盤構築
石塚社長は年頭に今年のテーマを発表するのが恒例となっていますが、平成16年のテーマは「転機」です。
これは、「進化する下宿屋」として業容を拡大してきた同社が、そのノウハウを活かして「進化する宿屋」作りに本格的に進出するというビジョンの現われです。
リゾートホテル事業は大変競争の厳しい業界ですが、同社は十分高い競争力を持っていると石塚社長は考えています。
「お客様の満足感を十分充たす」という観点におけるソフト面では、寮およびビジネスホテルの運営で築き上げてきたノウハウが確立されていることに加え、企業文化としても既に備わっています。
またハード面でも、寮の建築で培った「低コストで顧客満足を充たすハードの作り方」を活かすことができます。
80万人の会員を持つある福利厚生代行会社が利用者に「お宿満足度調査」を実施したところ、同社の代表的リゾートホテル「ドミールヴィラ箱根」が第1位にランキングされました。
今年7月開業予定の「ザ・ビーチタワー沖縄」は、7月74%、8月92%、9月85%と、予定を上回る予約状況となっているそうです。
「進化する宿屋」という通りに、「もっといい宿を作ることができる」と考え基盤構築を進めていきます。
財務戦略
2005年3月期から2009年3月期の累積投資額は340億円を予定しており、その大半は寮事業とホテル事業になっています。
調達資金としての有利子負債は、2004年3月期の200億円から2006年3月期の280億円へと増加しますが、その後は横這いを計画しています。
D/Eレシオもピークの2006年3月期は1.2倍となりますが、2倍までは現在の格付け(BBB-)の維持は可能であり、その後は1倍以下になることと合わせて、財務戦略に問題はないと考えています。
CSR(企業の社会的責任)の強化
CSRについてもその対応を一層強化していきます。
特に「中高年の雇用」という観点では40歳以上の雇用を進めており、ここ3年間で107名を採用したのに対し、退職者はわずかに2名となっています。
この他にも、環境ISO90001の認定、ホームヘルパー2級資格取得の促進(正社員1,180名中、現在365名が取得)などを進めています。
取材を終えて
表面の決算数字上は、増収ながらも営業減益となりましたが、所有不動産9物件の流動化コスト、本社移転費用、ザ・ビーチタワー沖縄の開業準備費など、一時的な費用の発生が要因であり、実質的な増益基調に変化はないようです。
5年で純利益がほぼ倍増となる新中期経営計画の進捗状況などを今後も取材していきたいと思います。
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